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シナリオ詳細

おもいでサンクチュアリ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●昔話をしようか
 奇道学者マーレの研究対象は多岐にわたる。
 成人女性。空の雲。稲。積み木。スクワットトレーニング。キリン。磨りガラス。恋愛。芋虫。氷彫刻。結婚詐欺。砂食。宗教。チェス。ありとあらゆるものに興味をもち、そのありようを研究するのが彼の趣味であり仕事であった。
 パトロンの貴族は彼の研究成果を気に入り、次なる研究を求めている。
 されど……。
「今回の研究内容は簡単に調べられるものではないぞ」
 何百何千冊とノートが積み上げられた部屋。
 新たにマーレがノートに記したタイトルは、『イレギュラーズ』であった。
 それも、イレギュラーズの過去。
 そして土地に関する研究である。

「要約するならば、『思い出の土地』だ。とおい過去に住んでいた場所。大切にしていた場所。
 そういったものをイレギュラーズの口から聞き取り、蓄積していくのだ」
 それがなんになるのかと問われて、マーレは左右非対称に顔を歪めた。
「君は人が左右交互に足を出して歩く時、その理由を問うのかね」
 要するにこれはライフワークであり、副産物はないに等しいと言いたいらしい。
 世に研究と呼ばれるものの多くはなんでやってるか分かんないもので、意図せず変なところで役立ったりもするものである。今すぐ役に立つことばかりが学問ではない、ということなのかもしれない。
「なに、意味や価値は後の誰かが決めるだろう。
 少なくとも今は、君が思い出を語ることに意味があり、それを書き取ることに価値がある。
 報酬は用意した。
 さあ、椅子にかけたまえ」

GMコメント

 こちらは、イレギュラーズ(PC)の思い出を語るシナリオです。
 テーマは『思い出の場所』。
 過去の経歴や事件といったものもダメじゃないですが、PCが大事にしている『思い出の場所』について語ってください。
 リプレイにも尺みたいなものがあるので、テーマを絞った方がよいという意味でもあります。

 思い出を語ることでキャラクターの深みが増したり、『そういや考えた無かったな』という部分を掘り下げてリプレイという色をつけることでより鮮明なキャラクタープロファイルができあがったりします。ぜひぜひお楽しみください。

 混沌世界に生きている方はこの世界の話になると思いますが、ウォーカーの方々は異世界の話になると思います。
 どちらにせよ、リプレイに書かれていない部分はそこはかとなく推しはかっていきますし、アドリブも多めになるかと思います。
 アドリブ禁止だよという方はその旨をプレイングに書いてください。なんていうか、なんとかします。
 また、PPPの世界観的になにかマズそうな場合はあえてスルーやカットをすることがあります。よほどまずい内容出ない限りは大丈夫だと思いますが、不安だったらアドリブを要請してください。キャラクターを壊さずいい具合にハンドリングします。

 一応1PCにつき1パートずつ描写していくことになりますが
 もし奇跡的に出身が同じ人や、思い出の場所が共有されている人がいましたら、一緒に思い出を語るプレイングを書いていただいてOKです。

【相談どうするんだろうこれ】
 参加メンバーが決まりましたら、お互い思い出の場所について語り合って見てください。
 と言いますのも、いきなりプレイングにズバッと書こうとするとあんがいまとまらないものでございます。他人に分かるように説明したり、他人にリアクションをとっていたりするとすんなり書けることが多くなりますので、とってもお勧めです。すごい余談ですが読書感想文とかもこの方式がお勧めです。

 それでは、よい思い出話を

  • おもいでサンクチュアリ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年09月15日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

栂瀬・なずな(p3p000494)
狐憑き
狗尾草 み猫(p3p001077)
暖かな腕
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
秋田 瑞穂(p3p005420)
田の神
ピュリエル(p3p005497)
葛城 リゲル(p3p005729)
竜爪黒狼
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹

リプレイ

●思い出を語ろうか
「なに、意味や価値は後の誰かが決めるだろう。
 少なくとも今は、君が思い出を語ることに意味があり、それを書き取ることに価値がある。
 報酬は用意した。
 さあ、椅子にかけたまえ」
 イレギュラーズたちの意見を聞いて用意された円形のテーブル。
 その一端に腰掛けた奇道学者マーレは、残る八人を椅子へと促した。
 赤い回転台の乗ったテーブルにはレガドラサゼシュテルアデプトネメシスアルティオネオフロンティアと各国を象徴するような料理が並べられており、誰でもそれをつまめるようにかゆっくりと回転を続けていた。
「おやあ? こりゃ懐かしい料理やにゃあ」
 ラサの香辛料がきいた料理を小皿にとて、『御猫街に彷徨ふ』狗尾草 み猫(p3p001077)は左右非対称の猫目を細めた。
「まずはうちから話そか。うちはラサの商人に生まれました……」
 蒸した鶏肉にすり込まれたナツメグの味。
 み猫は時を遡るかのように目を閉じた。

 あそこをたとえるなら、砂の山と星の海。
 寄り集まった石造りの家で、たいそう大事に育てられました。
 なんでかて、うちに商才はあらへんし、お父様の跡継ぎはお兄様と決まっとったからです。
 ほんとに才能がないかは分かりません。その時はうちも幼かったし、お母様が商才がないゆうて教育をさせへんかったのは事実やねえ。
 せやからやろか、ちょっと遠出をするにしても、ラサから出ることはあらへんかったにゃあ。お父様やお兄様はよく海洋のほうまで行って、土産話をしたもんですけれど……。
 寂しゅうなったかって? そうですねえ。あそこは明かりの少ない町でしたから、夜には星がよう見えるんです。お兄様たちもあの星の下におるんやと思ったら、不思議と寂しくなかった気ぃもします。
 けれど今こうしてラサの外に出ておるのは、寂しかったわけはにゃあて、狭い世界に我慢ができなかったんやと思います。
 朝起きて、水をくんで、お使いをして、お料理を作って、いずれ近くのどなたかと結婚して置いてゆく……。そうして一生を終えるもんもおります。それも幸せなんやと思うけれど、うちにはそれができんかった。うちには、ラサの砂漠は狭すぎたんです。
 折角空中庭園にイレギュラーズとして召喚もされてもうたわけですし、この機にと思いまして。ローレットで楽しゅうお仕事させてもろてます。
 実家に手紙ですか?
 そうですねぇ……。

 思いにふけるみ猫。
 それが話の終わりだと察したのか、『急がば突っ切れ』葛城 リゲル(p3p005729)がトントンとテーブルを指で叩いた。
「次は俺でいいか? 折角実家の話が出たんでよ、思い出した話をさせてもらうぜ」
 回るテーブルから骨付き肉を掴み取って、豪快に噛み千切るリゲル。
 薄紫色のお茶を勢いよく飲み干すと、湯飲みをテーブルに置いた。
「俺の生まれは幻想(レガド・イルシオン)にある街だったんだが、故郷と呼べるのはやっぱり親父の実家だ……」

 親父は冒険家でな。そりゃもうあちこち行ったもんだが、大怪我をしてお袋に引退を迫られたのさ。『膝に矢を受けて』ってやつだな。
 知ってるか? ありゃ怪我をして引退するのと、結婚を誓って跪くっつう二つの意味があるんだよ。
 親父の実家は何もねえ田舎だったぜ。
 いや、何もねえってのは言い過ぎだな。周りの奴はいい奴だったし、大人たちは大体優しかったし、年の近いやつこそいなかったが、退屈はしなくて済んだよ。
 やれ山で山菜採りだ川で魚釣りだって、遊ぶところも多かったしな。
 遊びといやあ、俺の武術は親父がそこで教えてくれたもんなんだよ。
 随分怪我もしたし、お袋はやめろって顔してたけどな。
 あー、そういや言ってなかったか。お袋は別の世界の出身なんだよ。平和な世界だったんだろうな。命がけで戦わなくていいなら、それに超したことはねえんだろうけど……。
 イレギュラーズになって反対されたかって? そりゃあ猛反対だったぜ。
 ある日突然召喚されて、イレギュラーズでございって実家に報告した時にお袋すげえ顔して怒ったもんだ。召喚されたのはお袋も一緒だし、どういう扱いを受けるかなんとなく知ってたろうしな。
 それで折れてたら俺も、お袋みてえに誰かと結婚して村で静かに暮らしたんだろうぜ。
 けど俺は説得した。
 何日もかけて少しずつだけど、分かって貰った。
 ……そうじゃねえな。わかり合ったんだと思う。
 最後のほうでさ、お袋言ってたんだ。『やっと手に入れた幸せをまたこの世界のせいで失うのが怖かった』って。
 そりゃお袋も別の世界で積み上げてきたもんを召喚でいきなり失ったわけだろ? けど『実の親が我が子の足を引っ張っちゃいけない』って、最後は俺を送り出してくれたんだ。
 幻想行きの馬車に乗るときなんか村の連中が応援しながら送り出してくれてよ、ちょっと泣けたぜ。
 だから俺は思ったよ。世界ってのはピンとこねえが、せめて村や大切な人は守ろうってよ。
 で、いつか必ず、生きてあの村に帰るんだ。

