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シナリオ詳細

有力商人と妖艶なる魔物

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『覇竜領域デザストル』
 長らく、人道未踏の地とされていた覇竜へ、ローレットイレギュラーズが立ち入ったのはここ1年あまりのこと。
 イレギュラーズだけでなく、少しずつ他種族も足を踏み入れるようになってきているが、今だ覇竜は棲息する生物はもちろん、地形すらも把握できていないような場所。
 ただ、そんな場所に、移動民族パサジール・ルメスの民や行商人などが商機を抱き、亜竜種とコンタクトを試みようとしている。
「ラサの商人から、覇竜へ行商に行ってみたいという依頼があります」
 そう武器商人(p3p001107)に話を持ち掛けてきたのは、商人ギルド・サヨナキドリの覇竜事業部調査開拓課課長、アンティーク・メツァクだった。
「まあ、覇竜なら、商売人がブルーオーシャン戦略として興味を持つのは当然だね」
 自分の周りを飛び回る小さなアンティークを見回すことなく、武器商人は淡々と自分の考えを語る。
 ブルーオーシャン戦略とは、新市場を生み出し、事業展開していく戦略。主に経営戦略において使われる言葉だ。
 現状、覇竜との交易にはこの玉髄の路がメインとして使われる。
 裏でもう一本、交易路を開拓する動きもみられるが、現状中継地点となる予定の集落を結ぶのみ。その先、最近練達の技術を使った昇降機が作られたというが、実用に耐えるものかどうか。
「……まずは詳細を」
 今回の依頼について、ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)が説明を求めると、アンティークはうんと頷いて。
「ラサの有力商人……現状、公表は控えて欲しいそうだが、亜竜種とコンタクトを取りたいのだそうです」
「正体を伏せて欲しいのですか?」
 橋場・ステラ(p3p008617)の疑問にアンティークはまた頷く。
 有力商人自ら行商に参加するとなれば、様々な者に狙われる。
 競合勢力である商売人だけでなくそれらに雇われた暗殺者、金品狙いの強盗には直接でなく有力者が捕らわれることで長期にわたって金品要求が続くことも考えられる。
 もちろん、金品など興味のない覇竜棲息の凶暴な生物は言うに及ばない。それらにとっては裕福な者も貧乏な者も等しく餌でしかないのだから。
「その有力商人を交易広場まで護衛すればいいのであるな?」
「その人とおつき2名に御者2名、計5名か」
「しっかりと行商の品を積んでんだろ? 馬車もでけーんじゃん?」
 李 黒龍(p3p010263)、レオナ(p3p010430)、ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)が依頼内容を確認する。
「大体皆さんが言った通りですね。被害に遭うリスクも考えて、今回は馬車1台に留めるそうです」
「なら、私達が馬車を用意すれば、有力商人も売り込む品をさらに積めるのではないか?」
 ルクト・ナード(p3p007354)の提案はチームの状況如何だが、有力商人を満足させられれば、多少報酬に色がつくかもしれない。
「内容はシンプル。その商人を送り迎えするだけである」
 巫馬・峰風(p3p010411)の一言に、またもアンティークが同意して。
「はい。残念ながら私は別動隊と街道整備、地形調査に当たりますので同行できませんが……」
 アンティークは今回の依頼に参加を決めたメンバーを一人ずつ見回して。
「それでは、よろしくお願いします。皆さんの活躍に期待しています」
 そう告げ、アンティークは別動隊の方へと向かっていった。 


 さて、玉髄の路へと向かう一行へと、問題の有力商人が姿を現す。
「この度は私共の依頼を受けてくださり、ありがとうございます」
 馬車から姿を現したのは日に焼けた人間種の成人女性。
 彼女はシャルメイ・ピェリークと名乗り、頭を垂れる。
「覇竜の地へと至り、数々の難敵を倒したローレットイレギュラーズ……その手腕を見せていただきます」
 ラサでは、商人ピェリークという名はちらほら聞くことがある。
 ただ、それがこんな妙齢の女性だったとはと、驚くメンバーの姿も。

