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シナリオ詳細

幻想芋掘り・狂乱篇

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幻想芋
 芋。
 芋である。
 芋と言っても色々種類があるが、ここで取り扱いのはサツマイモに近い――。
 芋。植物の根にあたる部分だ。此処に栄養などがたまって、可食部となったもの――と、今更芋の定義を説明するのもナンセンスだが、とにかくそういうものは、ここ、フリアノンにほど近いとある地下集落にも存在する。
 ここは岩盤をくりぬき、そして地下へ地下へと延びていった集落だ。その理由は当然、外から飛来する亜竜から逃れるためのもであるが、さておき、ここは地下に魔法の光源を利用し、畑なども作り上げている。
 さて、芋の話である。ここは実に暮らしやすく、土も肥えた場所であったが、問題があった。芋である。
 野生の芋、その名も幻想芋である。この幻想芋が、畑に勝手に生えてきて、食用の野菜たちの生育を阻害してしまうのである。
 加えて、幻想芋は、食べると幻想を見る、という芋で……触っていても徐々に幻想を見始める。
 幻想、と言うと聞こえがいいが、ほぼ幻覚に近い。
 マイルドに言えば、『酔っ払ったような』状態になる。
 マイルドに言えばね。
 そんなわけで、この幻想芋は、食べれば大変おいしく、身体に残る毒性はないのだが……されど強烈な幻覚作用で『酔っ払って』しまうため、危険な芋として毎年この時期には処理されているのである。
 地下であるため火を以て焼き払うわけにもいかず……というか、火で燃やせば、その煙で集落中が『酔っ払って』しまう。そんなわけだから、手で掘って、一か所に集めて、亜竜の隙をついて外に放り捨てるわけであるが、問題は、触れただけでも――手袋越しでも――徐々にその成分は身体に入り込み、最終的に『酔っ払って』しまうのである。
 そのため、普段は特に訓練された者たちでこの『処理』を行うのであるが、悲しいかな、今年はその訓練された人たち全員が、風邪ひいてぶっ倒れた。
 なので――! 急遽代役が必要になったのである――!

「かえりたいいいいいいいいい!!!!」
 水天宮 妙見子 (p3p010644)が叫んだ。首根っこをヴィルメイズ・サズ・ブロート (p3p010531)によって掴まれて引っ張られている。その近くにはトスト・クェント (p3p009132)や、その他のイレギュラーズ達の姿もある。
「いやいやいや、ここで帰ったらハイルールでしょう」
 悲しいかな、ヴィルメイズの言うとおりである。受けた依頼はきっちりこなす。それがローレットのルールだ。
「いや、ハイルールも何もないでしょう!? こんなやべー芋!!」
 妙見子が指さした先には、畑にびっしり生えた幻想芋の姿があった。実際やべー芋なのは、これまで記述したとおりである。
「う、うーん……まぁ、でも、確かに迷惑な芋だからね……」
 トストが言う。
「おれたちみたいなのに、処理してもらいたい……っていうのは分かるよ。
 ええと、本当は、ヴィルメイズ君の家と、そのご近所さんが担当してたんだっけ?」
「ええ。ですが、ご近所さんは風邪に倒れ、父は忙しい……となると、あなたたちの力を借りるしかないでしょう?」
「だったら最初からやべー芋だって伝えてくださいよ! 現地到着してから伝えられたんですけど!?」
 妙見子の言う通り。皆は現地に到着してから、幻想芋の詳細を告げられた。「おいしいけどやべー芋」。その正体は全く、聞いていたら来なかったかもしれない……。
「おいしいのは美味しいのですよね……ですが、食べると確実に『酔っ払って』幻覚のようなもの見たりしてしまいます……」
「最悪じゃないですか! やだーーーっ!!」
 妙見子がじたばたと暴れる。トストは嘆息した。
「でも、もうやらないといけないからね……諦めようよ、妙見子くん」
 トストの言葉通り……芋ほりの依頼を受けた以上、やらねばならないわけである。
「というわけで、皆さん、おねがいしますね」
 ヴィルメイズがそういうのへ、イレギュラーズ達は頷いた。
 まぁ、言うて芋である。そんなにひどい事にはならないだろう。
 その時は、ヴィルメイズすら、そう思っていた。
 それがこんな事になろうとは……!!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 これはリクエストシナリオなので、僕はあんまり悪くないです。

