PandoraPartyProject

シナリオ詳細

色物パーティをぶちこわせ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●薔薇の香り
 とんでもない依頼がやってきたのは、和やかな天気の夜だった。
 その依頼を見たユリーカ・ユリカ(p3n000003)が、顔を引きつらせながらメンバーを集めると、引きつった表情で依頼の内容を話し出した。
「皆さんには、この子爵を落として欲しいのです」
 ひらり、と細密画がテーブルに置かれた。
 そこに描かれているのは、年の頃なら30に届くか届かない程度の青年だった。
 黒髪に切れ長の瞳の美貌の持ち主だ。全身が描かれているわけではないが、背も高そうな風貌をしている。
 落とす、という言葉に説得依頼だろうか?と視線をユーリカへやると、彼女が視線を逸らした。
「……いえ、違うのです。落とすというのは、籠絡して欲しいという意味なのです」
 少し顔を赤らめる姿は可愛らしい。
 ――つまりだ、色仕掛けで攻略しろ、ということだろう。
「今度、子爵様が恋人を選ぶパーティをするのですが、そのパーティには他国からも来客がいらっしゃいます。ただ、どうしても他国の相手と、この子爵様をくっつける事は避けたい、と依頼主の方は仰っているのです」
 貴族特有の遊びだ。婚約者などを選ぶパーティを開くのは、まぁいつの世もどの国でもありえる。想像するに、依頼主は幻想びいきなのだろう。他国の力を強化する事に抵抗があるのならば、違和感のない理由だ。
 だが、話はそこで終わらなかった。
「多分、皆さんが想像するのは、貴族の馬鹿息子が綺麗な奥さんをゲットするために、パーティを開いた、くらいに思っていると思うのですが……その、実はこの子爵様は男性の方が好きなのです」
 酒場の空気が凍ったのが分かる。
 そういえば、と辺りを見渡したところ、圧倒的に男性が多い。
 驚きはしたが、性差別になりかねないような言動は皆慎んでいるようだ。
 ただ、ある意味凄いパワーワードである。
「あ、言っておきますが、普通のパーティですよ。えっちなのはないです」
 当然である。
 そんな卑猥な依頼だったら誰も行こうとはしないだろう。いや、今も充分やる気は削がれる内容ではあったが。
「これが異性ならばまだ問題は無かったと思うのです。嫁入りしてしまえば、周囲の声などある程度相殺できますから。ただ、同性ともなると、他国からの視線は厳しいのです。特に天義辺りにとっては、おそらくとんでもない話だと言われるので、依頼主はそんな非難が子爵様に行くのを防ぎたいそうです」
 ユーリカは続ける。
「何も本当の意味で色仕掛けをして、子爵様をめろめろにするだけが解決策ではないのです。ざっくり言うと、このパーティをぶちこわして欲しい、と言うのが本当の趣旨の依頼なのです!」
 多少荒っぽい事でも問題は無い、そう言っているのだ。
「ただ、集まる方々には戦闘能力は皆無ですから、間違っても傷を負わせたりはしないでください。やるとしても物を壊すとか、そのくらいがちょうどいいのです。通常の参加方法以外に、スタッフで参加する方法もあります。依頼主がその辺りは便宜をはかってくれるとのことなのです!依頼主は立場上、自身で行動するのは難しいみたいなのです」
 さほど難しくはない依頼です! とユーリカは言うが、ある意味ではとても難しい依頼である。
「色々と性差別とか問題はあるので同情はあるのですけれど、この子爵様はちょっと行動が大胆すぎるのです。何とか、もう少し上手い立ち回りを取れるように持っていって欲しい、というのが依頼人から皆さんへのメッセージです」

 その場に居合わせたメンバーに、子爵の情報が配られる。
 そこには、彼のプロフィールがびっちりと記載されていた。

GMコメント

ちょっと毛色の違う依頼を出したくて書きました。
ましゅまろさんです。

基本的には明るいギャグのプレイング予定です。
事前準備や心情などがあると活躍できると思います。

それほど難しい依頼ではありません。

●子爵
30歳。未婚。結婚していない理由は明白で、身内は彼の性癖を知っています。
180㎝、73㎏の黒髪の美丈夫で、顔立ちはキツメです。
性格は、気障かつ大胆。雄弁。

