PandoraPartyProject

シナリオ詳細

仕組まれたトーナメント

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●応援、ありがとう!
 血は人々を沸き立たせる。
 鉄帝で行われる武術トーナメントは、民衆からの人気も高い。
 トーナメントの熱狂は、人々にとって辛い日々の出来事を忘れさせてくれるもののようだ。
 闘技場は、今日もにぎわっている。

 予選が終了し、勝ち残った戦士たちが出てくる。
 民衆が戦士たちのために道を空け、それぞれに激励の言葉をかけている。
「ハンター! 応援してるぞ!」
「スクラマス! 俺はお前に全財産賭けた!」
 中でも一番の人気は、仮面の騎士ジャスティだろう。
「ジャスティ、ジャスティ、ジャスティ!」
 全身鎧の騎士が出てきたとたん、人々は唱和する。

「ペオ様ーーーー!!! ペオ様ーーーー!!!」
 ペオと呼ばれた男は、歓声を受けて片手をあげる。
 新星のごとく現れた、剣士ペオ。
 未だ実績がないとはいえ、民衆の予想を裏切り、対立候補を倒して勝ち残ったこの男は、民衆からの期待は高かった。
「予選突破おめでとうございます! あの、これ、差し入れです!」
 女性からバスケットが差し出される。
「とっても嬉しいよ! ありがとうね」
「試合、頑張ってくださいね!」
「ああ、ウン」

 楽屋裏に戻ったペオは、バスケットの中身をそのままゴミ箱にひっくり返す。
 差し入れの中身は、リンゴと手紙、それから花束。
「はんっ、俺が予選を突破するまではなんでもなかったくせに、なーにがペオ様だ……まあいい。優勝するのはこの俺なんだ……それに、大事な試合前だってのに、他人から差し入れられたものを口にできるわけないだろ」
 事実、ペオは予選の時は、対戦相手の差し入れに細工した。
「おい、ほんとうに優勝できるんだろうな?」
 スポンサーの老貴族が、いぶかしげな目でペオを見た。
 トーナメントは、誰が優勝するかに莫大な賭け金がかけられている。新星、ペオが優勝したとあっては、……大もうけというわけだ。
 そういう意味で、この貴族とペオは同じ目的を持っていた。
「大丈夫ですよ、手は打ってあります」

●舞台裏
「闘技場は好きか? 俺は、どちらかというと武器を見るのが好きさ」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)はやってきたイレギュラーズたちを見た。

「「ペオ」を知ってるか?
ああ、いい。俺も最近まで知らなかったんだ。
予選で勝ち上がった男だ。まあ、見てみたが……言ってみりゃ並さ」

「依頼主はその”ありふれた”剣士ペオ。
依頼の内容は、”自分が確実に優勝できるように、取りはからって欲しい”というもの。どんな手段を使うかは……こちらに任されているが、試合がすぐ明日に迫っている。
”頑張って努力して、まっとうに優勝しよう”なんて内容ではない事は間違いがない。後ろ暗い手を使って、なんとかしてくれってことだろう。
で、ここに、出場者のリストがある。ま、よろしくやってくれ」
 そう言って、ショウは紙の束を提示した。
「もしこの依頼が成功したとしても……ズルして身の丈に合わない名誉を受け取った人間がどうなるかは、推して知るべしといったところさ。
そしてそれは、俺たちの関知するところではない」

GMコメント

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『鉄帝』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●目標
「ありふれた」ペオをトーナメントで優勝させる。

