PandoraPartyProject

シナリオ詳細

山賊の魂百まで

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●山賊老人
 もう何も悔いはない。
 人生の最期が近づいた時に、そのように言える者は少ないはずだ。
 名うての山賊も、寄る年波には勝てない。男の名はゴメス。元山賊の首領で今は小さな村で余生を送る粗野な老人である。
「俺が手斧を振り回せば、騎士団だって逃げ帰ったもんだ。あの頃の幻想で俺の名を知らないやつは一人もいねえ。本当だぞ」
 はいはい。そうかい。またですか。品がないわね。じいさん夢でも見たのか。ゴメスが嘘か誠か定番の武勇伝を語りだすと井戸端会議は直ぐに解散する。彼は所謂、面倒な年寄であった。
 元山賊の老人が、バルツァーレク領の外れにある小さな村に住まうのは理由があった。
 今から数十年前、山賊稼業の絶頂期にオークの集団と対峙することがあった。略奪行為を働いた後にばったり出くわしたのだ。
 ゴメスはこともあろうか酒に酔い一匹のオークを生け捕りにして、遊び半分で一騎打ちを挑んだ。勿論、酔った勢いだ。
 しかし、彼に限ったことではないが、山賊の本懐は集団戦術。一騎打ちの経験が浅い者も少なくない。ゴメスもその一人であった。部下たちに煽られ後に引けない状態に追い込まれたというわけだ。
 結果は言うまでもなくゴメスの惨敗。余裕を見せて与えた手斧によって殺されるところだった。彼は重傷を負って生死の境を彷徨うこととなった。
 時間をかけても癒えない傷が幾つか残った。
 一つはゴメスの体である。左腕は腱が切れて使い物にならなくなった。背中に受けた大きな傷が原因で腰が曲がり、歩くのにも不自由するようになった。
 もう一つの傷はゴメスの山賊団に入った亀裂である。彼が住まうのは弱肉強食の世界。弱者が首領の座に居座れるはずもなく。下克上から僅かな財産を持って命からがら逃げ伸びたというわけだ。それからの数十年間はひたすら薪を割って生計を立てる日々。充実していたとは言い難い隠遁生活を余儀なくされたのだ。
 ゴメスはある朝、顔を洗おうと桶に水を汲むと不意に自分と目が合った。数年ぶりに水面に映る自分を直視する。水鏡にはどこにでも居そうなくたびれた老人が映っていた。
「これが俺か」
 ゴメスは両手で顔を覆いたかった。でも左手が動かない。右手だけで顔を覆う。目頭から溢れるものを止めようとしたが指の隙間から零れ落ちた。
「死ぬ前に俺の人生を奪ったやつに復讐したい。そいつは醜い豚鬼。オークよ」
 老人はそう息巻いた。

●目指すは隻眼のオーク
「ゴメスおじいさんは、オークに復讐したいそうなのです」
 ローレットの情報屋、ユリーカ・ユリカ(p3n00002)はイレギュラーズ達を前に依頼の説明を始めた。
 少々血なまぐさい話だが、『オークの首を取ってきて欲しい』というのが依頼の趣旨とのこと。
 オークについての情報収集は概ね完了していた。
 山奥の洞窟を巣にしており、20匹程度の群れで生活している。毎日昼頃には半数以上が食料調達に出かけるらしく、巣に残るのは10匹を切るらしい。
 ターゲットはオークの首領で巣から基本的に出ないらしい。
「ターゲットのオークは赤い眼帯をしているのです。ボスっぽいのです」
 生意気なのです。ユリーカは最後にターゲットの特徴をイレギュラーズに伝えた。

