PandoraPartyProject

シナリオ詳細

タイマン上等カンフータワー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●古代のハグルマ
 鉄帝のあちこちに古代文明の遺産が眠っていることはご存じだろう。
 それらを発掘しては手を加え兵器利用した軍事国家。それが鉄帝である。
 故に、鉄帝を拠点とする古代遺産採掘業者、通称『ピッカー』の活動も活発であった。
 このたびローレットに依頼書を寄せてきた男もまた、そんなピッカーのひとりである。
「毎度、あんたがローレットのイレギュラーズさんかい。俺はストロング! あんたとはいい付き合いができそうだ」
 鋼の手で握手を求めた男、ストロング。
 彼が話すのは、ピッカーだけでは解決できない採掘案件であった。

「こいつを見たことはあるかい」
 テーブルにころんと置いた一枚の円盤状物体。
 直径20センチほどの歯車で、見たところ硬い木でできているようだった。
 手に持った肌触りは木材のそれだが、鉄のように重く叩いてみた印象は鋼のそれである。
 それだけではない。
 持っているとなんだか妙に気分が高揚するかんじがするのだ。
「不思議なハグルマだろう。カンフーハグルマっつーのさ。誰が最初にそう呼んだか知らないぜ」
 ハグルマを返されたストロングは、指の上でくるくると回し始めた。
「こちつは鉄帝の軍事兵器なんかに使われるシロモノさ。
 なじみの業者にこいつを納入したいんだが、あいにく俺らの事務所は他の仕事で手が足りてねえ。
 そこで、天下御免のローレットをお借りしようって寸法よ」

「ハグルマが手に入るのは鉄帝の北にある『カンフータワー』。
 これまた誰が呼び始めたのかしらねえが、俺らの間じゃこいつが通称さ。
 古代遺跡だっていうのに状態のいい建物だ。写真があるからこいつを見な」
 促されて見た写真の印象は『あちこちからハグルマの飛び出した塔』であった。
 巨大なハグルマ状の物体は建物の一部で、塔を最上階まで登っていくと例のハグルマが手に入るという。
「おっと、話はまだ終わってないぜ。この塔を登るにはルールがいるんだ。
 これまで無理矢理手に入れようと突入していった連中がいくつもいたんだが、どいつも塔から放り出されちまった」
 そう言ってストロングは新たな資料を取り出した。
 丸太の胴体に丸太の頭。太い足、球体の拳。木でできたと思しき人型の物体がスケッチされている。
 それが横一列に並び、こちらを待ち構えるように拳を突き出すという絵だ。
「俺たちはウッドマンと呼んでる。こいつを全て倒すことで、この塔は来場者にハグルマを差し出すってルールがある。
 それこそ誰が決めたルールか知らねえよ。ずっと古代の誰かさんだろうぜ。なにせこの塔にはウッドマン以外誰も居ないってんだからよ。
 そう、こいつらもまたハグルマで動くゴーレムなのさ」
 そこまで説明してから、ストロングはコインの袋を置いた。前金と言うことだろう。
「俺らピッカーはこれから先もこいつを利用する筈だ。だから依頼を受けるには約束をしてくれ。
 ウッドマンと戦って正式にハグルマを獲得してくること。余計な略奪や破壊を行なわないこと。隠し事はナシにすることだ。
 いいかい? それじゃあ、頼んだぜ」

GMコメント

 オーダー内容を要約しましょう。
 必要なのは『ウッドマン8体と戦闘をして勝利すること』です。

【ウッドマンとタワーのルール】
 以降はピッカーのストロング氏から貰った資料からの情報です。

・ウッドマンは近接格闘能力に優れ、基礎能力が純粋に高いゴーレムです。自分たちよりちょっと上、くらいの想定をして挑んでください。
 逆にとがった能力はないので、自分らしい戦い方で得意分野を押しつけていくと有利に戦えるはずです。

