PandoraPartyProject

シナリオ詳細

舗装路に出現する破壊魔

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング



 『覇竜領域デザストル』
 長らく、人道未踏の地とされていた覇竜へ、ローレットイレギュラーズが立ち入ったのはここ1年あまりのこと。
 イレギュラーズだけでなく、少しずつ他種族も足を踏み入れるようになってきているが、今だ覇竜は棲息する生物はもちろん、地形すらも把握できていないような場所。
 ただ、そんな場所に、移動民族パサジール・ルメスの民や行商人などが商機を抱き、亜竜種とコンタクトを試みようとしている。
「覇竜へと商売の手を広げたいと考える商人は多いのです」
 商人ギルド・サヨナキドリ覇竜支部長である紲 冥穣(p3p010472)に、話を持ち掛けてきたのは、本に載った小人の男性、アンティーク・メツァク。
 彼は覇竜事業部調査開拓課の課長なのだ。
「そのとおりよ。アタシだって支部を置きたいくらいですもの」
 冥穣も同意する。その為なら、多少手間暇、資金すらもかける価値はあるとさえ考えている。
「気持ちはわかる。私とて、覇竜はまだ知らないことが多い。その名だけで価値が高まるというものだ」
 ラダ・ジグリ(p3p000271)が首肯する。
 覇竜独自に生息する生物、植物。鉱石、岩石でさえも他の地域にとっては宝となるのだ。
「そりゃ、覇竜の品となればね。疑わしくもあるけれど」
「ただ、実績ある商人が売り込めば、高値で買う人も多いだろうね」
 フラーゴラ・トラモント(p3p008825)がそっけないツッコミを返すと、零・K・メルヴィル(p3p000277)が少し唸って主観を語る。
 その品が覇竜のものであるという信頼ができれば、各地の好事家が金を出し惜しみせず自身の手元に置きたがるはずだ。
「商人の話はともかく、今回の依頼は道の整備と生態、地質調査なのだろう?」
 斉賀・京司 (p3p004491)が話題を変えると、アンティークはそうだと手を叩いて。
「別動隊に商人護衛を任せる間に、私達も覇竜についての見識を深めておきたいのですよ」
 商品を売り込むにも、ただ覇竜の品というだけでは弱い。
 その生物や植物がどういう位置づけをされていたのか、岩石や鉱石がどれだけの年数を重ねて成り立った物質なのか等々。
 覇竜という地域の調査を進めることで、それが売買する品として適しているかといったことも考える必要がある。
「売った品物に害があるとなったら大変っす」
「行商も大変なんスね」
 暁 無黒(p3p009772)、佐藤 美咲(p3p009818)も品物の品質管理というものの難しさを実感する。
「そうなんですよ。クレームとか入ると大変ですからね」
 品質は大事。品物に満足した購入者は新たな客となるのだ。
 こうして話をしている間にも、メンバー達はもう1人参加者を募る。
 覇竜に向かうのだ。できる限り戦力と準備を整え、万全の状態で向かいたい。
「もう少し時間はかかりそうですかね」
 その間、少しでも資料を纏めようと、アンティークは忙しなく卓上業務に追われていたようだった。


 準備を整えた一行は、玉髄の路へと至る。
 基本、行商は馬車での移動となる。メンバー達はひび割れた地面や崩れそうな崖などをチェックし、それらの対処を行う。
 また、生態調査なども併せて進める。
「ええ、これらの草の採取と……ああ、そこの足跡をチェックしていいですか?」
 いまだに分からぬことも多い覇竜について、調査対象はあまりにも膨大すぎる。
 その情報量もとんでもないものとなる為、アンティークは集まる資料を少しずつ整理し、纏める。
 作業は順調とも思えたが、覇竜に生息する魔物達はそんなイレギュラーズを見過ごさない。
 グアアアアアオオオオオオ!!
 突然聞こえてくる咆哮。
 ズシン、ズシンと地響きと共に前方から現れたのは、一つ目の巨人、サイクロプスだ。
「もう、折角、舗装したのに」
 呆れる冥穣だが、このままでは道が破壊される一方だし、何よりアンティークにも被害が及びかねない。
 巨躯の魔物と対するイレギュラーズだが、その最中、突撃してくる亜竜が2体。
 電気ウナギの様な姿のランドイールが2体、メンバー達を捕食すべく勢いよく突っ込んできたのだ。
 谷底という立地での戦場でデカブツが3体。
 厄介な相手と呆れながらも、メンバー達はそれらの掃討へと当たっていくのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。2023年もよろしくお願いいたします。
 今回はリクエストありがとうございます。
 覇竜、玉髄の路シナリオです。
 商人ギルド・サヨナキドリの『覇竜事業部 調査開拓課』からの依頼で、ギルド所属員と合わせて玉髄の路の舗装と合わせ、道中、近辺の調査を進めます。

