シナリオ詳細
あれは鮭だ。きっとおいしい。それ以外はどうだっていいことだ。
オープニング
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稀によくある。
川の上で竜巻が起こり、離れたところに魚が降ってくるとか。
あまたの異世界のどこでも起こりうる――ウォーカーの誰に聞いても「聞いたことがあるような――?」くらいのレスはあるし、なんなら「やったことある~」くらいいるだろう。
しかし。当事者になるというのはまた別の話なのだ。
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『あ~、食料は大目に、種類豊富に持ってった方がいいよ。飽きがこないように』
菓子をよく食う情報屋はそんなことを言っていた。
『向こう、一部の食料の現地調達、難しいから』
その通りだった。
デザストルに入って数日。一行は飢餓には陥っていないが精神的にあれだ。その――携帯食料に食傷気味だった。もう、乾いた食べ物、飽きた。
そんな中、空から、三尺くらいある鮭がびっちびっちともんどりうちながら降ってきた。
「鮭、高価だな。今」
覇竜領域デザストルの山岳地帯。安易に森に入るな、死ぬぞ。とか言われるような土地柄。基本、岩山と思っても違いない。
生鮮食料品がお高い。流通してないのだ。需要と供給の双曲線。サヨナキドリの皆さんならわかってくれるよね。
亜竜種の皆さんが丹精込めて育てた山菜がほぼ唯一の農産物。ただし、塩漬け。
岩山なので、川がない。つまり、お魚さんとは無縁の土地柄。ゆえにあの鮭は、この機を逃したら次いつ食べられるかわからないごちそうだ!
どこ産かは知りませんが季節外れにずいぶん丸々太っておいしそうですね。ひょっとして、イクラも抱えていらっしゃる?
「刺身でも行けそうだね」
一緒に結構な量の水も落ちてきている。一緒に巻き上げられた水が地面に落ち切らない時間しかたっていない――鮮度は申し分ないということだ。天然物は寄生虫が怖い? 地球世界ではないので、この世界のは大丈夫だ!
「調理して、おいしくいただこう」
食欲が、たいていの困難を解決する。
本当に鮭かどうかは問題ない。鮭に見えるのだからあれは鮭である。
ちょーっと遠近法が狂ったでかいのが混じってるかな、とか、歯があるなとか、かみつかれたら痛いかなとか、ヒレびんたとかあるかもなとか、そんなことを気にしている場合ではない。
だって、あれは、絶対おいしいから。
あれはおいしい鮭だから!
- あれは鮭だ。きっとおいしい。それ以外はどうだっていいことだ。完了
- GM名田奈アガサ
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2023年04月27日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費200RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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さっきまで乾いた砂とオゾンのにおいしかしなかったのに、いきなり生ぬるい空気と湿気を感じたのだ。
気をつけろ、上から来るぞ!
「なんで。まっ……え? いやこれ偽物で──――シャケだぁぁぁぁーーーーッッッッ!!!!」
『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)の問いはある意味哲学的である。
鯉とかスズキじゃダメなんですか?
「う〜む、空から鮭が降ってくる。普通なら驚くところなのだろうが……」
不気味なまでに快晴である。むらのない青が現実味を薄れさせる。もんどりうって降ってくる鮭はシュールレアリズムの極致。
しかし、『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)はあきらめ半分で目を細めた。
「混沌だったら、別にそんな事が起こってもおかしくないと思ってしまうあたり、慣れというものは恐ろしい」
朱に交われば赤くなる。
「ああ。覇竜でも降るんだね、鮭。時々領地でも降るんだよなァ」
『闇之雲』武器商人(p3p001107)は、空を見上げ、足元の魚の種類を確認し、そのあと、にんまり笑った。
「覇竜は水場が限られてるし、交易相手がラサだから、魚の流通量も極端に少ないはず……。こりゃいい交易品が降ってきたねぇ。ヒヒヒ」
商人である。
「酒~!? 酒が飛んでいると聞いて! 飛んでくるお酒を詰め込んで馬車に詰めて持ち帰り、夜のお酒の種類が増やすのよ!……飛んでいるの鮭じゃないの!」
そもそも音ではなく、内容が伝わるはずなのに、「さけ」という音で「アルコール飲料」を想起するほど飲み暮らしているということだろうか。
先生、『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)さんが、馬車にラガーとワインを詰め込んでます!
