PandoraPartyProject

シナリオ詳細

くまぁさんと森いちご

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●森いちごを摘みに
 ある晴れた日の午後。空気は澄み、風は爽やか。ちらちらと地面に落ちる木漏れ日が眩しい。
 イザベルは空っぽのかごを抱きしめて、スキップをしたい気持ちを押さえ、森の奥へ進んでいた。
 今頃、この森に生える「森いちご」は収穫のときを迎える。
 森の近くの村に住むイザベルはこの森いちごを潰してジャムにし、街に卸していた。村では森いちごを使ってスイーツを作る者は多くいたが、中でもイザベルの作るジャムは若いのに美味しいと街でも評判だ。
(なにより、街からトーマスが買いにきてくれるもの!)
 金色の髪、スマートな物腰のトーマスはイザベルの作るジャムも、トーマス用に用意しておいたジャムクッキーも笑顔で受け取ってくれる。それがイザベルには何よりも嬉しい。
 逸る心を押さえ、イザベルは森いちごを探す。
(みつけた)
 つやつやと光る赤い森いちご。イザベルは果実に傷をつけないように丁寧にもぎ取っていく。
 その時、遠くの草むらががさがさと動いた。イザベルが顔をあげると、そこにはぬいぐるみのくまのようなもっふりした大きな生物が10体ほどいた。
 10体がそろって両手を上げる。
「くまぁ!」
 その口には凶暴そうな牙が生えていた。

●森のくまぁさん
「幻想の郊外にある森でモンスターが現れたのです。これを退治してほしいという依頼が近隣住民から寄せられました」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が、皆を見て真剣な顔で話し始める。
「出たモンスターはくまのぬいぐるみによく似た『くまぁ』というモンスターなのです。茶色やピンクなど可愛らしい色の外見をしているのですが、騙されては駄目なのです」
 そう言ってユリーカは自分の口を指し示した。
「凶暴な刃でなんでも食べてしまう、困ったモンスターなのです」

「くまぁは全部で10体。大きさは2メートルくらい。ふわふわの体でどすんとぶつかってきたり、凶暴な刃で噛みついてきたり、近くにある木を折って投げユリーカします」
 そのふわふわ加減はぬいぐるみにそっくりだとユリーカは言う。
「くまぁを倒したら、近くに生えている『森いちご』を収穫し、村のイザベルさんという人のところへ行ってほしいのです」
 19歳になるイザベルは森いちごの収穫中にこのくまぁに会ってしまい、足を怪我してしまったのだと言う。
 ところが、この森いちごのジャムを街に納品する日が迫っていると言う。
「どうしても納品したいのだそうです。少しお手伝いもしてあげてくださいませんか」
 そこまで言って、ユリーカは笑顔になった。
「くまぁを無事に倒したら、森いちご狩りを楽しめるとのことなのです。森いちごはそのまま食べても美味しいですが、村人に頼むと色々なスイーツにしてくれるのです。森いちごパーティなのです」
 是非、パーティまで楽しんできてほしい、とユリーカは日頃忙しい冒険者を思いやり言うのだった。

GMコメント

 さとう綾子と申します。よろしくお願いします。いちごは好きですが、テディベアは大好きです。

●成功条件
 モンスターの討伐+森いちごパーティを楽しむ

●地形
 森(戦えるだけの開けた場所です)
 森いちごは探せばすぐそばにたくさん生えています。

●敵の情報
 『くまぁ』10体
 うごきはのっそりもったり。ですがすごいパワーです。一応くまです。
 ぶつかったり、噛みついたり、近くの木を投げたりします。毛はもふもふです。