・ウッドマンはできる限り一対一の戦闘に持ち込もうとします。
 敵味方同数なこともあり、よほどのことが無い限り敵味方入り乱れてのタイマン勝負があちこちで起こることになるでしょう。
 (敵一体への集中攻撃作戦は別の敵に背中を晒す結果となり大変危険です)
 元々近接戦闘が得意なかたは足を止めて、射撃が得意なかたは互いに動き回りながら戦うことになるはずです。

・タワー内では毎ターン敵味方全員に【呪い】と【致命】のBSがかかります。
 回復の手間がかかりすぎるので、よほど高威力のBS&HP回復を確実にできるんでもないかぎり攻撃に集中することをお勧めします。

【アドリブ度(高)】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 特に当シナリオは戦闘描写に比重を置くため、武器の使用方法やスキル演出にアドリブをさくことが多くなります。
 アドリブをされたくない方、されると困る方はプレイングに『アドリブなし』とご記載くだされば直接的な描写を控えて行動宣言や結果の記述につとめることになります。

  • タイマン上等カンフータワー完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月06日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール
ユイ・シズキ(p3p006278)
流転の閃華
ルーザ(p3p006422)
ハイエナ
四杜 要(p3p006465)
ラルフ=オーガン(p3p006584)
人狼器官

リプレイ

●塔
 歯車だらけの塔を見上げ、『リグレットドール』シュリエ(p3p004298)は目を細めて背伸びをした。
「また妙ちくりんな塔にゃー。ハグルマで塔を作ったり不思議な力の塔があったり。相当なハグルマオタクによる物に違いないにゃ」
 シュリエのいうことももっともで、よほどハグルマ大好きじゃなきゃこんな無駄に歯車が露出した塔を作りはしないだろう。鉄帝にはハグルマばりばりの建物も少なくはないが、ここまで偏ったのは珍しい。
 『ハイエナ』ルーザ(p3p006422)が苦々しい顔をした。
(ピッカー共のガラクタ漁りの手伝いか、いいねーぇ、何でも屋って感じ。ガラクタ相手に道義も流儀もねぇもんだが、筋は通さねぇとしっぺ返しもありそうだからなぁ、あーメンドクセ)
 口には出さないものの、内心ひどく面倒そうだ。
 一方で、『バトロワ管理委員会』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)は別の観点からこの塔に目をつけていた。
「実は、カンフーハグルマは見たことがある。知人が何かの依頼で獲得したらしいが……ふむ、一対一か、おもしろい」
 ラルフは義手をトンと叩いて具合を確かめた。
「男子たる生き物には、小賢しい優位やら効率やらを投げ捨てて戦いたい時もあるのさ」
「そういうもんかね」
「そういうもんにゃー。わらわ男子じゃないけど」
「結局男子関係ねーじゃねーか」
「ええねぇそう言うの、小細工抜きの正面からのぶつかり合い。ウチは好きやねぇ。興が湧くわぁ」
 和服の袖をおさえ、額に手を翳す『特異運命座標』ユイ・シズキ(p3p006278)。
「とはいえ、相手も決して弱ない相手やし、ハグルマの為にも油断せず行きましょ」
「…………」
 低く唸る『人狼器官』ラルフ=オーガン(p3p006584)。
 ルーザもそうだが、ラルフ(オーガン)は戦闘になれていなかった。
 二人とも昔から腕に覚えはあったのかもしれないが、記憶の喪失やブランクといったあれこれが影響しているのだろうか。自分たちよりもやや強いというウッドマンたちに果たして一対一で勝利できるものだろうか。
 気がかりではあるが、しかし。
「ちょっと、わくわくする響きだよね。歯車を渡す理由はわからないけど、ウッドマンに聞いたら、教えてくれるかな?」
「どうだろうねえ。ゴーレムに喋る機能がついてるとは思えないけど」
 『髭の人』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)がやんわり浮遊しながらくるくる回っている。
「けど、相手に応えてこそ高みを目指せるんじゃないかな。物には心が無いなんて言うけれど、心を込めて作ったものには心が宿ると思うんだ」
 じぶんの髭をいじりながら回転するムスティスラーフを止めて、『解華を継ぐ者』ヨハン=レーム(p3p001117)が塔へと再び歩き始める。
「自分らしい戦い方ですか……僕は教科書通りの戦い方しかできませんが。頑張りますっ!」
 背負っていたモップを棒術でくるくる回しながら言うヨハン。
 すごくなんか言い足そうなムスティスラーフ。
「そうそう、まずはタイマン勝負を受けて……先に終わっても他を見守る方向で行きましょう。むしろ邪魔にならないように隅っこに下がる感じで」
 個別に戦うことはよくあっても、戦闘後に仲間を助けに行かないというケースは珍しかった。戦力の平均化をあえて捨てるという選択肢は、この先の戦いをかなり不利にするだろう。それを承知で選んだ彼らの選択がいかなる結果をもたらすか……。
 四杜 要(p3p006465)が背負っていた鎌を手に取り、強く握りしめる。
「先人がどのような想いでこの塔を建て、こんな敵を配したのか。師匠はこんな風に言うだろう――挑めば分かる、ってな!」

