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シナリオ詳細

<奇病奇譚>縛椛病

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<奇病奇譚>第七頁
 とある名医の手記。その手記は原因不明の病のみが綴られ、社会に広まることはなく、ただその病気の罹患者と医療従事者のみが知るものとなっていた。
 此度綴られるのは『縛椛病』。
 どうしてだろう。『あれ』を見る度に、心が擦れて、閉じて、消えていく気がするのだ。
 今回の患者の場合は。両親の形見であるペンダント。それを破壊して貴方を治したと伝えると、患者が初めて取り戻した感情は憤怒と悲哀であった。

 七頁目。
 症状の自覚:忘れた。恐らくは半年前と推測
 患者の症状:感情の起伏の喪失。
 上記より縛椛病と判断。治療方法はまた後述しよう。
 この病気は肉体以外の痛みを忘れてしまう。それどころか大切な人を傷つけるだけの酷い病気だ。
 どれほど気の弱いひとでも、怒りっぽいひとでも、感情というものは存在している。しかしこの病気はそれを奪ってしまうのだ。

 八頁目。
 病気について:感染病ではない。
 進行度:重症
 重症患者はロボットのよう、という表現こそ悪いが、本当にそのように無機質になってしまう。
 治療方法:忘れるものとなったトリガーがこの世から喪失されること。
 重傷のものである場合は、己の手で喪失させない限り感情が戻ることもない。最悪の場合は精神崩壊して死ぬ。
 注意点:トリガーは人形の場合もあるし食べ物の場合もある。人間であることもある。
 完治が非常に難しいため、期待はしない方がいい。

 人の痛みすらもわからぬまま生きていくことは非常に苦しい。
 誰の痛みもわからぬまま、ひととの縁を失って生きること。それはどれほど自分を苦しめているかもわからずにいるのだろうか。


「心を失う、って。難しいよね」
 一足先に体験してきたのだという絢は、己の胸に手を当てながら考え込む。
 酷く苦しい。ことだったように、思う。
 心がなくなるとでも形容するべきだろうか、本当に何も感じることができなくなってしまったのだ。
「嬉しい、とか。楽しい、とか。そういったものもなくなってしまって。ただ生きているだけの人形みたいな心地だったんだ」
 叶うならもう二回目はなくていい。そう告げるくらいには、うんざりして、散々な目だったのだという。
「おれの場合は……世界から桜を消したよ。だから、心が戻ってきた時は……こんなものなくたって良かったかもしれないな、って」
 一本ずつ桜を燃やして。壊して。そうしていくことの何が楽しかったのか。
 とにもかくにも。
 貴方は今、『縛椛病』に陥ろうとしている。
 ……心を失う、恐ろしい病に。

NMコメント

 心はないのではなくて、見えにくいだけかもしれません。
 染です。紅葉の花言葉である『自制』からの連想です。

●目標/できること
 【A】縛椛病を治療する
 【B】縛椛病で死ぬ
 【C】縛椛病の治療を手伝う

 のいずれかを選んでいただくことが可能です。

●【A】縛椛病を治療する を選んだ場合
 貴方は縛椛病患者です。
 治療を選んだ場合は第三者、あるいは己の手でそれを喪失させなければなりません。

●【B】縛椛病で死ぬ を選んだ場合
 貴方は縛椛病で精神が崩壊してしまいました。
 いわゆる疑似反転のような状態に陥ります。世界を壊しましょう。

●【C】縛椛病の治療を手伝う を選んだ場合
 貴方の大切な人は縛椛病です。
 この世界から縛椛病のトリガーとなったものを喪失させましょう。
 たとえそれが貴方の命であったとしても。

●プレイングでお願いしたいこと
 ・ある程度の文字数(薄いリプレイになってしまいます)
 ・【A】or【B】の明記
 ・(あるようなら)グループタグ
 ・大切だった相手(IDでも、感情欄指定でも、関係者さんでも大丈夫です)

●<奇病奇譚>の世界観
 染が担当させて頂くライブノベルシリーズの一つです。
 混沌に似たどこか。混沌と同じように考えていただいて大丈夫です。
 混沌と違う点は、原因不明の奇病がうじゃうじゃとあるところ。
 <奇病奇譚>のタイトルがつけられています。

 ・過去作
 涙石病 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8400
 絆忘病 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8408
 花弁病 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8491

