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シナリオ詳細

<天牢雪獄>魔将の離反

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●魔将の憤懣
(……やはり、つまらぬ)
 グロース師団の拠点。魔種リアオ・グアンは、心中に不満を溜めていた。武人肌である彼にとって、性に合わない任務が続いたからだ。
 その切っ掛けは、難民キャンプの襲撃だった。師団には何か狙いがあったのかも知れないと思い、また軍人である以上は命令に従い襲撃を試みた――が、そもそも力なき者を襲撃するなど、武人たる誇りを持つリアオにとっては気に食わない任務だ。
 難民キャンプの襲撃は、彼の前に立ちはだかった一人の男と、その救出に駆けつけたイレギュラーズ達によって失敗した。その後に命じられた任務が、鉄帝の地下道にやたらゴテゴテした巨大カブトムシの天衝種、強化型フルアーマー・オートンリブスを送り込んでいくだけの任務だった。元々天衝種が好きではない上に、自分で戦う機会が皆無だったことが、その不満に拍車をかけた。難民キャンプ襲撃を失敗した懲罰かとさえ考えたほどだ――もっとも、それ自体はあながち外れでもなかったのだが。
 さらに、グロース師団兵や帯同する釈放囚人達の素行の悪さが、リアオの不満を憤懣と言うレベルにまで押し上げていた。
(このようなことをするために、儂は魔に転んだのではない!)
 リアオは、新皇帝バルナバスの即位の後に反転した。そうした経緯もあった故に新皇帝派に加わったが、伝え聞く新皇帝派の所業には首を捻るところが少なくなかった。リアオが命じられた難民キャンプ襲撃も、その一つであったろう。さらに、任務を命じてきた上司ツアオ・トンとソリが合っていなかったこともある。
 憤懣を爆発させそこまで思い至ったリアオがまず思い出したのは、難民キャンプ襲撃の際に一人立ちはだかった足代 理人(あじろ りひと)のことだ。呼び声によって狂化し、狂戦士状態に陥っていたとは言えただ一人で襲撃を阻止せんと立ち向かってきた勇気と、多数の師団兵や天衝種を一人で撃ち倒してきた戦闘力は、見事と言う他なかった。そして、その後に駆けつけたイレギュラーズ達との戦い。
(――彼奴らと肩を並べて、戦うことが出来たら)
 リアオは、そう望んだ。このままグロース師団の一員として戦いイレギュラーズ相手に討たれるより、理人やイレギュラーズ達と共に戦いたいと切に願う。
 もっとも、それが叶わぬ願いかも知れないのを、リアオは重々承知していた。リアオがかつて難民キャンプの襲撃を試みたと言うこともあるが、そもそも魔種とイレギュラーズとは互いに不倶戴天の存在である。理人が属する革命派への帰順を申し出ても、イレギュラーズ達はそれを許さず討伐しようとしてくるかも知れない。
 だが、そうなったらそうなったでリアオは構わないとさえ思う。何故なら、自ら選択して意志を貫いた結果として、死に場所を得られることになるのだから。グロース師団の一員として死ぬよりは、余程マシな死に様と言えよう。
 ならば、もうここにいる理由はない。
(往こう、ギア・バジリカへ――!)
 リアオは馬を駆り、雪原を駆けた。

