PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<総軍鏖殺>ラッキー・ウェディング

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●スピギャレリとアンシュッツ
「結婚おめでとう!」
 ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)は籠に入った花びらを掴むと、階段を下りる新郎新婦を飾り立てるかのようにまき散らす。
 色とりどりの花びらの中で幸せそうに微笑むのは、ウェディングドレスの女性。彼女に腕を抱かれ、緊張気味にぎくしゃく歩く男はアンシュッツ。
 今から少しだけまえ、『この戦いで生き残ったら結婚するんだ』といって本当に生き残った男である。
「な? 言ったとおりだろ。不運は俺に吸われるんだよ」
「吸われたかどうかはわかんねーが、アンタらがいなきゃコレが葬式になってたのは事実だよな」
 ジュートが隣のスピギャレリという男の肘を小突くと、スピギャレリは苦笑を浮かべてこたえた。
 ハンサムで女にモテるスピギャレリと、地味だが優しいアンシュッツ。
 幼なじみであった二人は同じ女性を好きになって告白し、そして射止めたのはアンシュッツのほうだった。
 それでもこうして祝福しているのだから、彼らの仲は良好なままのようだ。
「しっかし、ポルコフス砦……あそこでの戦いは酷かったな。兵站は尽きるし防御は薄いし援軍は来ねえし。あそこにローレットが来てなかったら冗談じゃなく死んでたぜ」
「だな……」
 バルバジスが皇帝を倒しその座を奪ってからしばらく、鉄帝国は混乱の渦にあった。
 国もバラバラなら軍もバラバラ。南部軍は幸いザーバという将軍によって派閥として纏まったが、天衝種(アンチ・ヘイヴン)や暴徒による被害は少なくない。
 そんな中でもこうして結婚式を開いたのは、せめて明るいニュースをという彼らの想いからだった。
「もうすぐ厳しい冬が来る。今までは『いつも通り』で乗り越えてきたが、今年はわからねえ。皆不安なのさ」
「冬になると不安なのか?」
「動物も隠れるし草も生えねえだろ? 特に鉄帝は雪も深いからな。そうなると移動も難しくなるし、備蓄が充分にないとマジで村ごと飢えて死んじまうんだ」
「マジかよ……どおりで幻想に侵略したがるわけだぜ」
 鉄帝が厳しい土地だとは聞いていたが、まさかそこまでとは。覇竜から出たばかりのジュートからすればまさに別世界のハナシであった。
 実際本格的な冬に突入すると結婚式などあげていられないだろうし、不安を和らげるという意味でも、今やっておいて正解ということなのだろう。
「ま、アンシュッツたちなら乗り越えられるだろ。なんたって女神に一族郎党キレられてる俺がいるからな」
「不運はアンタに吸われるって? それ前に言われたときから思ってたんだが……」
 と、その時。
 遠くで叫び声があがった。
 モンスターだ。逃げろ。そういう声だ。
 嫌な予感に皆が振り向き、中でもジュートとアンシュッツはそれぞれ携帯していた武器に手をかける。
 すると、遠い空にカラスめいた一団が見えた。
 加えて土煙をあげてこちへ接近する巨体の姿。
「アンタ、トラブル呼び込んでねえか!?」
「逆だ逆!」
 ジュートはピストルをモンスターの集団に向け、指笛でワイバーンを呼び寄せる。
「結婚式に俺らを招待したおかげで、この場で撃退できるっつー『ラッキー』なんだぜ?」

GMコメント

 鉄帝南部、ポルコフス砦とそれに繋がる村で結婚式が開かれました。
 暗いニュースが続く中でパッと咲いた明るい話題に皆祝福と喜びの声をあげるなか、それを引き裂くかのように新皇帝派の軍とモンスターの一団が襲撃をしかけてきたのでした。
 狙いはおそらく物資の『徴収』。
 強制的にここの物資を奪い去り、冬の備蓄にしようというのでしょう。
 彼らを追い返し、未来と平和を護りましょう。

●エネミー
・フュネライ×多数
 巨大なカラスめいた怪物です。騎乗生物としても優秀で、兵士がこれに騎乗して射撃武器を装備しています。

・新皇帝派軍兵士×多数
 鉄帝の新皇帝派(つまりバルナバス派)の兵士たちです。
 潤沢な武装をもち、数も多いと非常に面倒な相手です。

・キュクロープス×少数
 単眼巨人型のモンスターです。大きな棍棒を武器にし、建造物の破壊に適しています。
 彼が結婚式場に到達してしまうとかなり大変なことになるので、その前に迎撃すべきでしょう。