●山賊の魂百まで
「しっくりくるな」
 ゴメスは古びた皮鎧を苦労して着込んできた。
 彼にとっての正装である。その姿は成人を迎えた男子と呼ぶにはいささか腰が曲がっているが、若者のような晴れ晴れとした空気を纏っていた。
 右手には手斧を握りしめ、縄でぐるぐる巻きにしている。『死んでも手斧を離さない』という意である。
「俺は生まれながらの山賊よ。山賊がやられっぱなしで終わっていいわけがねえ」
 取られた物は取り返す。我が略奪の人生――終わりよければすべてよし。
「俺が自ら蹴りをつける」
 依頼なんかするんじゃなかったぜ。そう呟きながら老人はよろよろと曲がった腰で歩を進める。向かう先は言うまでもなく。

GMコメント

日高ロマンと申します。
何卒よろしくお願いいたします。

●依頼達成条件
 オークリーダーの殺害

●情報確度
 A(オープニングとこの補足情報に記されていない事は絶対に起きません)

●オーク概要
 ・10匹~20匹との戦闘(手斧、棍棒をもった近接タイプ、スリングを持った遠隔タイプが混在)

●その他補足
 ・ゴメスの生死は依頼達成条件に関わりません。
 ・ターゲットとなるオークはやや小柄な種族で、個々の戦闘力はあまり高くはありません。(20匹が相手となると各個撃破を狙わなければ負傷者が出る可能性があります)
 ・オークのお勤めを待ってから巣に突入すれば、確実に10匹未満との戦闘になります。
 ・オークのお勤めを待たなければ20匹との戦闘になりますが、ゴメスを保護することが可能です。

  • 山賊の魂百まで完了
  • GM名日高ロマン
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月03日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スウェン・アルバート(p3p000005)
最速願望
ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)
強襲型メイド
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
歳寒松柏 マスターデコイ(p3p000603)
甲種標的型人造精霊
エスタ=リーナ(p3p000705)
銀河烈風
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
レイア・クニークルス(p3p003228)
いかさまうさぎ

リプレイ

●弔いに非ず
 もし死を迎えた後に人生を振り返ることができたなら。
 誰もが、悔いは無い人生だった。そう言い切りたいはずだ。それは貴族でも山賊であっても変わりはしない。
 イレギュラーズ達は死地に向かった老人の後を追って出立し目的地――オークの洞窟に到着する。まずは辺りの茂みの中に屈み込み、オークの動向を伺う。
 ゴメスが洞窟に入ったかどうかは分からなかった。8人が到着してからはネズミ一匹洞窟には入っていない。
 到着して半刻も過ぎぬ間に、見張りのいない洞窟からはオーク達がぞろぞろと出てくる。手には、槍・斧・革袋、様々のものを持っている。出てきたオークは合計11匹。所謂、お勤めの時間である。
「あ、出てきたよ……オーク討伐! 依頼人だけでなく、周辺地域の皆さんにも利益になることです。力を合わせて依頼をぱーふぇくとに完遂させちゃいましょう!」
 ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は、さあ行かんと言わんばかりに、威勢よく仲間を鼓舞する。だが、彼女は心の在り処を探す旅の途中。依頼人の生死は内心、左程興味はなかった。
「山賊の矜持とか、正直どうでもいいかな死にたがりに構ってる余裕ないし」
 最後のオークが出立すると『穢れた翼』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)は立ち上がり、気だるそうにそう言った。
『全くもって道理だな』
 彼女にだけに聞こえる内なる声も同調する。
「依頼は依頼だから、こなすだけだけどね」
 ――思いを力に。雑念は塗りつぶす。彼女は目を閉じて精神統一を始めた。空想創造。それが彼女のギフト。戦う意志を自身に刻み込む。
「依頼主は恐らく突入済みであろうな」
 『甲種標的型人造精霊』歳寒松柏 マスターデコイ(p3p000603)は周りからは感情が読み取れない表情でそう言うと茂みからを立つ。
「……すまぬ、依頼人。今のボクでは助けらそうにないー」
 『Gifts Ungiven』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)は悔し気に呟いた。
(山賊の誇り、ですか。いいですね、そういうのは個人的には嫌いじゃありませんよ)
 『   』ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)はナックルを拳にはめて、手首をほぐして臨戦態勢に入る。
「生きて成し遂げてもらいたいものですが……まあ、こちらもその辺はお仕事です。依頼通りにいくとしましょうか。運と才覚があれば生き残るでしょう」
 ヘルモルトは茂みから外に出る際に、スカートの裾が枝に絡まり、大きくめくれ上がった。後ろにいた者はスカートの中が見えていたのかもしれない。彼女は何事もなかったかのようにスカートの裾を直して茂みから出る。敢えて後ろは振り返らない。誰に見られたかも確認はしない。場を混沌とさせるのも彼女の存在意義の一つなのである。
 