●帰順の申し出
 雪原で、二人の男が組手をしている。朔(p3p009861)と理人だ。
 理人のミドルキックが、朔の脇腹を狙う。それを朔が腕で受けると、理人はその受けられた場所を支点として身体をギュン! と捻り浮かして、朔の頭を踵で蹴ろうとする。朔は、その蹴りを身体を後ろに反らして躱した。
 着地した理人を狙い、朔は右腕のジャブで牽制しつつ左腕でストレートを放つ。理人は掌でジャブを受け止め、ストレートは身を屈めて躱した。すかさず、理人は足払いで朔の脚を刈ろうとする。だが、朔は後方に跳びすさってその足払いを回避した。
 ――そんなやりとりがしばらく続いた後、二人は組手を終えた。
「随分、動きが戻ってきたんじゃねえの?」
「まだまだ、物足りないですね」
 朔の問いに、理人が答える。理人は以前、グロース師団兵から難民キャンプを護ろうとして、瀕死の重傷を負った。その後しばらくは身体機能がガタガタになっていて歩くこともままならなくなっていたが、最近やっと身体がそれなりに動くようになり、リハビリがてら朔と組手をしていたのだ。
 朔から見れば十分動けているように見えるが、理人からすればまだ物足りないと言う。完全に調子が戻ったらどうなるんだろうか……そんなことを朔が考えていると、遠くから血だらけの男が二人の方に歩いてきているのが見えた。二人は、男に見覚えがある。
 以前難民キャンプを襲撃せんと試みた、魔種リアオだ。
 何故ここに、そして何故そんな血だらけに。そう思いつつも朔と理人が身構えると、リアオは青龍偃月刀を投げ捨てて両手を上げ、敵意がないことを示した。
「我が名は、リアオ・グアン! 理人よ、過日の貴公らの闘いぶり、見事であった!
 儂はこれより貴公らに帰順し、貴公らと肩を並べて戦うことを望むものである!」
 朔も理人も、驚愕を禁じ得なかった。まさか、魔種が帰順と共闘を望んでくるとは。だが、この帰順を受け入れてもいいものか、朔も理人も困惑している。
 しかし、朔にも理人にも迷っている時間はなかった。離反したリアオを追って、その上役であったツアオ・トンがグロース師団兵や釈放囚人、強化型フルアーマー・オートンリブスを従えて迫ってきたからである。
 それを見て、ギア・バジリカからもイレギュラーズ達が繰り出し、朔や理人と合流した。

 ――リアオの帰順を受け入れてツアオと共闘するか。それとも、リアオの帰順を拒んでツアオと三つ巴の戦いをするか。選択せねばならない瞬間は、すぐそこまで迫っていた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は、『<クリスタル・ヴァイス>絶望の縦深陣』の後日談となるシナリオをお送りします。
 リアオの帰順の申し出にどう対応するか選択しつつ、リアオを追ってきたツァオを撃退して下さい。


【概略】
●成功条件
 ツアオの撃退

●失敗条件
 理人の死亡

●【重要】選択肢について
 リアオの帰順の申し出への対応について、選択肢を用意しています。
 選択肢の内容を確認の上、選択をお願い致します。
 なお、成功条件は「ツァオの撃退」ですので、どちらを選んでも失敗条件を満たさなければ、シナリオは成功します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ギア・バジリカ付近の雪原。時間は昼間、天候は晴天。
 足下が雪であることについては、ペナルティーは受けないものとします。
 逆に、飛行状態など足場の影響を受けない状態だとか、プレイングで雪への対策をしているなどあれば、若干プラスの修正を入れて判定します。

●初期配置
 イレギュラーズ←40メートル→リアオ←40メートル→ツァオ達


【敵】
●ツアオ・トン
 リアオの上役だったグロース師団の部隊長です。憤怒の魔種。
 細面の壮年で身体も軍人にしては細い方ですが、その体格には似合わぬ巨大なソードアックスを装備しています。リアオの離反を許さず、追討のため追ってきました(ツアオの立場からすればリアオは脱走兵ですので、当然処分しなければ部隊に対して示しがつきません)。
 リアオ離反についての非は、概ね1:1と言うところでしょう(ツアオが明らかに作戦を担当させる人選を間違えた&懲罰的な任務を命じた一方で、リアオの不満は武人としてはともかく軍人としてはやはりわがままな部類ではあります)。
 能力傾向としては、いわゆるパワー型。一撃が重く、守りが堅く、非常にタフなタイプです。

・攻撃能力など
 ソードアックス 物至範
  ソードモード 【変幻】【邪道】【鬼道】【出血】【流血】
  アックスモード 【弱点】【邪道】【鬼道】【出血】【流血】【失血】
   大剣と大斧を変形させて切り替えられる武器です。変形には行動は消費しません。
   ソードモードが命中重視、アックスモードが威力重視の運用となります。
 幻影兵の牌 神/至~超/域 【多重影】【変幻】【スプラッシュ】【邪道】【鬼道】【乱れ】【崩れ】【体勢不利】【崩落】
  手にしている牌から、多数の幻影兵を召喚して敵を攻撃させます。
 再生能力
 【怒り】無効
 【封殺】無効
 BS無効
 