 さて、そんな商人と合わせおつきの女性2人、業者の男性2名を伴い、イレギュラーズも出立する。
 玉髄の路は深い谷底を進む。
 両サイドの視界は崖でほとんど閉ざされる為、警戒は楽と思いきやそうでもない。
 頭上から飛来する亜竜はもちろん、崖の穴等から飛び出す魔物、前後から強襲する素早い敵もいる。
 くすくす、くすくす……
 にゅるりと崖の影から姿を現した亜竜2体……女性の上半身と蛇の下半身を持つデルピュネー達が妖艶な笑いを浮かべ、イレギュラーズ一隊へと飛びかかってくる。
「早速おいでなすったね」
 武器商人の一声で身構える面々。
 馬車の中からシャルメイも戦況を窺う中、上空からも女性型の魔物が飛来してくる。
 ギャア、ギャア……・
 こちらはハルピュイア。しかも3体が我先にと降下してくる。
 ほぼ同時に襲ってきた魔物達から商人を護るべく、イレギュラーズは戦闘態勢をとるのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。2023年もよろしくお願いいたします。
 今回はリクエストありがとうございます。
 覇竜、玉髄の路シナリオです。
 商人ギルド・サヨナキドリの『覇竜事業部 調査開拓課』からの依頼で、ラサの商人を玉髄の路にある交易広場まで護衛していただきますよう願います。

●概要
 ラサ南部から覇竜へと至り、玉髄の路を通って交易広場を目指します。
 亜竜、魔物も敵によってはイレギュラーズの強さを知ってか慎重になる者もいますが、強者はお構いなしに襲い掛かってきます。

●敵
 最初に亜竜、立て続けに魔物が襲撃してきます。
 いずれも女性型の害敵です。

○亜竜:デルピュネー×2体
 上半身は艶やかな女性、下半身は蛇の姿をした亜竜です。2体でいるには番いなのかもしれません。
 誘惑して相手を魅了、混乱させるのを得意とし、水の術を使いこなすのと合わせ、蛇の尻尾を叩きつけ、相手を締め付けようとします。

○魔物:ハルピュイア×3体
 ハルピー、ハーピーとも呼ばれる女面長身の魔物。
 美しい歌声を響かせて聞きほれた相手に風術を浴びせ、切り裂き、その体をずたずたにして食らいます。
 食料を食い荒らすことで知られ、商人らも食料を狙われぬようにと警戒するような相手です。

●NPC
○アンティーク・メツァク
 もう1本のシナリオに参加、紲 冥穣(p3p010472)さんの関係者で、依頼主です。
 20代、旅人男性。身長は30センチほどで光の翼を背に生やしています。
 商人ギルド・サヨナキドリ 覇竜事業部 調査開拓課 課長。
 イレギュラーズのスカウト、亜竜種との折衝、得られた情報の分析を行います。
 残念ながらいろいろと忙しい彼はもう一方のシナリオへと向かっており、こちらには参加していません。

○シャルメイ・ピェリーク
 人間種20代。有力商人ピェリークその人で依頼者。
 日焼けした健康的な肌を持つ女性ですが、公には活動している姿を見ることは少なく、裏方として事業を営んでいます。
 今回は自ら交渉役となるべく、サヨナキドリを通して覇竜との交易に臨みます。
 悪漢程度なら撃退できる程度の体術、ナイフ術は

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 有力商人と妖艶なる魔物完了
  • GM名なちゅい
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年01月22日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
※参加確定済み※
武器商人(p3p001107)
闇之雲
※参加確定済み※
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
※参加確定済み※
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
※参加確定済み※
李 黒龍(p3p010263)
二人は情侶?
※参加確定済み※
ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)
ラッキージュート
※参加確定済み※
巫馬・峰風(p3p010411)
うまうま
※参加確定済み※
レオナ(p3p010430)
不退転
※参加確定済み※