 リゲルの話はそこで終わった。
 どこかしんみりとした空気の中で、『特異運命座標』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)はコルタナ漬けをちびちびとつまんでいた。
 深緑の里アルティオ=エルムより伝来したコルタナという植物を花の蜜に漬けた食べ物である。少々人を選ぶ味わいだが、深緑を出た者はおおむね好むとも言われている。
「故郷の話が続いたね。それじゃあ、僕も故郷の話をしようかな」
 箸を置いて、顔ぶれをいまいちど見回すウィリアム。
「深緑の里アルティオ=エルムは知ってるよね。具体的にどこかって言われると困るんだけれど、大樹ファルカウが遠く見えていたから、きっと端のほうだったんじゃないかな……」

 僕の一族は木の上に住んでいてね。分かるかい? 大樹の端をくりぬいた家を、つると木の板をわたした足場が繋いでいるんだ。
 上は僕らのすみか。下は獣たちのすみか。そういう決まりがあってね。
 そこでいう『上』のことを、僕らは空中回廊って呼んでいたよ。
 想像できるかな。
 何本もの大樹。くりぬいた家々に灯った妖精の灯り。それらを繋ぐ細い空中回廊。
 勿論木の洞ばかりが家じゃ無いよ。外側に新しく小屋を建築したり、枝の間にハンモックをつけたり色々さ。あそこは天候や気候がおだやかだったからね。
 大樹っていうのは不思議なものでさ、何万年もたつと土が枝の上にも積もったりするんだ。そこに光る苔がはえたり花が咲いたり、それをまねて家の周りを花だらけにしたり、昼間は色鮮やかなものだったよ。
 お気に入りは見晴台かな。木のてっぺんまで登ると迷宮森林や大樹ファルカウが見えるんだ。僕らの里はちょうど西側にあったから、大樹ファルカウの向こうにオレンジ色の朝焼けが広がる光景が見えるんだ。見せてあげたいくらい美しいよ
 僕の一族のこと?
 そうだね、みんなのんびりした人だよ。寿命のせいかな、研究をする人が多かったよ。走り回る大根だとか飛び回る栗なんかを作って大騒ぎになったりして。
 逆に言えば、そういうことくらいしかトラブルがなくてね、里のみんなはお祭りみたいに楽しんだものだよ。
 研究といえば、地下の遺跡に住もうとする人たちもいたかな。大樹まだ新芽だったような何万年も前のもの……かどうかは分からないけど、とにかくすごく古い場所に好んで住むんだ。土が積もって何もかも無くなったように見えたそこを掘り返して住み着くんだ。
 そういえば、みんな元気かな。ちゃんと食べてるといいけど……。

 ウィリアムの話に区切りが付いたところで、『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)が瓜饅頭というなんともへんてこな味のする食べ物をごくりとやった。
 小籠包くらいのサイズで蒸した米から作った生地にそれよりも小さな瓜の甘煮が詰まっているという食べ物だ。今のところ下呂左衛門以外誰も手をつけていないが、下呂左衛門は気に入ったようでぱくぱくやっている。
「ではそろそろ、拙者の故郷について話すとするでござる」

 拙者へんぴな田舎の出でござる。生まれは大いなる蓮の上、大々池で産湯につかるしがないカエルでござる。
 そうでござるなあ……思い出すのは秋の稲穂。涼しい森。広い池。
 もう随分遠いことのように思えるのでござるが、拙者にとってはそれこそが世界の全てでござった。
 これぞ井の中の蛙でござろうか。などと……。
 ふむ。これで終わってはあんまりでござるな?
 そうでござるなあ……では、思い出の場所について話をしようか。
 拙者の里には季節外れに桜の咲く山がある。
 殿様は……ああ、そうでござる、拙者の里のお殿様でざる。
 この殿様はこの桜が一面咲くのがたいそうお好みで、細い山道をせっせと登ればこの桜が見られるのでござるよ。
 拙者と殿と水蓮殿はあの場所でよく遊んだものでござる。拙者なんかはよく背中に毛虫を放りこまれてべそをかいたものでござるよ。……おっと、食事中にする話でもなかったでござるな。失礼御免。
 今はどうか?
 あそこは……うむ。
 友が眠る、寂しい場所でござる。
 まだ拙者は、あそこへ胸を張っていけそうにないでござる。