 以上となります。
 ご参加をお待ちしております。

  • <奇病奇譚>縛椛病完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年11月09日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
天藍の星を見つけた
浮舟 帳(p3p010344)
今を写す撮影者
フロイント ハイン(p3p010570)
謳う死神
マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士

リプレイ


 あの人を見るたびに、何かが消えていることに、最初は気がつかなくて。
(……いいえ、いいえ。わたくしよりも、ずっと、他人の方が、そんな変化は見えていたはずなのに)
 受診をすすめられても。
 平気かと尋ねられても。
「大丈夫です」
「平気です」
 だからなにも変わらないのだと、笑って答えて。
 気がついたら何も、何も、わからなかったのだ。
 ぼんやりと。ましろい乙女たる『星に想いを』ネーヴェ(p3p007199)は瞬いた。
 大切という言葉はわかっても、大切という想いはわからない。
 喜怒哀楽を知っていても、共感ができない。
 本を読んでも。映画をみても。なにもなにもわからない。


  だから、真似っこをすることにしたのです

  こまらせてしまうから

  そうだ、フローチャートのようにしてしまいましょう

「ネーヴェ、ありがとう」
「どういたしまして」
 こういう時は笑って。
「ねえ、ボク、どうしたら良かったのかな……」
「だいじょうぶ。……だいじょうぶ、です」
 こういう時は悲しんで。
「ネーヴェさん、海、綺麗ですね!」
「はい、とっても」
 こういう時は楽しそうにして。
 空っぽの中身を誤魔化すみたいに、ヒトの真似を。真似っこを。そうすれば心のなかも埋まるから。
 けれど当たり前に、本物を得ることはない。ふとした瞬間に医者の言葉が蘇る。

 『大切なものを壊せば良い』。

(大切という感情すらもわからない今、それをどうして『大切』という感情に、当てはめていたのかも、定かでない。けれど)

 椿の髪飾り。
 縁を得た櫛。
 安眠できる飴の瓶。
 同じ時を過ごした猫。
 足の代わりに空を駆けたワイバーン。

 それから、それから――砕ける音も、断末魔も、か細くなる吐息さえ。
(……わたくしをなにも、なにも、揺さぶらない)
 全てが壊れた世界でネーヴェは立ち尽くす。壊れていく。世界が? いいや、わたくしが。
「わたくしが、本物を得るためには――ああ、まだ『ヒト』が残っているでは、ありませんか」
 猫も、ワイバーンも壊したのなら。ヒトとて、同じことでしょう。
 血塗れの床を進んでいく。いつものように身支度を整えて。
 親友だと思っていた蝶の少女。
「ネーヴェちゃん!」
 スネグーラチカ。
「ネーヴェさん」
 黒猫の女性にジャイアントモルモットを連れた少女。
「ネーヴェちゃん」
「ネーヴェおねえさん」
 ああ。でも。まだ、本物は手に入らない。
 それなら。次の貴方を壊したら、わたくしは、本物を知ることができますか?

 あおいかみをした、あのほしよりもきらめいた、あなた。



 10日目
 症状の進行度:すでにいくつかの感情の喪失を確認。
 備考:トリガーはどうやら自身の身に付けているカチューシャのようだ。視界に入る比率は低いはずだが知覚できる時点で症状が進むのだろうか?或いは単純にガラスなどに移り込む自分を見てしまっているのかもしれない。
 いやなんでだよ。
 せめて俺の大事にしてるモノとかにしてくれ。
 このカチューシャは取り外しができないから実質治療できなくて詰みだろ。
 ……まだツッコみたくなる感情はあるようだ。

 30日目
 症状の進行度:ほぼ全ての感情を喪失
 備考:日常生活に特に支障は無い。最も、あってももう気付かないだけかもしれないが。
 喜怒哀楽の感情を演出することは特に不自由していない。
 すでにそれらのパターンの思考は複数ストックしているからだ。
 少なくともまだ人間として振舞うことは容易だ。

 45日目
 症状の進行度:全ての感情の喪失
 備考:日常生活に支障は無い。上記通りどのような時にどのような感情を持ち、行動を行うかの思考をストックしているからだろう。相変わらず人間を続けている。
 ――いるのだろうか? 感情が消えてなお普通に振舞うという時点で既に……。考えても無駄だ。
 もうずっと前から続けていることだ。
 今更否定したところで何が変わる訳でもないだろう。