●依頼人
子爵様の父親です。
子供のことは可愛がっており、大抵の我儘は今まで聞いて来ましたが、さすがに周囲の目を気にしており、今回のパーティを知り慌ててローレットに依頼を出した経緯があります。
今回のパーティには反対はしていますが、同性愛に関する嫌悪感などは一切なく、ただあくまで立場を気にして恋人を探して欲しいと思っている温厚な人物です。

●パーティ参加者
色々な国から私邸に招かれた面々。
全員が男性です。

●成功条件
参加の8人以外とのカップルを成立させない事
手段は問いません

  • 色物パーティをぶちこわせ完了
  • GM名ましゅまろさん
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年01月28日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
ピュティア・デルポイ・オリュンポス(p3p000254)
オリュンポスの聖女
ケント(p3p000618)
希望の結晶
ルドルフ・ファッジ(p3p000757)
爪を隠した猫
メテオラ・ビバーチェ・ルナライト(p3p000779)
鉄華繚乱の風切り刃
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
キュウビ・M・トモエ(p3p001434)
超病弱少女
陽陰・比(p3p001900)
光天水

リプレイ

●パーティ開始
 潜入したパーティ会場は不思議な雰囲気に包まれている。
 事前に知らされては居たが、男だらけである。左を見ても右を見ても男ばかりの、むさ苦しい空間だ。筋肉質のイケメンから、流麗な細身の美男子、愛らしい顔立ちの少年など、様々いる。
 『爪を隠した猫』ルドルフ・ファッジ(p3p000757)、『放蕩さん』陽陰・比(p3p001900)、『浮世を舞え、黒鉄の赤薔薇』メテオラ・ビバーチェ・ルナライト(p3p000779)の3名は今回、いけにえ・・・・・・いや、参加者としての潜入を選んだ。
 (俺にぴったりの仕事だし、今日は従者もいないしはりきって……やっぱり後が怖いけど!)
 ルドルフが僅かに身体を震わせる。
 性的なパーティではないとのことなので、この場で食べられるわけではないが、普通の男子ならそりゃ怖いに決まっている。今回、色仕掛けのため事前に子爵の好みは調べていたルドルフだったが、子爵は割と守備範囲が広かった。ばっちりルドルフもその範囲の中に入っているので安心である。
「人の性癖に口出しする訳では無いが、仕事と有ればしっかりとこなすだけ……これは仕事だ、多分」
 自身に言い聞かせるよう、メテオラが呟いた。
 白のタキシードに、薔薇を模した金属と宝石で出来たブローチをつけた姿は美青年と言って良いだろう。
 二人と違い、比は割と軽いノリで参加していた。彼女は女性なので、最悪の場合でも姿を見せれば、貞操は守られるのもあるだろう。男性になる事の出来るギフトは中々どうして有能だ。
「さ、子爵様探そっと~」
 楽しげに小さな背中がパーティ会場の中心へと動く。
『オリュンポスの聖女』ピュティア・デルポイ・オリュンポス(p3p000254)も、そんな3人を、設営された彼女のステージの脇から心配そうに見つめていた。
「頑張ってください~」
 3人には聞こえていないだろうが、密かにピュティアは応援した。