・フェリックス少佐
 新皇帝派の指揮官で優れた戦闘能力を持っています。特に拳銃による射撃が上手く、彼も専用のフュネライに騎乗して戦闘を行います。

●味方と状況
 アンシュッツとスピギャレリは会場の招待客たちを建物内へと避難させ、念のためにと中で彼らを守ってくれています。
 式場まで敵が到達してしまうと実質的な敗北になってしまうので、そうならないように敵を阻むとよいでしょう。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <総軍鏖殺>ラッキー・ウェディング完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月14日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)
ラッキージュート
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで
トール=アシェンプテル(p3p010816)
つれないシンデレラ
リリーベル・リボングラッセ(p3p010887)
おくすり
ルエル・ベスティオ(p3p010888)
虚飾の徒花

リプレイ

●ラッキー&ハッピー
 『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は教会の屋根に上り、銀の弓を手に取った。
「確かに、我々が此処に居合わせたことは結果的に幸運なのかもしれませんが。
 此れは悪運が強いと言うのが正しい姿の様な、気が」
 そんな風に言ってみたものの、いまの鉄帝国の状況を思えば『悪運が強い』のはむしろ最適と言えるのかもしれない。
 いっずれによせ……。
「記念すべき日を台無しにされるべきではありませんね」
 弓に数本の矢をつがえ、見やる。
 前方からは無数のフュネライの影。それに騎乗している新皇帝派の兵士たち。
 射程に入るのはほぼ同時といった所だろう。アッシュは距離と速度を計算し、矢を放つ。

「連中の狙いが結婚式を台無しにすることなら俺も喜んで向こうに加勢をしたものだが、略奪が目的というならば残念ながら見逃す事は出来ないな。
 いや、ぶっちゃけ結婚式の邪魔をしに来ても許したりしないが。そこはまあ言う必要は無いだろう」
 白衣のポケットに手を入れ、やれやれといった様子で呟く『隠者』回言 世界(p3p007315)。
「俺たちが対応するのはキュプロープス……と、フェネライから墜落した兵士たちってとこか」
「兵士? あーそうか、ダメージを受けすぎると墜落するんだったね」
 『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)はポンと手を叩き、歩く速度を速める。
 前方からずしんずしんと足音をたてて近づいてくるキュプロープスを迎え撃つためだ。
「ところで、この展開見ちゃうとジュートは冠婚葬祭に招待するかナヤマシイね。ムダな悲劇は避けられるけれど騒ぎになって式がタイヘンなことになっちゃうし」
 そんなイグナートから左右にわかれ散開する形を取る『甘やかなる毒花』リリーベル・リボングラッセ(p3p010887)たち。
「人生の晴れ舞台を邪魔するなんて、いけない人達!
 そんな敵さんには強めのお灸を据えて帰ってもらいましょう、ね♡」
 手にした長い杖の先端にはピンクの結晶が固定されている。このまま振り回しても結構なダメージを与えそうな杖だが、石から溢れているのは言葉にできぬ感情の波動である。
「あらあら、尊き門出に立ち塞がろうだなんて、演出過剰ではありません?
 引き立て役は早急に身を引くのが一番ですわよ♡」
 一方で『特異運命座標』ルエル・ベスティオ(p3p010888)は刀を抜き、白い人狼のオーラを湧き上がらせる。
 なかなかにやる気十分な面々だ。
「んまぁ~!!! ハレの日を汚すなんてひでぇことする連中もいたもんですねぇ! オホホホ!」
 『北辰より来たる母神』水天宮 妙見子(p3p010644)はそんな仲間の様子にどこかほっこりした顔をしてから、そろそろ自分も言った様子で懐から巨大な鉄扇を取り出した。
 握った手を僅かに緩めるとパァンという小気味よい音と共に広がり、自らの身を半分ほど隠してしまう。
 そんな彼女を、ルエルやリリーベルが左右からちらりと見た。
「ちょっとぉ。人のこと言えないって顔するんじゃありませんよ! んも~! そんなわけで新皇帝派軍の方々にはお帰り頂きましょう♡」
 その点には皆同意するところだ。
 ワイバーンへの餌やり(?)を終えた『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は、ワイバーンの背に飛び乗ると空中へと上昇した。
「招待状やご祝儀も持たずに式場に乗り込もうとはマナーがなっていませんね!
 すみやかに華やかに御退場いただきましょう!」
 握った輝剣『プリンセス・シンデレラ』の柄部分からオーロラ色の刀身を伸ばし、戦闘態勢をとるトール。
 同じ高さへと上昇した『ラッキー隊隊長』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)。彼はワイバーンには乗らず、自らの翼で空を飛んでいる。
「おいおい、ご祝儀も無しに大所帯で押しかけて来んのはマナー違反なんじゃねぇのかー?
 ドレスコードは魔物NG! とっととお引き取り戴こうぜ!」
 翼を大きく羽ばたかせると、敵集団めがけて真っ先に突っ込んでいく。
「女神に一族郎党キレられてる俺のラッキーフェイス、ちゃーんと見てけよ!」