●概要
 ラサ南部から覇竜へと至った後、馬車がスムーズに移動できるように玉髄の路を舗装します。
 合わせて、生息する生物調査、植物の採取、近辺地形の調査、崖や地面の地質調査などなど、調べることが多いようで、戦闘には参加しません。
 調査中に襲撃してくるのは魔物が先、戦闘中に亜竜も乱入してくるようです。
 谷底にもかかわらず、巨躯のモンスターが3体も現れる為、玉髄の路を破壊されぬよう対策が必要です。

●敵
○魔物:サイクロプス×1体
 全長7m、一つ目の怪力巨人。
 崖上に生えている巨木を片手で軽々と握り、力任せに殴り掛かってきます。
 また、強く足踏みしたり、轟音を伴う叫びを放ったり等、広範囲に及ぶ攻撃も脅威です。
 崖に挟まれた谷底での戦いとあり、周囲を破壊されてしまう恐れがあります。

○亜竜:ランドイール×2体
 全長5m程の亜竜。
 地上へと上がった電気ウナギが亜竜と化した個体と見られます。
 じたばたと暴れる他、前方に向かっての突撃、長い尻尾の叩きつけ、薙ぎ払い、電撃放出(直線、放出)と多彩な攻撃を行いなす。

●NPC
○アンティーク・メツァク
 もう1本のシナリオに参加、紲 冥穣 (p3p010472)さんの関係者で、依頼主です。
 20代、旅人男性。身長は30センチほどで光の翼を背に生やしています。
 商人ギルド・サヨナキドリ 覇竜事業部 調査開拓課 課長。
 イレギュラーズのスカウト、亜竜種との折衝、得られた情報の分析を行います。
 今回は同行しますが、調査、資料収集にと忙しいようで、戦闘には参加しません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 舗装路に出現する破壊魔完了
  • GM名なちゅい
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年01月22日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
※参加確定済み※
零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
※参加確定済み※
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
斉賀・京司(p3p004491)
雪花蝶
※参加確定済み※
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
※参加確定済み※
暁 無黒(p3p009772)
No.696
※参加確定済み※
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
※参加確定済み※
紲 冥穣(p3p010472)
紲の魔女
※参加確定済み※

リプレイ


 依頼者を引き連れ、覇竜へと至るイレギュラーズ。
 そのほとんどは商人ギルド・サヨナキドリの面々だ。
「ついに覇竜事業開始っすね!」
「わぁい! 念願のサヨナキドリの覇竜開拓だね……!」
 『No.696』暁 無黒(p3p009772)、『オリーブのしずく』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は首を長くして待っていた覇竜でのギルド活動に気合を漲らせる。
「いやぁ、やっとここにこぎつけられたな……覇竜はやっぱ思い入れも有るしなぁ」
 『恋揺れる天華』零・K・メルヴィル(p3p000277)もサヨナキドリとしてはもちろんのこと、彼自身も色々と縁を結んでおきたいから頑張りたいと語る。
「交易が上手くいけば、お互いもっと仲良くなれるっすよ!」
 無黒も未来の光景を思い浮かべ、仲間達にそうなると力説した。
「そういえば、覇竜も久しぶりっスねー……」
 すでに、覇竜ではローレットとしていくつかの事件を解決に導いているが、『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)もその際に訪れていたのだ。
 開拓自体はこれからだと、美咲は現状を確認する。
「サヨナキドリの開拓へ参加させてもらえるなんて光栄だ」
 手数が必要と聞き、駆け付けた『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)も精一杯助力する構えだ。
「はい、よろしく頼みます」
 本に載るアンティーク・メツァクはそのまま馬車へと入り、資料整理を始めていた。
「ただ『覇竜の品』というだけではただの珍品だ」
 ――何に使え、誰が欲するか。我々商人はそれを見出し需要と供給を繋げる者。
 『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)は、アンティークの仕事がその軸となる部分だと皆に語る。
(ふふ、楽しみだなぁ……! 珍しい植物や鉱物が手に入るといいのだけど。魔法に使える素材があるといいね)
 『紲の魔女』紲 冥穣(p3p010472)もこれからの活動に、いても立ってもいられず。
「さっ、調査よ調査! 頑張りましょみんな!」
「うっし! サヨナキドリのギルド員として皆の懸け橋に俺はなるっすよ!」
 冥穣に促され、無黒もこれ以上なく気合を入れる。
 フラーゴラも、自身のお肉屋さんが覇竜へと進出した場合の展望について想像し、売上がアップするだけでなく、珍しいお肉が狩猟できるかもしれないと考えて。
「うん、がんばらなきゃ!」
「僕もサヨナキドリのマネージャーだからね、仕事しようか」
「そうっスね。やっていきましょうか」
 覇竜での活動に強い期待を寄せる仲間達に触発されつつ、『雪花蝶』斉賀・京司(p3p004491)が無表情のまま促すと、美咲も同意し、手近な作業から取り掛かり始めるのである。