●スタッフたち

 『夢見る幻想』ドラマ・ゲツク(p3p000172)、『超病弱少女』キュウビ・M・トモエ(p3p001434)、『暴猛たる巨牛』ルウ・ジャガーノート(p3p000937) は給仕活スタッフとして参加していた。
「特殊性癖の金持ちね……。この間のワーロックロックより強敵かもしれんな……」
 先日入った依頼の事を想い出しながらルウが呟いた。
 戦闘依頼よりも、こういう仕事の方がある意味ではやりにくい事もある。
「彼の性癖を否定するつもりはないけど。まぁ、少しは彼にも自重してもらわないとね」
 トモエがルウの隣で肩をすくめる。
 スーツ系やドレスなど、3人の衣装は様々ではあるが、皆年若い女性だ。本来ならパーティの中心の花として注目を浴びるべきであるし、実際正常なパーティなら男どもは放っておかないだろう。
 だが、残念ながら今回のターゲットは男にしか興味が無いのだ。
 『希望の結晶』ケント(p3p000618) が不自然にならない程度の密接度で、ドラマに近づく。
「人の恋路にとやかく言う趣味はないが、国の貴族同士の諍いに繋がるのは少々厄介だ。申し訳ないが止めさせて貰おう」
 そう言うケントは、警備スタッフとして配置されている。まぁ、警備スタッフでも子爵の好みだったら迫られるのだが、きっと彼なら何とかできるだろう。
「スタッフの方には私たちへ協力して頂ける様伝え、了承を得ました」
 ドラマの案は、子爵の父親に歓迎された。実は、スタッフの多くは子爵を昔から知っている人ばかりだった。このパーティが発案された段階で、余計な詮索をされぬよう、子爵は最低限の事はしていたらしい。ただ、彼らもまた、このパーティには難色を示していたため、ドラマの案で誰かが傷つくわけではないと知れば、喜んで手を貸してくれたのだ。
「とにかく、子爵の誘惑が最優先だ。俺はスタッフだが、出来ることがあれば協力する」
「万が一身の危険を感じたら言ってくれ。まぁ、女性陣は大丈夫な気もするが」
 頼もしいルウとケントの言葉に頷く面々。

 (ある意味での)戦いのゴングが鳴った!

●子爵を堕とせ!

「子爵様~!」
 小悪魔な少年と言った風貌の比が、子爵の前で元気に挨拶する。
「やぁ」
 好意的に名前を呼ばれて、子爵は機嫌が良さそうに飲んでいたワインのグラスを傾けた。
 大人と呼ぶには少し幼げな雰囲気だったが、子爵だけでなく、他の参加者も思わず微笑ましく笑みを浮かべている。
 ――いくつなの?
 パーティの参加者の一人が、興味があるといった様子で比に近づく。
 その横をルドルフが自然に通り、子爵の前でお辞儀をする。
「はじめまして。未だ幻想の方々には無知なもので名前をお呼び出来ない失礼をどうかお許しを、子爵様」
「ああ、気にしないでくれ。私は貴族だが、位も子爵だしね。そこまで堅苦しいのは好きじゃないんだ」
 まぁ、真面目な人間なら、そもそもこんなパーティは開催しないだろう。どうやら、嘘や誤魔化すと言った言葉をこの子爵は知らないらしい。正直と言って良いのか、馬鹿と言って良いのか。
「お名前をお聞きしても?」
「ああ、私の名前か。私はエドワードだよ」
 ワインを飲みながら上機嫌で子爵が微笑んだ。

●ワインへの細工

 賑わうパーティの中。トモエとドラマはこっそりと酒へ細工をしていた。酒を染み込ませた脱脂綿でボトルやデカンタに酒を混入させ、子爵の飲むワインの度数を高める。
 度数の高めたワインをドラマがトレイに乗せ運び出して、さり気なく子爵へと渡そうと声をかける。
「ああ、ありがとう」
 子爵は微笑みながらそのワインを受け取ると、くいっと半分くらい飲んだ。
「ん……」
「どうかされましたか?」
 子爵が少しだけよろめいたのを、ルドルフが受け止める様に抱きしめた。
「いや、すまない。年かな、少し酒に酔ったみたいだ」
 そっと、ルドルフの手を子爵が触る。
 カクテルなどであれば、おそらく香りや味ですぐに何かおかしい味がする、と気付いたかも知れないが、ワインの渋さもあって、子爵は気付いていないようだ。また、貴族とは言え、ワイン通ではないのも幸運だった。
 (良かった。気付かれていないみたい)
 トモエはほっとした様子で息を吐いた。
 そんな様子を外側から見ていたルウも、心なしかほっとした様子だ。

