PandoraPartyProject

シナリオ詳細

氷の花冠

完了

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オープニング

・氷の花

 ドーム状の硝子で覆われた空間だった。硝子の向こうでは星々がきらめき、こちら側では白い雪が降り注いでいる、そんな不思議な場所。

「雪は綺麗だわ、触ったら溶けちゃうのが勿体ないくらい」
「そうね。でも氷ならすぐには溶けないわよ」

 雪の精たちが、地面に降り積った雪をすくい上げては、花びらのように散らしている。そうして地面に再び落ちた雪が、きらりと白い光を放った。

 淡い雪の結晶が大きくなり、形を変えていく。成長したそれは一輪の花の形になり、ドームの天井に向かってそのかんばせを向けた。
 彼女たちが雪を散らす度、小さな花がいくつも咲いていく。ただの雪原だったこの場所が、氷の花々で埋められていく。

「これも素敵ね。せっかくだわ、花冠でも作りましょう」

 雪の精たちが氷の花を一つひとつ摘み取り、丁寧に編んでいく。出来上がった花冠をお互いの頭の上にのせて、彼女たちは微笑む。

「こんなに楽しいのだから、私たちだけで遊ぶのはもったいないわ」
「他の人を呼びましょう」
「冷たくないように、お花たちには特別な魔法をかけておきましょう」

 これで誰でも遊びに来られるわね。少女たちはきゃっきゃっと騒ぎながら、来客をもてなすために氷の花を作り、時折空を見上げるのだった。


・スノードーム

「雪の精たちからの招待よ」

 もう随分と寒くなったわね。そう呟きながら、境界案内人のカトレアは本の表紙を静かに抱えた。

「スノードームみたいな世界があるの」

 ドーム状の硝子で覆われた場所が、雪の精の住処だ。
 空から降り注いだ雪が雪原を作り、そこでは少女たちが自由に遊んでいる。彼女たちが魔法をかけ、すくい上げた雪が再び地面に落ちた時、その結晶は花の形へと変わる。

「不思議なお花でね。普通のお花みたいに、花冠にしたり、指輪に作ったりできるの」

 触れても簡単には溶けない、壊れもしないのは魔法でできているからか。

「みんな、誰かが遊びにきてくれるのを待っているわ」

 冷たくないように魔法をかけているから、氷の花をしばらく持っていたり、身に着けたりしても問題ない。そんな魔法の花を用意して、雪の精は雪が舞う中で空を見上げている。誰かが遊びに来る瞬間を見つめるために。

「それじゃ、自由に楽しんでね」

 カトレアはそう言って、艶やかに微笑んだ。

NMコメント

 こんにちは。椿叶です。
 スノードームのような場所で遊ぶ話です。このラリーは一章構成です。

世界観:
 ドーム状の硝子で覆われ、雪が降り注いでいる空間です。硝子の外には星が瞬き、まるでスノードームのような場所になっています。

目的:
 雪の精が作り出した氷の花で自由に遊んでください。花冠や指輪のような装飾品を作ることもできますし、摘み取って花束にすることもできます。

雪の精について:
 少女の姿をした精霊です。雪や氷で遊ぶのが大好きで、自分たち以外の人にも氷の花を見てもらいたいと思っています。氷の花で楽しく遊んだり、一緒に何かを作ったりすると喜びます。

できること:
・雪の精と対話する。
・氷の花で遊ぶ


サンプルプレイング:

 氷の花で遊べるの? 本当だ、触っても冷たくない。それに、とても綺麗だね。こんなのを作れるなんて、すごい魔法なんだね。折角だから、花冠の作り方を教えてくれないかい?

 それではよろしくお願いします。

  • 氷の花冠完了
  • NM名花籠しずく
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年12月16日 20時40分
  • 章数1章
  • 総採用数3人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

フーガ・リリオ(p3p010595)
君を護る黄金百合
佐倉・望乃(p3p010720)
貴方を護る紅薔薇

「まあ、人が来てくれたわ」
「嬉しいわ。もっと花を咲かせましょ」

 ふわふわとした雪の上に降り立ったのは、フーガと望乃だ。二人は空から降り注ぐ雪、その隙間から覗く硝子を見上げて、ほうと息を零した。この空間の向こう側では星が輝いているなんて、不思議だ。

 ここで何をしようかと微笑み合って、氷の花でお揃いの指輪を作ることにした。

「結構難しいもんだな」

 指輪は小さくて、フーガには作るのが難しい。小さな花が指輪の中央で咲くようにしたかったけれど、思っていたようにはなかなか出来ない。望乃とお揃いなのは嬉しいけれど、もう少し綺麗なものを作って、彼女に見せたかった。