リプレイ


 依頼者の乗る馬車を引き連れ、玉髄の路へと入るイレギュラーズ。
 その半数が商人ギルド「サヨナキドリ」に属するメンバーだ。
「いやァ、サヨナキドリを頼ってくれるというのも嬉しいものだね」
 オーナーである『闇之雲』武器商人(p3p001107)は自身のギルドに舞い込んだ依頼にご満悦だ。
「お仕事なのである!」
 『うまうま』巫馬・峰風(p3p010411)も意気揚々と今回の依頼に参加する。達成した後のご飯と酒の味の美味さを待ち詫びながら。
「やっと手にした“玉髄の路”の依頼」
 『楔断ちし者』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)もしみじみとこれまでの道程を振り返る。
 覇竜は立ち入るのすら厳しいと言われていたことを考えれば、イレギュラーズの力が認められたことは大きい。
 それでも、今回の護衛だけで安全な道になるとはいかないが、この成功が後の安全に繋がるならとヨタカは手を貸すことに決めたそうだ。
「商品の輸送、および護衛といった所か」
 依頼内容を改めて確認する『蒼空の眼』ルクト・ナード(p3p007354)。
 大局的な観点で、交易が盛んになるのはいいことだ。
 合わせて、自身の知り合いである商人の助けになるかもしれないと考えていた。
「不入虎穴、不得虎子。簡単に我々を通してくれるような生易しい交易路とはいかねぇあるね」
 得心したかのように語る、『尸解老仙』李 黒龍(p3p010263)が小さく頭を振って。
「否、此れ即ち僥倖」
 黒龍らサヨナキドリのイレギュラーズがこの土地の商売の先駆者となるまたとない機会だと、黒龍は捉えていた。
「さて、此度の交易が覇竜に良き影響がある様に尽力するつもりだ」
 自身も覇竜出身である『亜竜祓い』レオナ(p3p010430)は、今回の依頼者へとよろしく頼むと改めて挨拶を交わす。
「はい、よろしくお願いいたします」
 馬車の中からレオナに頭を下げるピェリーク。
 あまり露出の高くないその商人がシャルメイという女性であったことに意外と思った者は少なくないはず。
「護衛系のお仕事って、そういえば余り参加した事が無かったかもしれませんね……」
 『夜を裂く星』橋場・ステラ(p3p008617)は自身の参加した依頼を思い返しつつも、やることはいつも通り、障害は全力で撃ち砕くと気合を入れる。
「無事にこのコ達を送り届けて、サヨナキドリの評判を上げられる様に頑張るとしようかね。ヒヒヒヒヒ!」
 武器商人の笑いに、ピェリークのおつきが大丈夫かと小声で囁くが、イレギュラーズやサヨナキドリの活躍を知るピェリークが見ていてくださいと微笑む。
「武器商人さんに恩返しできるように張り切っちゃうぜ!」
 『ラッキー隊隊長』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)はイレギュラーズになった直後のことを思い出す。
 覇竜から出たばかりで右も左も分からぬ時、チョコを差し出すなど親切にしてくれた武器商人の力になりたいとジュートは気合いを入れる。
 とにかく、今回の輸送をしっかりこなそうとルクトが促す。
「さあ、仕事の時間だ。先に進むとしようか」
 イレギュラーズはそのまま、谷底の道を行くのである。