●開戦~洞窟の入口にて~
「やっっっほぉおおおおおおおおおおおおお!」
 洞窟の入口で『いかさまうさぎ』レイア・クニークルス(p3p003228)は絶叫する。狙いはオークの誘い出しである。敵は半数以下に減ったものの、それでもイレギュラーズは数に劣る。地の利を活かして乱戦を避け各個撃破に持っていくのが狙いだ。
 レイアが叫ぶと間もなく洞窟の奥からは徐々に地鳴りが近づいてくる。オークが我先にと縄張りに入った獲物を駆逐しようと集団で押し寄せてくる。数は9匹。イレギュラーズ達はオークを挑発した後に洞窟の外まで後退し待ち構える。そして扇型の陣形で入口を包囲する。
 開幕の狼煙を上げたのは、『最速願望』スウェン・アルバート(p3p000005)。誰よりも早く先頭を行くオークに速攻をかける。
(爺さんは何十年鬱憤を抱えてたかわからないし、その気持ちを推し量ることは誰にもできないッス)
 オークに疾風の如き蹴りを放ちつつ、依頼人の半生に思いを馳せる。そして、
(けども、それでもオークさんに挑む決心をした爺さんはすげーと思うッス! たとえその先が生であっても死であっても、爺さんは選んだんスよ。であれば自分はその選択の手伝いをするッス)
 スウェンは更に加速した。圧倒的な身体能力でオークを翻弄する。
(それこそ、余計なことなんてしないッス。爺さんが爺さんの道を進むように、自分たちは爺さんの依頼をキッチリこなすッス……不殺なんて甘いこと言わず、殺しきる勢いで、蹴り抜くっ!)
 フルフェイスは暗めのスクリーンで覆われているため表情は伺えない。彼の心情を表すのは、ただ一つの速さだけ。それがゴメスが切望した刹那なのかもしれない。
「エスタ=リーナ参上! 戦いは腕力が全てではないことを証明してやるっ! とうっ!」
 『銀河烈風』エスタ=リーナ(p3p000705)は低めのドスの利いた声で前口上を述べ戦線に躍り出る。おぉ、と誰かの歓声が聞こえた。気がした。そしてスウェンのターゲットに合わせて各個撃破を狙っていく。
「飛燕ドライブキックッ!」
 リーナはツバメの如く俊敏な身のこなしで間合いを詰めると鋭い飛び蹴りをオークの腹に打ち込む。オークは悶絶して跪く。
 そこに間髪を入れず、クロジンデが陣形の最後尾から長射程の術式を放ち一匹目のオークを絶命させた。
(もしかすると洞窟の奥で生きてるかもしれないー)
 クロジンデは手を合わせて瞑想し、体内の魔力を増幅させる。狙うは早期決着。依頼人の生存に一縷の望みをかける。
 だが、オーク達も反撃に転じる。それは統制が取れた動きではなく、各々が適当なターゲットを見つけては攻撃を仕掛けていく。
「混沌ね。連携も何もあったものじゃない」
『そうだな。だが予想外の事態も想定しておくべきだな』
 そうね、とティアは右手を掲げ呪文を唱えた。すると地面からアンデッドのなりそこないがぞろぞろと湧いてくる。それは死骸盾。彼女の使い捨ての盾であった。乱戦時の対策に防壁を配置する。
 次に戦況を動かしたのはヘルモルト。彼女は得意の組技で超近接戦闘を試みる。まず突出したオークに狙いを定め、手斧を持つ右手を絡め取り小手返しで転倒させる。そして、肘に関節技を極めて破壊する。
