シナリオ詳細
<総軍鏖殺>窓口のカルネくん
オープニング
●窓口のカルネくん
ここに、カルネという青年がいる。
その幼く柔らかい顔立ちと小柄な体型から性別を間違えることもある彼が、ひょんなことから鉄帝国にローレットの受付窓口をもったのは……いまからどれほど前のことだったろうか。
「首都の支部が使えなくなっちゃったからね。窓口を移動するのは仕方ないよ」
必要な機材を馬車にのせ、いまは『銀の森』へと進む道中だ。
カルネ(p3n000010)は人が乗るのにまるで適していない荷台の端っこに体育座りをして、膝に自分の頬をのせた。
鉄帝国の皇帝に冠位魔種バルナバスが即位してしまったがために、国は複数の派閥に分裂しそれぞれの狙いのもと別々に活動している。
国がまとまる気配は、残念ながらない。
ローレット・イレギュラーズは帝政派、ザーバ派、ラド・バウ、革命派、ポラリス・ユニオン、アーカーシュの六つの組織にそれぞれ協力する形で散り、時にはその間を行き来しながらあちこちで活躍していた。
カルネもそれらの仕事をあちこちから取ってくるために各拠点を飛び回り忙殺されているのだが……。
「銀の森に支部をおけたおかげで、色々と助かったよ。情報の共有や交換もそうだけど……資料があっちこっちに散らばってると依頼情報の編集が大変でね」
カルネはそんなふうに苦笑した。
彼にとって、今回の新皇帝即位がどんな意味をもつのかと考えると、一言であらわすことは難しい。
そもそも鉄帝にコネクションをもつ彼が、鉄帝でどんなふうに育ってきたのかを知るもの自体が少ないためだ。
彼自身、自分の昔話を好まなかったし、自己紹介を長くするタイプでもなかった。
彼はローレットに常駐していて、誰かが質問をしてくるとすぐに答えてくれたり、プロフィール資料の点検を快くうけてくれたり、時には相談に乗ってくれる。いわゆる『窓口のカルネくん』としての顔を持ち続けていた。そしてそれが、とても自然なものであった。
だから。
誰かが不意にこんな質問をしたとき。
「ねえカルネくん、今回の事件。どう思ってるの?」
「……………………ぇ?」
カルネは目を丸くして、かたまってしまった。
そして気付いたのだ。
彼はこれまで、自分の考えを持ってこなかったのだ、と。
しばらく固まったカルネは再びこてんと膝に頬をおろすと、ぼうっと遠くを見る目をした。
「なんだろう。わかんないな……。この事件を乗り切ったら、わかるようになるのかな……」
●出会いはあったから
馬が止まり、ひいていた荷車もその動きをとめた。
急なことだったので車輪にブレーキがかかり、体育座りのまま転がったカルネたちが何事かと外を覗く。
「あれは?」
「帝国軍の兵士ですね」
兵士という説明の通り、鉄帝国で正式採用されている鎧や槍を纏った男達が馬車のゆくてを塞いでいる。
といっても、カルネたちの馬車だけではない。その前を進んでいた別の馬車と一緒にだ。
「ちょっとまっとくれ! こりゃアタシの荷物だよ!」
抗議の声をあげる老婆の声。荷車を奪おうとしている兵士の腕をひこうとしているようだ。
兵士はチッとこちらに聞こえるほど大きく舌打ちすると、老婆を強引に払いのける。
「これらは没収する。民間人には物資を群へ譲渡するよう命令を出していたはずだ」
「そんなのは知らないよ! いつ誰がそんなことしたんだい!」
しりもちをついた老婆が噛みつこうとするが、その胸元に槍が突きつけられる。
ハッと息を呑む老婆。
だがその槍が、それ以上動くことはなかった。
馬車からいつのまにか降りていたカルネが槍のなかほどを掴み、兵士を強くにらみ付けているためだ。
「新皇帝派の兵士、だね?」
「だったら? 弱肉強食の勅令は下った筈だ。奪われたくなければ――」
「いいんだ、そういうのは。僕はそういう、相手を痛めつけて気持ちよくなるのが嫌いだから」
腰から拳銃を引き抜くカルネ。
兵士は槍を一度手放すと、大きく飛び退いてカルネの銃撃を回避した。
「貴様」
「もう一度言うね。相手を痛めつけて気持ちよくなるのが嫌いなんだ。それは、僕が勝ってもだよ」
兵士達は槍のみならず、古代兵器を利用したとおぼしき凶悪そうなライフルを引っ張り出し始める。
どうやら、戦闘は避けられそうにない……。