●森いちごパーティ
 摘みたていちごをたっぷりつかったパーティを楽しみましょう。
・定番森いちごのショートケーキ
・甘酸っぱくて美味しいいちごタルト
・焼きたてスコーンに、濃厚クロテッドクリームと森いちごジャムを添えて
・ミニパンケーキにたっぷり生クリームと森いちごジャムを添えて
・イザベル自慢の森いちごのクッキー
・森いちごのスパークリングワイン(未成年はご遠慮ください)
・森いちごのジュース
・紅茶(ストレート、ミルク、ジャム入もおすすめ)
※自分でお菓子を作りたい方もどうぞ。イザベルの家のキッチンを貸してもらえます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • くまぁさんと森いちご完了
  • GM名さとう綾子
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
幻夢桜・獅門(p3p009000)
竜驤劍鬼
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
メイ・ノファーマ(p3p009486)
大艦巨砲なピーターパン
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス

リプレイ

●いざ行かん、森いちご!
 ある日、森の中。
 春らしい青空の下、森の若葉はさわさわと風に揺れる。気持ちのいい日だ。
 『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は皆の後ろから、風に髪を揺らして目を細めた。
(くまぁを見るの初めてだから……少し楽しみ……)
 ふわふわだと聞く。期待もしてしまう。レインはすう、と息を吸い込んだ。
(いちごの森も……いい匂い……終わったら……いちごジュース……飲みたいな……)
 こんな美味しそうな匂いのいちごなら、ジュースもさぞかし美味しいだろう。
レインのすぐ前を少しだけ浮足立った歩幅で歩くのは『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)。紫がかった黒の尻尾がぱたんと揺れている。
(イザベルさんの為にも、くまぁさんを何とかして森いちごを確保しましょ)
 蜻蛉の脳裏には村で見送ってくれたイザベルの笑顔が映る。申し訳なさそうな顔をしているイザベルを蜻蛉は安心させてあげたかったのだ。
「うち、いちごが好きやの……そのままいちご狩りさせて貰えるやなんて嬉しいわ」
 尻尾を揺らす。イザベルは少し驚いた顔をして蜻蛉を見たものだ。
「美味しいものの為やったら、なんのその。お仕事頑張りますよって」
「イザベルさん、お大事に」
 イザベルに紳士的に優しく声をかけたのは『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)。
「俺達でくまぁ退治と苺の採集もしてくるから、安心して待っててほしい」
 深々と頭を下げるイザベルをキラキラの瞳で眺めたのは『新緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)。
(イザベルさんからは恋の予感がするのです。恋する魔法少女としては応援してあげたいのです!)
 リディアはぐぐっと握りこぶし。これは黙っていられない。
 というわけで。
「それにしてもくまぁさん……見た目は可愛らしいのに凶暴なのですね」
 リディアは森を歩きながら、とても神妙な面持ちで言う。
(私のカインさんは可愛いけど無闇に暴力を振るったりしないのに)
 カインさんはリディアの大好きな白いくまのぬいぐるみである。
「くまぁさんが改心するかわかりませんが、懲らしめる必要はありますね」
 その言葉に大きく頷いたのは『大艦巨砲なピーターパン』メイ・ノファーマ(p3p009486)。
「おしおきしておせっきょうしなきゃね」
「お説教」
「ボクがめーっ! て、おせっきょうしたらきっと解決だよ!」
 むむむ、と考え込む『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)。
(見た目が愛らしくとも人に害を成す獣ならば駆除しなければなりません)
 そう、愛らしくともこれは駆除。だからこそ、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は決意する。
(食べるなら、食べられることも、覚悟する……それが、自然の、掟ですの)
 すべては弱肉強食。苺を食べるなら、自分も食べられる可能性があるのだ。
(ですから、私も、覚悟しますの……皆様の、森いちごパーティを、まもるのは、わたしの、自慢の、つるんとしたゼラチン質のしっぽですの……)
 ノリアのしっぽは美味しそうである。ちょっと手を加えれば、絶品間違いなしという、なめらかさ。
 ノリアが覚悟を決めていると、イズマが超聴力でくまぁの動く音を聞き始めた。目をつむり集中すれば、草の上、なにやらもふもふとしたものが動くような音がする。
(……くまぁも森いちごが好きなのだろうか。独占するつもりはないから許してほしい)
 透視で森の木々の奥を見れば、少し離れた場所、くまぁが見えた。
「あちらですね」
 イズマは皆を先導するようにゆっくりと歩を進める。いた。
 ぬいぐるみのようなふわっふわのくまが十体。森いちごをむしゃむしゃと食べている。
「おいおい、何かすげぇのがいるじゃん。こんなのがうろついてたらそりゃ怖いだろうな」
 少し呆れた口調で『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3009000)が言う。くるりと一匹のくまぁが振り返った。
「くまぁ?」
 途端、イズマのエネミーサーチに反応が現れる。くまぁは続々と森いちごを食べるのを止め、立ち上がる。
「くまぁ……!」
(恵みは皆で分け合うもんだが、森いちごよりこっちの方に興味があって、しかも問答無用で襲い掛かってくるとあっては仕方ねぇ)
 手に持つは大太刀、破竜刀。構える。
「全部まとめて斬り倒して森に還してやるぜ」
 獅門はにやりと笑う。
(そして俺はパーティでたらふく食う。いざ行かん、森いちご!)
 森いちごを巡る戦いのはじまりだ。