●グロース師団兵、釈放囚人 ✕各20
 能力はピンキリですが、攻撃力、防御技術、生命力が高く、回避、反応は低い傾向にあります。

・攻撃能力など
 剣 物至単 【出血】
 銃 物遠単

●強化型フルアーマー・オートンリブス ✕10
 巨大カブトムシのような天衝種を、各種装備で強化した個体が、さらに強化されたものです。
 フルアーマー化時点で鈍くなった動き(回避、反応)はさらに鈍重となり、特に回避はスペースの関係上大幅なペナルティーを受けています。一方、元々高い防御技術はさらに高くなった上、対神秘攻撃力場が付きました。
 加えて、狂化催眠によってEXAが上昇し、【怒り】を受け付けなくなっています。
 また、基本的には遠距離から広範囲に砲火を浴びせてくる戦い方をしますが、いざとなったら使ってくる羽の裏のバーニア一斉噴射による、増加したスピードと重量による突進は脅威でしょう。

・攻撃能力など
 角 物近単 【弱点】
 ビームホーン 神近単 【弱点】【出血】【流血】
  角にビームを纏わせて、神秘攻撃の槍として攻撃します。
 突進(単) 物超単 【万能】【移】【邪道】【弱点】【飛】【崩落】
  速度と重量を一点に集中するタイプの突進です。
 突進(域) 物超域 【万能】【移】【弱点】【飛】【体勢不利】
  速度と重量を以て、邪魔なものを弾き飛ばすタイプの突進です。
 背部ビームカノン 神遠単 【邪道】【弱点】
 頭部バルカン 物近扇 【スプラッシュ】【邪道】
 側部ミサイルポッド 物遠域 【識別】【多重影】【変幻】【邪道】【鬼道】【火炎】【業炎】【炎獄】
 対神秘攻撃力場
  至近以外の距離からによる神秘攻撃を、無効化する力場が展開されています。
 【怒り】無効
 【飛行】
 巨体
  マークやブロックには3人を必要とします。


【?】
●リアオ・グアン ✕1
 理人と共に戦おうと考え、革命派に帰順しようとしている、憤怒の魔種です。
 憤怒の魔種でありながら、感情をコントロールできる冷静な武人肌です。軍人としての忠誠心はありましたが、上役であるツアオとはソリが合わず、また本人の武人肌もあって、これまでの任務を面白くは思っていませんでした。さらに、グロース師団兵や釈放囚人達の素行の悪さにも不満を抱いていました。そんな中、どうせ戦うなら難民キャンプを護るため一人立ち向かってきた理人と共に戦いたいと思い、新皇帝派から――正確には、ツアオの元から離反しました。
 筋骨隆々の体格の良い男で、顎に流れるような顎髭を生やしています。手には青龍偃月刀を持っており、鉄帝軍人でありながら何処かいわゆる中華風の武将と言った態をしています。
 一撃の威力が高く、本来は生命力も魔種相応に高いのですが、ツアオから追われたため浅くはない傷を負ってしまっています。中華風の鎧は纏っていますが、それにしては動きは機敏で回避が低いと言うこともなく、また青龍偃月刀を攻防一体で使いこなしてくるので、防御技術も高くなっています。
 リアオの革命派への帰順に対して、どう対応するかは皆さんが選択して下さい。拒まれればここで死に花を咲かせようと、皆さんと追ってきたツァオ達との三つ巴の戦いを演じます。受入れられれば、鉄帝編の終了までは基本的に理人と共に戦い、鉄帝編の終了後はこれ以上生きていても良い死に場所は得られないと考えて、理人や朔さんに対し最期の戦いを挑んで来ます。
 なお、リアオの帰順が受入れられた場合、リアオは自身の魔の気配を抑えつつ極力革命派メンバーから距離を取ろうとします。そのため、リアオが味方であることによって、革命派メンバーの誰かが反転することはありません。

・攻撃能力など
 青龍偃月刀 物至単 【邪道】【鬼道】【出血】【流血】【失血】
 薙ぎ払い 物至範 【邪道】【鬼道】【出血】【流血】
 衝撃波 神遠範 【邪道】【鬼道】【出血】【流血】
 再生能力
 【怒り】耐性
 【封殺】耐性
 BS緩和