●フェリックス少佐の不運
 新皇帝派の軍人フェリックスは生まれながらにラッキーな男だった。
 優秀な武官であった父と、ラド・バウでもB級上位に達していた母という優秀な遺伝子に恵まれて誕生し、幼少の頃から武人としての英才教育を受けていた。
 剣の腕は一流。銃は撃てば百発百中。人馬一体に騎乗動物を乗りこなし、ジュニア闘技大会では幾度も優勝を収めた。
 そうして手に入れた小さな勲章は軍部に優遇されるという形で発揮され、高等部を卒業する頃には大人の店に連れて行かれたり高額な接待をうけたりといった形で彼はいくつもの部隊からスカウトを受けていた。彼はそこで、『道を踏み外した』のだった。
 産まれのラッキーによって得た才能は彼を天狗にし、まだ何者にも成っていないというのに一流の将軍や皇帝といったS級人間になったつもりで自分勝手に振る舞い続け、彼は『少佐止まり』というあまりにも自意識とかけ離れた地位に40年も居続けることになった。
 いつか引き上げられる。いつか誰かが目を付ける。いつか誰かが俺の本当の価値を見いだす。そう考え続けて……今に至った男である。
「ここで手柄を上げれば中佐――いや大佐も通り越して将軍の地位までありうるだろう! これまでの実績が芽吹くのだ! 全員殺せ、全て奪え! 俺の手柄だ!」
 そう叫んだ彼は率いていたフェネライ騎乗兵たちに全速突撃を命じた。自らの矢となり盾となり死ねという命令である。
 にも関わらず兵たちは文句も言わずにフェネライに加速を命じ、銃剣を構えて低空飛行状態をとる。
 その時だ。銀の矢が放物線を描いて先頭の一人の胸に突き刺さったのは。
「なっ――射程外だったんだぞ! 予め放っておいたというのか!?」
 胸に矢を受けた兵はフェネライから転落。
 操縦者を失い慌てたフェネライに残る矢が次々に刺さり、ギエエという叫びを残して墜落させていく。刺さった瞬間に弾けた銀色の魔力を見るに、フェネライの命はないだろう。
 キッと兵たちは教会の屋上に立ち次なる矢をつがえるアッシュを睨んだ。
「次、来ます!」
「こっちもだ! 対応しろ!」
 前に出ていた兵たちは銃剣を撃ちまくり、突っ込んでくるジュート射撃はすべて直撃コース――である筈が、突如吹いた突風によってジュートの翼があおられる。
「うおっと!」
 身体をきりもみ回転させて体勢をたてなおすジュート。その横を直撃コースだった筈の弾が抜けていく。
「お、ラッキー。また生き延びたぜ!」
 にやりと笑い、敵兵めがけて拳銃を撃ちまくる。
 そこへ追撃をしかけたのがトールだった。
 ワイバーンの上で輝剣『プリンセス・シンデレラ』を構えると、一度刀身を収め、内部で力を増幅させる。
 溜めて撃つ。あえて子供っぽく言うとデコピンの要領で、トールは剣で空を薙いだ。
「想定された用途とは違いますが、致し方ありません!」
 突如解き放たれたオーロラカーテンが兵達を包み、フェネライの翼を破壊していく。
 悲鳴をあげ転落する兵たちを見て、トールはウッと顔を背けた。彼らも飛行し戦うのだから落下制御装備くらいはつけているだろうと信じて、後続の兵達へと挑みかかった。