 玉髄の路は舗装路とは言っても、ほとんど自然そのままの道。加えて、様々な事柄の調査が必要で、やることは山積みだ。
 幸い、零の使う黄水晶の雫によって、天気は良好。調査活動に最適だ。
 京司のドレイク・チャリオッツの牽引力もあり、多くの作業道具などを積んでいた。
 それらを使い、力仕事は人馬形態となったラダと彼女のリトルワイバーン、がんもが中心となって作業をこなす。
 冥穣もまた馬車に舗装用の資材、道具を積んでいて、それらを作業に当たるメンバーへと提供する。
「道はなるべく平らのほうがいいね」
 フラーゴラもドレイク・チャリオッツの恩恵を受けて自分の馬に修理道具を積んでおり、それらを使って凸凹な道に土を入れたり、岩を砕いたりして道を均す。
 また、冥穣は植物や精霊と疎通し、近場にある植物、鉱物の調査を少しずつ進める。
 美咲もリトルワイバーンのバーべに騎乗し、折りたたみ式のドローンと合わせて周辺環境を確認し、皆と内容を共有する。
 パン売り用屋台に乗る零は、悪路に対応できるよう浮遊する。様々な知識を動員し、できるだけ必要となる資料を検索していた。
 彼はアンティークと協力し、調査、記録を進める。
 ただ、覇竜という地はそうした調査ばかりを進めさせてはくれない。
 グアアアアアオオオオオオ!!
 突如、どこからともなく何者かの咆哮が聞こえてきたのだ。
「敵襲っすよ!」
 地形や植物の調査報告と合わせ、広域俯瞰によって周囲の警戒に当たっていた無黒が仲間達へと大声で知らせる。
 折角進める舗装路が破壊されてはかなわないと、無黒は保護結界で道路を護る。
「これから沢山の人達が通る大事な道っすからね。傷一つつけさせやしないっすよ!」
 だが、襲い来る敵にとってはそんなこと関係ない。
 無黒が作業に当たる間、メンバー達が敵のやってくる方向へと集まってくる。
 地鳴りを響かせて歩いてきたのは、全長7mもある一つ目の巨人、サイクロプスである。
「逆側からも来るぞ」
 こちらも警戒を続けていたラダが別の敵の襲来を伝えると、逆側から谷底を滑るように2体の巨大な電気ウナギ……ランドイールがやってくる。
 自分達の縄張りで何をしているのだと言わんばかりに、そいつらは全身を電流で包み、こちらを威嚇してくる。
「君たちの生息域を邪魔して悪いが……、此方も覇竜の人々の発展と開拓を抱えてきている」
 大規模商人ギルド、サヨナキドリの社員として、ここは簡単に手を引くことはできないと京司が告げる。
 ただ、それで大人しくなるなら、覇竜の地が危険と言われることはなかっただろう。
「すみません。皆さん、対応を願います」
 馬車内を飛び回り、資料整理に追われるアンティークはイレギュラーズに敵対処を託す。
「アンティークは安全な場所で少し待っていてくれ! がんも、彼の事を頼むぞ」
 リトルワイバーンのがんもにアンティークを守るよう指示し、ラダは仲間と共に敵襲に当たるのだった。


