PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ようこそ鋼鉄カフェへ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鋼の接客、鉄のスマイル!
「「ヘイ!」」
「「ラッ!」」
「「シェイ!!」」
 鉄帝感グンバツのマッスルたちが、ウェルカムベルと共に出迎えた。
 丸太みたいな腕。ぶつかったトラックが拉げそうな胸板。人類をかるく辞めてるいかつい顔。
 平均身長2メートル強というゴリラたちが出迎えるここは鋼鉄カフェ『チルチルスチール』。
 鉄騎種をはじめとする屈強な男や女がスタッフとして常駐することで、店内トラブルが即座に解決するほか近くでなにかトラブルがあったら出前と称して出撃できるという……鉄帝のマッスル感あふれるカフェ形態である。
 勿論来る客たちは戦士大好きな鉄帝マンたち。
 海洋からマッスル見たさに海を越えた奴や、天義から全力さに惚れて移り住んできたマッスル好きシスターや、その他諸々が常連客である。
 だがしかし。
「何ッ!? ヨシエの結婚式だと!?」
 百戦錬磨の傭兵みたいなマスターが鋼の黒電話を握りしめて叫んだ。
『そうなんですー! 俺たち忘れてて!』
「バッカヤロウ! 店のことはいい! 全員休んで祝ってやれい!」
 どうやら知り合いの結婚式にスタッフ全員で出席しようという話らしい。
『けどマスターは……』
「任せておけ。店は俺一人でもなんとかする! とにかくお前らは結婚式に行けぃ!」
 ガチーンと受話器を叩き付ける。
 その後、暫く虚空を見て固まった。
(俺は店をあけるわけにはいかねえ。闘技場で沸いた客が感想を喋るべくこの店へ来る。その美しいひとときを、俺ひとりで守り切れるだろうか……? ハッ!)
 ひらめき。
 そして壁にはりついたチラシ。

 『ローレット 万承候』

 チラシをはがし、受話器を再び手に取った。
「俺だ! 俺だよ! 俺を知らねえのか!? マスターだよ!」

●カフェは俺たちに任せとけ
 鋼の接客業、鋼鉄カフェ。
 闘技場帰りの沸き立つ客たちを迎え、その情熱を受け止めるここはカフェという名の戦場だ。
 ある客は趣味の違いで論争を起こし取っ組み合いの喧嘩を起こす。
 ある客はなぜか毎日窓をクロスアームで突き破って入店してくる。
 ある客は頻繁に暴れ牛を家から逃がして助けを求める。
 そんなハードな騒動を優しくそして力強く受け止めながら、美味い料理とコーヒーと憩いの場を提供するのがここ『チルチルスチール』なのだ。
「よく来たな! 俺はマスターだ!」
 一日ヘルプスタッフとして店へやってきたイレギュラーズたちにエプロンを突きだし、マスターは親指を立てた。
「今日も一日、パワフルに行こうぜ!」

GMコメント

 こちらは接客業シナリオ。オシャレなカフェの店員となり、お客さんに楽しいひとときを提供したり美味しい料理を作ったりするシナリオです。
 ただ暴れ牛を捕まえたり、クロスアームで突っ込んでくる客を受け止めたり、急に道場破りならぬカフェ破りを仕掛ける若者を撃退したり、論争を始めてがちバトルに発展した人々を殴ってなだめたりするだけです。たまにパンドラも減ります。

●役割分担
 皆さんは鋼鉄カフェ『チルチルスチール』のヘルプスタッフとして一日働きます。
 役割を『フロア』『出前』『料理』『なぜか居る人』の三つ(か四つ)に割り振り、それぞれの通常業務をこなしてください。
 んで、この時点では未来はわかっていませんが、途中三種の騒動がおきるのでそれぞれを対応していきましょう。

・騒動1:喧嘩を始める客
 闘技場のファンは色んな人が居ます。頭に血が上ってとりま乱闘になる客もここの常連客にはいるのです。
 基本的には双方ぶん殴って止めるのがこの店のパターンだそうです。二人の戦闘力はそれなりのゴリラですが、ただし素手なので武器による強化がありません。
 いつものことなので追い出さなくてOKです。大人しくなったら普通にご飯食べて帰るそうです。

・騒動2:暴れ牛が逃げ出す
 近くの牛丼屋が巨大なモンスター牛を逃がします。わりと頻繁に逃げ出します。なぜなら壁とか突き破れるくらい強いからです。
 強いから美味いだろうってんでこの店はかたくなにモンスター牛を使います。
 逃げるとカフェに出前の注文が来るので、『イングリッシュブレックファーストティークリームラテ』の出前と共に暴れ牛を捕まえましょう。
 勿論力尽くで。

・騒動3:カフェ破りがやってくる
 道場破りのテンションでカフェの経営権をかけて勝負を挑んでくるやからがいます。正々堂々のタイマンです。
 マスターのスタイルはその日のスタッフをぶつけるというものです。
 一日に何人も来ることがあるとかないとか……。(対応を書いた人の数だけ来ることにしましょう。戦闘力もよほど手を抜かなければなんとなかなるレベルとします)

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • ようこそ鋼鉄カフェへ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月10日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リオネル=シュトロゼック(p3p000019)
拳力者
主人=公(p3p000578)
ハム子
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
黒杣・牛王(p3p001351)
月下黒牛
雷霆(p3p001638)
戦獄獣
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
ロク(p3p005176)
クソ犬
トルハ(p3p005489)
極限インブリード

リプレイ

●開店の朝
 鋼鉄のカフェ『チルチルスチール』。
 ここは闘技場帰りの沸き立つ客たちを熱く迎え入れ、彼らに幸せなひとときを配る鋼のカフェである。
「よく来たな! 俺はマスターだ!」
 カフェのマスターはこの百戦錬磨の傭兵みたいな人だ。マスターは本名だ。親から『マスターになれ!』と名付けられたらしい。
 様々な武器の扱いをマスターし闘技場で一時期人気選手として活躍した後に怪我で引退。それでも初心一貫、カフェのマスターへと究極転生したのだという。
「今日も一日、パワフルに行こうぜ!」
「おう!」
 ビシッと親指を立てる『拳力者』リオネル=シュトロゼック(p3p000019)。
 『チルチルスチール』のデザインのあったかいエプロンを纏い、やる気も十分だ。
「勢いでスタッフ全員休ませちまったんだろうが……そういう勢い、嫌いじゃ無いぜ」
「さすが鉄帝だね! 結婚式だもんね! ね!」
 言葉の前後が既につながってない『脳内お花畑犬』ロク(p3p005176)。
 彼も(犬状態のまま)エプロンを纏っていた。意味ねえ。
「マスターも結婚式行きたかったんじゃないの?」
「なあに、スタッフ全員送り出しても俺さえいりゃあヘルプスタッフで店は回る。全力出してもギリギリ死なねえのがチルチルスチールの心意気よ」
「…………!」
 その意気やよし!
 とでもいうように『咆哮する遺伝子』トルハ(p3p005489)が鼻息を鳴らした。
 しゃべれる以外は大体馬。それも競走馬。彼女もエプロンを纏っていた。やっぱ意味ねえ。
 このメンツで本当に大丈夫だろうかと若干の不安にかられた『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)ではあるが、マスターは気にしてないっぽいので咳払いでごまかした。
 マスターもヨシエ(見たこと無いけど女性なんだろうな)の式に駆けつけたかったろうなという気持ちも一緒に誤魔化して、背筋をぴんとのばした。
「優しいマスターの為に、精一杯頑張らせていただきます!」
「まさか『かふぇは戦場だ』と容易く想像できてしまうとは……流石、鉄帝」
 『月下黒牛』黒杣・牛王(p3p001351)が気を引き締めねばと呟くので、ノースポールはそちらへ振り返って頷いた。
 牛王が黒毛の雄牛になっていた。
 やっぱりエプロンつけていた。意味ねえ。半分地面に引きずってるし。
 カフェが軽く動物園と化している現状ではあるが、『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)はマイペースにキッチン用のエプロンを身につけていた。
(何時もは予想の斜め上をいく鉄帝でも今回は比較的まともな仕事。そう思っていた時間が私にもありました……。いえ、日雇いの臨時代行を軽視しているわけではないですが、いかにも鉄帝だなと)
 ずしーんと地響きがするほどの勢いでフロアに入ってくる『戦獄獣』雷霆(p3p001638)。
「おはようございます!」
 飲食系サービス業に朝夜はない。よって挨拶はおはように固定される。
「やる事は派遣のバイトの様だが、他の依頼、即ち殺し合いに匹敵する難度だと言う」
 鉄帝飲食系サービス業は客を選ばない。よって怪獣だろうと接客する。
「ならば俺も戦として挑ませて貰う」
 ぶおんと身体のあちこちから炎を吹き出す雷霆に、マスターがうんうんと頷いた。
「頼もしいスタッフたちだぜ。今日一日、お前たちは俺のファミリーだ! 困ったことはなんでも大黒柱の俺に頼れ! そして俺もお前たち戦力として頼る! これがファミリー。よろしく頼むぜ!」
 ここまで言ってから、ふと店の端に視線をやった。
 席に着いた『ハム男』主人=公(p3p000578)がメニュー表を見ながら難しい顔をしていた。
「あれは客……なのか……?」
「仕込み客だ」
「仕込み客か」
 それで納得しちゃうマスターもたいしたものである。
 ぱっと手を上げる主人頭 公郎(シュジカシラ コロー)。
「パルススペシャルください」
「ハイヨロコンデ!」
 雷霆は拳を握りしめると、キッチンスタッフへと吠えた。
「パルスペワンプリィイイイイイイイズ!」
「「イエエエエエエア!」」
 店内の全員が拳(?)を振り上げた。

●ある鉄帝の日常
「シャオラアアアアアアアアアアッッ!!」
 クロスアームで開店する客が窓を破って突入してきた。
 地面を転がり拳で止まると、キッと顔をあげる。
「今日はブラストマンが勝ったぜ! ドーザー丼とコーヒー!」
「ラッシェイ!」
 リオネルは飛び散るガラス片をササッと片付けると、スマイルアンドサムズアップで注文に応えた。
 窓を破る客など非常識ではないか? それはカレーを素手で食べるインド人にスプーンを強いるようなもの。ここでは、もはや常識なのだ!
「闘技場のアツいバトルで自分までアツくなって窓ガラス割っちゃうなんて、よくあるよな」
 軽く影響されてきたリオネルである。
 大体窓ガラスの代金は毎回黙って弁償してくれているので窓が定期的に新しくなってるなーくらいの感覚である。
「ご注文! 承りいぃ!! ドー・ザー・丼!」
「「ドー・ザー・丼! ドー・ザー・丼!」」
 店内が沸いた。
 マスターやスタッフのみならず、客までもが拳を振り上げてコールした。
 ドーザーってなんだよと思うかもしれんが、闘技場のルーキーリーグで人気急上昇中の若手ファイターである。あだ名は『ブラスト』。
 フロウは注文を受けて即座に調理を開始した。
 焼くとオレンジ色になる魚の身を炙ってご飯にのせる。
 たれは醤油とみりんと酒を大さじ一杯ずつにカツオのだし汁を加えフライパンで軽く沸騰させたもの。最後にアルコールを飛ばすべくフライパンをコンロの端でカンッてやって引火したタレが派手に火を一瞬ふきあげれば完成だ。実際美味しいし派手だからやってみ。天ぷらとかで。
 一方でノースポールはめちゃくちゃ巨大なハンバーグを焼いていた。
「忙しいのって、燃えてきますよね!」
 実際炎が吹き上がり、ノースポールは巨大な鉄板と格闘している。
 流れる汗をタオルでぬぐい、焼き上がったハンバーグを別の鉄板へとのせる。
「アガリーィ!! いっぱい食べてってくださいね!」
 できあがった料理は全身から妙に炎を吹き出す雷霆が闘志満点に、足音をズッキャズッキャいわせながら持っていく。
「鉄板がお熱くなっておりますのでお気をつけください」
 お前を殺すみたいなトーンで言うと、死ぬほど頑丈なテーブルにどんと置いた。
「おにぎり! おにぎり持ってきたよ! おにぎりおいしい! おいしい!」
 運ぶ最中に色々忘れて食べ始めるロク。
 それをなぜか暖かく見守る客。
 人間火力発電機がどうとかいいながら只管焼き肉食ってる公郎。
 そんななかコールされる、マスターの声。
「出前だ! 二件同時だが……行けるな!?」
「無論!」
「今すぐにでも!」
 獣の叫びをあげるトルハと牛王。
 店の扉を突き破る勢いで走り出したトルハと牛王は背中にくっつけた出前を激しくゆらしながら町中を駆け抜ける。
 トルハを先頭とした馬の陣形は英国式。つまりパンジャンドラムみたいに全部ふみつぶして最後には爆発する陣形である(偏見)。
 一方の牛王も向かうところ壁無しの突撃で最短コースを突き抜けていく。
 『チルチルスチール』の出前は早く強く勇ましくがモットーだ。
 場所は戦場だろうが地の果てだろうが頼まれたら行くのがつとめ。
 爆発を背にして牛王たちは走って行く。

 そんなカフェには色んなお客がやってくるもの。
「たのもー!」
 カフェの権利をかけて勝負を挑む若きカフェファイターも現われる。
「権利とは力。力とは腕。力なきものは権利を守れず、力あるならば権利を勝ち取ることができる。すなわち、カフェ破りである!」
「いいだろう!」
 マスターが腕組みと共に立ち塞がり、スタッフの一人を呼びつけた。
「今度は私が対応します」
 ゆらりと現われたフロウが身構え、S・インパクトを連発。
 爆裂するパンチを繰り出すカフェ破りとの死闘の末、フロウは決まり手のS・インパクトによってカフェ破りを窓から外へと吹き飛ばした。
「では、裏方は早々に退散ということで」
 ゆらりと厨房に戻っていくフロウ。
 だがカフェ破りは一人だけではなかった。
 白衣に白いコック帽を被った男が、ボウルと泡立て器を装備して入店してきた。
「やあやあ我こそはショートケーキの鬼である。この地にケーキ屋を開かんとする者なり。諸君らの中にそれを阻まんとする者はあるか!」
「俺が相手になろう」
 店の中央に歩み出たのは雷霆であった。
「接客にはあまり自信が無いのだが、この手の客なら存分にもてなせるぞ」
「その意気やよし。いざ尋常に――!」
「勝負!」
 ケーキ職人は鋼鉄の泡立て器を超高速で微細に回転させるとドリルのごとく突きだしてきた。
 ガードした雷霆の腕を一瞬にして引き裂き、血を噴出させる。
「我が腕はクリームをホイップする兵器。人体とてたやすくホイップしてみせよう」
「おもしろい……」
 吹き出る血がたちまちに炎とかわる。
 雷霆は吹き上がる炎をそのままに、籠手に畳んでいた爪を展開、交差させるように繰り出した。
 ケーキ職人の翳す鋼のボウルが八つに切り裂かれる。
「なんと――だが痛みに引き下がってはケーキは作れぬ!」
「皿が熱いからと提供をためらえば料理は冷めてしまう!」
「「進まねば道はなし!」」
「「如何にも!」」
 雷霆の繰り出した繰り出した接客配膳衝とケーキ職人の繰り出した卵白攪拌拳が交差し、互いの顔面へ直撃した。
「「破ッ!!!!」」
 衝撃によって吹き飛ぶ椅子とテーブルと客と窓ガラス。
 コーヒーカップ片手に立ち上がった客がニヤリと笑った。
「コーヒー代だけでバトルを至近距離から見物できるたぁサービスのいいカフェだねえ」
「一日に二度もカフェ破りを見られるとは縁起がいいぜ」
「火事と喧嘩は鉄帝の華よ」
 勝敗は僅差で雷霆に軍配があがった。
 互いに倒れ、先に立ち上がったのが雷霆であったがゆえである。
 これにてカフェ破り終了かと思いきや、新たな人間が倒れたドアを踏み、指先でウェルカムベルを鳴らした。
 フランスパンでものってんのかっていうリーゼントに学ラン。頬に傷をもついかつい青年である。
「おうおうおう、俺様は天下御免のネコ好き番長。ここいらに猫カフェをオープンさせるってえ野望の持ち主よ。燃えたぎる俺様の情熱をとめたきゃあ、より熱い魂をもってきな!」
「そのご注文――」
 倒れたテーブルをなおし、リオネルが真正面に立った。
「オレが承ったぜ」
 エプロンをつけたままファイティングポーズをとるリオネル。
 鉄パイプをかついでいた猫好き番長はにやりと笑い、鉄パイプを地面へと放り投げた。
「ステゴロ上等、タイマン上等。いいぜ、かかってきな!」
「そいつはこっちの台詞だぜ!」
「応よ!」
 二人は同時に飛び出し、同時に拳を繰り出し、真正面から互いの拳をぶつけ合った。
 衝撃が爆発し、波紋を広げるかのように周囲のものを吹き飛ばしていく。
 一発目はリオネルの顎を打つアッパーカット。
 二発目はネコ好き番長の鼻を潰すかのようなストレート。
 血をふくも、互いに笑顔。
 なぜなら。
「「根性ッ!」」
 リジェネレート? そんなチャチなもんじゃあない。
 二人は根性で立ち、根性で殴り、根性で相手をにらむのである。
 幾度の拳が交わされたことであろうか。
 いつ気を失って倒れても不思議では無いほどの拳をぶつけ合って尚、二人は拳の届く距離で向かい合っていた。
「フッ……俺様の拳をここまで受けて立っていた野郎はオマエが初めてだぜ」
 互いに傷だらけ。
 しかしネコ好き番長は拳の代わりに、握手を求める手を出した。
「今日の所は俺様の負けだ。挑んだ側として引き下がるぜ」
「……」
 その手を握るリオネル。
 ネコ好き番長はぐっと手を引っ張り、額をぶつけてニヤリと笑った。
「オマエ気に入ったぜ。性別は知らねえが漢だな! 困ったことがあったら何でもいいな」
「なんでもか?」
「ああ、命ぐらいならかけてやるぜ」
「そうかい? それじゃあ……」