「俺の領地には鮭も鮫も降るんだから、ここで鮭が降ってくるくらい稀によくあるよな」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)にとっては、なくはない現実。
「へー、混沌の鮭って飛ぶのか。恐れ入ったな。しかもでかいときたもんだ。こいつらいれば貧困地域の食糧難とか解決するんじゃねぇの?」
『Stargazer』ファニー(p3p010255)は、馬車が鮭の落下衝撃で壊れないように保護結界を張った。
「しかし、この鮭でけぇなあ。1メートルくらいならまだしも3メートルもあるのは普通にマグロよりでかいんだよなぁ」
『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)の口から乾いた笑いが漏れる。
参考までに、魚をめっちゃ食うコミュニティ・希望ヶ浜情報によれば。
彼らの故郷、地球世界での鮭の最大級・キングサーモンは1メートル前後。最も巨大な例で、約1メートル半の61キロ。
今、空から自由落下してくるうちの一番でかいのは3メートル。立体なので単純計算、8倍。同じくらいの身の詰まり方と仮定すると約500キロの加速度付きだ。
当たったら普通におやばい。
「危険生物? 海産物なら海洋民にとってはもれなく食材だが?」
イズマの笑顔がさらっとしているのが逆に怖い。海の民、大体なんでも食べる。
「さぁ、季節外れの鮭パーティをやるぞ!」
幸潮は、納得がいかないのか、ルーレットからの書類をめくっている。
「今回はマトモな依頼な……うん? この依頼書、二重になってて……シャケ捕獲がメインかよクソッタレ!」
そんなことないヨー。その密書絶対に運んでもらわなきゃならないんだヨー。『この人達が持ってくる食材とか加工品、いい感じに買い上げてください』なんて書いてないヨー。と、あの、比喩ではなく胡散臭い情報屋の声が幻聴で聞こえる。道理で食料品多めにもってけなんて言うわけだ。鮭が降らなかったら、他地方からの調味料を所望されるところだった。
これからの交易の布石でオフレコ案件とかなんだろうけど、回りくどすぎる!
激高する幸潮を横目に、『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)の腹は座っていた。
彼の慈雨がまんざらでもなさそうだったからだ。
「よしきた、鮭だ! 鮭を食うぞ、オマエら!」
ならば、音頭をとる!
「最近高ェからな、食える時に食わなきゃ損だ! 魚の中じゃ鮭が一番美味い。異論は認める。人それぞれ好みあるしよ」
いそいそとドレイク・チャリオットの御者台に乗り込もうとする。
「お待ち」
武器商人が特殊支援による最適化を施した。
「これで、アイゼン・シュテルンいっぱい撃てるよ」
行っといで。と、その背を押してチャリオットから離れる。
幸潮がクウハの横に自分の体をねじ込んだ。
「ちっ! 水流があればドレッドノートを出したのに」
水は鮭から滴り落ちる水滴だけだ。クルーザーなんぞ取り出したら、アララト山の再現だ。船底痛むぞ、もったいない。
「幻想讃歌、ご機嫌斜めかイ?」
「仕方ねえ。ギフトとかで描いて決戦のバトルフィールド展開! 載せられるだけイスカンダルとゼトロスにも乗せて持ち帰んぞ! メシとカネにすっから!」
「そりゃいいねェ」
武器商人も馬車2台とドレイク・チャリオッツ2台を持ち込んでいる。
「ほら、なんかメンバーの半分くらい陸上運搬持ってるし。依頼の詳細は聞いてなかったけど、馬車がいっぱい必要な依頼だったんだよ」
きっと。
武器商人はそういって、扇子の下で笑ったように見えた。
そんな商いのやり取りをよそに、クウハはチャリオットにつながれた亜流の首筋をぺちぺち叩いていた。
「亜竜の根性見せてやれ。鮭に負ける奴は亜竜とは認めん。轢き殺せ……は不味いか。食えなくなるしな」
轢いたらイクラ以前に身が全部が潰れます。いくない。
「我(アタシ)は、神気閃光で鮭をぺちぺち叩いておこう」
「おう! じゃあな!」
ショックアブソーバーというのはチャリオットの辞書にはないのだろう。頃勝ち落ちてしまわないようにしながら、幸潮は叫んだ。
「キャロルとクェーサー連打はマスト。というかそれだけだ!」
火力はない。全然ない。
「はーい! じゃあ、私が前衛で受け止めるから、みんなは捕まえて!」
それは戦場に現れる白騎士。白いきらめきが鮭で構成された奔流を抑え込む。白馬を借る白騎士の軌跡が白亜の城砦を形どる。
いけいけ、ヴァイスドラッヘ。移植足りて礼節を知るとどこかの世界の思想家がのたまった。とりあえず、この地域の良質かつ新鮮なたんぱく質確保が平和につながるのだ!