【味方】
●足代 理人
 朔さんの関係者です。朔さんとは元の世界で交流があり、朔さんより先に混沌に来ました。
 ツァオらによって難民キャンプが襲撃された際、呼び声によって狂化し、狂戦士状態となってリアオの前に立ちはだかりました。しかし力及ばず瀕死の重傷を負い、イレギュラーズ達に救出されました(『<革命の聖女像>鮮血の狂戦士』)。
 その後、『<クリスタル・ヴァイス>絶望の縦深陣』ではガタガタになった身体を癒やすべく療養生活に入っていましたが、ようやく朔さんと組み手を演じられるぐらいには回復してきました。
 基本的な戦闘能力は高い方だとは言えますが、まだ本調子でないため無理の利かない部分があります。
 リアオの帰順に関しては、賛否の間で戸惑っています(命令に従ったためとは言え難民キャンプを狙ってきた相手だと認識している一方で、リアオが味方につけば戦力として心強いと言う利も認識しています。また、魔種が世界にとっていてはならない存在だとわかっている一方で、その闘いぶりを褒められ共に戦いたいと言われれば、バトル中毒者である理人としては悪い気はしておらず、共に戦ってみたいという気持ちもあります)。そのため、最終的には皆さんの判断に従います。

 理人の詳細については、以下の設定委託をご覧頂ければと思います。
 『解き放たれし、身体と闇』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/ssdetail/4011


【その他】

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●リアオ関連シナリオ(経緯を詳しく知りたい方向けです。基本的に読む必要はありません)
 『<革命の聖女像>鮮血の狂戦士』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8564
 『<クリスタル・ヴァイス>絶望の縦深陣』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/9044

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしています。


リアオへの対応
 リアオの帰順の申し出に対して、どう対応するか選択をお願いします。
 もしも選択が割れた場合は、多数が選んだ選択肢を採用します(もしも同数になった場合は、朔さんの選択を採用します)。

 なお、帰順を受入れてツァオを倒してから、掌を返してリアオを倒すと言う行動は出来ません(そのような行動は、鉄帝においては悪名を得てしまう可能性が高いものです)。

【1】リアオの帰順を受入れ、ツァオと共に戦う
リアオの帰順の申し出を受入れます。リアオは皆さんの味方となり、共にツアオと戦います。

【2】リアオの帰順を受入れず、ツァオ諸共討つ
リアオの帰順の申し出を拒みます。リアオとツアオ、2人の魔種と三つ巴で戦うことになります。

  • <天牢雪獄>魔将の離反Lv:40以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年02月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
ウルリカ(p3p007777)
高速機動の戦乙女
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇
朔(p3p009861)
旅人と魔種の三重奏
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

