PandoraPartyProject

シナリオ詳細

虹色イルカとブラックトビンガルー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●海洋の虹色イルカ
 虹色イルカを知っているだろうか。
 海面を跳ねる姿は虹色のきらめきを纏い、真珠のような体表は陽光に美しく輝く。
 彼らの虹色のきらめきは海の精霊の祝福を受けた証といわれ、漁をする人間たちときわめて友好的な関係を保っていた。
 船で漁に出れば虹色イルカたちが船に付き添い、下ろした網に魚が入るように追い立ててくれる。
 とった魚の一部は港でイルカたちに配られ、『虹色イルカの歌』と呼ばれる美しい鳴き声を聞くことが出来る。
 幻想の港にも同じような場所はあるが、ネオフロンティア海洋王国の諸島がひとつカモシアイランドではこの漁法が古くから取り入れられ、瑠璃クジラの骨から作ったというハーモニカでイルカの歌に応えるのが慣習とされていた。
 その日も漁を終え、漁師たちは港へ戻り、とった魚を虹色イルカたちに投げては瑠璃ハーモニカを吹く。イルカたちの歌が音色に重なり、夜風がまるで精霊の拍手にもにて皆を包んでいた。
 けれど、その日は少しだけいつもと違っていたのだ。ハーモニカを吹く漁師に元気がないのだ。
 魚の加工業を営む男が様子に気づいて尋ねてみると……。
「このところ魚がよくとれないんだ。もしかしたらブラックトビンガルーが現われたのかもしれない」

●黒いギャング
「トビンガルーは知ってるかしら。水面をはねるように移動する生物で、家畜やペットとしても知られているわ。
 ブラックトビンガルーはその亜種と言われていて、鋭い牙と毒のある爪、尻尾に触れたものをしびれさせる性質をもつとても厄介な動物なの。
 人になつくことはなくて、繁殖期前になると海の魚を乱獲して荒らすと言われているわ」
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)が見せたのはある動物写真家が撮影したブラックトビンガルーの様子だ。手足の生えたシャチといった様相で、その獰猛さは魚を噛み千切る様子からもうかがい知れる。
 ブラックトビンガルーの繁殖期は10月。それを前にして乱獲を始めているようだが、今年はどうにもやり方が荒っぽいらしい。
 毒を受けた魚が海面に大量に浮いてしまったり、食べるわけでもない海洋動物をいたずらに攻撃することもあるという。
「このままでは漁ができないということで、ローレットに駆除依頼がきているの。でも、今回はそれだけじゃなくて……」

 港へとやってきたイレギュラーズを出迎えたのは、虹色イルカたちの歌だった。
 キュイキュイという綺麗な歌には彼らの気持ちが込められていて、不思議とイレギュラーズたちに伝わった。
 彼らの想いはただひとつ。
 『共に生きていた漁師たちの役に立つべく、自分たちも共に戦いたい』
 その歌を聴いて、イレギュラーズたちは……。

GMコメント

【依頼概要】
 ブラックトビンガルーの群れと戦い、撃破することがこの依頼の目的です。
 正確な数は測定できていませんが、こちらの倍以上の数が海上に展開していると考えてください。(戦力的にみても今回のメンバーで充分釣り合いがとれるものとします)

 また、今回のシナリオ限定で『虹色イルカ』の協力を得ることができます。
 虹色イルカは騎乗戦闘に対応しており、乗せた人間の気持ちをなんとなく汲む共感能力をもっています。
 依頼に参加する際に『虹色イルカに騎乗する』とプレイングに一文加えることで、この協力を得たことになります。

※オマケ
・現時点でも虹色イルカたちはやる気満点ですが、事前に軽くたわむれたり遊んだりすると仲良し度があがって戦闘時のダイス平均値が上昇することがあります。
・虹色イルカを用いない場合、小型船を用いるか水上行動スキルを使って戦闘をこなすことになります
・騎乗動物の持ち込みは一応アリですが、テキストに騎乗戦闘可能である旨が書かれていない場合できないものとします。
・低空飛行は水面を足場にできる能力がある場合に限りペナルティなしとします。
・現地までは船を使って移動するので、移動手段の提示は必要ありません。