 幾度か往来のある玉髄の路だが、やはり危険な覇竜とあって気を抜くことはできない。
 武器商人はスキルを働かせ、周囲の状況を確認する。
(李老子、大丈夫かい)
(覇竜地域の行脚だからと持ち歩いてる導きの輝石が役立ってるあるよ)
 多少でも覇竜の地理に明るくなることで、黒龍も幾分気を楽にしていたようだ。
 同じく、輝石を持つジュートも外敵の奇襲に備える。
「大丈夫、そのまま行こうぜ!」
(了解だよ、幸運の旦那)
 ジュートが危険な区画を素早く通り抜けるよう指示を出せば、武器商人らは岩陰に潜むことで危険な魔物からできる限り見つからないよう移動していく。
「ラサはわからんであるが、覇竜領域はホームグラウンド。土地勘ちょっとあるのである」
 覇竜出身の峰風は亜竜種故飛行できるが、覇竜の空は危険地帯。下手に飛ぼうものなら亜竜の餌になりかねない。
「むしろ、地上からのほうが飛んで近づいてくるのがよく見えるまであるのであるぞ」
 油断することなく、峰風は空を見上げる……のだが。
 呑気に手作りアップルパイなどをさくさくと口にしていて。
「はぁー、サヨナキドリおやつ最高であるな!」
 なお、その味を堪能した峰風はポケットを叩いて再現して見せる。
「再現度を確認してもらえるであるか?」
 サヨナキドリの面々に分け、峰風がその味について問う。
 寸分違わぬ味だと頷く仲間達に、うんうんと得意げに頷く峰風は、ギルドで購入してくれというツッコミに表情を陰らせて。
「……自分で楽しむ用のギフト故、目溢しして欲しいのである……」
 楽しそうな笑いも起こりながらも進む一行。
 しかし、ステラの使役していた精霊が危険を察知すれば、皆手早く戦闘態勢に入る。
 くすくす、くすくす……
 岩陰からにゅるりと姿を現す女型の亜竜2体。
「いよいよ戦闘……って激マブじゃん!」
 その姿に、ジュートが思わず色気だつが、絡み合うようにして近づくそれら……デルピュネーは獲物を見つけたと妖艶な笑いを浮かべている。
「これは……もしかして、百合」
 くすくすと笑い、亜竜はなおも互いに身を寄せ、顔をすり合う様を峰風は目の当たりにして。
「はわわ……百合の間に挟まる特異運命座標にされてしまうのであるか…? なんて背徳的な……」
「え、番いなの? 俺の一目惚れ大クラッシュじゃねーのっ」
 峰風が戸惑い、ジュートが叫ぶ間、武器商人が陣地構築によって馬車を強化し、いざというときに護衛対象を護れるよう身構える。
「戦闘能力に不安があるコはなるべく馬車で大人しくしてておくれね」
 さすがに覇竜の魔物相手では多少の戦闘経験だと無きに等しい。おつきの者達は頷き、最悪主のピェリークを護れるようにと彼女を囲んでいた。
 前線に向かうメンバーに対し、ステラは馬車の傍で護衛しつつ敵を迎え撃とうとしたが。
「もう1種、飛来してきます!」
 ギャア、ギャア……。
 こちらも女形。3体の魔物がカラスのごとく鳴き叫びつつ、降下してくる。
「比較的広く立ち回れる場所で良かったです」
 最悪、狭い場所での挟み撃ちも想定していたステラだったが、思ったよりは有利に立ち回れそうだ。
「デルピュネーにハルピュイア……どちらも声で誘うタイプの魔物か」
 相手と自身、どちらの歌が勝つかなとヨタカは息を整える。
「敵は……覇竜らしく飛行能力を有していそうな敵と、蛇形の敵か」
 両方の敵を捉えたルクトは自らの役割が空にあると判断し、浮遊し始める。
 すでに商人達へと耳栓も渡していたルクトは、激しい飛行音を起こす。
「『蒼空の眼(スカイ・アイ)』、空対空戦闘に入る。地上は任せるぞ」
 仲間達がそれぞれ敵対応を始める間に、ルクトはハルピュイア目掛けて突貫を開始するのである。