●状況
試合は合計で4試合。
1日1試合で、合計4日間行われる。

今の状態では、「ペオ」が対戦相手に勝てる見込みはない。
ライバルを妨害せよ。

対戦相手の棄権による不戦勝、
または対戦相手の体調不良や不測の事態が起これば、
ペオでも勝利できるだろう。

●補足
暗殺含め手段は問わないが、
露見しやすい方法であからさまな妨害を行った場合は、
試合が進むにつれ対戦相手に警戒される確率が上がるので注意すること。

すべての試合、不戦勝による優勝でも可。
(ロクに試合を見れない民衆は不満に思うでしょうけれど、この依頼としては成功となります)。

●依頼人
・「ありふれた」ペオ
 並の剣士。
 素人同然ではないが、実力は最下位。
 プライドが高く、傲慢で不遜。
 身の丈に合わない野心を抱いている。

 小心で、田舎では一番だった剣の腕にプライドを持っている。
 田舎では一番だった剣の腕前も、所詮井の中の蛙であった。

●闘技場
 闘技場には比較的誰でも出入りできる。
 ファンの出入りも多い。
 出場者には関係者専用のエリアに、それぞれ個室が与えられている。
 面会を歓迎するものも、断るものもいる。

●試合形式
 出番となれば、衆人環境のもと、1vs1の勝負となる。
 試合はどちらかが降参するか、審判が続行不可能と認めた場合に終了する。
 対戦時間になっても相手が現れなければ試合放棄と判定される。

●対戦相手
・1試合目 … 「賞金稼ぎ」ハンター
 獲物:ムチ
「やあ、誰に賭けようか迷ってるなら、俺はどうだい?」

 目の見えない妹、ミモザ(13)の治療費を稼ぐためにエントリー。
 その妹ミモザも応援しにくるのではりきっている。

 ハンター本人は訓練場で最後の仕上げを行っている。
 妹は宿に泊まっている。
 
 ハンターは人並みに警戒心はあるが、友好的で人当たりも良い。
 妹は世間知らずの田舎者、夢見る少女といったところか。

・2試合目 … 「逃げ足の」ドル
 獲物:ダガー
「へへへ……優勝するのはこの俺様だぜ。じゃんじゃん酒を持ってきな!」
 
 ドルに関して、今まで対戦相手の棄権による不戦勝が非常に多い。
(こちらは本依頼のクライアントとは別勢力と思われる。)
 こいつもこいつで、あまり良い評判は聞かない。
 同じ穴の狢と思われる。

 通常時は、酒場でぶらぶらして、自身の出場をダシにただ酒をおごってもらっている。
 もしも試合の裏に何かありそうだと勘づけば、試合まで空き家の一つである隠れ家に身を隠そうとする。
 小心者で、ある程度身の危険を感じると、試合に出場しなくなる。。

・3試合目 … 「慟哭の」スクラマス
 獲物:槍
「我の目的は……ただ、強者と相まみえることのみ」

 強者と闘いたいがためにエントリーした狂戦士。
 強者と戦えればそれで良い、と思っている。

 主に、訓練場で訓練している。
 ※スクラマスは、たとえ今回の試合で何かあるようだと勘づいても構わずに訓練場で訓練している。

(PL情報)
 余命いくばくもない身であり、強者と闘って死ぬことを望んでいる。

・4試合目 … 仮面の騎士ジャスティ
 獲物:剣
「はっはっは、良い試合にしよう!」

 公正な試合を望む騎士、ジャスティ。
 実力も確かで、正々堂々とした勝負で人気が高い優勝候補。
 全身鎧に身を包み、その正体は謎に包まれている……。

 控え室で精神を統一している。

(PL情報)
 ジャスティの正体は、比較的善良な貴族の長男。
 両親は、習い事程度に武芸を収めるのは良いが、トーナメントの出場には難色を示しているため、全身鎧で素顔を隠して参戦している。
(とはいえ、たとえ、正体を察してトーナメントの出場をばらすと脅しても「きっと話せば分かってくれる!」という程度のもの。
動揺は誘えるだろうが、試合出場を取りやめるほどではない。)
 よほどのことがない限りは卑怯な取引には応じない傾向が強く、比較的他の出場者と比べて立場のある人物のため、手段にはより注意が必要そうだ。