- <総軍鏖殺>窓口のカルネくん完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年10月25日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●答えはいつも過去の中にある
新皇帝派の軍人ミケロはライフルを取り出した。
冠位魔種の即位に反対した上官を裏切り、バルナバスを崇拝すらする参謀本部の将校におもねったことで手に入れた立場と装備だ。給料は何倍にも跳ね上がり、気に入らない交配や民間人がいれば好きに暴力を振るうことができた。
この生活を手放すものかと、ミケロはいつも思っている。そして脅かす者が居れば、このライフルで足の一本でも撃ってやれば泣いて許しを請うだろうと。
だが、今回は相手が悪かった。
「カルネ、同意。痛めつけて、気持ちよくなる、嫌い。
だから、早急、対処。早急、完了。つまり……さっさとぶちのめす。
君達、覚悟、出来てる? 出来てなくても、関係ないけど」
肩にかけていた弓を取り、矢筒に手を伸ばす『新たな可能性』シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)。
その所作に、ミケロはびくりとライフルを持つ手を震わせた。
ライフルと弓矢では発射速度に違いがありすぎると素人は思うだろうが、『構えて・狙って・撃つ』の三動作を要する銃に対し、熟練した弓兵はこの三動作をたった一回の動作で完了する。構えた時には既に狙いが済んでおり、弓弦は満ち、手を離している。どうしても銃の機構を介さなければ射撃動作を完了できない側からすれば、この熟達弓兵の速射能力は恐るべきものなのだ。
それを、ミケロはシャノから感じ取っていた。
結果、ミケロとカルネは銃を構えたままにらみ合うことになる。
銃は必ず当たるわけではない。よく見ればその動作が読めるし、点で攻撃するぶんかわされれば終わりだ。
そんな緊張する空気の中、『北辰連合派』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)がカルネの肩をぽんと叩く。
「カルネ、卿はもう既に分かり始めている。
相手を痛めつけて気持ちよくなるのが嫌いと言ったそれが卿の心の一端だろう。
この動乱で全てを一度に理解する必要はない。
固く凍った氷が溶けるのには時間が掛かる。
急いで溶かそうとすればひび割れる事もあるだろう。
心も同じだ、だからこそ丁寧に自分自身の感情と見つめ合う事が肝要なのだ」
「ベルフラウ……」
カルネの味方がどんどん増えていく。
馬車には民間人もそれなりに乗っているはずだが……。
ぬっと姿を見せたのは大柄なドラゴニア女性だった。いや、大柄だと思えたのは馬車から出した足の長さゆえだろう。
『パンケーキで許す』秦・鈴花(p3p010358)はこきりと首をならし、独り言のようにつぶやいた。
「正直アタシは、この国がどうなろうとどうだっていいの。
でも、トモダチのベルフラウが民を守りたいとか言ってるし、この馬車に乗り合わせたお ばーちゃん達の生活が脅かされるのは嫌。
だから守るし、悪い奴はぶっ飛ばす。
それで正解だって思うし、ゆえだって似たようなものでしょ」
「そうだぞー!」
あとから出てきたのは『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)であった。
キャンディみたいにキラキラした石状のもの(たぶん宝石)を口に放り込むと、ガリッと特徴的なギザ歯で囓った。
「人の物を勝手に盗るのは泥棒だぞー!
なんか今この国は大変なことになってるみたいだけど大変だからこそ自分勝手をしちゃ駄目なんだから!
自分たちだけ良ければいいって人しかいなくなっちゃったらもうそこに人は集まらないんだ。
そんなこともわからないならぶっ飛ばしてやるー!」
「ドラゴニアが二人も……お前らローレットかよ」
「だったら何だって言うんですか」
『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)がいつになく怒りを露わにした様子で馬車から飛び出してくる。
(略奪はどんな理由でも絶対に認められません。
でも、まさか自分にこんな感情があるとは。
わたしは、略奪行為やそれを肯定する新皇帝派に対して、腹が立って仕方がないんですよ――!)