 75日目
 症状の進行度:
 備考:
 ――以下記述無し

 規則正しい生活ルーティンを繰り返す男の名前は『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)。退屈しのぎに壊すことすらもやめた、ただの男の名前だ。


 夢を見ました。
 心が打ち砕かれる夢。
 心が損なわれる夢。
 心が失われる夢。
 何故、このように奇妙な夢を見たのか、僕にはさっぱりわかりません。
 僕の心が、壊れたり無くなったりするようなことは、決してあり得ません。
 煌めくサファイアは血に濡れている。『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)はプログラミングされたように笑った。
 ――そんなもの、初めから存在していないのですから。

「僕は生命の不規則な鼓動に慈しみを感じていました」
 一つ一つが異なり、消して同じ音はない。
 あらゆる音が一つの物語であり、それが億万と存在する。
 こんなもの、不愉快な雑音でしかないというのに。
 跳ねない心電図こそが美しい。みなひとつであるから。
「世界は不完全です。僕は世界を完全なものにしなければならない」
 完全な世界とは、何も無い世界です。
 争いを起こす者も、罪を犯す者も存在しない世界です。
 全ての流れが止まり、完璧な静寂のみが存在する世界。

 僕は、それをもたらすために、やってきた。

 死とは友人であり。友人とは死である。
 永遠なぞ存在しまい。それならば。

 全ての流れを止め、全ての記憶を忘却の淵へと追いやり。
 全ての生命を滅ぼし、全ての次元を消費し尽くし。
 そして最後に僕自身も消えて、全ては完成へと至ります。

「これが僕の全て。これが僕の夢。あれ、しかしこれは……僕一人が消えるだけでも、同じようなことなのでは?」

 わからない。手に握った凶器。壊し続けた完璧でないものたち。

 夢を見ました。
 心が打ち砕かれる夢。
 心が損なわれる夢。
 心が失われる夢。
 何故、このように奇妙な夢を見たのか、僕にはさっぱりわかりません。
 僕の心が、壊れたり無くなったりするようなことは、決してあり得ません。

 僕には大事なものがこれと言ってありません。
 だからこそ、全てが愛おしいのですから。

 ぐちゃり。
 初めからないもののために頑張るなぞ、愚かだ。


「夏! ねぇ夏、今日は月が綺麗だよ!
 とっても大きくてキラキラしているよ。ウサギも見えるぐらいにくっきりとして凄いんだ!」
 笑う。声をあげて。それから。
「……夏、お願いだから返事をしてよ」
 きらきら輝く空のした、『今を写す撮影者』浮舟 帳(p3p010344)は夏灯が動かないままなのをみてそっと目を伏せた。

 夏が動かなくなった。
 生きてはいるけど、動いてくれない。
 まるで機械みたいに何も言葉を返してくれない。
 無機質だった。

 最初はちょっとずつ、違和感が出ていただけだったけれど。
 ナニカが可笑しいと分かっても、何もできなかった。まさか、こんなことになるなんて。
 沢山お話して、毎日会っていたのにどんどん酷くなっていった。
(……今ではもう、何も想いを返してはくれない)
 沢山のお話をした、色んな絵を描いた、綺麗な写真も集めてきた。
 でも動かない、聞かせても見せても反応が無い。
 こころが、ない。

 動かなくなって暫くしてから告げられた。
 夏のコレは『縛椛病』で、トリガーはずっと会ってたボクらしいということ。
 まさか病気だなんて。そしてその治療法は……夏にボクを殺させること。

 迷わないし、悩まない。
 夏を救えるなら何でもいい。
 ボクのせいで夏がこうなったのなら、ボクの命で贖おう?