 強い正義感の持ち主。

●その他
・トーナメント形式なので、次の日になるまでは誰が勝ち上がるかは分からないわけですが、上記の4人の人物との順番通りの対戦となります。
1試合終わるごとに、試合結果が発表されて次の対戦相手を知る、という形になるでしょう。

  • 仕組まれたトーナメント完了
  • GM名布川
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月23日 13時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

テテス・V・ユグドルティン(p3p000275)
樹妖精の錬金術士
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
サングィス・スペルヴィア(p3p001291)
宿主
黒鉄 豪真(p3p004439)
ゴロツキ
Morgux(p3p004514)
暴牛
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
シュタイン(p3p006461)
守護鉄鬼

リプレイ

●脚本の通りに
「どんな手を使ってでも名声を手に入れたいというその気持ち、気に入った」
『樹妖精の錬金術士』テテス・V・ユグドルティン(p3p000275) は依頼の内容を聞き、あっさりとそう言ってのけた。
「ま、そのあとどうなるかは知ったことではないがな」
「ヤオチョウなんてセコいことスルねぇ。ま、オカネが入るならナンデモいいけど」
『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755) のところどころ調子のはずれた高い声が、ざわざわと耳に響く。
「八百長を仕掛ける立場カ……戦いを仕掛けるものとしてはちょっとモヤっとはするが」
『ゴロツキ』黒鉄 豪真(p3p004439)は残念そうに言った。罪悪感を感じているわけではない。 ただ、強いものと正面から戦う喜びは、ともすればこの依頼にはないかもしれない。
 ならば、楽しみは一つ。
(弱いアイツが勝ってその後がどうなるか……楽しみじゃねぇカ)

「神聖なる決闘で私服を肥やす、どの世界に於いても欲深き人間は下らぬ……そして走狗に過ぎぬ我も変わらぬか」
『粛清戦機』シュタイン(p3p006461) は自嘲した。
(このベオや貴族のような者達を作らぬ為にも人間は優れた者が徹底的に統治し、及ばぬ者は増長せぬよう淘汰すべき也)
「強欲が周囲を巻き込んで自滅するのは楽しいわね」
『我らが手を貸すのだ。相応に楽しませてくれねばな』
『宿主』サングィス・スペルヴィア(p3p001291) ……呪具のサングィスと、宿主である銀髪の少女、スペルヴィアが冷ややかに男を見ている。
「早速、出場選手の情報を教えてもらおうか」
 テテスは椅子でずいと進み出た。

「ペオを優勝させるよう皆で対戦相手に妨害工作を仕掛けるのじゃ」
『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370) は不敵に笑う。
「闘技場……賭けもやってんのか。優勝結果が分かってるなら儲けられるだろうな」
『暴牛』Morgux(p3p004514)は懐を探ったが、あいにく持ち合わせはなかった。
(買えるなら買っとくか? ……と思ったが、そもそも金がなかったわ)
 代わりに対戦表を眺める。
「初戦の相手はハンターか」
「……任せろ」
『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787) は淡々と言った。無表情なエクスマリアの代わりに、髪がくいと頷いた。
「うむ、妾たちに任せておけ」

●VSハンター
 ハンターの妹ミモザは、宿で兄の試合を心待ちにしていた。
 不意にコンコン、と窓を叩く音がした。
「どなた?」
「ハンター……はおるかの?」
 声からすると同じくらいの少女だろうか。だが、どこか威厳のある声でもある。
 ミモザは立ち上がり、手探りでそっと窓を開ける。
 兄はいないと告げると、デイジーはがっかりしたような声をした。
「むう……せっかく来たのに、残念じゃ」
「遠くから来たの?」
 デイジーからは、どことなく海の気配がする。
「うむ」
 宿の者が、ミモザを呼ぶ声が聞こえた。
「黙っておいてくれるか?」
 知られたくないのはファン心理だろう。
 なんとなく、悪い人物ではないような気がした。兄はよく、人をあまり信じすぎるなというけれど……。
「入ってもいいかの?」
 ミモザは頷いた。