リプレイ

●受け入れられた帰順
「わかるわよー! 自分のやりたい戦いを貫くってその気持ち」
 革命派に帰順を申し出てきた魔種リアオ・グアンに対して、『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)は戦場に身を置く者として共感を示した。
 さらに言えば、イレギュラーズと魔種とは基本的には不倶戴天であるが、レイリー自身は魔種であっても敵とは限らないと考えている。故に、リアオの帰順を受け入れ、並んで戦うことに躊躇はない。
「ヴァイスドラッヘ、只今参上! 貴方と共に戦いに来たわよ!」
 愛馬『ムーンリットナイト』と共にこの場に駆けつけたレイリーは、リアオの前でそう名乗りを上げた。
「おお! 儂の帰順を受け入れてくれるか。ありがたい!」
 リアオは破顔し、馬上のレイリーに向けて手を差し出し、握手を求めた。レイリーもそれに応じて手を差し出して、二人はガッチリと握手する。
「魔種との共闘は、今に始まったことでもありませんからね。共闘の申し出、受け入れましょう。
 もっとも信用に足るかは、この戦場での働き一つ――実に、鉄帝らしいでしょう?」
 『高速機動の戦乙女』ウルリカ(p3p007777)が微かに笑みを浮かべながら、リアオに告げる。
「応、望むところ。戦働きには、自信がある」
 全身が血だらけになるほどの傷を負っていながら、リアオはニッと笑みを浮かべながら自信満々に答えた。
「不思議なものですね……まさか、魔種と肩を並べて戦う日が来ようとは」
「そう思うのは、わかります。ですが、損な話ではないでしょう」
 先述したように、イレギュラーズと魔種は基本的には不倶戴天である。『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)は、その魔種と共闘するという事実を、レイリーほどシンプルには受け入れきれていない。そのサルヴェナーズの感情は、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)にはよく理解出来るところであった。
 だが、魔種が鉄帝の敵から味方に鞍替えしたと言う事実は、戦力面では大きい。故に、鉄帝の敵を厭うオリーブは鉄帝に利ありとして、リアオの帰順を受け入れることにしていた。
「あんたがこちらに害をなそうとしないのなら、俺は追い払いはしないさ。出て行く時に追いかけもしないけどな。
 それでいいな? 理人」
 元々来る者を拒まない気質の朔(p3p009861)は、仲間達からの反対がないこともあり、あっさりとリアオの帰順を受け入れた。そして、側にいる足代 理人に問う。
「ええ、皆さんがそれでいいのでしたら……」
「うわははは! 嬉しいぞ、理人よ! これより、よろしく頼む!」
 リアオの帰順に対して如何すべきか逡巡していた理人は、.イレギュラーズ達の、特に朔の判断を受け入れ、自身もリアオの帰順を受け入れることにした。グロース師団から離反する最大の理由である理人が帰順を受け入れてくれたことをリアオは喜び、理人の肩をバンバンと叩く。その圧の強さに、理人はやや困惑したような表情を浮かべていた。
「――あいつらは、あんたが連れてきたんだろ? 俺たちと共に戦うなら、きっちり追い返してやろうぜ」
「連れてきたつもりはないが、結果としてはそうなるか。もちろん、そのつもりよ」
 リアオを追って迫りつつあるグロース師団を指差しながら告げる朔に、リアオはコクリと深く頷いた。
(リアオさん一人に、ここまでの軍勢を? ……彼が優秀なのか、グロース師団が烏合の衆なのか)
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は、リアオを追ってきたグロース師団の数に内心で首を傾げた。グロース師団と釈放囚人が合わせておよそ四十に、天衝種の強化型フルアーマー・オートンリブスが十。
 しかし、その数は如何あれ、ギア・バジリカの近くに新皇帝派がいると言う事実がイズマには五月蝿く感じられて仕方がない。故にイズマは、彼らにお引き取り願うことにした。
 そしてイズマは、リアオの方を見やる。元々所属していたグロース師団と戦うことへの躊躇は、リアオには皆無だった。それなら、もうイズマに言うことはない。ただ、肩を並べて共に戦うまでだ。
(……わざわざ敵を増やす理由はない、賢い選択肢だ)
 仲間達の選択を『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)もまた、受け入れている。だが、貴道の内心にはわだかまりはあった。
(正直なところ、虫のいい話だとは思うがな。多かれ少なかれ、テメェだって暴れてきただろうに)
 戦闘の前と言うこともあり、わざわざ口には出さない……が、厳しい視線を貴道はリアオに向けた。その視線に気付いたリアオは、貴道の意を察したのか詫びるように深く頭を下げた。
(……まあ、どうあっても魔種だからな、いずれは叩き殺す以外に道はねえ。
 その時ミーは居ないかもしれないが、打ちのめされるのは間違いないだろうよ)
 それだけでリアオの所業を水に流す気には、貴道は当然なれない。だが、リアオが魔種である以上、いつかは討伐することになる運命だ。リアオについてはそれが早いか遅いかの違いでしかないと割り切って、貴道はグロース師団の方に意識を集中した。
「僕は、君と一緒に戦う……まだ立ち上がれて……僕達と一緒に戦いたいって思うなら……一緒に頑張ろ?」
「かたじけない!」
 『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は、リアオに駆け寄るとそう語りかけて、仲間を癒やす頌歌を歌った。リアオの受けた傷はその頌歌を以てしてもあまり癒やされる様子はなかったが、これは見た目以上にリアオが受けている傷が深い故だ。しかし、それで人心地ついたのだろう。リアオは、レインに感謝を込めて礼を述べた。