●くまぁさんを懲らしめる
 皆の前に立ちふさがるは、トール。くまぁを見据え、名乗り口上。
「くまぁさんに人間の言葉って通じるんでしょうか……えぇっと、こ、こっちだクマ~! クマァ~~~!!」
 ちょっぴり照れながら両手を掲げて威嚇のポーズ。
 一瞬の沈黙。
「くまぁ!!」
 くまぁたちも威嚇のポーズ。無事、トールには興味を引けたようだ。聖躰降臨をして盾となる。
 メイはファンブルを下げてビーチパラソルレーザーを構え、様子見。
「どっかーんっていっちゃうからね、謝るなら今のうちだよ?」
 イズマは森いちごが傷つかないように保護結界を張った後、ソリッド・シナジーを付与。獅門は一気にくまぁたちとの距離を縮める。
(そんじゃ、先ずはくまぁ退治といくか。美味い森いちごを堪能するためにも頑張るぜ!)
 繰り出すは覇竜穿撃。バッドステータスとダメージを与えたところで、リディアが神気閃光を放つ。
「くまぁさんの命まで取ろうとは思いません。森にお帰りなさい」
 苦しいのか痛いのかくるくると回るくまぁたち。
「あらまぁ……ほんまに、ふわふわでぬいぐるみがそのまま大きゅうなったみたい」
 口を押さえ、驚く蜻蛉はメイデンハートを自己付与後、殲滅兵団を。
「少しでも、よお当たりますように」
 ノリアは空中親和(強)で空へと泳ぎだす。大海の抱擁に身を委ね、溟海のひそめきに耳を傾けると、くまぁたちを見下ろし、全力でのれそれアピールを始めたのだ。
 のれそれ――それは、彼女のしっぽで作る珍味。淡白な中にほんのりとした甘みを含むその味わい……その味を想像しただけで、よだれが出てくるのは間違いなしの美味である。
「食べるなら……わたしを、狙うと、いいですの!」
 ノリアはくまぁたちの食欲を刺激して盾となったのだ。トールと威嚇し合うくまぁたちと、ノリアを食べたくて仕方ないくまぁの二種類が出てくる。
 そんなくまぁの足止めを後衛から行うレイン。糸切傀儡でくまぁの足元を狙う。
 さて、くまぁたちはくまなので動きが遅い。ようやく攻撃しようと思ったときにはもうイレギュラーズたちの術中にハマっていた。
 トールに殴りかかるくまぁは足が動かなかったり、ノリアを攻撃しようとするくまぁは何しろノリアは空なので手が届かなかったり。仕方なくめきめきと木々を抜いていくくまぁたち。
(木たちには、かわいそうですけれど、のちのち、村のかたがたが、加工してくれることでしょう)
 ノリアは木々の隙間を泳ぐ。ぶん、と木が投げられた。腕をかすめる。血が滲んだ。
「見た目はかわいいのに木を投げるとか危ないことしたらめっ、ですよ!」
 怖いよ~と蜻蛉にしがみつきながらリディアが言えば、蜻蛉も、
「可愛らしい毛並みに似合わず、怖いくまぁさんやこと!」
 木を抜くことさえ許せないのはイズマだ。遅れて木を抜こうとするくまぁをイズマは豪鬼喝で吹き飛ばす!
「森いちごも他の木も傷つけさせない!」
 ころころと吹き飛ばされて転がっていくくまぁは可愛いのだが、またこちらへやってくる。
 とは言え、勝敗は決したと言ってもいい。トールの盾は蜻蛉によって確実なものとなっていくし、メイの聢唱ユーサネイジアで「おしおき」をし、獅門の猪鹿蝶が翻り、リディアの神気閃光は広範囲にダメージを浴びせ、レインのダイアモンドダストが舞う。くまぁは次々と倒れていく。
 倒れても死を免れたくまぁもいる。ノリアが慎重に降りてくるのと同時に獅門は三途渡守で生死を確認していく。死んだくまぁは丁寧に霊魂を成仏させるが。
「まだ生きてるのはどうする」
「確実にトドメをさしましょう。これもイザベルさんと森いちごのため! お命頂戴するクマァ~~~ッ!」
 トールが細く伸びた刀身をくまぁに突き刺そうとしたとき。
「だめ!」
 メイがその前に立ちはだかった。
「くまぁさんたち、ちゃんと座って! めーっ! だよ!」
 動物疎通と説教の複合技で三匹のくまぁが正座する。メイのお説教タイムだ。
「もう人を襲ったらだめだからね、いい?」
「くまぁ……」
「わかってくれればいいんだよ」
 うんうん、と満足そうにうなずくメイ。
「次は人より森いちごにしときな。その時は一緒に食えると良いな」
 獅門も見逃してやるかという風情。かくて三匹のくまぁはしおしおと遠ざかっていく。途中、くまぁの子どもだろうか、子くまぁがひょこりと顔を出し、遠ざかるくまぁに紛れた。
「あっ」
 トールが小さな声をあげて、持っていたドーナツをあげてみる。子くまぁはおっかなびっくりトールに近づくと、ドーナツをそっと咥えた。
「くまくま」
 まるでありがとうと言うように、くまぁたちと帰っていく子くまぁ。
「もう人を傷つけたら駄目ですよ」
 トールはそれを見送った。