●最上階への道
 通称ハグルマの塔。元々なんのための施設だったのか、なんという名前だったのか。それすら分からぬまま、ただ『カンフーハグルマ』というアイテムを獲得するためだけの場所として認知されたこの塔。
 既に色々な人が回収に訪れているからだろうか。塔の入り口は酷く殺風景だった。
 恐らく金でできた枠がかけられていたであろう門は枠ごと強引にはがされ、塔一階には無数の像があったがその殆どがいたずらに壊されたりはめ込まれた石だけごっそり抜かれたりしていた。
 そうと分かるのは、ハグルマの塔がピッカーたちの間でそこそこ知られていて、もう色々はぎ取った後だからハグルマ回収以外に得られるものはないと言われていたためだ。ヨハンたちもそれを噂話程度には知っていた。
「ところで、ウッドマンでしたか? 持ち帰ったりできないですかね。スパーリング相手に丁度よさそうじゃないですか」
「知人も似たようなことを言っていた気がするな……トレーニングに向いている物体だというのは、まあ分かるが」
 塔は階段が備え付けられ、ひたすら上へ上へと登っていく構造になっている。
 ラルフたちは他に道など無いからと塔を登っていった。
 シュリエがあちこちをつつきながら進んでいく。
 部屋はどれも円形で、一階こそ像やらなにやらあったが二階より上はおそろしく簡素だった。
「なんにゃーここ。『部屋!』『階段!』『おわり!』みたいな。生活感とかまるでないにゃ」
「古代の塔に生活感て……あぁ、けど、作った当時はなにかしらあったんやろうねぇ」
 ユイが見た限り、建造物としての状態はとてもいい。とりあえず建てただけにしては頑丈で、とても長く沢山の人が使うことを想定しているようにも見えた。
「ちょっと思ったんだけど、何で塔なのかな」
「あ?」
 ムスティスラーフがぽつりと呟いた。
 振り返るルーザ。
「だってほら、ウッドマンと戦うだけなら一階でやればいいし、なんなら一階建てでいいでしょ?」
「まあ、そりゃ階段登らされんのは面倒だけどよ。そういうモンなんじゃねえのか?」
「意味の無いものなんてないよ。多分ね」
 ラルフ(オーガン)が少しくたびれた顔でライフルを背負いなおした。
「何となく分かるぜ。試練ってやつなんだ」
 要が水筒を開いて水を飲む。
 口元をぬぐって、最後の階段を上りきった。
「そういう意味じゃ、どこの世界も変わらねえ」
 最上階では、彼らを待っていたかのようにウッドマンが整列し、両手をがつんと胸の前で打ち合わせている。まるで手を合わせ礼をするような姿勢に見えて、要は同様の姿勢をとった。
 広く横一列に並ぶイレギュラーズたち。
「来いよ。お望み通りにしてやる」