 それから、子爵の機嫌はずっと良かった。見目麗しい男連中に囲まれてちやほやされるのは、男が好きな子爵にとっては至福の時間なのだろう。
 始まる前、子供っぽいと思われたらなぁ、と思っていた比だったが、そんな心配はいらなかったらしい。参加者の面々が可愛いね、と声をかけているのを見て、嫉妬なのか、気を惹かれたのだろう子爵は、積極的に話しかけていた。ただ、その瞳には情欲ではなく、どちらかと言えば弟などに向けるような物に近い物が宿っている。もう少し育ってから、と言うつもりなのかもしれない。
「ありがとう」
 ぽむん、と比の頭を撫でる子爵は、どこにでも居るお兄さん、そんな風にも見えた。
「しかし、私も年かな。酒の周りが早いような」
「大丈夫ですか?」
 少しふらついた子爵を支えながら、ルドルフが顔を覗き込んだ。
「おや、心配してくれるのかい?」
「ええ」
 にっこりと微笑むルドルフに、子爵が嬉しそうに微笑んだ。子爵の手がルドルフの耳にそっと伸ばされる。
 ぴくり、と震える耳が愛らしいと言った様子で撫でると、ルドルフが僅かに震える。
「可愛い耳だね」
 どうやら子爵は、動物の耳がお気に入りらしい。
「狡いな」
 ルドルフの反対側から、メテオラが囁くように言った。嫉妬している、と言う演技とはいえ、実に自然に、子爵の心には響いたらしい。その言葉に目を細めると、メテオラの美しい髪へと手を伸ばした。
「君の髪はとても綺麗だな。髪も変に整えるより、このくらい自然に流すのが私は好きだよ」
甘い言葉を惜しげも無く子爵は囁いた。指先で髪の毛を弄りながら、ご満悦だ。
「しかし、君たちは酒は飲まないのかい?」
 (来たな)
 ワインには仕掛けがしてあるので、出来れば飲みたくはないのだが、飲まないと言うのも怪しまれる。
(……まぁ、酒は得意じゃないんだが)
 意外にもメテオラは酒があまり得意ではなかった。
 だが、その一瞬の沈黙を、子爵は好意的に受け取ったらしい。
「いや、苦手ならば飲まなくて構わんよ。折角の出会いがお酒のせいで記憶が無い、なんてなったら勿体ないからね」
 ルドルフとメテオラは一瞬だけ顔を見合わせて、同時に子爵に微笑んだのだった。