 現れたのは3体の魔物達。
 奥地方面から現れるサイクロプスに対しては、フラーゴラが素早く泥と化した根源なる力を浴びせかけていく。
「敵が大きいってことは行動も大ぶりになるはず……!」
 フラーゴラがちょこまかと動く間に、美咲も追撃をかける。
「攻撃力の高いサイクロプスは抑えないといけませンね」
 美咲もサイクロプス目掛け、弾幕を展開していく。
 好き勝手に暴れさせれば、舗装路への被害は大きくなるはず。美咲はそれを食い止めようと、相手の力を封じにかかっていたのだ。
「よそ見なんかしないで、俺だけ見ていて。なんてね」
 グアオオオオオ!!
 加えて、史之が名乗りを上げてサイクロプスの気を引くと、敵は握っていた巨木を振るい、この場のメンバーを薙ぎ払う。
 フラーゴラが再度泥を浴びせかけてダメ押しにサイクロプスの運気を強く低下させる暇に、美咲が嵐止まぬ突撃戦術の構えをとって再度弾幕を展開する。
「うおおおおおおおおおっ!!」
 その最中、史之が全身全霊で大喝を吐き出し、サイクロプスの巨体を前方へと吹き飛ばす。
「はは、お前はでくのぼうだな? まちがいない」
 そんな彼に、巨人は瞳を血走らせていた。

 残るメンバーは、狭い谷底で滑り込んできたランドイールの対応に当たっていて。
 先手を取った零は奇襲をかける。
「……思ったんだけどよ、美味い事切り込み入れたらいい感じに食える肉みたいにできるんじゃねぇかな?」
 まだ距離があったこともあって、自らの武器を投影させたパンを高速射出させてランドイールへとぶつけていく。
 その際、食べられる相手だと認識していた零は戦いの後食べられるような処理も欠かさない。
 うねうねと接近し、雷撃を放射してくる敵の動きは思ったよりも速い。
「っと、ランドイールの電撃は気を付けないとっすね!?」
 無黒は前線の仲間から1人ずつ、一時的に顕現した英雄の鎧で覆うことで守りに徹する。
 冥穣は馬車にいるアンティークのことを気掛ける。
(あの子、あの子、強いのは知ってるけど興味あることに夢中になって周りの確認が疎かになってないか心配だわ)
 現状は敵に挟まれる形となっている戦場の中央で、彼は調査資料の纏めに勤しんでいるはずだ。
「狭い場所での混戦はまずいな。まずは1体、確実に落とれば」
 仲間達から距離をとるラダ。
 同意して表情変えずに頷く京司がそんな敵を足止めすべく、熱砂の嵐を巻き起こす。
 ラサで発生するかのような砂嵐は未体験とあって、ランドイール達も体に張り付く熱い砂に身悶えしていた。
 ラダもすかさず殺人術による極意を我が身に宿し、彼女もまたラサの熱砂を思わせる強烈なファニングショットを浴びせかけてランドイールの態勢を崩す。
 アンティークをいつでも庇えるよう一度りつつ、術式を組み上げた冥穣は魔光を仲間の攻撃が集中する1体へと撃ち込む。
 さらに、こちらの状況にも気を払うフラーゴラ。
 電撃の対策を講じていた彼女はそちら側にも泥を浴びせかける。
 思いもしない攻撃を連続して受け、ランドイール達も戸惑いを隠せずにいたようだった。


 相手の数は3体と少ないが、それぞれが巨躯であり、厄介な相手。
 双方にケイオスタイドを放っていたフラーゴラだったが、サイクロプス側へと発していたタイミングで戦局が変わる。
 メンバー達が抑えつけていたランドイールだったが、対応が遅れていた1体が布陣の中央側にまで突っ込んできたのだ。
 危険を察知した冥穣や無黒が直接抑えに回って叩くが、想いもしない尻尾の叩きつけをまともに受けた無黒は崩れ落ちかける。
 彼はパンドラを使って堪えるも、その傷は浅くなかったようだ。
 ただ、その間に攻撃が集中していた1体へと零が近づいて。
 その身に魔王の力を纏わせた零が残像を展開して翻弄したランドイールへと連打を打ち込むことでその意識を完全に奪い去った。
 1体を落とせば、イレギュラーズの攻勢が一気に強まる。
 布陣中央まで突っ込んできたランドイールにも攻撃が集中していく。
 放たれる電撃に警戒しながらも、ラダがその懐にまで潜り込んで。
「客でもない奴はお呼びじゃないんだ、退いてろ!」
 猪・鹿・蝶の三連撃で、ラダは確実にその命を刈り取る。
 完全に力を使い果たしたランドイールはだらしなく巨躯を横たえ、動かなくなってしまった。
 