●成功条件
 『幻想芋』をすべて畑から処理する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 無いよりはマシな情報です。グッドラック。

●状況
 畑を邪魔する芋を処理してほしい。そう依頼された皆さん。
 現地についてみれば、それは『食べれば確実に』そうでなくても『触れたり近くで呼吸をする』だけで『酔っ払ったような状態になって幻覚とかを見る』、やべーやべー『幻想芋』の除去作業でした。
 燃やしてしまえば……と思いましたが、燃やすと匂いが集落中に広がって、アッというまに集落中が酔っ払いだらけになるので絶対にダメです。
 兎に角被害は最小限に抑えなければなりません……最小の被害? つまり皆さんだけで何とかしてくださいという事です。
 このシナリオは、『効率よく芋を掘りながら』、『最終的に酔っぱらったような状態になって好き放題やる』シナリオになっています。畑、芋、酔っ払いども。何も起きないわけがなく……。
 参加者の皆さんで、酔っ払った感じのハイテンションで好き放題暴れてみませんか! あ、でも監視になるような行為は勘弁な!
 作戦決行タイミングは昼。作戦エリアは畑。後は何でもありです。持ち込めるものは何でも持ち込んで構いません。
 酔っ払って歌ってもOKです。同意の上であれば、酔っ払って誰かにえっちっぽく絡んでもOKです。幻覚を見てやべー感じになってもいいです。エモい幻覚を見て、ひとりでエモくなっていても良いです。
 抑えておくべきなのは、『幻覚っぽいものを見るかもしれない』『酔っ払ったような状態になる』という所です。
 ちなみに、芋はお酒ではないので、未成年の方も酔っぱらって大丈夫です。酔っ払ってみたい、という純粋な方もどうぞどうぞ。
 あと、とてつもなく美味しいので、酔っ払うのを覚悟で食べてみたいという方もどうぞ……。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • 幻想芋掘り・狂乱篇完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年12月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Lily Aileen Lane(p3p002187)
100点満点
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ
※参加確定済み※
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
未来を託す
※参加確定済み※
リドニア・アルフェーネ(p3p010574)
歩く災厄の罪を背負って
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで
※参加確定済み※
弥多々良 つづら(p3p010846)
鳴動する幼大山
リヴィア=フォーレンティア(p3p010856)
堕ちた姫君
ルエル・ベスティオ(p3p010888)
虚飾の徒花

リプレイ

●本日の犠牲者は以下の八名です。
 『人魔の間で揺れる魂』Lily Aileen Lane(p3p002187)
 『星灯る水面へ』トスト・クェント(p3p009132)
 『一級パリピ神楽建築士』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
 『味のしない煙草』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)
 『宙より堕つる娘』水天宮 妙見子(p3p010644)
 『鳴動する幼大山』弥多々良 つづら(p3p010846)
 『堕ちた姫君』リヴィア=フォーレンティア(p3p010856)
 『特異運命座標』ルエル・ベスティオ(p3p010888)
 お疲れ様です。