●歌い手のお色気作戦?
 宴もたけなわと言った時刻。特設された小さなステージに、ピュティアが立っていた。
「聖女アイドルのカリスマ、ピュティアちゃんが、このステージで歌を披露しますよ~」
 明るく言うピュティアがマイクを通して歌を紡ぐ。会場はやはり男が好きな男が大半ではあったが、その中にもどうやらノーマル、もしくは両方大丈夫な者はいるらしい。
 歌に合わせて鼻歌を歌ったり、楽しそうに身体を揺らしている者もいる。
 子爵も、歌声を聞いてパチパチと拍手を送った。男にしか興味がない子爵も、歌は性別を問わず、素晴らしいものは素晴らしいと感じたのだろう。
 ――だが。
「う~ん、ピュティアちゃんも歌ってたらなんだか熱くなってきちゃったな~」
 歌が終わって、ピュティアが着ていた服を脱ぎ始めた事で、会場の空気がおかしな方向へと行き始めてしまう。
「皆さんが熱い視線で見てますね…私の歌の魅力にメロメロなんですね」
 顔を赤らめるもの、女が苦手なので顔を顰めるもの、反応は様々だったが、そこそこ静かにしっぽりとしていた会場がおかしな空気を醸し始めた。なんというのだろうか、こうちょっとピンクに染まりつつあるのだ。
皆が酒に酔っているのも、まずい。
「……いかんな」
 ケントが顔を引きつらせる。健全なパーティだったはずが、ピュティアの行動で、えっちな方向に傾き始めた事に動揺が隠せない。
 彼は今回警備を担当しているのだ。さすがにこのまま乱交なんて事になったら本当に目もあてられない。  まぁ、さすがにそんな事するほど、子供ではないだろうが。
 上機嫌だった子爵だったが、この行動には僅かに眉根を寄せた。彼の認識では、彼の恋人探しのためのパーティなのだから、面白くないのは仕方ないだろう。
 ケントは慌ててピュティアの腕を引っ張り、ステージから下ろす。
 視界の端に子爵が入り、己のギフトを使うと、明らかに機嫌を損ねているのが分かった。
 ケントが視線をトモエにやると、彼女が素早く動く。魔導式ブレーカーを落とすと、辺りが真っ暗になった。
 急に真っ暗になった事で場内がざわつく。
「ご安心ください。一時的なものです。慌てず、その場から動かないでください」
 凛としたルウの声が会場に響くと、ざわついていた場内が少し静かになった。
「やだ、怖ーい」
 可愛く比が子爵の腕に抱きつくと、子爵が安心させる様に比の手に自身の手を重ねた。
「大丈夫ですか?」
 ルドルフも負けじと、反対側の腕に手を絡める。
「その、できればもう少しこのままで…いさせて下さい」
 好意を寄せている相手から、控えめにそう言われて、嬉しくない訳がなく。暗闇で顔は見えなくとも、子爵が微笑んでいるのが空気で分かった。
 けれど、暗闇はそれほど長くはなかった。
 ゆっくりとランプが点灯し、辺りに光が戻る。暗闇だったのは時刻にして15分程度だった。

●お持ち帰り

 大分お酒が回った子爵がメテオラとルドルフを抱き寄せる。
 光が戻ってから、ずっとこんな調子だった。酔いがが大分回ったのだろう。子爵の頬はほんのりと赤い。
「酔ったのか?」
 甘える様に子爵の頬にメテオラが唇を寄せる。軽く触れるようなキスだったが、子爵はそれが大変お気に召したらしい。お返しとばかりにメテオラの頬へと口付けた。
 反対側で、目をパチパチさせたルドルフ。
(え、そこまでやるんだ)
 近くに居た比も負けじと「ずるーい」と声をあげる。
 子爵は困った子だなぁ、可愛い奴めと言わんばかりに比のおでこに口付けた。ハーレム状態の子爵の思考回路は酒の周りのせいもあり、もはやいちゃつく事しか考えていないらしい。周囲の招待客はそっちのけだった。
 つまり、誘惑は成功と言う事だ。
 連れ出す間もなく、会場でそのままいちゃつく3人を、招待客は仕方なさそうに苦く笑った。中には本当に悔しがった者も居るのだろうが、皆そこは大人である。
「子爵様」
 グラスを片付けたドラマが恭しくお辞儀をする。
「ん、なんだい?」
 3人を愛でる子爵は、首を傾げた。
「お相手が見つかったのであれば、場所を移されてはいかがですか?ここでは周囲の目もあります」
忘れてはいけないのは、このパーティがまた行われないよう、子爵に配慮して貰うのが本来の趣旨である。
「私は自由に行動しているだけだよ?それが何か問題かい?」
「ですが、折角の恋人ができても、このようなパーティを開かれては、皆様悲しまれるのでは?」
「む……」
 ドラマの言葉に、子爵は言葉を詰まらせた。3人を見ながら、視線を天井にやると、両手を挙げる。
「では、神に誓おう。こんなパーティはこれきりにすると」
 大仰な仕草に、ドラマは頷き下がった。3人が最終的に断ったとしても、トラウマみたいな感じで二度とやらないかもしれないし、そうすれば少しは懲りるはずだ。
 子爵は改めて3人を腕に抱き寄せる。
 (俺は何も見なかった)
 ケントはその4人の様子に視線を遠い所にやった。この仕事が終われば、すぐに忘れる。いや、忘れたかった。ちなみに、密かに子爵はケントにも熱い視線を送っていたのだが、それらをすべて見なかった事にしたケントだった。
「エドワード、行かないか?」
 メテオラが艶めいた視線を子爵に送ると、子爵は嬉しそうにメテオラの腰へと手を回した。メテオラだけでなく、さり気なくルドルフの腰にも手を回すのを忘れない辺り、ある意味この男ヤル。