●ブラックトビンガルー
 群れで行動する動物。トビンガルーみたいに水上をはねることから同種と思われていたが、最近の研究では全然別物だという説が有力。
 肉食恐竜の手足がついたシャチみたいな見た目で、近くで見るとクソ恐い。
 爪攻撃(至単【毒】中ダメージ)
 尻尾攻撃(自範【ショック】小ダメージ)
 噛みつき(至単 大ダメージ)

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 虹色イルカとブラックトビンガルー完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月13日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

蜜姫(p3p000353)
甘露
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)
水葬の誘い手
ロゼ(p3p006323)
聖ロゼ
フローラ=エヴラール(p3p006378)
白き閃刃

リプレイ

●虹色イルカの海
 太陽!
 透明な海と珊瑚礁!
 半袖のシャツを脱いで走る桟橋!
 ネオフロンティア海洋王国諸島がひとつ、カモシアイランドは一年の半分が夏とさえ言われている。
 夏の空気が去って久しい幻想とちがって、こちらは未だに夏真っ盛りだ。
 水着に着替えた『甘露』蜜姫(p3p000353)はシャツを脱いで桟橋を走り、勢いよく海へと飛び込んだ。
 ゴーグルをつけて海中をすすめば、彼女を歓迎するように眼前を瑠璃色の影が踊る。
 まばらに散った陽光のゆらめきをうけてひかる彼らは虹色イルカ。これより共に戦うことを求めた、『島の住民』であった。
 背びれにつかまるようにひとなきすると、蜜姫をつれて海面へと飛び出す。
 蜜姫は虹色イルカの頬にくちづけをして、感謝の気持ちを伝えた。

 海面をただようように泳ぐ『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)。
「虹色イルカ、見目にも華やかデ涼しげな彼らは海洋の宝のひとつだネ! おれは海種だから水中行動に問題はないケド、彼らの援けを得ての戦いだカラ心を通わせることは悪いことじゃナイ」
 下から押し上げるようにイーフォを跨がらせる虹色イルカ。
 スピードにのれば、海面を滑る独特な快感がやってくる。
 無限にも思えるほど広い海の上、ほんとうは透明な海と空。風を追い越すように波を進む。
 その横を、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)が大きくジャンプしながら併走した。
 とても形状を説明しづらいが、アトラクトステウスという細長い魚類生物の容姿をしていた。大人が両手を広げたくらいに大きな魚である。
 イリスが鼻先にとったボールを弾いて、虹色イルカへと飛ばす。
 彼らは暫く、ボール遊びをしてたわむれた。

 一方。桟橋から足をぶらさげるようにして、フローラ=エヴラール(p3p006378)は持ち寄った生魚を海に投げていた。
 投げるたびに頭を出してキャッチする虹色イルカ。
「共に生きてきた漁師の為に戦いたいとは、殊勝なイルカさんですね」
 寄せてきた顔を撫でてから、フローラは海中へと飛び込んだ。
「私も微力ながら協力させていただきます!」
 海を滑って進んでいくフローラとは別に、『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)は桟橋から手を伸ばしていた。
「貴方の、その願いは。他者の為に戦うという過酷に耐えられますか? その願いに、自らを賭けられますか?」
 樹里の言葉に、虹色イルカは短い歌で応えた。
「――えぇ、えぇ。ならば」
 一度目を閉じて、樹里は上着を脱ぎ捨てた。海へ飛び込み、虹色イルカへと素早く跨がる。
「これよりは私が貴方の剣となりましょう」
(ただ主に救いを求めるだけでなく、自らも手を伸ばす者にこそ幸いを)
 胸に手を当て、樹里は海原を進んでいく。
 その後を『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)が黙って虹色イルカと共に追いかけていく。なんか『白紙』と書かれたプラカードをラウンドガールみたいに掲げていた。