●掛け値なしのタイマン勝負
「行きますよ!」
 一斉に武器を構えたヨハンたちイレギュラーズは一斉にフロアに散開した。ダブルブロックによる前後衛強制振り分けや事前エンチャントによる相互フォローや倒されそうになった時の交代も一切なしの、『これぞ』というタイマン勝負を挑んだのである。
 対するウッドマンたちも一斉に格闘姿勢をとったかと思うとそれぞれの相手に向かって散開。
 ヨハンの繰り出すモップの水平スイングをかがんでかわすと、腹めがけてパンチを繰り出してきた。
 腹筋を張り、モップの柄を後方に突っ張ることで衝撃を逃がすヨハン。と同時に自らに内包した電流を放出しパンチの衝撃をはねのけた。
「まだまだ行きますよ!」
 柄を返し、モップの首を足に引っかけすくいあげる形でカウンターアタックをかけるヨハン。転倒したウッドマンを更に返した柄の先で突くが、ウッドマンは丸い胴体をロールして回避。
 ヨハンはモップの柄をサッと撫でると電撃の刃を付与。薙刀状にすると、立ち上がったばかりのウッドマンへと叩き付ける。
 一方でユイは刀を鞘に収めたまま、穏やかに微笑んだまま、ゆっくりと歩いて行く。
 対するウッドマンとの距離は一定のまま、互いに平行移動を続けていた。
 ただ歩くだけではない。ユイは自らをあえて壁際に配し、一歩でも引けばそのまま押し切られるという状況の中、ウッドマンと間合いの奪い合いをしているのだ。
 刀の間合いと拳の間合いは異なる。そして壁を背にしている以上、刀の間合いより内側に入られたら終わりだ。
 ぴたり、と両者の足が止まった。
 小さな窓のはるか外。通り過ぎる鳥が羽ばたくごく僅かな音をきっかけに、両者は同時に動き出した。
 ユイ、抜刀。斜め下から切り上げるようなライン。
 ウッドマンは自らの拳を打ち下ろすようにして刀を止めると、転がるように間合いを詰めてハイキックを繰り出してきた。
 直撃コース。
 回避は間に合わぬ。
 頭蓋骨が砕けるかと思うほどの衝撃がユイの側頭部に走った……その瞬間、ユイの手刀がウッドマンの首へと叩き込まれていた。
 何かが折れる音が、鈍く響く。
 手から離れた刀が、回転しながらフロアの天井へと刺さる。
 そのまた一方。ルーザはウッドマンに豪快な斬撃を叩き込んでいた。
 ルーザの剣とウッドマンの拳がぶつかり、まるで金属同士を打ち合わせたかのように激しい火花を散らす。
「君には人より硬い腕があるんだろうが、こっちには腕より長い大剣があってねぇ」
 ルーザが狙いたかった理想の戦闘方法は、相手の攻撃を回避し、その隙をついたカウンターを用いてのヒット&アウェイ戦法……もとい一方的にちくちく殴る戦法である。(本来のヒット&アウェイは一撃離脱をさすので意味合いが異なる)
 しかしルーザの装備と技能が、彼の理想を妨げた。
 反応を落とす大ぶりな剣が、回避を妨げる装備が、大きな反動をもつ捨て身の攻撃能力が、彼の求めたスタイルと噛み合わなかったのだ。
「チッ――土に帰んな!」
 結果として剣の重量と豪快なスイングによる打撃力を振り回す形となった。
 ルーザの剣がウッドマンの右腕を切り落とした直後、激しい回し蹴りがルーザの胸を突く。
 派手に吹き飛ばされたルーザは剣を取り落とし、それでも懸命に起き上がろうとした。
(戦闘ごっこのおもちゃにやられたとあっちゃあ後の仕事にも響くぞ……)
 かすむ視界の中で、片腕を無くしたウッドマンがふらふらと歩いてくるのが見えた。