「とどめよ」
 ココロは手にした銃でヘルモルトが転倒させたオークを狙い撃ちにする。オークは暫く床でのた打ち回っていたが、弾丸を5発撃ち込んだところでぴくりとも動かなくなった。
(赤い眼帯はいないね)
 ココロはボスとの対峙を視野に入れて魔力を温存していたがまだ対象は現れない。後7匹。まだ先は長い。
 先ほどの混沌ぶりと打って変わり、オークの狙いがレイアに集まり始める。うさぎさんの魅力に野獣共も吸い寄せられたか。
「ちょっと……痛いっ」
 スリングから投射された無数の投石、手斧による乱打が彼女に襲い掛かる。シールドを構えて凌いでいるが長時間は耐えられそうもない。
「ふむ、今助ける」
 マスターデコイがレイアを救援すべく敵陣に鋭く肉薄しオーク達の連携に歯止めをかける。
(どこにいる依頼人よ。この奥で生きているのか……復讐を一度は他人に頼んだがやはり自らの手で決着を着けたくなった、か)
 手にしたソードで目の前のオークを強烈に斬り付けながら、依頼人の身を案じる。彼も助けられるなら、助けたいのだ。そこに、奮戦するマスターデコイを狙うべく1匹のオークが飛び掛かり手斧による斬撃を見舞う。
「ぬう。力だけはあるようだな」
 避けきれずに右肩に裂傷を負う。その際、僅かに隙が生じた。そこを狙い別のオークがマスターデコイに攻撃を仕掛けようとしたその時――
「危ないっ! 飛燕ドラゴンキックッ!」
「そのまま、とどめをさします」
 リーナが跳躍してからの急降下蹴りをオークに放つ。更に、怯んだオークの背後にヘルモルトが素早く回り込み、垂直落下に近い角度のジャーマンスープレックスを決めた。そのオークは二度と立ち上がらなかった。
「攻め時ね」
『好機だな』
 ティアは遠い間合いから混乱しているオークを見つけて矢を放ち命中させた。それは死者の怨念を込めた呪いの一矢。オークはただの矢傷とは思えないほど過剰にもがき苦しむ。それはティアの掛けた呪いの力によるもの。想像を絶する苦痛がオークを蝕む。
「とどめー 早く道を開けてー」
 畳み込むようにクロジンデも魔力弾で追撃をかけ対象を撃破する。
「かっ飛びッス!」
 スウェンはやや薄くなった敵の陣形のほころびを広げるべく、再度速攻をかける。
(憐憫や同情、心配とかではなく、一人の走り屋として、プライド持って仕事を引き受けたッスからね! 奥で今も戦っているのかもしれないけれど……間に合うなら見届けてあげるッス!)
 スウェンのプレッシャーに追随するようにマスターデコイも追撃する。
(依頼人……お主の考えは別に身勝手だとは思わんよ、復讐とは元より身勝手なものである。故に見せてもらおうか、それらの道行きを……)
 スウェンとマスターデコイの連撃で更に一匹を撃破。後衛に敵を通さぬよう戦線を維持しつつもチャンスは逃さず数を減らす。
「どんどんいくのだ☆」
 リーナはマスターデコイに続き戦線を押し上げる。
「戦闘も終盤に差し掛かってきましたね。報酬が私を待っているのです」
 レイアもスピアを構え攻勢に転じる。イレギュラーズ達は間もなく戦線を掌握できる。