●森いちごパーティへ
 くまぁたちが食べた後だというのに、森いちごはあたり一面にあった。イザベルの分と自分たちの分を摘んでもまだ残る。摘むと指先に甘い香りが漂い、蜻蛉は思わず笑顔になる。
(ええ匂いやわぁ)
 そんな中、倒れたくまぁを検分しているのはイズマだ。
(毛とかを持ち帰れば何かに使えるか?)
 なにしろ毛はふわっふわだ。くまぁに手をあわせてから毛を削いでいく。
(ぬいぐるみを作ってみるのもいいかもな)
 そんなことを考えていると、ノリアがイズマの手元を見ていた。
「どうした?」
「お肉を、持って帰れないかと、思いまして」
「肉?」
 イズマが意外そうな声をあげる。ノリアはにっこりと頷いた。
「クマ肉のシチュー……甘いものと、一緒に食べたら、美味しいと、思うんですの」
「なるほど」
 イズマは毛を削いだところのクマ肉をいくらか失礼する。
「こんなに摘んじゃった」
 リディアは籠いっぱいの森いちごを前に笑顔だ。メイも幸せそうに、レインもはにかみながら摘んだ量を見せ合う。
「これだけありゃ十分だろ、村に戻ろうぜ」
 獅門の声で皆は戻ることに。さあ、森いちごパーティの始まりだ。