 最初に現れたサイクロプスは依然として剛力をメンバー達へと叩きつけてくる。
 グオオオオ、グアオオオオオ!!
 耳を劈く程の大音量での叫び、そして、所かまわず暴れる巨人。
 対策もなしに戦っていれば、この一帯は崖崩れを起こし、瓦礫の山となっていたかもしれない。
 ただ、メンバー達がサイクロプスの力を封じていたことと、保護結界が合わせて働いていたことで周囲への被害はさほど大きくはない。
 とはいえ、地形などに気を払うことのないサイクロプス。
 そいつは獲物だと思っていた相手に体を傷つけられ、馬鹿にされたことで憤慨していたようである。
 その相手となっていたのは、煽り続けていた史之だ。
 時折、力を封じることに失敗することがあり、史之は冷静にそれを受け止め、自らを戦乙女の呼び声によって鼓舞する。
 そこに、ランドイールを倒したメンバー達が駆け付けてきて。
 見上げんばかりの曲の相手に、京司は神の呪いを刻み込む。
 彼は傷つく仲間の姿を見てすぐに手当へと当たっていたが、すでに冥穣が天使の歌声を響かせ、フラーゴラも暖かな光を降り注がせて癒しに当たっていた。
 アンティークのいる馬車は無事だと確認し、冥穣は仲間が立て直したことを確認する。
 その間、サイクロプス打倒の為、ラダが銀弾で胸部を穿ち、零が武器型のパンを投げつける。
 そこで、美咲が爆発とも思えるスピードで仕掛けて。
「本当はサイクロプスを倒して皆を支援する気だったっスが」
 逆に助けられる形となった美咲は再度、敵の巨大へと弾幕を浴びせかける。
 これまで以上にながく展開されたそれらはまさに巨人の体を蹂躙していく。
 アオオオオォォォォ……。
 膝から崩れ落ちる一つ目の巨体。
 地面へと巨人が落ちた振動は辺り一帯に響いていた。
 何とか倒すことができたと、安堵する史之。
 他メンバーも一息ついていた中、馬車の中にいたアンティークが周囲を見回して。
「ああ、もう終わったのですか。流石ですね」
 それはそうと、調べて欲しいものがと話を続ける当たり、ほとんど戦いに関心を持たぬ彼にメンバー達は思わず苦笑してしまうのだった。


 巨躯の敵を全て打ち破ったメンバー達。
 早速、京司はそれらの死骸に刃を入れ始める。
「解体して売ればいいよな。その為のドレイク・チャリオッツだし」
「確かにランドイールはウナギっぽい見た目なので食えるか気になりまスね……」
 その味に興味津々な美咲の隣、バーべも顔をのぞかせていたのを彼女が制して。
「バーベ、これは人が食えるか確認するから喰うんじゃないスよ」
 すると、首を傾げていたバーべは目の前の肉がダメと理解した直後、美咲へと大きく口を開く。
「違う違う……! 代わりに私を喰っていいとかそういう意味じゃねぇ……!」
 笑いが巻き起こる中、京司は食用の他、イールスキンを素材としての流用を考え、どんな日用品になりそうかと思案していた。
「まずは直してから調べようか」
 京司が言うように、仕事はまだまだこれから。
 安全確保を終えたラダは皆の傷を手早く処置し、路への被害も確認する。
 美咲もまた舗装路の破損状況をドローンやバーべを飛ばしつつ捜索スキルも生かして念入りに捜す。
「特にゴラ氏の破損状況は今後に響きまスからね」
 なお、戦いの被害は皆無とはいかなかったが、無黒の保護結界もあって軽微だった様子だ。
「ワタシは問題ないよ」
 健在を主張するフラーゴラはダブルワークによるフル稼働。
 近場の地質を調べ、発見した鉱石を鑑定眼でしっかりと調べる。
 同時に、彼女は近場の植物や虫、小動物に危険がないか、毒があるか、無害なものか、食べられるものかと様々な区分をしていく。 
 それらに関しては冥穣や零も助力する。
 ここでも冥穣は精霊の力を借りて未知の植物、鉱物の情報を得る。
 アンティークと協力する零は科学の素養も生かし、素早く把握に努めて目視で確認し、調査したものの記録を進めていた。