●覆されゆく数的不利
「この先には、行かせません。ところで、どうやら私達、似た者同士のようですね。
 貴方の幻影兵と私の子供達。どちらが尽きるのが早いか、確かめることにしましょう」
「よお、ミーが相手だ。別にシカトしてくれたっていいぜ、出来るってんならやってみな?
 その代わり、ミーはやりたい放題殴らせてもらうけどな、HAHAHA!」
 迫り来るグロース師団に向かって、まずサルヴェナーズと貴道が駆け出した。狙いは、先頭に立ってグロース師団を率いている魔種ツアオ・トンだ。
 サルヴェナーズは、ツアオの前に立ちはだかって、その行く手を遮る。その間に、貴道は横からツアオに殴りかかった。
 貴道の無数の拳が、ツアオに叩き込まれていく。その拳は、ツアオをただ殴打するだけではない。拳の衝撃はツアオの鎧をほぼすり抜け、その体内へと浸透する。そして、ツアオの体内に浸透した拳の衝撃は幾重にも衝突して爆ぜた。
 さらに貴道は、ツアオの顎を狙いアッパーを放つ。アッパー自体はツアオの顎を捉え、その頭を跳ね上げさせた。だが、その圧でツアオの状態異常への耐性を封じるまでは至らない。
「ぐおおおおっ! 貴様ら、邪魔だっ!」
 追討したいリアオへの移動を遮られ、纏わり付かれた苛立ち混じりに、ツアオが大斧を振るい、サルヴェナーズと貴道をまとめて薙ぎ払う。大斧は、サルヴェナーズと貴達に強かに傷を負わせた。
(まず敵の数を減らさなければ、どうしようもありません)
「ぐあっ!」
 オリーブは、グロース師団兵や釈放囚人達に向けて掃射を行った。クロスボウから放たれた多数の矢が、次々と師団兵や囚人達を射貫いていく。彼らの着けている鎧は、オリーブの矢の前には存在しないかのようであった。
(まだです。これで、倒れてもらいます)
 さらにオリーブは、掃射を重ねて追撃。これで、グロース師団兵や釈放囚人達の半数近くが雪原にバタバタと倒れ伏した。
「ナイスだ、オリーブさん!」
 数的不利を大きく緩和したオリーブを称賛しながら、イズマは蒼いワイバーン『リオン』を駆った。多数を相手に無茶を通すと覚悟はしていたが、その無茶がさほど無茶とは感じられなくなっている。ならば。
「……倒れはしない! この戦場、制してみせるッ!!」
 そう気勢を上げながら、イズマはまず飛行する強化型フルアーマー・オートンリブス達に向けて数度、魔力を叩き付けた。五体の強化型フルアーマー・オートンリブスが、イズマの魔力を受けダメージを負い、その体液を流出させた。
 さらにイズマは、残るグロース師団兵や釈放囚人達の真ん中に降下し、敵意を煽り立てると共に出血を強いる。
 グロース師団兵や釈放囚人達は、寄って集ってイズマを得物で攻撃。イズマは傷を負うことになったが、それは相応のダメージをグロース師団兵や釈放囚人達に返すことになった上で、イズマの攻撃の威力も増加することを意味していた。
「魔種についてきたのが運の尽きだ、こっちは誰ひとり欠けるつもりもないから諦めな!」