 いいお天気なので、パーティは外で行われることになった。メイはいいことを思いつく。
「ボクのビーチパラソルレーザーを開くよ」
 村人たちと机や椅子を一緒に準備しながら、ビーチパラソルレーザーを日陰としてさしかければ、素敵なパーティ会場の出来上がりだ。
 イザベルは沢山の森いちごに何度もお礼を言うと、ジャムとクッキーを作りに家へ。他の村人たちもイレギュラーズたちをもてなすために大慌て。
「あらぁ、クマ肉も。煮込むと美味しいのよ」
 人の良さそうな婦人がノリアが持って帰ってきたクマ肉に笑顔になる。
「トマトのシチューにしましょうねぇ。ちょっと待っててちょうだいね」
「ありがとうですの」
 リディアはイザベルのお手伝いへ。イザベルは足を怪我している分、どうしても作業が遅くなる。ジャムを作るために煮込む鍋を取りに行くのも大変そうだ。
「鍋なら私が取ってきます」
「ありがとう、その一番大きな鍋をお願いするわ」
 リディアが鍋を持ってくれば、二人で一緒に森いちごを洗って。それからたっぷりのお水で森いちごを煮詰めていく。ふわりといい香りがイザベルの家中に広がる。
 イザベルの代わりに時々鍋をかきまぜながら、リディアはにっこり。
「トーマスさんに会える日が楽しみですね。喜んでもらえるように、私も頑張ってジャム作りのお手伝いしますね」
「ありがとう」
 ほんのり頬を染めて礼を言うイザベル。リディアはけして出しゃばらず、イザベルのお手伝いに徹する。
(お客のお目当てはあくまでイザベルさんの森いちごジャムだもの)
 そうこうしているうちに、他の村人たちが用意してくれたジャムやスイーツが続々と机の上に並べられていく。最後に先程の婦人がクマ肉のシチューを鍋で持ってきてくれれば準備は完了だ。
「さあ、召し上がってくださいな!」
 イザベルも窓越し、ジャムを煮詰めながらにこにことこちらを見守っている。
 紅茶が注がれ、各自に行き渡る。勿論、森いちごのスパークリングワインも、いちごジュースも。
 去年、成人した獅門はちょっと得意げだ。
(このすぱーぐりんぐわいんも飲めるってことだ! やったぜ!)
「無事に終わってお茶会できてよかったです。お疲れ様でした」
 蜻蛉が優雅に皆に頭を下げれば、イズマは村の人々へと笑顔を向けて。
「お言葉に甘えて楽しませていただきますね」
 それが合図。
「乾杯!」
 乾杯をすると獅門はスパークリングワインをくいくいっと。
「……甘くてしゅわしゅわしてる事しかわからねえ」
 がっくりと肩を落とす獅門。お酒はまだ早かったということだろうか。
(菓子食うかぁ)
 一方のメイはジャム入りの紅茶もスパークリングワインも!
「おいしいね!」
 存分に欲張って、いちごのショートケーキにいちごのタルト、生クリームといちごのジャムたっぷりのパンケーキも。
「トールちゃんも、はい、これもはい!」
 ジュースとパンケーキを目の前にとんとん、と置かれるトール。
「ありがとうございます」
 トールはにっこりと笑ってパンケーキにたっぷりジャムをつけ、一口。
「もぐもぐ……わっ! 甘さが口いっぱいに広がって……頬が落ちる美味しさというのはこの事を言うのですね!」
 ぱあっと笑顔になるトール。美少女?の笑顔はそれだけで場を明るくする。
 飾ってあった森いちごをそのまま一口食べてみるのはイズマ。
(森いちごをそのまま食べるのも美味しいな)
 飲み物は紅茶を選び、スイーツはスコーンを。クロテッドクリームにジャムを添えて。
(うん、スコーンとジャムがよく合ってるな)
 横でやはりスコーンを頬張っているのは獅門。
(スコーン美味ぇ。森いちごの甘酸っぱさとこのクリーム最高か?)