転がってくる鮭は、ファニーの降らせた「星屑」によって勢いを失っていった。
「――つってもな、こいつら自身が動けなくなったとて、斜面を転がってくるのは止められねぇんだよなぁ」
物理法則には逆らえない。ファニーは華麗に跳躍を決めた。
(鮭に当たったら――空中で華麗にトリプルアクセルを決めながら滑落しよう)
その覚悟やよし。
(安心しろよ、着地はしっかり10.0点決めてやるから。そんでまた跳躍で戻って来よう)
地面にたたきつけられる鮭、ピンボールのように跳ね回るファニー。
ずらりと並んだ馬車やら戦車の手前で岩やらに引っかかる。重体。プレス。鮭を止められるのは鮭だけ。後は回収すればいい。大丈夫。イレギュラーズ、力持ち。
チャリオット上では幸潮。斜面ではゲオルグが回復を担い、万全の態勢で鮭回収が進み――。
すれすれのところをヒレびんたがかすめていく。
「あふっ」
慣性による転落事故を避けるため、幸潮、あえて流れに身を任せるスタイル。
反作用でチャリオットが大きく傾く。横倒しからの滑落。傾斜足場、砂礫。鮭。スラローム。亜竜ライディング。
「――まあ、万が一の時は幸潮が緊急脱出装置用意してっから大丈夫だろ」
「ああ、そうだな」
幸潮いうところの緊急脱出装置が、「クウハを投げ落として足場にして二段ジャンプ、バイクに騎乗して逃亡」であることを、クウハだけが知らない。
「ははは」
だが、クウハが
(機能しねェなら俺が幸潮を抱えて飛行する事で脱出――『あ〜、でも俺包丁以上に重いモン持った事ねーんだ。運搬性能もないしな? だから落としちまったら悪ィ、事故だよ事故』)
と、真っ先に落とす気満々なのを幸潮も知らない。
「ははは」
――亜竜は頑張った。決死の思いで踏みとどまった。まさしく意地を見せた。
谷底に転落しながら登り続ける男女なんて地獄ルートは解放されなかったのだ。
「ハッハァ!てめーはうちの下がお似合いだぜーっ!――となるはずだったのにな」
「なんか言ったか?」
「いや?」
「――まあ、万が一だからな。真の亜流魂を見せてもらったからいいか」
「なんか言ったか?」
「別に?」
前線が引かれたなら、後方はきちんと支援する体制を整えねばならないのだ。前線で勝利したが本陣壊滅してましたというのは割とよくある話。世知辛いね。
「――イズマ、預かっていてもらえるだろうか」
筋骨隆々の男の手にはやわらかく曲がりくねる無害なねこたんとふわふわ羊さん。
戦う男には、守るべきものにつかの間の別れを告げるというルーティンが存在する。
「ああ、もちろん――」
「ジーク、おとなしくしているんだ。もちろんねこたんたちも――ああ、もうファニーが張ってくれているのだな。では漏れがないように」
丁寧にキッチンスペースを保護する結界を張るゲオルグは真剣そのものだ。ファニーの結界との共鳴効果で半径100メートルをカバー。とった酒をどれだけ積み上げても問題ないスペースは確保された。バーベキュー会場には十分だ。
「終われば私は鮭を攻撃して倒す役目を引き受けよう」
それを横目で見つつ、イズマは鮭の解体に専念する。おいしい料理は丁寧な下処理が不可欠なのだ。
鮭を洗い、ヒレを切り、腹を裂いて、筋子や白子や諸々を取り出す。腹も洗って、頭や骨を取る。
(とにかく切る……!)