「そうだ。これはおいらの得意な方だ」

 思いついたのは、花冠だった。いつも花畑で昼寝するついでに暇つぶしで作っているから、綺麗に作れる。
 花を摘んで編み上げていくと、望乃が目を輝かせる。出来上がったそれを彼女の頭の上にのせると、望乃の頬がぽっと色づいた。

「これは望乃のものだよ。世界で一番愛おしいお姫様」

 フーガに見つめられて、望乃はふにゃりと表情を崩した。お揃いの指輪と、贈られた花冠。それから優しい言葉に胸がどきどきと音を立てる。
 手をそっと伸ばして花冠に触れると、きらりと閃くものがあった。

「こうやって、マフラーを広げて被った上に花冠を載せたら」

 花嫁さんのヴェールみたいに見えません? 微笑みながら首を傾げると、今度はフーガが顔を赤くした。

「へへ、確かに、雪の花嫁さんだな」

 ヴェールについた雪の結晶がそれらしくて、可愛らしい。フーガがそう頷くと、望乃はお礼だと言って氷の花を摘み始める。
 やがて望乃がフーガに差し出したのは、透明な色の花束。星の輝きをほんのりうつした、想いのこもった贈り物。

「世界で一番素敵な、わたしの王子様へ」

 望乃が抱えている気持ちは、小さな声に収まるものではないけれど、雪の精たちに聴かれてしまうのは恥ずかしい。だからフーガの耳元に唇を近づけて、そっと囁いた。

「愛しています」

 愛の言葉は、この世界の、二人だけの秘密。
 ただ一人にしか聞こえない声で囁かれた言葉が胸に染みわたって、フーガは望乃の頬に手を添えた。

「おいらも、愛している」

 こつんとあたった額。囁いた言葉の意味をそのまま伝えるように、静かに口づけた。
 触れた唇からお互いの体温が溶けあって、甘く優しい幸せを感じられた。


「指輪も花冠もお持ち帰りできたら良いが、氷が溶けちまうのか」

 寂しさを感じたフーガが呟くと、望乃がフーガの手を握った。

「氷の花をお持ち帰りできないのは残念ですが、その分たくさんの思い出をお持ち帰りしましょうね」

 望乃がにこりと微笑むと、フーガもそうだなと笑った。

「望乃との楽しい思い出は溶けねーよ」

 甘い思い出も、楽しい記憶も、胸にしまい込んで。スノードームの景色を眺めるように、何度も思い出すのだ。

成否

成功


第1章 第2節

チェルハ 03(p3p010803)
地平線の彼方

 雪は降り積ったばかりのようで、またふかふかしている。雪の精たちがその雪をすくいあげては散らし、あちこちに花を咲かせている。

 触れても溶けない氷の花がこんなに咲いているなんて、何とも不思議な場所だ。03が空を見上げれば、雪景色の隙間から星空が覗いて、ここが昼間なのか夜なのか分からなくなる。

 不変的なものが無いと不安になる人にはいい場所だと思う。魔法がかけられたこの場所は、硝子の中で永遠を繰り返すのだから。

 出会った雪の精に導かれるままに歩き、氷の花畑の真ん中に座る。指先で花をつつくと、冷たさを感じないどころか、ほんのり温かいように思えた。

「すごいね。それに、綺麗だ」

 03が呟くと、少女たちはきゃっきゃっと笑った。

「そうでしょう」
「私たちが心込めて作ったのよ」

 微笑み合う雪の精たちを見ていると、ある「お願い」をしたくなった。

「妖精さん。氷の花の髪飾りを、妖精さんとボクの分で作らせてもらえないか」

 聞けば、この硝子の外では魔法は解けてしまうという。氷は溶けて水滴に変わってしまうから、記憶に大切に留めてほしいとのことだった。

 永遠が続くのは、この世界だけ。だけどそれでも、またいつかこんな素敵な場所で出会うための「約束」が欲しかった。

 編み上げた髪飾りを、お互いの髪にさす。約束のしるしはここでしか咲かないけれど、約束は残り続けるのだと思った。

成否

成功


第1章 第3節

 はらはらと降る雪を、雪の精が見上げている。
 髪に挿した髪飾り、真似をして作った指輪や花束たちを抱えて、少女たちは硝子で囲われた空間を見つめている。

 雪も氷も、人の手で触れるには冷たくて、残しておくためには人の身体は熱すぎる。だから、短い間を楽しむための魔法をかけたのだ。

「楽しかったわね」
「楽しんでくれたわね」
「喜んでくれてよかった」

 少女たちは微笑みながら、冷たいような温かいような宝物を抱える。魔法にかけられている時間は長くは続かないのかもしれないけれど、こんな宝物ができたこと、ここに来てくれた人との記憶までがなくなるわけではないのだ。

「宝物ができたわ」

 そう言って少女たちは、氷の花を愛おしそうに見つめるのだった。

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