 トンと湯飲みを置いた下呂左衛門。
 その空気を察して、『世界の広さを識る者』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)が低く唸った。
「この世界も広い。色々な場所があるようだ。では、そうだね。私のかつて過ごした世界について話そうか。私の暮らした世界はほとんどが海でね。ああ、こちらもそうなのだと聞いているが、大陸が船そのものだったのだ」

 想像できるだろうか。巨大な大陸がボートのように海に浮かんでいるんだ。
 海と言っても黒い真空の海でね、夜になると見える星空のような……そう、その真っ暗な空間が、大陸を包んでいた。あそこには上下も左右もなくて、足の付いた場所が地面って考えさ。
 我々はそれを星の海と……もしくは単に『海』と形容した。
 私が生まれたのは船の上でね。
 おっと、ややこしくしてはいけないな。
 大陸が巨大な船だとすれば、私が生まれたのは小舟。星の海をわたるために人々が建造した船さ。
 殆どの者がそうして船の上で生まれ、生きて、そして死んでいった。
 宇宙葬って知っているかい? 死ぬと星の海に遺体をつめた箱を流して、星々のなかへ溶け込ませるのさ。
 これは伝え聞いた話なんだがね、私の先祖……何代前かわからないほど昔の人々は故郷の星を誰かに売ったのだそうだ。
 買い戻そうとした運動もあったそうだし、きっと総意ではなかったんだろうね。
 けれどもう買い戻し運動はなされていない。なぜならもう、星はなくなったのだと……。
 あの船には人工土や草や花や循環する水があったが、自然の大地と土はなかった。
 そういう意味では、この世界に召喚された私は幸運なのかもしれない。
 ……なんだね?
 ああ、すでにない母なる星の名前かい?
 歴史の本で読んだことがあるよ。
 たしか……『桜の園』と書いてあった。

 本でも閉じるようにぱたんと手を打ち合わせたイシュトカ。
 ここで話はおしまいだといわんばかりの様子に、それまでピャッキーという棒状チョコレート菓子を小刻みにぽりぽりしていたピュリエル(p3p005497)が停止した。
「お! 順番的にピュリの番ですか!? ピャッキー食べます?」

 あっごめんなさいなのです。ピュリの故郷のお話ですね?
 えっとですねえ、ピュリは製造されてからこの世界にくるまで127年77日とんで3時間7分2秒過ごしていた職場なのです!
 ごめんなさいテキトーいいました! 127年ちょっとです!
 あっはい製造されたんです。誕生? じゃなくて。練達ってあるじゃないですか。あそこになんだか近い雰囲気の場所で、ピュリみたいに沢山のアンドロイドっていうひとたちがあっちこっちで働いてました。あーでも人間もいたんですよ? アンドロイドと人間。カオスシードの平均寿命ってどのくらいでしたっけ? 150年ありましたっけ? とにかくそのくらい生きるひとたちなのです。
 ピュリはなんと! 事務仕事専用アンドロイドなのです! 製造されたときはピュリみたいに声が綺麗であちこちキュッてしたキレイなアンドロイドっていなかったのでとってもちやほやされたのでした! 50年くらい!
 ピュリはそれはもう沢山の人間さんをお迎えしたりお見送りしたりで……あー、オフィスって分かりますか? ギルドみたいな? ところで、人間さんとピュリたちアンドロイドが一緒に働いていたのです。人間って寿命は長いけど働く時間は短いみたいで、ピュリたちみたいにずーっと働いてるとこう……なんていうんでしょう、しなびる? やせる? とにかくシオシオになって、パーッてなってしまうのです。
 毎日楽しそうに働くひともいますし、毎日つらそうに働くひともいますし。こういうの人それぞれっていうんですか? ピュリはそういう毎日がとっても愛おしくて、愛おしくて、愛おしいのです。
 ピュリにとってピュリを製造したあの場所と、ピュリの心を形作ったあの場所が、大事な大事な思い出の場所なのです。