 海洋王国の名門クラーク家の末娘であるデイジーにとって、ハンターの妹がいる宿を知ることはたやすかった。
 権力を振りかざすまでもなく、人は、デイジーを見るとつい何かしたいと思ってしまう。それがファンを名乗る少女であればなおさらだ。あっさりと宿の場所を教えてくれた。
 ミモザはデイジーの話に耳を傾ける。
 まるで別世界の話のようだ。冒険とはこんなにも楽しいものかと思ってしまう。
 すっかりと会話が弾んでしまった。
「また来るのじゃ」
 去り際、デイジーは手紙を渡した。兄へのファンレターだろう。頷いて承知する。
「それと、もう一つ……これは」
 言いづらそうにしていたが、促すと明かしてくれた。
「ハンターが負けた時のための手紙なのじゃ」
「負けた時?」
「うむ。考えたくはないが。……弱っているときにこそ寄り添うのがファンというものじゃ」
 そういうものか。頷いて手紙を受け取る。

(ココだね……)
 ジェックは、一足早く訓練場へとたどり着いていた。
 人目を避けて通路に潜り込むと、身軽に壁を登り、明かりをとるための窓に待機する。じっと動かずに気配を断てば、ジェックに気が付く者はいなかった。
 コールド・ブラッドの冷たい感触だ。

(家族想いの奴は嫌いじゃねえが、仕事となれば話は別だ)
 モルグスとエクスマリアが、ハンターに近づいていく。モルグスはサインを求めるふりをして近づき、耳元で告げる。
「お前が試合に勝ったら妹がどうなるか……言いたい事は分かるよな?」
「なっ……」
 ハンターの顔がこわばった。
 何か言おうとしたとき、足元で銃弾が跳ねた。
 静かな音だった。周りは気が付いていない。
 わざと外された?
 そちらを見ると、ジェックがひらひらと手を振った。
「忘れるな。常に、目はあるぞ」
 エクスマリアが、握手で握った手に力を込めた。
「……」

「第一試合、ハンターVS、ペオ!」
 ハンターは健闘した。ペオと互角に打ち合っていた。
 宿に戻ると、妹から手紙を渡された。……「何時でもこの娘を始末出来るぞ」という手紙だった。
 まだ悩んでいた。
「お兄ちゃん、頑張ってね!」
 ハンターは身をこわばらせた。妹の隣にいるやつには見覚えがあった。……エクスマリアだ。
 ハンターは武器を取り落とした。
 ペオが勝ち誇ったように笑った。エクスマリアは、仕事を見届けると引き返していった。

●幕間ー下準備
 ハンターの試合を見届けた後、エクスマリアはクッキーを作成していた。
 ただのクッキーではない。強力な下剤を混ぜ込んだものだ。
「ダレが勝つカナ?」
「おそらく、ドルの次はスクラマスね」
 試合を観戦していたサングィスは、恐ろしく正確に試合の流れを読んでいた。
「多分、その次がジャスティ」
「ああ、俺もそう思う。実力者だな」
「……スクラマスは間違いない」
 モルグスとシュタインが頷く。
「試合中……ドルという男がそれとなく周りを気にしていた。警戒せよ」
 シュタインが警告する。
 イレギュラーズたちは頷いた。
「おっと、味の違和感をなくすなら……」
 テテスがアドバイスを加えたところで、より凶悪なクッキーができあがる。
「うむ、良いな。いかにも努力したという感じがいいのじゃ」
 エクスマリアの髪が嬉しそうにぴょこんと跳ねた。もともとそう器用な方ではないから、そうなるのではあるが。
「ファンとして差し入れようと思う」
 可愛らしい少女たちがクッキーを作っている光景だが、なかなかえげつない光景である。
「おっと、そっちは何ダ?」
 豪真に対して、テテスは薬品を振ってみせた。
「ああ、これは次の対戦相手……ドルに盛るためのやつだ。中々のものができてると思うぞ」
 調合には自信があった。テテスの化学と薬物の知識は随一といえるだろう。