●というわけで芋ほり
「何かホラーみたいな紹介のされ方をされたような……?」
 と、トストが声をあげる。
 フリアノンにほど近い集落。地下に広がるこの畑には、今や多くの『芋』が根を巡らせていた。
 この『芋』。あまりにも危険な芋である。具体的には、触ってるだけで酔っ払って幻覚を見る。そういうやべー芋なわけであるが、しかし燃やして処理しようにも、空気中に芋の成分が舞って、集落中が洒落にならないことになるので焼いて処理などはできない。
 よって、手で掘って処理をするしかないのだが……そうなれば、前述したとおりに『触れただけで・或いは触れなくても空気中に芋の成分は浸透する』ため、やがては酔っ払って幻覚を見ることになる――。
「芋掘り。楽しそうだねーって。
 焼き芋ももちろんだけど、スイートポテトにしたりとか。ふかしてバター乗せるだけでもおいしいもんねー、って。
 ……って、思ってたんだけどなぁ!?
 ちょっと! ヴィルメイズくん……!! 普通の芋じゃないんじゃん!!」
 そういうトストに、ヴィルメイズが「ふふ」と笑う。
「言い忘れていましたね」
「嘘だよ! 絶対知ってて黙ってたよ!」
 ヴィルメイズが「ふふ」と笑う。知ってて黙っていたのか、言い忘れたのかは定かではない。というか、この際もうどっちでもよかった。
 問題は、この芋と正面から戦わなければならない事である。
「おいしい芋ほりと聞いてやってきました!!!」
 というのはリヴィアである。ギフトによる呪いのなのかどうか、都合よく『やべー芋』の『やべー』のあたりは聞こえていない。
「芋……たのしみね! 甘みのある芋って聞いたわ!」
 うんうん、とリヴィアが言う。これから待っているのはスイーツタイムではなくて地獄だよ。
「そうですわね。掘る前から、なんだか甘くてとても良い香りがしますわ♡」
 リヴィアの言葉に、頷くルエル。すんすん、と香りをかいでみれば、なるほど、確かになんだか甘い匂いがする。これは確かに、芋から放たれる香りなのだろう。つまりこの匂いを嗅いでいるとヤバい。
「はぁ……とっても良い匂いですわね。なんだか、こう、ふわふわとしてしまいそうな……♡」
 ヤバい。が、それを止めたのはヴィルメイズである。
「おっと、まだそれはなしとしましょう。まだ1200文字くらいしか進んでいません。今から酔っ払い始めると、収拾がつかなくなります」
「そもそも、収拾をつける気あったんですか?」
 妙見子がそう言った。
「これ……絶対収拾つかないですよ。炭酸飲料を飲んだらげっぷが出る位に確実に」
「いけませんね。私の父上は美しいので、げっぷなどはしませんよ」
 ヴィルメイズがそういうので、
「何の話?」
 と妙見子が怪訝な顔をした。
「とにもかくにも、まずは掘らないと、話が進まない、のです」
 と、Lilyがそう言った。ジャージに軍手、マスクにスコップとゴーグル。フル装備農作業スタイルである。ジャージは何とかギリギリ、半ば無理やり前を閉じることに成功していた。なんで前がそんなに閉まらないのかって? 姿を見て察してほしい。
「完璧、です……本にもこのようなスタイルで芋を掘る、と書いてありました……」
「吾、なんか前が閉まらんのじゃけど」
 と、つづらが言う。ジャージの前が閉まらない。なんで閉まらないのかって? 姿を見て察してほしい。
「大丈夫か、これ……? なんか悲惨な目に合わないか……? ジャージの前を締められなかったせいで、芋の成分がより強く浸透しました! みたいな」
「大丈夫、だと思います」
 Lilyがにっこりと笑った。
「このお仕事に参加した、時点で、だいぶ、手遅れだと思います……!」
「そっかー」
 つづらが頷いた。そっかー。
「ま、そういう事ですわね」
 リドニアが、ふ、とため息をつきながら言った。
「こうなれば一蓮托生。思うがままによぱらって痴態を晒すしかないのでしょう」
「いやだなぁ」
 つづらがそういう。確かに嫌である。
「ま、さくっとやってさくっと終わらしましょう!
 こんなこともあろうかと、トラクターを借りてきましたわ~~~~~~~~~~!
 文字通りに根こそぎにしてやりますわよ~~~~~~~~!」
 そう言って、ばっ、とリドニアが後ろに手をかざす。そこにはトラクターがあって、ぶおんぶおんとエンジンを響かせている、はずだった。
 ない。
 トラクターなどはない。
「……ふっ」
 リドニアが呼気をはいた。
「……と思ったのですけれど。諸々の事情がありましてレンタルできませんでしたわ。
 手元にあるのは沢山の書といつものウォードリエ・ワインのみ。
 私に一から掘れとおっしゃる!? この農業の「の」の字にも知らない天義お嬢様のこの私にィ!?」
 なんか人気が出そうなおもしろ顔をしながら、リドニアがそういう。
「そうですね、一から掘らざるをえません」
 ヴィルメイズがバッサリと斬った。
「掘るのは良いのですけど、処理はどうするのですかこれ」
 妙見子が尋ねる。
「外に放り捨てます?」
「え、食べましょうよ?」
 ルエルが言う。
「おいしい、合法的に年齢問わず酔うだけ、身体に残らない……食べてしまって問題ありませんわ?」
 ルエルの言葉に、
「そうだなぁ、ああ、ついでだから酒でも作るか」
 つづらがいう。
「芋酒というやつだなぁ。良い感じに作れるだろう。どうせ酔うのなら酒にしてしまうのがいい。
 あっ! 酒にしたら吾は飲めないし飲まないが! コンプライアンス!」
「そうですね。ではお手伝いしましょうか」
 つづらの言葉に、ヴィルメイズが頷いた。
「じゃあ、おれは芋の処理の方に専念しようかな」
 トストが言う。
「絶対ろくなことにならないから、来年からは二度と芋ほりに呼ばれないように、今のうちに根絶しておくよ」
 固い決意を持ってそう言った。
「では、はじめましょう」
 Lilyがそういう。
「速く終わらせて、御芋パーティをしたいのです」
「ああ、いいわね」
 リヴィアが言う。
「Lilyさん、一緒にスイートポテトも作りましょうね?」
「はい!」
 にこにこと笑って頷く。さて、そんなわけで、早速芋ほりが始まろうとしていた。あと、ぶっちゃけみんなこの段階で若干酔っぱらっていたから、判断力が著しく落ちていた――。

●狂乱の芋掘り
 まぁ、とはいえ普通の芋ほりである。最初は皆、粛々と芋を掘っていた。当然である。相手は一応、普通の芋なので。
「はぁ~~~~~~」
 リドニアが、ふぅ、と立ち上がり、額の汗をぬぐった。
「農作業ですわねぇ~~~~~!
 おっと、休んではいられませんわ! RTARTA! 収穫出来たらヴィルメイズ様にへい、パース!」
 ぽーん、と放り投げるリドニア。
「はい、ぱーす」
 ヴィルメイズが受け取って、籠に放り投げている。
「アッアッ、アリガトゴザイマス、ハイ、タスカリマス」
 キョドった感じの声で妙見子が住民から農具やらを借りている。ぺこぺこと必要以上についつい頭を下げて見送りつつ、住民たちの姿が見えなくなってから、額の汗をぬぐい一言。
「チョロい村人でしたね……容易く道具を借りられました……!」
「どう見てもチョロい仕事のようには見えなかったけど……」
 リヴィアが嘆息する。妙見子は明後日の方向を生みてごまかしつつ、
「とりあえず、テーブルなどは借りられました。このままここで色々食べられそうです」
 という。実際、簡単な調理器具などを、イレギュラーズの持ち込み含めて用意していある。このまま『幻想芋』を調理して食べることができるだろう。それがどのような結果をもたらすかは別にして。
「ふむ、しかし、順調に掘り進めていられますね……」
 ヴィルメイズが言う。
「掘る段階で皆ラリ……いえ、トリッ……いえ、酔ってしまっていたらどうしようかと思いましたが。
 その心配もなさそうです。
 もし皆さんが幻覚で酔っ払って、私の美しさに我慢できなくなってしまったらどうしましょう……? そう思っておりましたが。
 しかし私には父上が……美しさは罪でございますね……とシミュレーションもしておりました」
「もう酔ってらっしゃいます?」
 妙見子がそういうのへ、ヴィルメイズがにこにこと笑った。分からない。
「まぁ、そうは言うても、だいぶ空気中に成分が広がっている気がするぞ……」
 つづらがわずかに表情をしかめながらそういう。確かに、こう、身体が火照っている気がする。エロくない意味で。
「ほら、あちらを見ると良い……」
 そう言って、つづらが指さしたのは、トストである。トストはなんか、さっきから芋に話しかけていた。
「なぁ、君たちのことを詳しく知りたいんだ。
 ほら、どうしたらもっと増えられるかとか。
 いい場所に引っ越しさせてあげたりできるかもしれないよ?
 今の場所で大変なこととかない?