「魅せよう、我が戦闘術と魔導の全てを!」
 ラルフ(ネセサリー)は拳銃で牽制射撃をかけながら急速接近。義手の手首をひねって火炎放射装置を露出させると、火炎魔術を放射。巨大な炎の腕を形成して殴りかかった。
 対するウッドマンも真正面からパンチを繰り出し、両者拳をぶつけ合ったまま停止する。ウッドマンを覆った炎をそのままに、義手からさらなるエネルギー砲を発射した。
 咄嗟に防御するウッドマン。
 反撃の蹴りを繰り出すも、ラルフは華麗な反転スウェーによってウッドマンの背後へと回っていた。
 再びの火炎放射パンチ。零距離から突き出すように発射した火炎魔法はしかし、跳躍するウッドマンに回避された。頭上を回転し、背後へと降り立つウッドマン。しかしラルフはゆだんなく自らの脇の間を通すようにして魔術拳銃を発砲。ウッドマンを打ち払う。
 ラルフの銃弾やエネルギー砲が頭上を飛んでいく中、ムスティスラーフは転がるように戦っていた。
 足腰を労る飛行魔法(簡易飛行)が戦闘に使えるほど高性能なもんじゃなかったらしく足腰に来たが、表情はパッと明るかった。
「さあ、楽しもう!」
 腰から抜いたダブルオーラソードの尻と尻を接続させ、高速でくるくると回転させるムスティスラーフ。
 自らもくるくると縦横無尽に回転しながら跳ね回り、巧みに手足をさばくウッドマンに連続攻撃をしかけていく。
 無数の打撃を与えたその間。隙を突くようにめり込まれたキックでサッカーボールのようにはねとんでいくムスティスラーフ。
 が、懐から取り出したむっち玉を投擲。はじける毒液を腕でガードしたのを見計らって、ムスティスラーフは口を大きく開いた。
「むっち砲!」
 ムスティスラーフの口から緑のビームが放たれる。

「悪いな。これが俺のやり方だ!」
 要は草を刈るかのように大鎌でウッドマンの足をすくい上げた。
 鎌はそもそも草を刈るための道具。この大きさのものは芝を効率的に刈り取るために使われ、農民一揆等をきっかけに対人兵器として利用された。
 柄をくるくると回し石突き(刃とは反対側の先端部分)による牽制や柄をつかった防御をもってポールウェポンとしての性能を発揮する一方、薙ぎ払う際の切断力が斧や薙刀を大きく上回る。仮に切断出来なくとも強制的にひっかけられるため転倒を狙えるのだ。
 ……といっても、それをウッドマン相手に実現するのは至難の業。
 更に足をかりとろうとした直前に跳躍して膝蹴りを叩き込まれたり、拳の距離まで詰め寄って腕をとられたりといったことも多々である。
「やり方を通すだけでも一苦労、か! ――黒鴉、白鴉!」
 だが要の強みは格闘にあらず。中距離からの術式戦闘にあり。
 素早く結んだ印に応じて式神が次々と飛び出し、ウッドマンへと殺到していく。
 更に足をドンと地面に踏みつけた瞬間、飛び出した土塊の拳がウッドマンへと殴りかかった。
 吹き飛ばされるウッドマンを横目に、シュリエがひた走る。
「にゃにゃにゃにゃ――にゃ!」
 翼のように伸ばした両腕に異形の力が走り、大蛇や烏の幻影が浮き上がる。
 真正面からダッシュ&ジャンプでウッドマンの顔面めがけて蹴りを放つが、それをウッドマンは拳でガード。
 カウンターのパンチを繰り出そうとするも、足の指で拳をむんずと掴んだシュリエは人間ではおよそ不可能な関節動作で足首を200度回転。蛇が巻き付くかのような巧みさでウッドマンの胸に貫手を突き刺した。
「相変わらずよくわからんけど、どうせその姿でも毒は効くんだろー、にゃ!」
 相手を突き飛ばすように離脱。
 地面に片手両足をそれぞれつくと、浮かんだカラスの幻影を解き放った。
 ウッドマンに飛びかかるカラスの幻影。その鳴き声に翻弄されるウッドマンは、やみくもにパンチを繰り出してくる。
 が、シュリエは突きだした手のひらに霊力壁を生み出して柔らかく受け止め、衝撃を利用するように後ろへ飛んだ。
「今にゃ!」
 懐から取り出した小さな人形を床にたたき付け、手首をひねって取り出した釘を、腕そのものをハンマーにして人形へ打ち付けた。
 呪術が成立し、ウッドマンを見えない釘が貫いていく。