 補修はさほど時間がかからなかったが、そこからまた先へと道の舗装を続けるのがまた大仕事だ。
「生息する魔物が強すぎて根本解決にはならないだろうが、今やれることをやっておかねばね」
 先程から引き続き、ラダが舗装作業を少しずつ進める。
 その手伝いをと、史之がテスタメントによって強化した感覚で舗装が必要な個所を嗅ぎ取り、優先して修理していく。
 冥穣も土や岩の精霊に呼びかけて舗装を手伝ってもらう。
 戦いによって砕けた岩を退けてもらい、その穴を土砂で埋めてもらったり……。
 さらに、持ってきた資材で補強。これだけでもかなりの作業だ。
「将来的な理想としては舗装路でこの地域が一周出来ることだが」
 いきなり全てを完了させることは難しいと京司も考えている。
 ただ、舗装路が拡張すればするほど、雇用はもちろんのこと、人も増える。
「人が増えるってことは、生活が生まれる。この地に生活が生まれれば、商売がしやすくなる」
 京司の言葉で、皆が思い浮かべる将来の展望は広がるばかり。
 今回できることは決して多くないが、それでできる限り作業を進めたいと、皆疲れた体に鞭打って働く。
 時折、飛行する史之が上空から舗装の進捗状況を確認して。
「だいぶ進めたと思っていたけれど……」
 上空から見れば、それはほんの一部分でしかないと史之は考える。
 折角だからと、彼はついでに観光資源も捜そうとするが、さすがに飛び続ければ目立つ。
 また害敵に発見されかねないとアンティークらに諭され、彼はやむなく降り立っていた。
 時間的な制約もあったが、それでも冥穣はできるだけサンプルの採取も行い、調べた小動物などはスケッチを起こす。
 加えて、冥穣は予め用意していた地図を使い、それらの分析図も作成する。
 その作成した資料にアンティークも感嘆していた。
 地質調査していたラダも合いの手を入れ、さらに資料の質を高めていたのだが。
「しかし、あのサイクロプスはどこから現れたのか……」
 ラダは合間にその足跡をたどっていた。どうやら、崖の途中から谷底へと降り立っていたようで、その生息域までは特定できなかった。
 ただ、ラダはその降り立つ場所へと、余った資材で標識を作成する。
「起きうる危険を示せば、注意もしやすくなるはずだ」
 その標識作成が完了する頃には日が暮れかける。
 メンバー達は交易広場へと向かい、そこで一夜を過ごすことに。
「とりあえず、乾杯しようか」
 史之はギフトによってドリンクを出し、皆へと配る。
 今日一日、警戒態勢が続く中、覇竜の魔物との交戦に加えて並々ならぬ肉体作業と頭脳作業。
 疲労困憊のはずの皆を、史之は心から労いたいと考えていたのだ。
「乾杯の音頭? そうだね、では、この地に幸いあれ!」
 自身の言葉で杯を突き合わせるメンバー達へ、史之が今後の抱負を聞く。
 多くは作業中にも告げていたメンバーが多かったが、アンティークが改めて告げる。
「この覇竜の地で、大規模な交易ができるようにしたいですね」
「俺で良ければ力になるから、よかったらまた声かけてね」
 そんな彼に、史之は改めて依頼してほしいと願うのだった。

成否

成功

MVP

佐藤 美咲(p3p009818)
無職

状態異常

暁 無黒(p3p009772)[重傷]
No.696

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは悩みましたが、巨人の力を削ぎ、仲間の攻撃の起点となっていた貴方へ。
 今回の調査範囲で目ぼしいものは発見できませんでしたが、進展があれば注目すべき何かが見つかるかもしれません。
 今回はリクエスト、並びにご参加、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM