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シナリオ詳細

<最後のプーロ・デセオ>遥かなる時の向こうから

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「なるほどねぇ……つまり、ここは危険なわけだ」
 迫る脅威、フェデリア島すらも戦場ならんとする状況をカリーナ・サマラに伝えに来たラダ・ジグリ(p3p000271)に、彼女はどこか余裕すら感じる調子で答えた。
「あぁ、あんたも商会の連中と一緒に避難した方がいい」
「……『瘴緒(しょうのお・デヴシルメ)』だっけ? 夢遊病みたいな、あれ」
「あぁ、つまり、商会の奴らには意識が無かったんだ」
「まぁ、そんなことだろうね。知らないうちにやって自分らも危うく死にかけたんだ。
 あいつらも今回は逃げたいだろうさ……でもね」
 ふと、カリーナが港の方を見る。
 普段であれば人々が忙しなく行き交う姿がここからでも見えるはずだが、その数は着実に減ってきている。
 フェデリア島が戦場になるという事で、避難していったのだ。
 今もまだ動いている者たちも、その日までには避難していくことだろう。
「けどね、嬢ちゃん。あいつは……私らを襲ったあのダガヌチ、ラミエルって名付けたあれだよ」
「あんたの先祖が祀っていた存在の姿を取ったって推測してたあれか。
 それがどうした?」
「あの子は、私を目標に定めてた。
 うちの会員連中まで操って、私を誘導したんだろう。
 ――ということは、だ。私が避難したら、避難した先にあいつが現れるんじゃないかい?」
「――それは……あぁ、否定はできないな」
「これを商売と考えよう。あのダガヌチが、『私』って商品を求めてるってんなら、売る立場はこっちなんだ。
 前回はあっちの持ち場で交渉したけど、最初からまけてやる理由はないよ。
 だったら――『今度はこっちが選ぶ番だ』。違うかい?」
 にやりと、カリーナが笑う。
「まさか、あんた……」
「どうせあいつは私の前に姿を見せる。
 なら、こっちにとって都合のいい場所で待っていてやろうじゃないか」
 豪快に笑い飛ばすようにカリーナはそういうと真剣な表情を作る。
 ――私が囮になってやる、と。
 彼女はそう言っているのだ。
「高くつく交渉だよ、嬢ちゃん。
 私だって命張るんだ。必ず勝ってもらいたいね。
 もちろん、ただで商品になってやるつもりはないけどね」
 そういうと豪気を湛えた瞳でラダを見据えて再び笑った。


 それからしばらくしてラダは再びカリーナからの正体を受けて港へ訪れていた。
 人の数は少し前より数が増えている。
 それだけでなく、コンテナやら木材やら、鉄材やら。色々なものが積まれている。
「なぁ、これは?」
「言ったろ、ただで商品になってやるつもりはないってね。
 例の奴が攻めてくるまえに準備しとこうじゃないか。
 ここにある資材はどう使ってくれたって構わない。
 なぁに、命を担保にするんだ、存分に使いな」
 そう言って笑い飛ばす。
 ここにある資材と人員を割けば、当日までの間にある程度の陣地や遮蔽物を作ることも出来るだろう。
「あいつは空飛んでるからね。
 落とし穴みたいなのはあんまり意味ないだろうけど、ちょっとした設置式の砲とかなら効果的だろうさ」
「分かった。あんたは当日どうするんだ?」
「ラミエルがここに到着したら下がらせてもらうよ。
 気にせず戦ってもらって構わないさ」
 ラダからの言葉に笑い飛ばすようにそういうと、集まっている作業員たちへと声をかけ始めた。


「あ、は」
 そして、その日。
 それはその場所に姿を見せる。
 長い曇天に溶けるような灰の髪と背中に灰色がかった二対四翼をはばたかせ、ゆらりゆらりと大空より此方を見ている。
 飛行種とも亜竜種とも取れる不思議な姿をしたダガヌチ――『竜骨堕姫』ラミエル。
 その周囲には、彼女を簡略化させたような不思議な形をした夥しい数のダガヌチたち。
「来た……数が多いな」
「リベンジだね!」
 ふんすっとやる気十分なフラン・ヴィラネル(p3p006816)や寒櫻院・史之(p3p002233)の姿もある。
「どうやら、本気で向かってきたってことみたいだね。
 それじゃあ、頼むよ。私はいても邪魔になるからね……あとはあんた達に託すよ」
 ふぅ、と一つ溜息を漏らしたカリーナがゆっくりと後ろへ下がっていく。
「あは、に、ニガサナイ――」
 からりと、ラミエルが笑って。
 呼応するようにダガヌチたちが構える。