 世界は教会に保護結界をはると、ポケットから取り出した精霊爆弾をアンシュッツへとパスする。
「これは?」
「あくまで保険だ。使わないに越したことは無い」
 世界はそうとだけ告げ、教会に背を向けて歩き出した。
 アッシュやジュート、トールたちの活躍によって次々と敵兵が墜落し、地面と激突する寸前のあたりで落下速度を制御する魔法を発動させてぼてりと地面に落ちていた。
 が、そこは訓練された鉄帝兵。すぐに起き上がり銃剣を世界たちへと突きつける。
「こいつらにトドメを刺すのが俺の仕事、ってわけか」
 まるで数多の世界を渡り歩いてきたような(そして事実その通りの)老獪さを秘めた目をして、彼は眼鏡にそっと指をあてた。
 薄く笑う彼からあふれ出た魔力が変幻自在に枝分かれし、こちらを狙う兵たちの喉や腹へと突き刺さっていく。いや、そんなものは幻覚だ。世界が表情を変え、言葉を発しただけで彼らは自らが殺されると錯覚し、銃剣を構え無理矢理な突撃を敢行してしまった。
 そこへ、妙見子がずいっと前に出た。
 翳した鉄扇によって突撃する兵たちの闇雲な射撃を防御すると、背後から湧き上がる狐めいた形の魔力対をけしかける。
 衝撃となって敵兵へぶつかったことで、兵達は次々に吹き飛ばされる。そのラッシュは続くリリーベルやルエルを支援するに充分なものであった。
 妙見子の加護を受け走るルエル。
「美しい私ちゃんの魅惑的な姿にどうか見惚れてくださいませ♡」
 墜落し次々とはねのけられる兵士達をすれ違いざまに斬り付けると、こちらへ突進してくるキュプロープスめがけ跳躍した。
 対抗しようと棍棒を叩きつけてくるキュプロープス。が、ルエルは棍棒が激突する寸前で身を回転されるとまるで歯車がかみあったかのように棍棒の上へと回り込んだ。スタンと靴が鳴り、見開かれた目がキュプロープスの単眼に映り込む。
 こうなれば棍棒を駆け上がるだけだ。一直線に棍棒から腕へ、腕から肩へと駆け上がるとその首を刀でもって切り飛ばす。
「連中かなり『やる』ぞ! 火力を集中させろ!」
 フェリックスの命令によってフュネライに騎乗した兵達がルエルへと一斉に銃を向け、発砲。しかしその時には既にリリーベルが杖を高く掲げていた。
「式場を台無しにされるのを見るのは、人の為に在る天使としては見過ごせないもの。力を貸すわ」
 ピンクの水晶が輝きを増し、放たれた球状のそれがルエルを包み込んで広がる。
 銃弾の直撃を幾度もうけまくったはずのルエルは、球体の内側に溢れる甘い魔力によって傷を瞬時に修復させていった。
 狙いを読まれたことで舌打ちするフェリックス。
 その一方で、イグナートは別のキュプロープスとタイマンをはっていた。
「この国でもまだまだヒトが幸せになって行こうとしてるんだ! ここを守れないなら何のタメの力だって話だよ!」
 イグナートの戦闘力はもはや世界クラスだ。彼を潰そうと難度も棍棒を叩きつけるキュプロープスの連打を、イグナートはステップと軽業でなんなく回避。相手が横薙ぎにしようと棍棒で地面を削りにかかったその瞬間に、ドンと掌底を叩き込んだ。巨人の棍棒がイグナートの腕ひとつに止められたのである。イグナートは棍棒の一部をがしりと『削り取る』と、握った拳をそのままにキュプロープスのすねを殴りつけた。巨大な骨がへし折れる音と共に、キュプロープスが地面へと転倒する。

「ほらほら~! 妙見子ちゃんはこちらですよ!」
 巨大な鉄扇をばさばさと振りながら大地を駆け抜ける妙見子がいた。
 そんな妙見子を叩き潰そうと棍棒を振り上げて追跡するキュプロープス。
 が、妙見子とてただ逃げていたわけではない。
 扇をジャッと畳むと素早く紐を結びつける。こうなればもはや鉄の棍棒である。
 分厚い靴底でブレーキをかけ、反転。舞い上がる土煙と枯れ草の中、ここぞとばかりに振り下ろしてきたキュプロープスの棍棒を妙見子は己の鉄扇で受け止めた。
 ガキンという激しい金属音。靴底が土に軽く埋まるが、しかしそれだけだ。己の肉体を頑強な神威で覆った彼女を叩き潰すことは、キュプロープス程度にはできはしない。
「リリーベル様、ルエル様――」
「「はーい!」」
 リリーベルは妙見子からやや距離をとりながら杖を構えた。大きな槍を突きつけるようなフォームだが、実質的には対物ライフルを突きつけるさまと同じである。なぜなら先端のクリスタルからピンク色の光線を放射するのが狙いだからだ。
 妙見子の止めたキュプロープス。そして追跡してきた帝国兵たちがピンクの光の貫かれ、そして右から左へなぎ払う動きの直後に爆発を起こしたのである。
 直後、ビームを受けてもなんとか耐えたキュプロープスの眼前にルエルが立った。
 刀を一本収め、両手でひとつを握りしめる。
 刃を返し、纏わせた人狼のオーラを放つかのように刀を振り抜いた。
 空を断ったその刃は狼のような形のオーラとなってキュプロープスへ食らいつき、そして食いちぎる。