 熱いバトルは客の心を熱くする。
「今日はいいバトルが見られたなあ」
「臨時スタッフにゃもったいねえ。やっぱり一番はあの黒獅子だな」
「待て待て、一番はステゴロのガクラン野郎だろ!」
「お?」
「あ?」
 隣同士でコーヒーを飲んでいた客が同時に立ち上がり、互いの胸ぐらを掴んだ。
「拳で決めるか?」
「いい度胸だこのやろう」
「まぜろこのやろう!」
 二人の喧嘩かと思えば急に増える三人目。
 このままでは客同士が意味も無くつぶし合ってしまう。
 公がスッと背後から忍び寄り、客の一人にアームロックをかけた。
「食事って言うのはね、誰にも邪魔されず自由で……なんていうか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……」
「こいつ、孤独主義者か!」
「よっしゃレスリングなら俺に――」
「おきゅくさまー」
 急に混ざろうとした四人目をとめるべく、ノースポールが足を踏んで再び座らせた。
 ただ踏んだだけだとそのまま立ち上がりかねない屈強な客だったので、踏むって言うか踏み砕く勢いでいった。
 『痛っ』くらい言わせて椅子に再びすわらせるに至った。
 肩をぽんと叩くマスター。
「火事も喧嘩も鉄帝の華だが、意味も無く喧嘩をしちゃあいけねえ。力のふるいどころを間違えちゃあ、俺らは怪物とかわらねえからな」
「おっと、すまねえ。確かにその通りだぜ」
「少しは落ち着きましたか? でしたら、ごゆっくり!」
 ノースポールはおかわりコーヒーをテーブルにおいて、厨房へと戻っていった。
「なんて日常なんだ……窓どころか扉も壁も壊れてる」
「壊れたら直せばいい。重要なのは、客の心と俺たちの心意気さ。見な」
 熱くなった客が無意味にバーサーカーと化していた。
 対するはフロア係のロク。
「シャラアアアア!」
「はい!」
 繰り出された拳にお手。
「ヒャアッハー!」
「はい!」
 繰り出された蹴りにおかわり。
 お手とおかわりをそれはもうひたっすら繰り返し、バーサーカーの攻撃を受け流していく。
 全て終えたあと、なんかスッキリした客は自主的に弁償代をテーブルにおいて『コーヒーおかわり!』と注文してきた。
「うけたまわりー!」
 ロクは笑顔(?)で応えると、厨房までたったか走って行った。
「コーヒーおかわりだよー! もっていくよー!」
「ちなみに今のバーサーカーは大工だ。凄まじい速さで壁を修理してくれる」
 そういってマスターは弁償代をそのまま注文書にかえてさっきのバーサーカーに返していた。
「マッチポンプ……」
「セルフ営業……」
 とかやってると、注文の電話(?)がかかってきた。
 受話器をとるマスター。
「牛! 馬! 牛丼屋とステーキ屋から出前の注文だ。ついでに暴れ牛をつかまえてこい!」
「御意!」
「おまかせください」
 バッと店から飛び出したトルハと牛王。
 牛王は黒毛牛に変化すると、地面をがっととらえた。
 なぜなら、店をでてすぐの路上に二頭の暴れ牛がいたからである。
「ぶるああああああああああ!」
 レディとは思えない声をあげて突進するトルハ。
 同時に突進した牛王。
 彼らは真正面から突っ込んでくる暴れ牛と頭でぶつかり合った。
 ズドンと言う爆発のような音。
 通行人の親子ずれが『ママー、牛が死闘を繰り広げてるよー』『平和ねー』みたいな会話をして通り過ぎていく。
 たかが暴れ牛と侮るなかれ。鉄帝牛丼チェーン『レジェンドオブドーン』の「強い牛は美味いに決まってる。文句があるならかかってこい」という言葉の通り、食材の牛からしてもうモンスターだった。人とか普通に殺せる牛である。
 だがこちらとてただの牛と馬ではない。
 異世界のおとぎ話に語られるような男前の雄牛、牛王。
 競馬場を震撼させた暴れ馬(馬ーサーカー)トルハ。
 彼らの彼らは血みどろの死闘の末……!
「ヒヒーン」
「ブルル……」
「ブモー」
「ブモモモモ……」
 意気投合して肩を並べつつそれぞれの店に帰っていった。トルハと牛王は出前のイングリッシュブレックファーストティークリームラテを届けてから牛刺身丼(多分即さばかれたやつ)を食べて帰ってきた。

●ヨシエ
 こうしてチルチルスチールは平和に営業を終えたのでした……とはならぬ!
「マスター、ヨシエさんの式……行きたかったんでしょう?」
 ノースポールが用意した花束をマスターの胸につきつけた。
 トルハの用意した馬と馬車が、店の外でマスターを待っていた。
「しかし式場が……」
「心配すんな!」
 リオネルと牛王が、式場の地図を差し出した。
「近道も教わっています」
「マスターには好きにして貰いたい。いずれにせよ、俺は最後まで全力で働かせて貰おう」
「今まで言わなかったけど、ボクも実はスタッフやれるんだ」
 雷霆と公がエプロン姿でサムズアップした。
 フロウやロクも、マスターを送り出す気満々である。
「お前たち……ありがとう! ちょっくら、行ってくるぜ!」
 花束を抱き馬車に飛び乗り、マスターは走り出す。

 この後ヨシエ(身の丈二メートルのゴリラ)と本来のスタッフたちをつれて二次会をしに戻ってきたことは、言うまでも無かろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――congratulation!

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