 (このまま行くと本当にお持ち帰りなのでは?)
 そう、思ったトモエだったが、メテオラたちがそれでいいなら止める理由はない。最悪、比だけは助けるつもりだったが、メテオラとルドルフは大人なのだ。自分たちで責任を取れるだろう。

 ――そして、夜も更けた頃、子爵はお持ち帰りしたのだった。

●ふたりは生け贄
 周りの連中にワインを頭から浴びせたり、飲み比べを煽ったりして、賓客の意識を奪っていくのはルウだ。
 子爵がメテオラとルドルフをお持ち帰りしてしまい、言い方は悪いが、あぶれてしまった招待客は、会場でどんちゃん騒ぎになっていた。
「つぶれるまで飲むぞ!」
 威勢良くグラスを天に掲げるルウ。豪快の飲むその姿は豪気であり、輝いていた。男にしか興味がない者ですら、その男気に思わずときめくくらいに、その姿はカッコイイのだ。
「これは俺たちも飲む空気、か?」
 ケントが顔を引きつらせながら、トモエ、ドラマ、比を見る。
「私は未成年ですので……遠慮します」
 トモエはまだ14歳のため、丁重に断った。近くにあったジュースに手を伸ばすと、ドラマと比もジュースを手に取った。
「全員酔っているとが問題あるかもしれませんし、私もジュースにしておきます」
「あーあ。やっぱり子爵様の守備範囲は大人だったかー!なんかくやしー」
 大人なドラマに、悔しがる比。良い雰囲気になっていた比だったが、子爵も幼げな子に手を出すのはやはり少しだけためらいがあったのだろう。
 ――5年後だね。
 そう最後に子爵は比に言った。
 会場は、既に大宴会場状態になっていた。
「酔いに任せて色々と無かったコトにしてもらいましょう」
「……ああ、そうだな」
 しれっとしたドラマの言葉に、ケントが疲れた様子で呟いた。
「本当なら、皆様、ご歓談中恐れ入りますが……とか言って平和に終わらせるつもりだったんですけれど……まぁ、でもこれなら良いですね」
 トモエがどこか遠い目をして言った。お酒への細工など、実に優秀に立ち回った彼女だったが、誘惑が成功した以上はそれで良しと踏んだのだろう。
「ライブの後はサイン会でしたっけ?」
 のほほん、とピュティアが首を傾げるのを、少し困った様子で見守る面々。
「いえ、サイン会はなくて、ですね。ああ。もう、良いですね、それで」

 終わりよければすべて良しだ。

 ちなみに、すっかり気に入られたメテオラ、ルドルフの両名がお持ち帰りされた後にどうなったかは、神と本人たちのみぞ知る。

 ルウが主催の飲み比べは、招待客全員が撃沈し、ルウが勝利したのだった。

「男性同士の色恋……そう言ったコトには元々疎いのですが、この世の中にはそんなモノもあるのですね。
帰ったらそう言った書籍があるのか調べてみようかしら……」
 解散時、呟いたドラマの言葉に、全員が「やめとけ」と疲れた顔で言ったのは言うまでも無い。

成否

成功

MVP

ルドルフ・ファッジ(p3p000757)
爪を隠した猫

状態異常

なし

あとがき

皆さん参加ありがとうございました。
次回より、BLないしGL展開時は「攻め受け」を決めようと思います(きり)
余計な情報ですが、子爵は攻めです。

(`・ω・´)MPVです。
『爪を隠した猫』ルドルフ・ファッジ(p3p000757) さんです。

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