GMコメント

 こんばんは、春野紅葉です。
 それでは、早速始めましょう。

●オーダー
【1】『竜骨堕姫』ラミエルの討伐

●フィールド
 フェデリア島二番街、数多の商船が来航する港部分です。
 平坦かつ広大な遮蔽物の無いただっぴろい船着き場です。
 ただし、皆さんはコンテナやら木箱などの資材を使って事前に陣地や遮蔽物を作ることが出来ます。
 また、労働者たちはラミエルの出現以前に今回の作戦に伴い避難しており、人気はありません。

●エネミーデータ
・『竜骨堕姫』ラミエル
 長い曇天に溶けるような灰の髪と背中に灰色がかった二対四翼を持ち、
 飛行種とも亜竜種とも取れる不思議な姿をしたダガヌチです。

 その正体はカリーナ・サマラさんの先祖が生活し、
 今はもう海底へと沈んだ浮遊島にて島と共に海へ消えた者達の残滓がダガヌチに巻き込まれて成立した存在です。

 飛行種とも亜竜種とも取れるその不思議な姿は彼の島にて祀られていた存在に近しいこと、
 ラダさんやカリーナに向けて、愉悦とも懐古ともとれる不思議な笑みを浮かべ、
 非常に強烈な執着を抱いていたことから推察されました。

 この単体でHARD相当に強いです。
 魔銃を用いての遠距離戦闘、剣を用いての近接戦闘の両方とも強力です。

 魔銃は【毒】系列、【崩れ】系列、【足止】系列、【麻痺】【重圧】を齎す泥の魔弾をぶちまけます。
 魔剣には【毒】系列、【出血】系列、【麻痺】、【鬼道】を与える効果があります。
 また、その言葉は【呪い】であり、【苦鳴】を与え、【呪殺】すら可能でしょう。

・ダガヌチ×???
 ラミエルが産み落とした泥であり、ダガヌチです。
 正確には劣化コピーに近く、スペックは基本ラミエルに準じつつ一部能力の欠落した状態の様子。
 かなりの数がいますが、個体のスペックやHPは大したことありません。

 遠~超距離に魔弾をぶちまける戦闘スタイルです。
【毒】系列、【崩れ】系列、【足止】系列、【暗闇】を持ちます。

●NPCデータ
・『サマラ商会』カリーナ・サマラ
 海洋出身、ラサに嫁いだ海の女。
 サマラ商会の商会長です。ラダさんの遠縁にあたります。
 当シナリオではラミエルの性質上、狙ってくると予測して囮を買って出てくれました。
 戦闘が開始されると退避してくれます。

●特殊ルール『竜宮の波紋・応急』
 この海域ではマール・ディーネーの力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <最後のプーロ・デセオ>遥かなる時の向こうから完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年11月03日 23時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)
血風妃
型破 命(p3p009483)
金剛不壊の華
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす

リプレイ


 戦場は幾つもの遮蔽物による陣地が出来上がっている。
 数列に渡って並べられたそれらは簡易なれどトーチカを思わせる形状をしている。
 縦に連なりつつも、完全に横一列が並んでいるというわけでもない。
 空を見上げれば、数える意味を感じぬほど多くのダガヌチと、それらを連れるような存在の姿。
「フェデリアは私、そしてここに暮らす人々、ここを訪れる観光客にとって大切な場所だ。
 私は、私たちは、たとえ多少建物を壊されようとも、必ずこの地を守る!」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)はそのある意味で圧巻ともいえる光景を見据え、自らを奮い立たせるが如く声をあげた。
 竜宮の加護を降ろしながら、一つ呼吸する。
 温かな加護は宛ら大切な友人の彼女を思わせる。
(マールさんが私の事を忘れてしまったらしいのは、正直言ってショックなんだ。
 彼女の記憶を取り戻し、もう一度友達に戻りたい――だから)
「こんなところで負けてはいられない!」
 大地を蹴るようにして、モカは一気に走り出した。
「ダラダラしたのは好きじゃない。
 それにここまでお膳立てしてもらったんだ。決着をつけよう」
 スコープ越しにラミエルを見据えた『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)は静かに引き金に指をかけた。
「私が、カリーナが欲しいか。――なら取りに来い」
 ラダが言えば、ラミエルが首を横たえるようにして傾ぐ。
「あ、は、は」
 羽ばたきがあり、ラミエルが一気にこっちへ向かってくる。
 あわせて、ラダは引き金を引いた。
 戦場を舞う鋼の驟雨。
 鋼鉄の雨はラミエルとその周囲にいるダガヌチを纏めて貫いていく。
 流石にラミエルはそれでは止まらない――が、数匹のダガヌチはそれだけで零れるように落ちて行った。
「そんなに暴れないでよ。エスコートしにきたんだからさ。
 何も怖くないよ、安らかになれるさ」
 ラミエルへと声をかけるのは『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)である。
 ちらりとラミエルやダガヌチたちが史之を見て、ラミエルのみが視線を外す。
 ラミエルはそのまま奥へ向かって飛翔せんと動き出す。
「離さないよ。俺だけみていて――なんてね」
 それに合わせ、身をさらした史之を今度こそラミエルが見た。
「じゃ、じゃまを――する、な!」
 魔剣が閃き、史之の身体を強かに斬り裂いた。
(これを商売なんてとらえる逞しさや覚悟は痛いほど伝わりました)
 戦場を埋め尽くさんばかりのダガヌチたちを見て『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)は思わず笑みをこぼす。
(その想いには応えなきゃ……応えたいなって思ったんです)
 ――だからといって、急に戦えるようにはなりはしない。
 そう、だから。やることは変わらない。
 圧倒的な数の敵、それは見れば分かる。
「――でも、意地でも最後まで戦場に歌を届けること、英雄たちを支え続けること――ただそれだけです!」
 自分を奮い立たせるようにして、涼花はギターの弦を一つ鳴らす。
「貴方達には、わたくしの相手をして頂きましょう。
 くれぐれも味方を煩わせる事の無いように。
 数ばかりが頼みならば、光で纏めて灼くだけです」
 そう言うのは『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)である。
 立地を把握した玉兎は、ダガヌチを多く巻き込めるような場所に移動すると、星の剣を振り抜いた。
 その身に纏う月気を曇天を衝くは蒼銀光。
 其は眼孔を侵して脳を灼く狂気の眩さ。
 侵されたダガヌチたちがその銃口を玉兎に向けてくれば、それで十分。
 次の一手を打つべく、玉兎は周囲を見る。
(さて、私はかの敵に思う処は特にありませんが。
 意気込んでおられる方々が、其々の本懐を遂げられるよう、微力ですが力添えをして参りましょう)
 その様子を眺めながら、吹き付けた風に髪を流すのは『血風妃』クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)である。
(投網……を作動するにはまだ少々遠すぎますね)
 ラミエルの位置を確かめて、クシュリオーネは指をラミエルへと向けた。
 そのまま、空に線を描くように横に引く。
 直後、ラミエルとその周囲にあるダガヌチたちが一斉に体勢を崩す。
 それはまるでその『場所』そのものが割れたかのように。
 空に散るダガヌチとラミエルを見上げて『ノームの愛娘』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は杖を握る。
「絶対絶対、今度こそリベンジなんだから!」
 フランが今居候をさせてもらっているところはパン屋を営んでいる。
 それに加えて、ラダと交易を手伝ったこともある。
 それはどちらも商いというものに関わっていて、その大変さは少しは理解できるつもりだ。
 だから、今は後ろに下がっているカリーナの覚悟を――自分が商品になるという覚悟を、フランは少しは分かるつもりだった。
「凄ぇダガヌチの数だな。
 あんまり時間をかけてると己れ達が押し潰されちまいそうだ」
 空を見上げるようにしてそう言った『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)はそのままラミエルの方へ走り出す。
 その周囲には多数のダガヌチ。
「おう、こりゃあ入れ食いってやつだな。大漁、大漁っと!」
 瞬間、命は一気に跳躍する。
 ラミエルを中心に据えて撃ち抜く乱打はダガヌチたちを一気に殴り、穿ち磨り潰して削り落としていく。