 沖へいくほど海は深く無限に思えてくるものだ。
 見通せないほど底の深い青と、どこまでも見通せるような青い空。
 船で進むのとはまるで違う、不思議な自由と開放感がそこにはあった。
 虹色イルカにまたがり、ハーモニカをふく『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)。
 同じように、『聖ロゼ』ロゼ(p3p006323)も自前のハーモニカをふいていた。
 音楽に合わせてイルカたちが歌う。
 重なった八つの影が海をすべり、歌は無限の海に吸い込まれていくように思えた。
 ロゼの合図で高くジャンプする虹色イルカ。
 うまくできたねと頭を撫でて褒めてやると、独特のキュキュっという声で笑うように応えた。
「ふに、人の役に立ちたい……とは、なかなか愛い奴……なの。ミアもお魚大好き。魚が取れないのはミアも困る、の」
 ミアも同じように虹色イルカの頭を撫でてやる。
「一緒に海の平和を取り戻す……にゃ!」
 遠い正面より、水面をはねながら接近してくる黒い影が見える。
 あれこそがブラックトビンガルー。通称『黒いギャング』である。

●ブラックトビンガルー
 シャチとカンガルーを混ぜて毒爪とサソリの尾を加えた生き物水平線の向こうから列を作ってやってきた。
 そんな、酒場で話しても馬鹿にされてしまいそうな光景が、今目の前にあった。
 一笑に付すことはできぬ。なぜなら眼前の動物たちは現実のものであり、いま引けば漁場は荒れ、人々は笑顔を喪うからだ。
 それになにより。
「受けた仕事はキッチリと、ってね!」
 尾びれを強く。頭を高く。
 イリスは自らの魚影を豪快に水面から飛び出させると、迫るブラックトビンガルーの群れめがけて声を上げた。
「これ以上この海域にのさばるつもりなら、まずはこの私を倒してからにしてもらいましょうか!」
 空中で刹那の見栄をきり、再び水面下へ。
 『ギギ』と小さく唸ったブラックトビンガルーの一部が水面下へ潜り、どうんという水中独特の音と光の中でぶつかり合った。
 真正面からの激突。
 すぐにすれ違い、互いにターン。
「人は見かけによらないって言うけど、見かけからして別物じゃないですかーやだー――ってね!」
 次なる攻撃がかわされるその一瞬、彼女たちの頭上でも新たなぶつかり合いが起きていた。
 ミア、フローラ。
 二人が虹色イルカに跨がって高くジャンプした。
 真正面からは水面を激しくはねるブラックトビンガルーが二匹。
 大きく腕を引き絞る二匹がミアとフローラの顔面をこそぎとろうと爪を繰り出すも、二人は大きくのけぞるようにして回避。
「ミアのイルカさばき、見せてあげる、の♪」
 背面姿勢のままミアは機関銃のトリガーをめいっぱいにひいた。
 ブラックトビンガルーの背面を穿つ大量の鉛玉。
 着地ポイントへ二匹ほど滑り込んだブラックトビンガルーがあわよくばイルカごと食いちぎろうとするも、フローラが至近距離で無数の矢を弓につがえ高速発射。ブラックトビンガルーたちを水没させながら着水。軽く水中を泳いでから再び海面へと顔を出した。
「にゃ、よいこ」
 ミアは鞄からサーモンブロックを取り出してイルカに食べさせると、頭をぽんぽんと撫でてやった。
 一方のフローラはイルカとほぼ一体となって海面180度ターン。残るブラックトビンガルーたちへと向き直ると、弓を再び水平に構えた。
 ブラックトビンガルーの集団とぶつかった第二陣。ロゼやイーフォたちは横一列になって身を屈め、風をきるようにして突っ込んでいく。
「うわ、話に聞いてたとおりコイツら近くで見るとクソ怖ェ!」
「手足が生えたお魚ってカンジでこわ可愛いっ」
「そうカナ!?」
「あとで人形つくろっと」
 両脇を固めるように蜜姫とエリザベスが回復支援ができるというハンドサインを出してきた。
「生きるため、繁殖に必要だからなら仕方のない面もあると思うの。でもそうじゃない……食べるためでもないのに攻撃して、その死体を放置するような真似は駄目、なの」
 蜜姫は顔半分を隠すように桜模様の扇子をはらりと広げた。
「自然の摂理はバランスが大事。乱すのよくない、の」
「ところで」
 樹里が魔砲杖をくるりと回して振り返った。
「ブラックトビンガルーたちはずいぶんと興奮しているようですが」
「そうだねぇ。このぶんだと撒き餌作戦は使えないかも。持ってきたご飯はイルカたちのおやつにしよう。でもって――」
 もし神の視点。海上高くより俯瞰する視点をとれたなら見えることだろう。
 ブラックトビンガルーたちの列とイルカたちの列。
 その二つが真正面から高速で迫り、そしてぶつかり合う瞬間が。
 ロゼは一瞬で人形を生み出すと、ブラックトビンガルーへと叩き付けた。
「いけっ、虹イルカケンタウロス丸!」
 タイミングを合わせてイーフォが漆黒を展開。
「やっぱり手足と胴体がミスマッチでイルカたちの可愛さとは全然ベクトルが違いすぎて……どういう反応をして良いのか分からなイ!」
 交差。こちらのダメージは軽微。ブラックトビンガルーには致命的なダメージを与えられたようだ。
 二人は滑るようにターン。同じくターンしたブラックトビンガルーたち――の真横に回り込んでいた樹里が、杖をライフルのように構えた。いや、今までライフルを杖のように構えていたと言ったほうが正しいだろうか。
 折りたたみ式のマジックトリガーにゆびをかけ、同じく折りたたまれていた十字のサイトを覗き込む。
「かしこみかしこみ――放て、祝砲。薙ぎ払え」
 樹里の放った魔術の衝撃。対抗するようにドルフィンキックをしたイルカですらわずかに後退するほどの衝撃が、ブラックトビンガルーたちを包み込んだ。
「まずはひと薙ぎ」
「怪我してるの」
 蜜姫が近づいて、風で傷口をなぞるように扇子で仰いでいった。
 今回の蜜姫の構成は体力の回復というより解毒の側面が強い。ブラックトビンガルーの尻尾や爪による攻撃を警戒してのものだったのかもしれない。
 ちらりと振り返る蜜姫。仕方の無いこととはいえ、命をあやめることを自分なりに悼みつつ……次なる集団へと顔を向けた。