 この場で襲ってきた敵グループは2種5体。いずれも妖艶な女性の魔物である。
 デルピュネーを優先対象として向かうメンバーが多い中、ルクトだけがハルピュイアを纏めて単騎で相手取る。
 生まれ持った魔物の翼に対し、ルクトの機械の翼。その違いは空気、音の影響がある。
(加速する音が響き、気流が乱れる感覚。……私はずっとこれに慣れてきたが、ここの魔物達はどうかな)
 どうあれ、ルクトに手加減はない。息を吸い込んで歌声を響かせようとする相手に対し、ルクトはまず燃費重視のSAG……ソードエアリアル・グラデーションで挑む。
 アアァ~~、アアァァ……♪
 先程の汚らしい鳴き声から一転、その歌声は近場にいた者を聞き惚れさせてしまう。
 だが、ルクトは構うことなく三次元的な空間機動で相手を翻弄し、空中殺法を仕掛ける。
「加速する音が響き、気流が乱れる感覚。……私はずっとこれに慣れてきたが、ここの魔物達はどうかな」
 それだけではない。彼女はさらに威力重視の攻撃手段も持っており、飛行能力を発揮してハルピュイアに攻め入る。

 くすくす、くすくす……。
 地上では、デルピュネーが笑いながらも妖艶な所作でこちらを惑わそうとしてくる。
 相手が仲間を狙うなら、レオナは盾となりとつつ攻撃にでも出る。
 にじり寄ってくる敵は武器商人が抑えつけ、笑いが仲間へと及んで理性を奪われることを避けようとする。
 そして、武器商人は2体纏めて破滅の呼び声を聞かせ、自身へと強く注意を引く。
 後は防御し、武器商人はそれらの攻撃を引き付け続ける。
(あの不死性ならば、そのままずっと引き付けで問題ないはずだろう)
 他メンバーに攻撃が及ぶなら庇うべきと考えるレオナ。
 今のところ、ハルピュイアは仲間が抑えていることもあり、今はデルピュネーの進行を食い止めつつ、レオナはその喉目掛けてコンバットナイフで鋭い突きを見舞う。
 回避されても構わない。
 レオナはただ連続して突いていくのみだ。
 入れ替わるように、メンバー達が次々に仕掛ける。
「精神耐性を持ってきたので、誘惑等は交わせるかな……?」
 相手は魅了や歌声でこちらを惑わす相手。
 ともあれ、ヨタカは序盤、中規模魔術を多重展開し、1体ずつ体力を削る。その体が燃え、毒に侵されれば徐々に苦しめることができる。
「……ちくしょー、彼女募集中!」
 ハートブレイクしてしまったジュートは仲間を支援するよう位置取り、至高と光輝の魔術を発動させる。
 …………!
 互いを傷つけられ、特に相方を攻撃されたことが許せなかったか敵も本気になり、下半身をうねらせてにじり寄ろうとしてくる。
 こちらを思い通りにしようと魅了してくるデルピュネーだが、峰風は高笑いして。
「背徳的なことにならないよう、精神耐性はばっちりであるがな! ふはは!」
 相手は2体一緒にいるなら、纏めて捕捉するのは楽だ。
 次の瞬間、放射される峰風の破式魔砲。
(射線には注意して、味方を巻き込まないように、です)
 続けざまにステラもまた魔神の一部を己の体に降ろしてから、一気に前方へのその魔力を解き放つ。
 予め心を静める香油で自らの可能性を広げていたステラは次なる一撃を為へとスムーズに取り掛かっていた。
(吾輩の様な爺に前衛での素手ゴロは少々キツいあるよ)
 黒龍も後方に位置取り、仲間達のフォローへと当たる。
 いかなる姿だろうが、覇竜を生き抜く生物。恐ろしいまでの力を持つことに変わりなく、前線が少しずつ疲弊していくこともあって、黒龍も仲間達に癒しをもたらす。
「あいや、怪しいまじないの類ではないあるよ。これ道教、知ってるあるか?」
 些か怪しげな術に見えなくもなかったが、彼は大人しく回復をと大いなる力を行使して仲間達の危機を打ち払うのである。