どんぶち、ごき、ぶつ。
旋律を導く細剣がリズムを刻んでいる。スクラッチのような音がする。
何しろ鮭――のようななにか――なので、包丁では文字通り歯が立たない。剣を使わざるを得ないのだ。骨身を断つという用途から行くと間違ってはいない。
やがて、ぽつりぽつりと鮭を大量に持って料理作業に移行し始めて、気が付いたらみんな保護結界の中にいるのだ。
「さて、肝心の料理だが、俺様は料理ができねぇ。代わりに『混沌米(コシヒカリ)』を持ってきたから炊飯でもするか。まぁ、指示出してもらえれば手伝えるから適当に指示くれ」
ファニーがそう言って、かまどに火を入れた。ごはん。鮭もいるけど、ご飯もいる。
「しかし鮭か」
誰かがそう言いだした時、周囲は何となく息をのむ。そこに、食のこだわりによる不毛の戦いが発生する場合があるからだ。
取るに足りない個人の感想。それがゆえにそれぞれが積み重ねてきたバックボーンが透けて見え、容易に譲ることができない土俵にいつの間にか上がっている自分に気づく。
「単純に塩を振って焼くだけでもいいし、フライにしてもいい。飯の上に乗せて出汁をかけて茶漬けにしてもいいし、刺身で食べるのもいい」
義弘は、ふっと笑った。うまいものの前では鋭利な目元も幾分緩む。
「――こうしてみると鮭は万能な食材だな。落ちてくるのだけは解せないがよ」
もんどりうって落ちてくる鮭を戦鬼暴風陣でさばいていたのだ。少しでも加減を間違えば鮭がミンチと化す――いや、それはそれでサーモンパテとかイケたのでは――とにかく、四散させないよういい感じに窒息させて鮮度をキープで〆た義弘さんは一杯食べていい。
「我(アタシ)が好きなのは三平汁かなァ」
武器商人が話に乗る。
「味付けは出汁と塩漬けにした鮭の塩味だけでね、根菜や蒟蒻がたっぷりで美味しいんだ」
そんなことを言いながら鮭を塩に漬けて、その間に他の鮭の処理したり根菜を切ったり。手際がいいな。さすが自家製食品加工物を取り扱っているギルドの元締め。
「更にここには何故か黄金海鮮出汁がある」
イズマが持ち込んだ出汁を見せると、武器商人も笑顔を浮かべて自分が持ち込んだ分を見せる。わかってるではありませんか。
ということは。使用量に大分余裕ができた。ならば。
「――出汁茶漬けやあら汁もいけるんじゃないか?」
それ、無限にお酒が進むや~つ。
「新鮮な鮭はどう料理しても美味いだろう。シンプルに焼いた鮭にバター醤油をかけて食べるのとか良い」
ゲオルグ、食生活が希望が浜ナイズしている。
「ご飯があるならば、ほぐし身にして混ぜ込んで、鮭おにぎりとかにしておけば持ち運びやすいし後でも食べられるな」
天才の方ですか。お米は炊けています。ファニーが炊いてくれました。
「……へー、鮭だけでもこんなに沢山料理が作れるんだな」
当のファニーは、大ぐらいの面目躍如。あれもこれもと出てくるものみんないただき、舌鼓を打っていた。
「そうそう、その上でだ。クリーム煮、ポキ、鮭フライ、照り焼き、竜田揚げ……なんでも作ってやるから好きなモン言ってくれよ」
クウハからやる気がこぼれて光っているように見える。
「メインはやっぱ寿司だよな。米に使うのは赤酢がいい。米酢より味や香りが良くてまろやかだ」
「いいねぇ!」
彼の慈雨が、その様子に柔らかく目を細めた。
準備が進む中。
「うふふ、この食前酒はこの後飲むお酒を美味しくする効果があるのよ!」
レイリーは、秘蔵のワインをあけた。
「それじゃあ、レイリー=シュタイン! ビールを一気飲みしまーす!」
ビールは、のど越しを楽しむ飲み物です! 豪快に喉を動かし、泡を鼻の頭にくっつけてあおるレイリーは、ぷっはぁぁぁと人生をかけるに値する息継ぎをした。
「みんな、わたしの酒を飲んで―っ!」
「俺の酒も、まあ、自由に飲んでくれ」
レイリーと義弘。見かわすひとみ。言葉はいらない、打ち付け合うグラスがあればいい。クッソ、酒呑みってやっぱ最高だな!