 こちらの戦力が虹色イルカや漁師ではなく、ブラックトビンガルーを超える個体戦力の持ち主たちだと、ブラックトビンガルーたちは少なからず察したようだ。
 ギギギと歯ぎしりのような声で意思疎通をかわすと、大きくチームを四つに分断。それぞれが海岸を目指すようにして走り出した。
「まずいですね……」
 ブラックトビンガルーを追い払うことが任務であるとはいえ、海岸へ入り込まれたら色々と厄介だ。無力な人々への被害が出るかもわからない。
 そう。依頼に含まれていないとはいっても、イルカたちと心を一度でも交わした以上、期待には応えたいのだ。
「大丈夫。追いつける! ついてきて!」
 イリスは一度だけ海面をはねると、樹里に合図をして海中を走り始めた。
 目指すはブラックトビンガルー四体の集団。
 通行止めだといわんばかりに跳躍したイリスがブラックトビンガルーの足へ噛みついた。
 重みと痛みでバランスを崩すブラックトビンガルー。
 他の個体がターンをかけ、イリスへの集中攻撃を一瞬のうちに計画する。
 方法は単純だ。前後と海中それぞれから囲んで食らいつくのである。
 が、それを予め予測していた者がいた。
 樹里である。
「そこです」
 ライフルから『樹里の魔法』を発射。
 イリスを囲もうと展開したブラックトビンガルー二匹をまとめて吹き飛ばし、そのうち一匹を深い海の底へと沈めた。
 レバーを引いて魔術弾薬をリロード。
 二発目を撃たせまいと跳躍し大きな口を広げて食らいついてくるブラックトビンガルー。
 樹里の腕がライフルごと噛みつかれる。
 その寸前、もう一発の魔法が発射された。
 噛みついたブラックトビンガルーと、イリスの体当たりによって軽く位置をずらされたブラックトビンガルー。回り込もうとしていたブラックトビンガルー。
 その三匹がみごとに巻き込まれたのだ。
「これにて弾切れ。ご武運を」
 力尽きたブラックトビンガルーに突き飛ばされる形でイルカから転落した樹里。それを引っ張り上げるイリス。
 その視線の先には……。
「ちょっとしつこいの」
 虹色イルカにしがみつくようにした蜜姫。
 高速で泳ぐイルカの左右と後方を、ブラックトビンガルーが囲っていた。
 ほんの偶然ではあるが、メインヒーラーであるところの彼女が狙われるのはとても危険な状態だ。
 が、あちこちから細かく繰り出される爪の攻撃を扇子やおこした風ではらいながら、彼女はギリギリまで耐えていた。
 なぜならば、自らが狙われるこの状態こそ、好機になるからだ。
 大きくカーブ。
 真正面に見えるのはミアと彼女の跨がる虹色イルカだ。
 二人はぱちんとウィンクをして。猛スピードのまま正面衝突――しなかった。
 ミアのイルカが海中へ潜り、一方のミアは装着した義翼で高く跳躍。俯瞰位置をとると、機関銃を構えた。
「撃ち放題、なの」
 全力射撃。プラス、放り投げた爆弾を最後尾のブラックトビンガルーの口内に置き去りにして、再び水面へあがったイルカに跨がり颯爽と駆け抜けた。
 蜜姫とミアの背後でおきる爆発が、高い水柱をあげた。