「二度目まして、だね!」
 フランは迫るラミエルと視線を合わせてそう告げる。
「押し負けてあげないんだから!」
 数の多いダガヌチやラミエルの攻撃は激しく、仲間達の傷は少なくない。
 祈りを思いに、フランは魔力を籠めあげた。
 それは降り注ぐ陽光。
 温かく、美しき慈愛の息吹。
 曇天に覆われた常夏の空を裂いた光は、温かくその背中を押している。
「これ以上ここでアンタをのさばらせるわけにはいかねえ――」
 ラミエルと向かい合うようにして、命はそう呟いた。
 その身を打つ竜宮の加護を胸に秘め、握りしめた拳を叩きつける。
 最優とも謳われる攻勢防御、光輝なる祝福を帯びた拳がダガヌチの身体を真っすぐに撃ち抜いた。
 全身のバネを利用して、モカは一気に跳躍する。
 飛ぶように跳ねた身体を空中でくるりと回し、鮮やかなる蹴撃を見舞う。
 それは毒手の如く鮮やかに、密かに避けがたき致死毒を刺し穿つ。
 鮮やかに撃ち込んだ享楽の一撃の終わりの見えぬうちに、ラミエルそのものを足場に連撃を続けて行く。
 それは宛らスズメバチの群れの如く。
 残像さえ見える高速の蹴りを抉るように撃ち抜くように叩きつけて行く。
(待っていてくれ――)
 次とばかり、モカは足をしならせてラミエル目掛けて再び蹴りを見舞う。
 残影百手。圧倒的な手数より放たれる乱打は一つ一つが強かにラミエルの身体を穿ち、削り、その身体に停滞をもたらしていく。
「おまえが親玉なんだろう?
 親玉ってのはもっと大きく構えているものだよ、細かい仕事は下っ端に任せてね。
 ほら、おまえの目的はなんだった? どうしたかった?
 俺という最短距離も抜けられないようじゃ、まだまだだよ」
 史之が挑発的に言えばラミエルの視線は一時的に固定される。
「あ、あ、ぁ、ぁ!!!! しずめ、しずめ」
 呪詛に満ちた声が耳を打つ。それを聞きながら、史之は刀を振り抜いた。
 竜撃の斬光が美しく走り、ラミエルの身体を綺麗な軌跡を描いて傷を生む。
「郷愁か、望郷か。いずれにせよ私もカリーナも、帰る場所はあの水底ではなく砂の海だ。
 それが不満だと言うのなら、私達について来るくらいやってみせろ!」
 啖呵を切ったラダはその身をさらすと、一気に走り出す。
「――逃がさない、にがさな――い!」
 まとわりつくようなラミエルの声と気配が着いてくる。
「“わたし”ができる全力を、“わたし”ができる最高を――」
 振り絞るように、涼花は歌う。
 その歌は仲間達が思わず心を奮い立たせるような熱いメロディから癒しを齎すバラードへと移り変わりつつある。
 1つ1つを大切に、誰かが崩れることのないように――自分が崩れることがないように。
(“わたし”、は――歌い続けるんです!)
 玉兎の傷は多い。
 1匹1匹はラミエルの程遠く、大したことのないダガヌチも、圧倒的な数が相手では流石に傷が増える。
「冥闇満ちて絢爛に座す。闇が満ちてこそ、月華は眩く咲くものです」
 けれど、それらの痛みなどどうしたというのか。
 闇を払うように、玉兎は静かに笑む。
 竜宮の加護を以って、曇天を裂いた銀光がその身を包み込んだ。
「ではお返しを――」
 翳した星の剣を静かに払い、数を減らしつつあるダガヌチにその身を晒し続ける。
(――今ですね)
 後退し始める戦線と、それを追うように迫りくるラミエル。
 それらの位置が万全となった時、クシュリオーネは罠を作動させた。
 ぷつん、と音が鳴り、放物線を描いた何かが空を舞う。
 何かは大きく広がって網の姿を露わにすると、そこへと突っ込んだラミエルごと落下していった。