●五十年越しの決着
 残るオークは3匹。死の恐怖に怯えたのか、洞窟奥へ後退する。
 イレギュラーズ達は一気呵成に洞窟の奥に突き進む。お勤めが戻る前に全てに決着をつける。洞窟は奥まで入り込んでも、外の光が届く程度の深さであった。
 後退した3匹のオークが身を挺して守るのは――ボスオーク。赤い眼帯をしていた。だが様子がおかしい。よく見ると右腕は力なく垂れ下がっており、血を流しているようであった。
 足元には大柄な老人が倒れている。恐らくゴメスである。うつ伏せに倒れており、ぴくりとも動かない。右手には手斧をしっかりと握っていることは確認できた。
「ボスに一太刀浴びせたッスか! そいつはすげーっス!」
 護衛の3匹のオークがスウェンに対して突進してくる。だが――『全開ッス』。スウェンは『ギアジェンジ』をした。圧倒的な反応速度でコンマゼロの微細な動きすら把握する。変幻自在のステップで3匹のオークの攻撃はスウェンにかすりもしない。
「報酬までもう少しです!」
 レイアは最も近い距離にいるオークに突撃し、スピアで胴体を串刺しにした。そして――
「これで終わりである」
 マスターデコイはスピアを刺されて身動きできないオークを躊躇なく介錯した。
「早くどいてください。用があるのはゴメス氏です」
 ヘルモルトは無表情で護衛のオークの腕を取り立ち関節を極める。手斧を持つことすら叶わない戦闘不能になったオークを――
「早くどいてー!」
 クロジンデの威力を高めた術式でとどめをさす。護衛は後1匹。
「ヒロインは華麗に、だゾ☆」
 リーナはソバットをオークの腹に決めて悶絶させる。そして動きの止まったオークをスウェンが『轢き』殺した。護衛のオークは殲滅し、後はボスを残すだけ。クロジンデとヘルモルトは依頼人の元に駆け寄る。
「ダメだったかー」
「死んでいますね」
 肩を落とすクロジンデ。表情を変えないヘルモルト。
「それでは報酬いただきます。お疲れさまでした」
 レイアは半包囲状態のボスオークの腹に容赦なくスピアを突き立てる。そして、
「ライジング・ニーッ☆」
 リーナが飛び膝蹴りをボスオークの顔面に見舞い、
「ここが旅の終着点。依頼人にとってもお主にとってもな」
 マスターデコイが喉元にソードを突き立てて死に至らしめた。
 後ろでは、他の仲間が依頼人の遺体を囲んでいる。
(あなたは、その生き方で良かったの? 一人で決着をつけにいって、今、この結果で満足なの? 教えて、あなたの心を――)
 ココロがいくら問いかけようと返事はない。彼女の『心』を問う旅はこれからも続くのだ。
 ゴメスは全身が血まみれで、皮鎧も剥ぎ取られていた。どのような目に合ったかは想像に難くない。敢えてリンチにされてボスオークに近づき、言葉通り命と引き換えの一撃を放ったのかもしれない。
 体は酷い有り様だったが死に顔は穏やかであった。悔いはもうない、満足した。そんな思いが垣間見える表情だった。
「それでは」
 がちん。金属音が洞窟内に響き渡る。ヘルモルトは近くに落ちていた鉈を拾い上げ、ボスオークの首を斬り落とし、それを拾い上げた。


●見渡せる丘で
「山賊達が住まう山々だよ。見渡せた方が安心して眠れるよねー」
 クロジンデがゴメスを埋葬する場所を選んだ。ローレットで数年間働いていただけあり、地形には詳しい。そこは幻想にある雄大な山々を見渡せる小高い丘である。
 ティアが皆と離れたところで目を閉じ、一人佇む。
『死者の声は聞けたのか』
「さあね」
 内なる声は、ティアにそれ以上は尋ねなかった。死者の解は彼女のみぞ知る。
 山賊という生き物は――自分勝手で自分に正直で。傲慢で豪快で。
 墓に埋めてもらえるだけ上等なはずだ。狩り、狩られる。それを覚悟して日々生き抜いている。それが山賊という生き物だ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
見事、成功となりました。

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