 一方で、エリザベスも同じようにブラックトビンガルーたちに狙われていた。
 回復をかけながら時間をかせぐエリザベスと、それを追い詰めようと左右から囲みにかかるブラックトビンガルー。
 そしてそれらに追いつくようにスピードをあげる、イーフォである。
「うーん、位置がちょっと微妙かナ」
 『ロベリアの花』を打ち込むには味方を巻き込みすぎる。近接戦闘ばかりする敵と戦う時のあるあるだ。
 けれどここはいつもの陸上ではない。
 イーフォはかわった合図をおくると、エリザベスに特殊な動きをさせた。
 水中にイルカごと潜るという動作である。
 追いかけていたブラックトビンガルーたちは当然同じように潜っていく。
 いつまでも呼吸ができないぶん、すぐにエリザベスたちは浮上するが……それを追いかけようとターンした際おおきく隙間ができるのだ。
 そこを、一匹の虹色イルカが駆け抜ける。
 一瞬だけだが獲物の優先順位に迷う。生まれる隙。離れる距離。
 そして駆け抜けた虹色イルカに誰も乗っていないことに気づいたとき、フリーになったイーフォの存在を察するのだ。
 海中でありながら器用に、魔術の式を指先で描くイーフォ。
 『おつかれさま』と言ったように見えた。
 見えたきり、イーフォの魔術がブラックトビンガルーたちをいっぺんに食らい尽くした。
 海中に再びあがったイーフォ。
 振り向けば、残る僅かなブラックトビンガルー集団が海岸めがけて走っているのが見えた。
 追いすがるのはフローラとロゼだ。
「突っ込むよ! 海に落ちる準備はOK?」
「――わかりました! いつでも!」
 二人はイルカたちにスピードアップの合図を出すと、それぞれの戦闘態勢にはいった。
 ロゼの戦闘態勢。それは人形をどこからともなく作り出し、両手いっぱいに抱えることである。
 クレーンゲーム帰りの女子高生でもなきゃこんな状態にはなるまいに、ロゼはそれを自信満々に振りかざすと――。
「連続スパイク!」
 今回一緒に戦った仲間たちアンド虹色イルカのぬいぐるみを次々に発射。
 ぬいぐるみに結びつけられていた糸がブラックトビンガルーたちに絡まり、それらの行き着く先……つまりロゼの腕輪ががっちりとそれを固定した。
 完全なる拘束ができたとは思わない。
 しかし一瞬だけでも隙が出来れば、それが好機となる。
 七色イルカの頭上に直立したフローラの、好機に。
「今です!」
 七色イルカが跳躍。かなりの高度をとっていながら、フローラもまた跳躍。
 ブラックトビンガルーがろくに回避できない頭上をとると、矢をオートマチック拳銃もかくやという速度でつがえては撃ち、つがえては撃ち。ブラックトビンガルーたちの頭へさくさくと矢を突き立てると、くるくると回って海へと落下した。
 酸素ボンベをくわえてぷかりと浮かんだフローラを、ロゼが引っ張り上げる。
 振り開ければ、頭を貫かれたブラックトビンガルーたちがゆっくりと海の底へと沈んでいくのが見えた。

 こうして、カモシアイランドにおこったブラックトビンガルー騒動は幕を閉じた。
 その日はずっとハーモニカの音色と虹色イルカたちの歌声が聞こえていたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――Good Job!

PAGETOPPAGEBOTTOM