 戦いは続いている。
 罠にかかったラミエルはイレギュラーズの猛攻を受けているものの、まだ健在だ。
 ――その一方で、ラミエルを救い出そうとするかのように、ダガヌチたちの動きは活発だ。
 数は見るからに減っていても、まだ倒れるわけにはいかないと、涼花は自らを奮い立たせた。
「負けません。――全力で皆さんが戦えるように、私が支えるんです」
 もう何度目になろうか。呼吸を整え、新たなる一曲を歌いながら、涼花は戦いが終わるまで歌い続けて行く。
 順調に数を減らしながらもなお多いダガヌチへと、玉兎は剣を向けた。
「泥と厄に塗れて、墜落なさい」
 その地へ見えるは暗き月。
 月は鮮やかなる光を映し、ダガヌチたちを照らし付ける。
 月光は泥となり、汚泥はダガヌチをも取り込み、大地へと零れ落ちて行く。
(ラミエルはお任せするとして……私はまだ残っているダガヌチを倒しましょうか)
 クシュリオーネは冷静に分析すると、まだ空へと舞うダガヌチたちへ視線を向ける。
 指をある程度の集団に向けて、線を引く。
 再度起こった現象がダガヌチたちを瞬く間に落としていく。
 落ちては砕けて泥に還り、大地を覆うそれらから視線を外してクシュリオーネは次へと指を這わせた。
「話は聞いたよ。貴女は海に囚われしまった……還ろう、海へ」
 フランは罠に嵌ったラミエルを見た。
「あっ、あぁ――――はな、離せ……ぇ」
「おやすみなさい」
 最後になるであろう祝福の息吹を仲間達へと齎してから、フランは藻掻くラミエルへとそう告げる。
 もぞもぞと動きながら起き上がろうとしたラミエルへ、命は拳を握り締める。
「立ってくれるなよ」
 命そのまま、握りしめた拳を振り抜いた。
 放たれた拳打は振り下ろす神威に非ず、拳に秘された術符が撃ち抜いたダガヌチの身体へと致死毒を仕込んでいく。
「これで最後だ華々しくやろうじゃないか
 その妄執も固執もぜんぶ海の藻屑にしてあげようね」
 そう史之は微笑する。その太刀筋は美しく。
 別れを告げるには鮮烈に。
 壮絶たる一太刀をラミエル目掛けて振り下ろした。
「次があれば、もう少し真っ当に生まれてこい」
 ラダは愛銃を握り締めると、振り被った。
「あ――あっ――あぁぁ――」
 嘆くような声が耳に付く。
 罠にかかり身動きの取れなくなったラミエル目掛け、ラダが静かに銃床を振り下ろした。


「色々あったがそろそろ最初の話に戻ろうか。
 例の魔銃の手がかり、こいつが何か残してないかい?」
 全ての終わった戦場でラダはカリーナに問いかける。
 大地へ墜ちた神を模したソレは、既にその原型をとどめない。
「……そうだね」
 そういうカリーナの表情はどこか憐れみにも似た物がある。
「……やっぱり、か」
 そっとダガヌチの持つ魔銃モドキの部分に触れて。
「あの魔銃は、もうこの世には無いんだろうね」
 カリーナは小さな溜め息を漏らす。
「……あの時の石板には『剣と銃と盾を何かに捧げるような女性』が描かれてただろう?」
「ああ……」
「あれにはね『これを天へ返しましょう。我々はここより離れます』って書いてあったのさ」
 これ、が何を示すのかは言うまでもあるまい。
「……もう、無いのか」
 ラダは、浅く息を漏らす。
「海底都市のどこかに、まだある可能性はあるけどね。
 あったとしても、とっくに使い門にならなくなってるだろうし、
 眠らせてやっとくのが良いんだろうね……」
 きらりと光る竜宮幣を持ち上げて、カリーナが伏せ気味にそう言った。
「あの魔銃のレプリカの設計図はある。
 多分、当時の本物に近い魔銃はさっきまでさんざん見たろう?
 作ることはできるだろうね……作るかどうかは、嬢ちゃん次第さ」
 さんざん見た、とはラミエルの魔銃のことだろうか。
 少しばかり手持ち無沙汰に竜宮幣を触っていたカリーナは、哀愁とも寂寥ともつかぬ表情でそれをラダへと渡すと、グッと体を起こした。
「……さって、私は散らかったここを片付ける人を雇ってくるとするよ」
 堂々たる笑みで、そういうとその場から立ち去っていった。
「……己れらも手伝ってやるか」
 その様子を見やり、命は思わずつぶやいていた。
 短時間ながら積み上げた物資や使い物にならなくなった物資を分別して、片付けを行なってから、イレギュラーズは次の戦場へと向かって歩き出す。
 そのついでに周辺を見渡してみれば、被害のようなものはほとんどなさそうだった。

成否

成功

MVP

柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす

状態異常

寒櫻院・史之(p3p002233)[重傷]
冬結
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)[重傷]
Pantera Nera
星芒 玉兎(p3p009838)[重傷]
星の巫兎

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。
大変遅くなり申し訳ありません。

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