「夏、ごめんね、きっと夏は悲しむね。辛い思いをさせてしまうよね?」
 無機質な瞳に無理やり写り混む。
「でも、夏がちゃんと生きれるならボクはそれで構わない。ボクが死んで、夏が生きるならそれでいい」
 包丁を握らせて。に、と笑って。
「ねぇ夏、ずっとずぅっと大好きだよ、ボクの一番の親友。どんな景色も、どんな絵も、夏と見るのが一番楽しかった」
 かちゃ、と音がなる。
「ボクが居なくなっても、どうかちゃんと笑ってね」

 むせ返るような夏の日のことだった。
 その日、ひとりの少年が死んだ。


 いつも飲んでいたのに紅茶を見る度に心が擦れて消えていく感覚がする。
 体が温まりはしても、その感覚にもう飲むのを止めてしまった。
 美味しかったな、とか。今日は上手くいれられたな、とか。そんな些細な喜びすらも消えてしまいそうだ。
 部屋で白いカップをぼんやりと見つめたまま時間だけが過ぎていく。『千紫万考』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)の表情は、固いまま。

 僕が淹れた紅茶を好きだと言ってくれた人がいる。
 身の回りの世話をしていたその人に誘われてよくお茶をしていた事を覚えています。
 光が差す部屋。紅茶にジャムを混ぜて、おいしいと笑い合っていたように思う。

 あまりにも、不確かだ。
 ゆらゆらと揺蕩う蒸気。それすらもジョシュアを嗤うようだ。

(森に住む魔女様は家に行くとお菓子を用意してくれて、そのお菓子は――どんな味でしたっけ?)
 お菓子なのだからきっと甘い、それはそう。だけどそれだけではなかったはずで。
「……」
 膝に乗った猫を撫でるとふわふわしている。この毛並みが好きだったはずなのに、だめだ。

 その事自体は覚えているのに。そこに感じていたものが何だったのかわからない。
(あの日々が続けばいいと思っていたのはそれがあったからなのでしょうけど。失った代わりに何を言われても平気になって、胸が苦しくなったりもしなくなりました)

 居てくれて嬉しい
 出ていけ
 居てくれて嬉しい
 出ていけ――
 でも。なにも感じない。

 このまま症状が進めばいつか空っぽになるのかもしれないけれど。治療をするにもこれは世の中に溢れ過ぎて完治は難しいと言われてしまった。
(飲み物なんて別にたくさんあるのだから果汁でもなんでもいいでしょう?)
 投げられた石が当った場所が痛い。ああ、だから腹いせだ。茶の木を毒で根から腐らせて、紅茶を毒で汚しました。
 そうすればみんなみんな、等しく、おなじだ。


 目の前に、一組の男女が居る。
 彼らは『嵐を呼ぶ魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)が召喚される数日前に別れた、一番最初の師匠二人。
 何の目的も想いもなく、ただ生きていただけの時に出会った、冒険者の夫婦。
 マリオンの冒険者としての師匠、その師匠夫婦の片方、妻の方が発症した。
 トリガーは、その夫――つまるところ、治療に夫の命を奪う必要がある。
「こんなのおかしいと、マリオンさんは強く憤ってます!!」
 躊躇い。憤り。そのどれもが伝わらない。死ぬしかないの? ああ、そうだ。
「ダブル師匠は、とっても大変あまりにも物凄く、ラヴラヴ夫婦なのにッ!!
 妻師匠を助けるために、夫師匠の命が必要とかッ!!! そんなの誰も救われないじゃないですかッ!?」
 自分を殺して欲しいと頼む夫と、それを拒むマリオン。
「……っ、埒が明かない。殺されたくないなら、自分を殺せ!!」
 どうして。マリオンを躊躇いつつも攻撃し、襲い。そんな師匠の姿が、痛々しい。
 自死できる筈なのに襲い掛かって来る矛盾に、感情的になり過ぎて気づけていないのだろう。
 殺したくない。殺したくない。殺したくない!!!
 散々こねた駄々は。結果として最悪の未来を手まねいた。
「なら、夫婦そろって死ぬだけだ」
 放たれた言葉と同時、妻側に向かったのを見て、咄嗟にマリオンは殺しを決意する。
「ぐっ……」
 けれど。彼らとて冒険者。一撃で絶命には至れない。
「後は、頼む……」
 何を。誰を。
 こぼれおちた涙。すまない、と謝る師匠。そんなことを言うくらいなら。
「何が...何が後は頼むですかッ!! 夫師匠が居ない世界でッ妻師匠が心を...心を取り戻したってッ!!! 取り戻したってぇぇぇぇぇッッッッ!!!!!」
 ……幸せになれるわけ、ないでしょう。
 もう届かないであろう後悔と懺悔。あなたが生きていなければ、彼女の記憶が戻ったって、意味はないのに。

成否

成功

状態異常

なし

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