 ……そうだよねっ、みんなこんな暗くて狭いところで大変だよね……!
 もっと広い世界に旅立ちたいよね。わかるよ、その気持ち。
 おれも、君たちの気持ちがわかる……おれも、芋、おれも芋だった……。
 そう、おれは芋なんだよ。わかるかい? おれもまた、芋なんだ。
 芋って言うことは、芋って言う事なんだよ。おれたちは、芋同士。分かり合える。分かり合えた。
 そう、おれ達は分かり合えたんだ。つながった。触れ合った。裸で繋がるよりももっと深い、心のつながりあいさ。
 ねぇ、足りてないものはあるかい? おれにはあるんだ。しゃべりすぎてのが乾いたんだ。
 お水も足りてるかな? おれには足りてないんだ。君たちにも足りてないんだろう?
 わかるよ、君たちはおれなんだからね。さぁ、水が欲しいんだよね。水を飲もう。
 ヴィルメイズ君! 水を頂戴!!!」
「あ、はい」
 ヴィルメイズがじょうろを差し出した。
「ふふ、水だよ……一杯飲もうね……?」
 トストがなんかうっとりしながら水をあげだした。
「いや、掘るんだよ! 芋を! 誰かあの人を止めないと!」
 つづらが叫ぶのへ、リドニアがトストを羽交い絞めにして引っ張っていた。
「はいはい、農業の邪魔ですわよ~~~~~」
「やめ、やめるんだ! 放して! かれらは、おれだ。おれが、いもなんだ!」
 ずるずると引っ張られて隅っこの方に転がされるトスト。厭なものを見たような表情で、Lilyがほう、と嘆息した。
「大人の階段を、登ったような、気がします」
「こんなので昇る大人の階段ってろくなものじゃないから今すぐ下りましょうよ」
 妙見子がそう言った。
「でも、芋の収穫ペースは大分早くなっていると思いますわぁ」
 ルエルが言う。実際の所、速い。皆割と真面目に芋を掘っている。
「ふふ、芋の精霊が……私ちゃんに話しかけていますからねぇ……♡
 きっともうすぐ、全部収穫しおわりますわぁ……♡」
「あっ、幻覚見てるのです……」
 ルエルがふらふらとそういうのへ、Lilyがそう言った。幻覚を見ている。とはいえ、ルエルやトストだけが事さに酔っぱらっていたかと言われればそういうわけではなく、みんな大なり小なり酔っ払っていた。皆普段よりテンションが高い。まだほろ酔いと言った所だろうが、ここからもっとひどくなるんだろうなぁ、と外から見ればわかるものである。
「そうね、みんな大なり小なり幻覚を見てるものよね……。
 私もそうね、いま隣に、前の世界で戦った魔王がいるもの……」
 なんかぼんやりした顔でそう言いながら、リヴィアがゆっくりと土下座した。
「私が、馬鹿でした……♡
 雑魚女の癖に、魔王陛下に身の程知らずにも戦いを挑むなど愚かの極みでした♡
 存在の次元が異なる陛下に対する無礼の数々をお詫び申し上げます♡
 陛下にこの世界を献上させてください♡
 どうかこの情けない雑魚女に、国を、民を売り渡す悦びをお恵みください……♡」
「やっばいトリップしてる!!!!」
 妙見子が叫んだ。リドニアがリヴィアを羽交い絞めにする。
「そういうのは薄い本でやってくださいませ~~~~~!!」
「ああっ♡ なにを、陛下♡ いけません、私をあなたの犬にしてくださいませ~~~~♡」
 ロープで縛りつけて、ついでにこれ以上ヤバいワードをはかないよう猿轡をかけて畑の隅に放り投げる。
「はぁ、つかれました……なんと恐ろしいお仕事なのでしょう」
 他人事のようにヴィルメイズが言う。恐ろしい仕事であった。とはいえ、芋ほりも順調に(?)終わりに近づいていることは、言った通りだ。果たしてその後は『大きな』トラブルなく、なんとか芋の処理を終えていた。
「じゃあ、お料理、ですね」
 Lilyがそういうのへ、ルエルが頷く。
「そうねぇ。混ぜご飯、スイートポテト……たのしみだわぁ♡」
 皆もにこにこ、芋の味を想像しながら楽しみに料理を始めた。
 そもそもこれ、料理したらいけないタイプの芋なんですけどね。