 美味しければ次のスイーツにも手が伸びると言うもの。
(クッキー美味ぇ! 手軽に食べられるしこれは貰ったら嬉しいだろうな)
 ストレートの紅茶にミニパンケーキをいただくのはリディア。
「おいしそう」
 丁寧にミニパンケーキを切り分けて、一口。たまらず笑顔が溢れた。
 蜻蛉はジャム入りの紅茶と森いちごのクッキーを。
「いちごにいちごを重ねて、なんて贅沢なんやろか。ええ香りやわ」
 見た目、香りを楽しんでからさくりと一口。ふわっと笑顔が漏れる。
「お菓子もしっとりサクサクしとります、美味しいわぁ」
(いちごの、甘さで、砂糖漬けみたいに、なってしまいそう……)
 夢見るように思うのはノリア。だからこそ。
(くま肉のシチュー……)
 そう、このトマト煮のこっくりとした味があれば。
(きっと、もっと、いちごが、いただけますの!)
 勿論、シチューも美味しいお味。蜻蛉はそれを見て微笑む。
「街でくまさんの縫いぐるみを見かけたら、思わず今日の日のこと思い出してしまいそう……んふふ」
「ですね」
 リディアも合わせて笑って。
「イザベル自慢の森いちごのクッキー……少しお持ち帰りしてもよいかしら?」
「うちも。美味しかったから食べさせたい人がおるんよ」
「ボクも、ボクも! てんちょーへのおみやげにしよう」
 リディアの声に蜻蛉とメイが声を合わせれば、イザベルは「もちろん、どうぞ」と笑顔になる。
 そんなイザベルのすぐ傍でゆっくりとジュースを味わうのはレイン。
「クッキー……食べたことないかも……ふわふわするいい匂い……」
「それなら食べていって」
 イザベルに勧められるままクッキーを口にすれば、あたたかくてサクサクでちょっとホロホロっとしたクッキー独特の食感。「美味しい」とレインは微笑む。
(イザベルの大切が詰まっていて……あたたかい気持ちがして……だから……大事に、ゆっくり食べる……)
 そのせいか、少しだけレインは食べるのが遅いようだ。イザベルはジャムを煮詰め終わったのかにこにことレインとお喋りしてくれている。
「僕は海のものだから……冷たいものばかり飲んだり、食べたりだけど……冷たいのばかりじゃなくて……あたたかいの作ってみたい……」
「じゃあ、クッキーを一緒に焼いてみる?」
 イザベルはレインを誘い、二人でクッキー作りを。作り方を教わりながらメモを取るレインに、イザベルも笑顔でクッキーレッスン。
 焼けてきたときからいい匂いがするクッキーにレインは笑顔になる。
「出来上がり……嬉しい……」
 レインが皆にクッキーを配るところで、日も落ち、そろそろ帰る頃。
「今日は来て良かったぜ!」
「おいしいお菓子を作ってくれてありがとう」
「ご馳走様でした。トーマスさんにも美味しいジャムを届けられるといいですね、イザベルさん」
 獅門とメイとトールが口々に言い、イザベルに手を振る。
「今年も良いジャムを納品できると良いな。応援してるよ!」
 イズマが笑いかける。イザベルは何度もイレギュラーズたちに頭を下げて。
 こうして、小さなひとつの事件が終わったのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度はご参加ありがとうございました!
 個性的な皆様を書かせていただき、とても楽しかったです。
 くまぁをだいぶ弱く設定していたため、戦闘は甘い判定となりましたが、その分甘い森いちごパーティを楽しんでいただければ幸いです。
 またご縁がありましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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