●VSドル
 ドルは酒場にいた。
 モルグスが入り口近くの席でジュースを飲んでいる。テテスとデイジーが酒場に入ってくると、モルグスはドルのいる席を示す。
「くふふ、妾は対戦とやらにさほど興味があるわけでは無いのじゃが、お主のお陰で他の連中のギャフンと言う顔が見られて良い気分なのじゃ」
 ふるまいから言って、どこぞの貴族の令嬢といったところだろうか。
「要するに、ファンだ」
 テテスは見た目の年齢とはアンバランスな体を持っている。
 思わず喉が鳴った。
「大分勝たせて貰っておる……お礼に、どうじゃ?」
 酒を飲んでいると、ドルの警戒は緩んでいくようだった。
 不意に、モルグスがコップを落とした。
「悪い」
 客の注目が一瞬集まる。いや、ドルはその喧騒にすら気が付かないほど酔っている。デイジーがテテスに目くばせした。テテスは車いすからツタを伸ばし、酒に薬を入れた。
「ん? んん……」
 ドルは昏倒した。

 ドルの目に天井が飛び込んでくる。
 体がだるい。
 どうやら、一服盛られたようだ。
 ご丁寧に、宿にも運ばれたようである。
 汗が止まらない。
 メモが落ちている。
 ぐちゃぐちゃの字で、「明日出場スルナ」と書いてある。
 そのそばには警告するように弾痕が残っていた。

 不戦勝の宣言に、会場は静まり返った。

●幕間ー騎士の正体は?
「あのメモ、上手ク行ったミタイだね」
 ジェックはマスクの下で笑い声をあげる。
『ふむ……』
 サングィスは思考する。
 ジャスティの正体は謎に包まれている。
 だが、あの全身鎧は特徴的だ。
 身体に合わせ作成した可能性が高く、そうやすやすと庶民が手を出せるものではない。
 貴族であれば戦時の必要性から個人判別の為の紋章があるはずだ。
「貴族紋章が確認できれば最良だけど……」
『地道な情報収集も行うべきだろうな』
「ドウにか近づけるとイイね?」
 作戦会議をしていると、テテスが次の試合の終了を知らせに来た。
 勝ち上がりはスクラマス、そしてジャスティだ。テテスは、ファンという体をとってジャスティをつけている。
 メカンガルーのボタモチが、用意したクッキーを持ってきた。
「接触してみるか」
 エクスマリアが立ち上がった。

「ジャスティ様に、食べて欲しくて、差し入れを……」
 エクスマリアが差し出したのは、手作りのクッキーだ。ジャスティはそのほかにもたくさんの差し入れをもらっている。
「ああ、ありがとう」
「あの」
 エクスマリアは立ち去ろうとしたジャスティを呼び止める。
「仮面の中、見せて貰えませんか……?」
 エクスマリアが上目遣いに見上げる。
「悪いが、見せられない決まりなんだ」
 断ると、髪がしゅんと垂れ下がる。ジャスティは罪悪感を感じているようだ。
「も、申し訳ありません、レディ……」
 ジャスティは慌ててしゃがみ、手を取った。
「紳士的というか貴族のお坊ちゃんって感じね」
『後は家名まで突き止められれば重畳だな』

●VSスクラマス
 スクラマスは一身に訓練用の人形に突きを繰り出していた。

 ふいに、訓練用の人形が、豪真の拳銃で撃ちぬかれた。連射。連射。やたらめったらに撃たれたように思えるが、的確に急所が撃ち抜かれていた。
 振り向くと、さらにジェックが、隣の人形を打ちぬいた。
 こちらは、額に一発。
「ルールに縛られた戦いなんかして楽しいのカ? 俺は求めてる、死闘を。ルールって奴に縛られない戦いをナ」
 豪真の誘いは魅力的だった。
「俺は強いゼ? 魂が震える、感覚がひりつくような死闘をしたくネェか? 俺はそれを与える事ができるゼ?」
「貴様は戦いを求めているのだろう、戦士は戦場さえあれば相手を選ぶまい。我らとの戦に応じるか否か? ……戦士は戦士である以上戦いから逃げてはならぬ」
「その通りだ……」
「場所、かえるか」
 モルグスに頷いた。