 走りながらライフルを撃ちまくるラルフ(オーガン)。
 距離を詰めて繰り出してくるキックが直撃し、ラルフは派手に転がった。
「覚えてないけど、以前の僕もきっと、殴り合うタイプじゃなかったんだろうね。自分でも不思議だけど、転び慣れてる感じがするよ……!」
 転がりながらもライフルをリロード。伏せた姿勢で更に撃つ。
 ヒットした弾の衝撃でウッドマンが軽くノックバックするが、油断してはいられない。
「ウッドマン。もう少し僕に付き合ってね。少し、何か思い出しそうなんだ」
 相手を中心とした円周機動を走りながらライフルを連射。即リロード。
 転がるようにして一気に距離を詰めてくるウッドマンをライフルで殴りつけ――ようとするも、打撃が空振りした。
 反撃を予想して一度かがんだらしいと気づいた時には、ウッドマンの回し蹴りが足を刈った。
 派手に転倒するラルフ。
 打ち下ろされる拳に耐えるべくライフルを翳すが、銃身が派手にへし折れた。
 続く二打目が胸を直撃する。
 血を吐き、意識をもうろうとさせるラルフに……しかし、ウッドマンはとどめのもう一撃を加えなかった。
 立ち上がり、後ろ向きに歩き、そして壁際へと立つ。
 はじめにそうしていたように、拳を打ち合わせて礼の姿勢をとっていた。
「……これは?」
「武を試したんだ」
 粗い息をしながら、要がラルフを引っ張り起こした。
 見ろ、と言われて部屋の奥を見ると、持って行けと言わんばかりにカンフーハグルマが台座に置かれていた。
 ウッドマンは壊れた者も含め、みな部屋の端で礼の姿勢をとっている。
「倒して奪う。それがピッカーたちの常識だった。だから何かしら協力して、ないしは効率的な制圧手段を使ってハグルマを手に入れてきた。けれどこの塔のそもそもの目的は別にあったんだ。戦ってみて、それがわかった」
 武には心技体の三つがあり、その全てが噛み合っている必要がある。
 ウッドマンは、それを測定するための設備にすぎなかったのだ。
「本来なら、これに気づくことはありませんでした。徹底したタイマン勝負を貫いた結果です」
 ヨハンにそう言われ、ラルフ(オーガン)はウッドマンに頭を下げる。
「ありがとう。そうだ、この歯車は、一体何に……」
 何気なく歯車を手にとって振り返ったその時。
 フロアの天井が音を立てて開いた。
 一様に上向くムスティスラーフとユイ。
「これは……」
 ラルフ(ネセサリー)が目を細めた。
「やけに遠回りなことさせると思ったら」
 ルーザとシュリエがまぶしさに目を細め、空から伸びる階段を見た。
「塔は、入り口だったのにゃ……」

 この後、イレギュラーズたちは一度引き返し、依頼人のストロング氏にハグルマを納品した。
 まさかの方法で開いた新たなる扉の先がどうなっているかは……またそのうち、分かることだろう。

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 タイマン上等と書いておきつつ、いくらでも楽ができるように隙を沢山作って置いたのですが(塔を出入りして回復したり一人ずつ入ってやられそうになったら逃げたり相互フォローをかけたり)――皆様はどれも使うことなく本当にタイマン勝負を挑まれましたね。
 お見それしました。低レベル帯の参加者も居る中『自分たちよりちょっと上』くらいの戦闘力を想定しつつもその作戦を通すのは大変度胸のいることだったと思います。
 成功条件が『ウッドマン8体と戦闘をして勝利すること』であって『すべて破壊すること』ではないところも、あえて言わずにおりましたが、見事な精神力でございました。
 よって皆様への敬意を込め、『大成功判定』としたいと思います。
 これまで自分のスタイルを模索してきたベテランイレギュラーズの皆様も、これからスタイルを決めていくニュービーイレギュラーズの皆様も、この先ますますの活躍をお祈りしております。

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