料理は、できた端からイレギュラーズ野原に収まり、グラスが回り、ちょっと待ってろと魚を作りに誰かが立つのでせわしない。
「濃い味が好きなコには味噌漬けにして鮭を焼いてあげようね」
あっさりとした刺身の後にいいだろうと、武器商人がキッチンに立っていく。数歩歩いたところで振り返った。
「旅の楽しみのひとつとして燻製器を持ってきてたから、お酒飲みたいコにはスモークサーモン作ってあげる。クリームチーズと一緒だとまろやかで美味しいよね」
歓声が上がった。
「幸潮、美味しいわねー! ラガー? ワイン?」
この一杯のために生きている。次の瞬間は別の一杯のために生きている。
「酒か、ありがとさん、レイリー」
グラスを受け取る幸潮に、レイリーはどうしたしまして。と、微笑んだ。
「馬車にも鮭積んであるわ。好きなのあったら簡単なものに限るけど作るわよ」
「なら、後で二人で炙りを頂こう。チーズを乗せたら、いい夜酒の共になるからさ」
「あぁ、いいわね、チーズ載せてあぶるの。一緒に楽しみましょ」
「ああ、いい感じにエフェクトをつけよう。私は料理はできんから」
幸潮は、うくくと笑った。
「さっき、ファニーが食べていた寿司にもかけてやったぞ。実際よりうまく感じていてくれればいいんだが。――江戸前寿司っていいですよね」
さすがに日付が変わる前にはお開きにしないと。ここ岩山の中腹だし。酒飲んで転寝したらイレギュラーズでも普通に体調は崩す。任務中だしね。
「……ごちそうさま。最高に美味しかったな!
イズマは満ち足りた笑顔を浮かべた。
「食べきれない分は鮭とばとか保存食に仕込んでお土産にしよう」
「そうだね。燻製はもう十分だ。クウハーぁ、鮭とば作って」
武器商人はあらん限りの鮭料理のレパートリーを披露したクウハに手を振る。
「いいな。水の精霊に協力させて、塩で処理した鮭から水分抜きとらせりゃ出来るだろ」
レイリーの馬車にはファニーの友人への土産など売らないものが積まれた。
何とか押し込み、ご満悦のファニーが言った。
「おっと、その前に依頼を片付けないとな。忘れるところだったぜ」
ああ、そういえば。と、一同は顔を見合わせた。鮭の脂でお互いの口がつやつやだ。
そうそう、依頼は密書を運ぶというものだった。だが、イレギュラーズには確固たる自信があった。
持ち込んだ馬車やら戦車に乗せられるだけ乗せられた鮭。
とってつけたような依頼によって、それがいい感じに彼らの懐を潤してくれる何かに替わることを。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お待たせです。リクエスト、ありがとうございました。
書いてて鮭が焼きたくなってつらかったのをお伝えしておきます。
ゆっくり休んで、次のお仕事頑張ってくださいね。
GMコメント
田奈です。
依頼先に向かう途中で、携帯食料に飽きてきた頃。空から鮭(っぽいモンスター)が。
いいんじゃないですかね、おいしく食べれば。ほら、英気って大事ですし。
●成功条件
皆さんがおなか一杯鮭を調理し、食べることができれば成功です。
●地形・岩山の緩やかな斜面
普通ならどうということはありませんが、ゴロゴロと1~3メートルの鮭が降ってきます。当たったらシャレになりませんので華麗に回避しながら攻撃してください。
回避ファンブルすると、ギャグ的に滑落します。命に別状はありません。
どうやら広範囲に降っているらしく、危険生物さんたちも他所でそれぞれお食事タイムに入っているので、煮炊きのいい匂いがしても襲ってきません。天の恵みです。鮭をわかち合いましょう。
●鮭――以外の何だって言うんだ×たくさん
多分、危険生物じゃないでしょうかね。まっとうな漁師は取らずに逃げて、ローレットに連絡します。ですが、今は些末なことです。
数匹なら、駆け出しパーティに回される程度の強さです。
断末魔なので死に物狂いですが、食欲に目がくらんでなければ皆さんの敵にはなりません。連携したりしないので、各個撃破してください。
足元でビチビチ:崩れ、泥沼付与攻撃
頭からがぶがぶ:停滞 呪縛付与攻撃
ヒレでびんた:致命攻撃
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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