 広い丘の上に出た。気持ちの良い風だ。
「連戦カ? 集団戦カ? それとも正々堂々がいいカ?」
「戦いならばそれで良し」
「イイんだね?」
 ジェックに楽しそうに頷き、銃を構える。
「戦えればそれでいいってわけダ」
 豪真とスクラマスはどちらともなしに距離をとり、振り返って猛然と駆けだす。
 豪真のサウザンド・ワンが恐ろしい射撃を繰り返す。
「当たリ!」
 足を運びたい場所に限って、ジェックのハイロングピアサーが突き抜けていく。左足に当たった。
 ヒュウ、と豪真の口笛の音。
 すぐに銃撃が来る。
 ジェックは距離を保っている。攻撃が届かない、ならば、と豪真に狙いを定めて、槍を突進する。
 怯まずに後退しつつ、豪真は拳銃を乱射する。
 そして、肉弾戦にも巧みに対応してくる……。
 喉元に槍の刃を突き付けたが、銃口もスクラマスの心臓の位置にある。そして、ジェックは頭に狙いをつけていた。
 そして、3者、それ以上は動かなかった。
「見事……!」

 次の相手はシュタインだ。
 シュタインは防御を固め、至近距離まで接近してくる。相手が防御に回るのであれば、こちらも相応の覚悟を決めるべきだろう。
「ハァ!」
 槍を構え、突進していく。
 シュタインは盾を逸らす。その行動に、不意を突かれる。一撃、声をあげて一撃、思い切り槍を叩き込んだ。
 盾を振り下ろす。シールドバッシュで大きくのけぞったところを、的確に姿勢を崩してくる。
「良いぞ! 死力を尽くして戦おうぞ!」
 相手とどこか似通ったものを感じ、スクラマスは笑った。
 カウンターの一撃で、腕が重くしびれている。
 ああ、この感覚だ。

「強者と戦いたいなら俺が相手してやる。強い部類の筈だ……」
 次に、モルグスが前に歩み出る。そして、先手を譲ってくる。
 無作為の戦いでも、どこか礼儀にかなった型がある。
(通常攻撃、か?)
 モルグスの武器はその肉体だ。強靭な体が雷をまとい、赤い雷光が動きを阻んだ。危ういところでかわす。
 だが、二手。モルグスは素早かった。今度は食らった。腕を伸ばすと、思い切りスクラマスを掴んで蹴り飛ばす。身が引き裂かれるような痛み。耐えきれず鮮血がほとばしる。
「言うだけのことはあるようだ」
 ああ、強い。
 モルグスは槍を振るうスクラマスをかいくぐる。激しく打ち合う音が響き渡る。
 不意に、死角から現れた暴虐の業が、エクスマリアの鉄血・魂鋼が、首筋に思い切り叩き込まれる。
(狙いをつけ、この瞬間まで潜んでいたか……)
「クク、どうだ? 戦いは楽しめてるか? 俺は割と楽しいぜ」
 返事の代わりに、槍での一撃が飛んでくる。スクラマスは笑っていた。
 再び、攻撃がぶつかり合う。

 スクラマスは膝をつき、血を吐いた。
「貴様……死病か、なるほど、そういう事か」
 シュタインは頷く。
「トドメを、さすがいい。お前たちにならば……悔いはない」
 スクラマスは絞り出すように言った。シュタインは、じっとスクラマスの目をのぞき込む。
「ならば生きよ、戦士ならば道理すらねじ伏せよ。既に死病に負けた戦士の命等奪うに値わず」
「フ……」