 朔は白銀のライフル『白い死神』を構えると、慎重に味方を射線から外してイズマに集ったグロース師団兵や釈放囚人達を狙い、引金を静かに引いた。タン、と言う音と共に裁きの弾丸が放たれ、射線上のグロース師団兵や釈放囚人達を次々と貫いていった。
「うぐあっ!」
 裁きの弾丸に貫かれたグロース師団兵や釈放囚人達は、傷口から血をドクドクと流し、悶え苦しむ。
「天衝種はそもそも不自然な生命体でしたが、更に不自然な措置を施したようですね。
 しかし、そのさらに鈍重になった身体で飛んだところで……!」
 イズマの魔力を受けた強化型フルアーマー・オートンリブスの一体を狙い、ウルリカが高速の衝撃波を放った。衝撃波は、死神の狙撃の如く強化型フルアーマー・オートンリブスを襲う。その装甲と外骨格を突き抜けた衝撃が、強化型フルアーマー・オートンリブスにダメージを与えた。
 さらにウルリカは、鉛を奏でる楽団を召喚。その掃射も、強化型フルアーマー・オートンリブスらを襲う。銃弾の多くは装甲と外骨格で止められたが、それでも強かなダメージを与えた。
 都合四度繰り返された衝撃波と掃射に、強化型フルアーマー・オートンリブスの一体が力尽きて地に墜ちた。残る四体も、相応にダメージを受けている。
「理人、行くぞ!」
「はい、リアオさん!」
 リアオは理人に呼びかけると、青龍偃月刀をブン! と横薙ぎに振るい、残る四体のうちの一体に衝撃波を飛ばした。理人はリアオに合わせて、ミドルキックを放ち、リアオが狙った個体と同じ個体を狙う。二つの衝撃波をその身に受けた強化型フルアーマー・オートンリブスは斃れ、雪原へと墜落した。
 残る強化型フルアーマー・オートンリブスは、標的であるリアオに一斉に無数のミサイルを浴びせかける――が。
「リアオ殿と理人殿は、私が護るわ。だから、思いっきり戦って!」
 竜の翼を思わせる白き大盾『ヴァイスドラッヘンフリューゲル』を構えたレイリーが、その身を盾にしてミサイルを全て受け止めた。だが、この攻撃でレイリーの護りが及ばなかったレインが深手を負ってしまった。
(杞憂……だったかな……?)
 レインは、リアオとの共闘に関して理人の感情が追いつかないのではないかと心配していた。だが、見たところ理人もリアオもノリノリで共闘しているように見える。
 元より理人との共闘を望んでいたリアオがそうするのは当然として、理人がそうしているのは、混沌に来てから目覚めた戦闘狂の気質が大きく影響していた。目の前の戦闘の前には、多少のわだかまりは吹き飛んでしまっているようだ。
「でも……無茶は、ダメ……だよ」
 だが、レインにはもう一つの杞憂がある。それは、深手を負っているリアオやイレギュラーズではない理人が倒されてしまうのではないかと言うものだ。二人が戦闘にこうも夢中であるのも、レインに危うさを感じさせている。故に、レインはそう二人に注意しつつ、歌声を響かせてリアオとレイリーと自身を癒やした。