 なのです! と大きな声で繰り返したピュリエルの横で、『狐憑き』栂瀬・なずな(p3p000494)はこくこくと深く頷いていた。
「変な言い方ですけど、皆さんの故郷はとても素敵な場所だったのですね。なんだか色々な場所を旅行したような気分です。えっと……」
 コップを両手で包むようにして、指をふわふわとさせるなずな。
「皆さんからしたら普通というか……変わったことは話せないと思うんですけど……それでもいいですか?」
 なずなは上目遣いにそう言ってから、すこしずつ自分の過去について話始めた。

 私の故郷というか、住んでいた世界は普通の場所でした。
 普通の家庭に生まれて、普通に学校に通って、普通に高校を卒業して……。
 ええと、日本っていう国のことを聞いたことはありませんか?
 ウォーカーの方にはそういう場所から来た方も多いって聞いたんですけど……えっ、同じ日本でも全然違うこともあるので一概には……すみません。
 そうですね。私の話でした。
 ピュリエルさんが仕事場の話をしていたように、思い出の場所について話していいですか?
 私にとって思い出の場所といえば、一面全部のお花畑です。
 本当に全部がお花畑だったわけじゃないんですけど、そう錯覚しちゃうくらい広くて綺麗で、目の前がぱぁって開けるような場所だったのを覚えています。
 具体的にどこだったのか、なんていう場所だったのかは分からないんです。一回だけ親に連れて行ってもらっただけなので……。
 けど、なんでなんでしょう。あの時に見た一面全部のお花畑が、ずっと記憶の中で鮮明に残り続けてて……。

「この世界には不思議な場所が沢山あって、そのたびにびっくりすると思うんですけど、あの場所の記憶はそれでもずっと残るのかなって……そんな風に思います」
「ふむふむ、ほのひもひはまむぐ、むぐぐ……」
 『田の神』秋田 瑞穂(p3p005420)が握り飯を頬張ったまま喋ろうとして胸につかえた。
 胸をばしばし叩いてお茶を飲み干し、はふーと心底安堵の息をつけば、頭上になんでかしらんけど乗ってた鶏もはふーと息をついた。
 まねするなと言って掴もうとするも、素早く飛んで逃げていく。
「お? もしかしてわしが最後かの? トリに相応しいかはわからんが……よし、任せておけ。しっかり語って聞かせよう!」

 わしの故郷は遠い異世界、豊葦原中国(あしはらのなかつくに)……まあ日本と呼ばれておった。そこのなずなと同じ世界かの? 名前だけ同じ別世界かもしれんが。
 わしはな、その世界における農耕の神なのじゃ!
 ……いや、ちがうぞ? イタいひとを見る目でみるんじゃない。
 本当に神なんじゃよ? わしはある名のある山に住んでおって、あたりの村人たちはわしをありがたがったものじゃ。
 知っておるか? 益獣である狐をありがたがって神聖視するうち信仰がうまれ神となる……おや? ますますなずなと類似点が。
 ともかくじゃ、長生きした化け狐であるところのわしは神と相成り豊葦原千五百秋瑞穂国(とよあしはらのちいおあきのみずほのくに)が一角の農耕を司り毎年の祈願に応えて稲穂よ実れと藁を振ったものじゃ。
 そのせいばかりではないがの、毎年秋になれば稲穂が垂れて風に揺れるのじゃ。波打つ黄金の海とばかりにの。

「幸いこちらにも米も稲もあるらしくての。昔を懐かしんでここでも稲作をしておる。ついでに一部じゃ信仰もされておる」
 瑞穂の話が済んだところで、マーレはパタンとノートを閉じた。
「ありがとう。まるで書き切れないほどの思い出だ。コインを積み上げたかいがあったというもの。
 どれ、ここのお代は私がもつから、それぞれ好きなものを頼みなさい」
 とこうした具合に、場は思い出話に咲かせたのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 尺の収まる限り書きに書いたる八人分。
 こうした機会は非常にまれではございますが、皆様の故郷を語ることでより世界がひろがったように思います。
 へんな話ではありますが、PBWの世界は無限に広いかわりに語られぬかぎり闇に隠れるかのごとく見えません。皆様の故郷のお話が照らされたことで、この世界がぐっと明るくなったことでしょう。
 そしていつか、そのうちの一つに触れる日がくるといいですよね。

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