 その一方でジュートはフェリックスと直接対峙していた。
「ここから先は通さねえ! 俺、この戦いが終わったら……スピギャレリと合コン行くんだ!」
「それって死ぬフラグなのでは!?」
 ワイバーンで並走飛行していたトールが慌てて振り返る。
「大丈夫だ、そういう不運は俺が吸う。でもって、失恋には新しい恋が必要だ!」
「合コンってちゃんと恋に結びつくんですかねえ!? しらないですけど!」
 トールはそんな事を言いながらも、オーロラの刀身を伸ばして槍のようにフェリックスを襲う。フェリックスは流石の武力というべきか、腰から抜いた短剣でそれを弾きながら回避。ジュートがすかさず銃の狙いを付ける。
「俺のアンラッキーを少しだけ分けてやるよ。踊ろうぜ、女神の掌で」
 ジュートは決め台詞と共にフェリックス――ではなく、その騎乗するフュネライの翼を撃ち抜いた。
「ぬう!?」
 墜落するフュネライ。フェリックスは素早く落下制御魔砲を発動させ、空中で一回転すると起用に足から着地した。
 そんな彼を襲ったのは世界の魔術。突如としてフェリックスの周囲が炎に包まれ、フェリックスの身体もまた炎に包まれ始める。
「仕上げだ」
 世界が振り返ると、アッシュが剣を抜いて距離を詰めていた。
 後方から走ってきたキュプロープスがそれに対抗してアッシュに殴りかかる――が、流石に相手が悪いと言わざるを得ない。
 アッシュは繰り出された棍棒を紙一重で回避すると、そのまま高速の縦回転をかけながら突進。キュプロープスの足から膝、膝から腹、腹から胸、胸から頭にかけて駆け上るように切り裂いて行った。
 最後には銀色の奇跡を残し長い髪をなびかせるアッシュが宙を舞い、それにうっかり気を取られたキュプロープスは真っ二つにさけながら地面に崩れたのだった。
「今、ゼシュテルで最も幸せな未来を見ているヒトが居るのがココだ!ソレが分からずに攻めて来ているワケじゃないだろ?
 分かっていて略奪を行おうって言うのであればキミたちは戦士じゃない! ケモノに対する礼儀は持ち合わせていないと心得てかかって来い!」
 イグナートはフェリックスに挑発をしかけながら突進する。
 フェリックスは剣を握りしめ、イグナートへ銃を連射した。
「黙れ! 俺は選ばれた男だ! 貴様等凡人どもが束になってもかなわない天才なんだ!」
 全弾命中。したが、それだけだ。イグナートは全ての銃弾を『キャッチ』すると、それを握りつぶして放り捨てた。
 イグナートの拳がフェリックスの腹に直撃――した瞬間、ワイバーンから飛び降りたトールの剣がフェリックスの背を切り裂いた。

●ハッピー・ウェディング
 結婚式は無事に再開された。
 イグナートや世界はそれに参列し、ブーケトスが始まるのを眺めている。
「それにしても花嫁というものはいつの時代も美しいものですね。どうか、彼らの行く道が幸多からんことを……」
「今のわたしには、天使としての祝福を授ける力はあまり残っていないけれど、せめて2人の未来がどうか希望の光に満ち溢れていますように」
 妙見子とリリーベルはそれぞれの『立場』を想いながら、二人に祝福の祈りを送った。
「ふふ、ブーケトス、参加してみます? トールちゃんさまも気になっているようですし、一緒に参加してみましょうか♡」
「え、え!? 私はあのえっと――あああ行きます!」
 ルエルがそう言うと、リリーベルたちは慌てたトールの手を引いて走って行く。
(花嫁衣裳……屹度、わたしには似つかわしくないものなのです
 ですが、ほんの少しだけ。夢を見たくなることだって、あるのです)
 そんな風景を、アッシュは黙って見つめていた。
 宙を舞うブーケ。
 ジュートはスピギャレリと肩を組み、声を上げる皆を眺めていた。
「アンシュッツ、マジでおめでと! お幸せにな!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

PAGETOPPAGEBOTTOM