●十対一
 ツアオ率いる隊は、まずグロース師団兵や釈放囚人達がオリーブ、朔によって壊滅した。強化型フルアーマー・オートンリブスも、程なくしてイズマ、ウルリカ、理人、リアオらの攻撃を受けて全滅した。その間、レイリーは理人とレインの盾となり続け、レインは自身を中心としてリアオとレイリーに癒やしを施し続けた。
 貴道とサルヴェナーズは、その間ツアオの足を止めることに成功していたが、相応に傷を負っている。
 かくして、十対五十一であった戦力差は、開戦からさほど時間の経たないうちに十対一まで逆転した。

「どうしましたか? その程度の攻撃では、私を殺せませんよ」
「ぐぬぬ……ええい!」
 サルヴェナーズが、ツアオを煽る。いくらツアオが攻撃を繰り出そうとも、サルヴェナーズの傷口からは泥が溢れて傷を元に戻してしまう。ツアオはサルヴェナーズの煽りに歯噛みしつつ大斧で貴道とサルヴェナーズを薙ぎ払うが、貴道もサルヴェナーズも深手を負っていながら未だ倒れない。それでいて、サルヴェナーズの傷からは羽虫や蛇や蠍が湧いてツアオに集ってくるのだから、ツアオとしては鬱陶しいことこの上なかった。
「――来ましたか。不死身の怪物ごっこもこれでお終いですね」
「……貴様、何を言って……? ぬうっ!」
 ツアオ以外の敵を全滅させた仲間達が合流してくると、サルヴェナーズはツアオにそう告げた。本来は非常に撃たれ弱いサルヴェナーズだが、必殺の気迫を込めた一撃をその身に受けない限り倒れることはない。それを身体が再生しているように偽装して、その事を悟られないようにしながら時間を稼いでいたのだ。
 そしてサルヴェナーズは、身に纏う汚穢の檻を次々と槍のように尖らせ、繰り出した。流れるように繰り出される槍への対処に精一杯となったツアオを、貴道の拳が襲う。
「HAHAHA! 後はユーだけだ!」
「ぐおうおぐほっ!」
 サルヴェナーズの放つ槍に気を取られた隙を衝かれたツアオは、護りを固めることもままならず、無数とも思えるほどの貴道の拳の連打を受けた。深手を負ったことで威力を増した貴道の拳の、その一つ一つから浸透した衝撃が、ツアオの体内で連鎖的に爆発していく。たまらず、ツアオはガクガクと体を震わせた。
「はるばるここまで足を運んでもらったのです。ここで、仕留めます!」
「うぐおおっ!」
 オリーブは、ツアオを逃がさずここで撃破しようと、その背後に回り込みつつロングソードで三度斬りつけた。その一閃一閃が、邪道たる殺人剣だ。三つの剣閃はツアオの鎧を紙のように斬り裂き、三本の深い傷をその背中に刻み込んだ。
「そうですね。新皇帝派の魔種を、ここで取り逃がしたくはありません」
「ぬううっ!」
 畳みかけるように、ウルリカが幾度もの戦いを経て体得した、無駄の省かれきった洗練された動きで、流れるように真空波を連発。ツアオへと放たれた真空波は、鎧など存在しないかのように、ツアオの身体を次々と斬り裂いていった。
(確かに、ここで倒せるなら倒してしまいたいところだ……油断は出来ないが)
「ぐあああっ!」
 イズマはリオンを低空飛行させながら、ツアオに向けて細剣『メロディア・コンダクター』をヒュッヒュッ! と連続して突き出した。その刺突は、幾つかが大斧に受け止められたが、幾つかはツアオに命中。イズマの刺突は傷を負ったことで威力が増しており、ザクザクとツアオの頭部を穿っていった。
 さらにそのツアオの頭部を、理人とツアオが脚と青龍偃月刀で左右から同時に攻撃する。頭部を挟撃されたツアオは、わずかの時間だけ朦朧とした。
(随分と活き活きしているな、理人。共闘を迷ってた割に、リアオと息もピッタリだし)
 その理人の姿に、混沌に転移する以前からすると変われば変わるものだと思いながら、朔は白い死神の引金を引いた。一弾一殺の魔弾が、朦朧として回避も防御もままならないツアオの眉間を貫く。だが、さすがに魔種を仕留めるまでには至らない。ぐらり、とツアオは後ろに仰け反ったが、そこで意識をはっきりと取り戻した。
(僕は……誰も、死なせない……)
 その意志と共に、レインは仲間を癒やす頌歌を歌う。その歌声で、レイン自身とレイリー、貴道、イズマ、そしてリアオの傷は幾分か癒えていった。
「くっ……来たれ!」
 近距離にいるイレギュラーズ達が増えたこともあり、ツアオはまとめて一掃しようと、牌を手に叫ぶと自分を中心に多数の幻影の兵士を召喚した。この兵士達は幻影でありながら実体を持っており、貴道、サルヴェナーズ、レイリー、オリーブ、イズマ、レイン、理人、リアオを攻撃せんとする。
「お前の攻撃はこんなもの? あぁ、弱いのね」
 だが、貴道とレインへの攻撃は、レイリーが己の身を盾にして受け止めた。その上で、レイリーはツアオを煽るようにニコリと笑い、幻影の兵士達の攻撃など大したことはないと言わんばかりに嘲笑するような笑みを浮かべた。ギロリ! 憤激を込めた視線で、ツアオはレイリーを睨んだ。

 ――率いてきた戦力を壊滅させられ、十人を一人で相手せざるを得なくなったツアオは、思うようにイレギュラーズにダメージを与えられない一方で次第に生命力を削り取られていった。故に、程なくして撤退を選択。イレギュラーズの側も、無理に追うのは避けた。

成否

成功

MVP

レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ

状態異常

郷田 貴道(p3p000401)[重傷]
竜拳
レイリー=シュタイン(p3p007270)[重傷]
ヴァイス☆ドラッヘ
イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)[重傷]
砂漠の蛇
レイン・レイン(p3p010586)[重傷]
玉響

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの選択の結果、リアオは革命派に帰順し、そのリアオの追討を狙ったツアオは退けられました。
 MVPは、理人やリアオをはじめ仲間達をその身で護り続けたレイリーさんにお贈りします。

 あと、朔さんに称号スキルを発行しています。相手が理人、リアオ限定の【連鎖行動】とお考え下さい。

 それでは、お疲れ様でした!

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