●終焉
「ふふ……父上……父上……つづら様も父上も立派な角が二本ありますので……実質つづら様は私の父上なのでは……?」
 ヴィルメイズがなんか言ってる。その瞳はすでに正気ではなかった。
 あたりには、すさまじいまでの濃度の『幻想芋の成分』が漂っていた。何故なら歓喜をちゃんとしないまま料理したからである。燃やせばその成分が、あちこちに飛び散ってしまう、とは伝えられたとおりである。そんなの料理したら同様のことになるに違いないわけである!
「換気? 奴さん死んだよ。私が殺した」
 うぇーい、とワイングラスに注いだワインをぐびぐびと飲み干すリドニア。その手には、幻想芋のチップスがあって、甘い味のそれが辛口のワインとよく合う。
「換気wwwwとかwwwwよわむしのやることでしてwwwww
 換気するようなやついるぅ!? いねぇよなぁ!!!!」
 うぇーい! とワイングラスを掲げるリドニア。もう駄目だ。リドニアが換気を怠ったせいで、それはもうあたりはてんやわんやだった。
「ああ〜っ! 父上と一緒に共同作業ができるなんてそんな……正気ではいられないっ……!!」
「……うう、母様、父様。弟達よ、妹達よ……。
 吾は、みなが、みなが心配で……う、う。
. . .)...)
 。(ノД `)・゚・。ウワアアン!」
「そうですか、父上! それほどまでに私を……ああ、もうこれは結婚……!」
「うわぁぁぁぁぁぁん!」
 ひし、と抱き合うヴィルメイズとつづら。会話は成立していない。
「はぁ~~~い、天ぷらあがりましたよ~~~! 美味しい油で揚げた美味しいお芋の天ぷらですよ~~~~!
 やぁん、ちょっと脂が跳ねちゃった♡ アッツ! クソガッ!!」
 なんか妙見子が言っている。妙見子はお母さんだった。妙見子は宇宙創造主より生まれた存在(元の世界で)なので、実質的に皆のお母さんだった。
「あらぁ~~♡ 皆さんちゃんとご飯食べられてえらいですね~~~♡ よしよししてあげます♡」
「母上ぇぇぇぇぇ!!」
 つづらが泣いた。
「いいのですわぁ、つづらちゃん♡ スイートポテトたべます?」
「たべるぅぅぅぅぅ!!」
 ルエルがつづらの口に、スートポテトをアーンしてあげた。
「Lilyちゃんもスイートポテト食べましょ♡」
「まって……ポテト、マッシュするまで、まってほしい、です……」
 Lilyがなんかずっとポテトをパイルバンカーでマッシュしている。それはもうマッシュって言うか塵に帰しているだけである。
「もう~~~~Lilyちゃんたら、マッシュはお母さんに任せてくださいね~~~~♡」
「ママ……?」
 妙見子がLilyをぎゅーっと抱きしめたので、Lilyはそのマシュマロみたいなマシュマロに顔をうずめた。しっぽをはもはもしつつ、すりすりと甘えるLily。
「もう、いけない子ですねぇ~~~~♡ でもいいのですよ、私ってば母ですから~~~~♡」
「ママ……」
「母上……」
「お母さん……」
「父上……」
 皆思い思いに勝手なことをつぶやいている。リドニアはずっとげらげら笑いながら芋チップスとワインをちゃんぽんしていたし、トストは芋の気持ちを完全に理解して芋になっていたし、リヴィアは幻覚の魔王の靴とかべろべろ舐めていた。
 なので、ツッコミ役のイレギュラーズが耐えかねて……耐えかねて……耐え……あれ、このシナリオ、ツッコミ役がいないぞ……?
 ツッコミ役がいないので、酔っ払いどもの宴はそのまま延々と続いた。新しい料理ができるたびに芋の成分が飛び散って、さらに泥酔する。芋を食ってさらに泥酔する。厭な永久機関だった。
「いやぁ、いいお仕事ですねぇ~~~」
 ヴィルメイズがそういうのへ、皆がにっこりと頷いた。
 そういう事で終わりにしておこう。
 めでたしめでたし。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 幻想芋は安全な食べ物なので、みんなすっきりした気持ちで酔いがさめたようです。

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