 試合が始まった。
 試合の早い段階で、スクラマスは膝をついた。
 血を吐いた。降参する気はなかった。死ぬ気で戦えば、この男程度は倒せた。だが、シュタインの声が脳裏に響き渡っていた。
 生きよ、と。
 手をあげる。
 降参だった。試合会場はざわめきに包まれていた。
「勝者、ペオ!」
(悲しいかな、弱った貴様にすら我が力は未だ届かず、死病をねじ伏せた貴様と今度こそ正当なる決闘で死合たきものよ)
 スクラマスは会場を後にする。

●VSジャスティ
 ジャスティの部屋をノックする音が響いた。
「いるか? 女が暴漢に襲われてるんだ」
「なんだって!?」
 モルグスに言われ、急いで部屋を出ると、いかつい男に、車いすの少女が絡まれている。
 あの少女は何度か見かけることがあった。自分のファンだ。
「おい、止めるんだ。何をしている」
「アァ!?」
 豪真からの攻撃は予想していたが、まさかの車いすの少女からの不意打ちには対応できなかった。魔弾が炸裂し、ジャスティは気を失った。

「ジャスティ―! どうしたことか、ジャスティ、現れず!」
 試合会場はどよめいている。
 ジャスティが目を覚ましたのは……ずいぶん経ってからだった。起き上がろうとする。
「あの女の子は……」
 エクスマリアがが頷いた。大丈夫の意味なのだろう。
「試合のお時間になりました、ジャスティ様、いえ……ジャスティライド様」
「きみは、家の者か?」
 家名を見抜かれ、狼狽する。誰にも言ったことはなかった。
「ご両親が心配されております、これ以上の出場は控えていただくようお願いします」
 スペルヴィアが深々と完璧な姿勢で一礼をする。
「いや、まだ間に合う!」
 しかし、エクスマリアが立ちふさがる。
「なにとぞ、ご理解ください」
「くっ……」

「ジャスティ……現れず! と、言うことは……。ペオ! ペオの優勝だーーー!!!」
 会場に湧き上がる興奮と、番狂わせのブーイング。
 すべてが、終わった。

●偽りの王座
 それから、しばらくの時が過ぎた。
 この闘技場で再び、ペオの試合が行われる。

「ああ、どこかで見た顔だ」
 ハンターが力なく笑った。
 あの試合の後、ハンターの前にモルグスが現れ「対戦相手に賭けてみろ」と言い残していった。ヤケになったハンターは、友人を通じて全財産を投じた。
 そして、もう一枚の手紙。負けた時のための手紙。
 あれは、腕のたしかな医者への紹介状だった。
「複雑だけどさ……まあ、妹のことは、なんとかなりそうなんだ。だからけじめをつけに来た。観客席からだけど」
 ハンターも、見に来たのだろう。最期を。

 今日は別の闘技場での覇者との対戦だった。
 来る日も来る日も、ペオは勝てない。観客心は離れつつあった。
 一撃で武器を取り落す。慌てて拾いに行く。
「俺はああいう人間臭い奴は好きダゼ?」
 降参を叫ぶ声は、観客の歓声とブーイングに遮られて聞こえない。
 無慈悲な一撃だった。重傷だろう。

「斯様な手で掴んだ勝利に何の意味があるのか」
 シュタインは嘲笑する。
「お膳立てされた栄光は誇りすらも蝕む、貴様は他人と戦う前に自分に打ち克つ事から始めるべきだった。哀れな奴よ」

 闘技場は新たなチャンピオンの誕生を歓迎する。ペオのことなどもう忘れたかのように。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

というわけで、八百長トーナメントはこれにて終了です。
見事、凡百の人間を優勝させることに成功しました。

イレギュラーズのみなさま、お疲れ様です!

収まるべきところに収まったというべきか……負けても、それ以上に得るものがあった対戦相手も多くいたようです。
素敵な試合を、ありがとうございました。

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