 しばらくは、淡々と戦いが繰り広げられる。
 戦局が大きく動くのは、デルピュネーが弱ってきたからだ。
 色香に多少惑わせたところで、すぐに立ち直るメンバーから攻撃が続けば、相手も蛇の尻尾を使った実力行使が多くなる。
 ヨタカが放つ魔曲も地味に利いていたのか、精彩さが駆けてきた相手にヨタカ自身が紫色の帳を降ろし、相手を追い込んでいく。
 それでも、デルピュネーが尻尾を叩きつけよ移してきたが、レオナが冷静に盾で凌いで。
「冷静さを欠いた相手は御しやすいものだ」
 連撃を浴びせていたレオナの一撃が相手の喉を貫く。
 もはや声すら上げられなくなったデルピュネーは大きく仰け反り、卒倒するように崩れ落ちる。
 我が身よりも大切な相方を失ったもう1体の怒り狂いようは並々ならぬものだったが、聖体頌歌を響かせつつ魔術を行使するジュートが相手の力を封じてしまう。
 それでも、強引に前線を突破しようとしてきたデルピュネーを、ステラが警戒して。
「気を付けてください。拙が迎撃します」
 とはいえ、相手はもはや手負いの獣。
 ステラの放った鋭い雷撃に射抜かれ、もう1体もどさりと地面に倒れ込む。
 しばらく這っていたデルピュネーだったが、相方の屍に触れると同時に、息を引き取ったのだった。

 残るは空を舞うハルピュイアの群れ。
「またまた激マブの敵ちゃんじゃん!」
 改めて、こちらの敵も見回すジュートは、地元にもかかわらず自分と相性よさげな敵が多いと歓喜する。
 何せ、風術を使うとはいえ、空の因子を持つ彼にとってはその攻撃はヌルさすら感じるのだ。
「ハルピュイア! これは有名どころであるな!」
 もう少し、友好的ならば歌で食べていく道もあっただろうにと多少残念がりながらも、峰風はその手に魔力を集めて。
「まあ、ぶちのめすのであるがな!」
 それでも、躊躇なく魔砲をぶっ放す峰風である。
 此方の抑えへと武器商人が回っており、敵も地上付近へと降りてきていた。
 ギャアギャア……!!
 歌声以外はなんとも耳障りな鳴き声を上げる魔物達。その声色は獲物を引き付ける為の処世術といったところか。
 3体纏めてとなれば抑え……武器商人の負担も増えるはずなのだが。
「……やや、絶好調あるな!」
 黒龍はそんな彼の姿を愉快そうに眺める。
 メンバーからは勿論、馬車内のピェリーク達からも大丈夫かといわんばかりの表情を感じた穀粒は別メンバーに大天使の祝福をもたらしつつ。
「あれは余程な事が無い限り放っといても生きてるからモーマンタイあるよ」
 むしろ、下手に治療すると弱体化する類であり、様子を見つつ好きに暴れさせとくのが最善と、黒龍は楽し気に語る。
 とはいえ、依頼主のピェリークすらもポカーンとしていたのだから、武器商人の姿はよほどすさまじいものだったのだろう。
 さて、ハルピュイアには序盤からルクトが武器を交えていて。
 空から相手に槍を振るい、射撃武装を浴びせていたルクト。
 仲間の抑えもあってか、比較的傷は軽微な状態だったが、相手も呑気に歌ってばかりはいられぬと感じたのか、風術の行使が増え、ルクトの傷も徐々に深まる。
「まだまだ終わらんぞ……さぁ、かかって来い」
 アアアァァァーーーーオ!
 思ったように仕留められぬ相手に苛立ちを見せ、ハルピュイアはなおも渦巻く風でイレギュラーズの体を引き裂こうとしてくる。
(先程のハルピュイアの歌、なかなかのものであったが)
 確かに相手の心を奪うほどの歌だとヨタカは感じていた。
 どちらの歌が上手かと気になるのは音楽家としての性だろう。
 ヨタカは魔曲に合わせて歌声を響かせる。
 仲間達に迷惑がかかる可能性を鑑みれば、試せるのは1度。
 ギフトと夜花の効力も合わせ、相手の感情をコントロールできるかと試してみるが、多少の逡巡を感じさせても魔物の感情を完全に支配するには至らない。
 実験成果としてはまずまずといったところ。
 ただ、相手が彼へと睨みつけるような視線を向けていたことから、歌声はヨタカに分があったようだ。
 その間も、イレギュラーズの攻撃は続く。
「個人的には、攻撃こそ最大の回復であると思うのである」
 攻撃を喰らう前に倒せば治療は必要ない理論と、峰風が魔砲を撃ち込んだ1体が明らかに落下する。
 それを、ルクトが逃さず。
「墜ちろ!」
 その体へと雷撃を叩き込むと、ハルピュイアは煙を吹いて地面に墜ちていった。
 ギャア、ギャア……!
 仲間が墜とされ、破れかぶれになった1体が馬車へと特攻しようとする。
 ヨタカが動くが、それより先にジュートが回り込んでいて。
「商人ピェリークって俺も聞いた事あるぐらい有名だけど、シャルメイちゃんはそんなでっけー名前背負って頑張ってんだもんな。……傷つけさせやしねぇよ」
 ならばと、敵は近場の黒龍にターゲットを移す。
「㗏、そこな化生の小娘。吾輩が攻撃手段を持たないか弱い爺だと思ってるあるね?」
 亀の甲より年の功とばかりに、彼は奉納の舞を披露して相手の気力を奪い、かつ大きく吹き飛ばす。
 追撃にはステラが当たり、魔神の力を宿す砲撃を浴びせかける。
 その火力に耐えきれず、2体目もまた白目を剥いて果てていく。
 残る1体はレオナが攻め入り、連続突きを浴びせかけていく。
 致命傷を避けて風術を使っていた最後のハルピュイアだったが、抑えていた武器商人の様子が変わって。
 ――我らの痛みに喝采を!
 純然たる力を束ねて生成された剣。
 それに切り裂かれたハルピュイアは叫び声すら上げられずに真っ二つになってしまったのだった。
 その時、馬車の中から、ピェリーク達がお見事と拍手をイレギュラーズに送ったのだった。


 一戦を終えたイレギュラーズ一行はその後、亜竜や魔物の襲来を受けることなく、交易広場へと至る。
「さすがイレギュラーズ。ありがとうございます」
 ピェリークは丁寧に頭を下げ、亜竜種との交渉へと向かう。
 サヨナキドリの面々もまた、思い思いに交易の為様々な交渉に当たっていたようだ。
「……ふむ。交易か」
 ルクトはここまで自分達が歩いてきた道を振り返る。
 今回歩んできた谷底の道もそうだが、もう一つ別ルートの開拓も進んでいるという。
「このルート、今後も使えそうなら整備するのも一つの手だな」
 本拠点をラサに置くルクトとしては、単純に覇竜の者と交流してみたいという気持ちも強い。
 ならばこそ、ラサと覇竜の間が繋がりやすくなるなら、個人的にも助かると考えたルクトは、ルート整備を行うことも検討し始めるのだった。

成否

成功

MVP

橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 マスターコメント、シャルメイ・ピェリークの説明が切れてました。
「悪漢程度なら撃退できる程度の体術、ナイフ術は持ち合わせていますが、覇竜の敵相手では太刀打ちできません。彼女のおつきも戦闘能力はありません」と記述予定でした。
 誠に申し訳ありません。

 MVPは2体を倒した貴方へお送りします。
 今回はリクエスト、並びにご参加ありがとうございました!

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