口に出さない心の叫びだ。涼花は溢れそうな感情がこみあげたとき、それを音楽で表現する。言葉にするとそれが嘘になってしまう気がするからだ。
だから、涼花は掴んだギターの弦をピックで激しくならした。
ジャアン、という人の心臓を震わすハードな音色が、叫ぶ以上の真実になってミケロたちを半歩下がらせた。
そして、戦闘がもはや決定的になった所で……。
「やれやれ、最近はどこへいっても野盗の同類のような連中が居ますね……くくっ、まあ鉄帝らしいと言えばそうなのですが」
金色の指輪をはめた手が馬車の幕をよけ、『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)がどこか薄暗い笑みを浮かべ姿を現した。
「……ま、幻想貴族としては今回の一件は対岸の火事ですし、面白半分で首を突っ込むとしますか。
ああ勿論、依頼として受けた以上、自分の仕事は果たしますがね」
それに続き、『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)と『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)がぴょんと左右へ飛び出し兵士達を冷静に見つめた。
「弱肉強食の勅令を肯定するのならば、結構。
其れが貴方がたの法であり、秩序であるのなら否定はしませんよ」
ねえ? と感想を求めるように小さく小首をかしげるアッシュ。対して胡桃は同じ方向に小首をかしげてみせた。
「わたしは政治とか全然わからぬの。
こうして困ってる人を助けたりはするけれども、どこか他人事みたいな部分もあるかしら。煽りじゃなく、まじめにやってる皆様はすごいと思うのよ」
言葉をそのまま受け取ったようで、ウィルドがククッと再び笑い声をあげる。
一方でアッシュは銀色の弓をとり、老婆に馬車へ下がるように伝えた。
「どうか、少々お待ちを。あまり長くは掛けないよう善処しますゆえ」
九人のイレギュラーズが馬車を庇うように構える。
対して、展開した新皇帝派の帝国兵たちが舌打ちをしながら武器を構える。ヴゥンと音を立てて刃の光る片刃剣を抜く兵、エネルギー兵器とおぼしきライフルをアクティブモードにして銃身のライトを点灯させる兵。
雑魚と切って捨てるには少々贅沢な装備をした彼ら相手だが……。
「さあ、征こうか」
ベルフラウが、誘うように走り出す。開戦の鐘を、まるで打ち鳴らすように。
●人生はきみのもの
鈴花はカルネの背をぽんと叩き、『一緒に行くよ』と笑いかけて走り出す。
「しけた面してんじゃないわよカルネ。
確かにさっきアタシはこの国で過ごすアンタが今の状況をどう思ってんのかって聞いたわ。
でもわかんないならしょうがないのよ、遠くを見るよりまず今この目の前を見て、何がしたいか思うままに動きなさい!」
「思うままに……?」
疑問符をつけて口にしたものの、カルネは既に走っていた。
ベルフラウによって守られる形で、帝国兵たちが放つパルスショットの中を駆け抜ける。
人体を容易に吹き飛ばせる青白い閃光を、ベルフラウは旗槍を水平に振ることで吹き飛ばし、そして掲げることで味方への鼓舞とした。
「要領よく何事も熟せるのはカルネの強みだ。
だがそれだけでは見えてこない事もある
鈴花とユウェル、この若き感情の猛りを間近で見るが良い。
そこで何を感じられるかは、卿にしか分からんがな!」
「わたしもむつかしいことはわかんないけどさ。おばーちゃんたちが困ってるのを見るのは嫌なの。
ただそれだけ。それだけの理由で兵隊さんたちの邪魔をさせてもらう
そんなものだよ! カルネはどうしたいのかがきっと大事! したいようにすればいいよ!」
ユウェルはウィンクをすると、ベルフラウの横から豪速で飛び出し帝国兵の一人をハルバートでなぎ払った。
あまりのパワフルさに、思わず吹き飛んだ味方を振り返ってしまう帝国兵。その隙を突く形で、鈴花は兵の顔面を鷲掴みにした。
「カルネ! ぶつけなさい! パッションを!」
「パッションを!?」
困惑した声をあげるカルネだが、ユウェルと鈴花がニッと笑う。
――『おばーちゃんたちが困ってるのを見るのは嫌なの』
思いを発して、行動に変える。
イレギュラーズがイレギュラーズたるゆえんは、もしかしたらそこにあるのかもしれない。
カルネがイレギュラーズのひとりであるゆえんも、逆にまた。
「カルネさん」
涼花が薄く微笑み、そして自らの演奏に気持ちを乗せた。
激しくもポップで、どこか叙情的で、若さと迷いをのせた音楽と歌が、カルネの心をうしろから押した。・
(何か悩んでいるようですけれど。
わたしには示せるものは何もありません。
だから、一つだけ。
そうして悩むこと自体が大事なんだと思うんです。
その時間がきっと、いつか答えになるんじゃないかなって。
少なくともわたしはそう信じてます)
カルネは頷き、そして……帝国兵の顔面めがけて思い切りグーで殴りつけた。
「えいっ!!」
「ぐっ!?」
ガンブレードを握っていた少年がいきなり殴りつけてきたせいか、帝国兵が困惑したように後ろへとよろめく。
カルネは手をぱたぱたと振って、赤くなった拳を見て苦笑する。
「そっか、僕は……怒ってたんだ。こんな簡単なこと、なんで気付かなかったんだろう」
その横から、アッシュが素早く弓によって追撃する。
「弱肉強食を是とするのであれば、其れは貴方がたも理不尽に喰われることを是とする……ということでしょうか」
アッシュの矢は帝国兵の腹に刺さり、肩に刺さり、ついでに膝に突き刺さる。
がくりと跪く姿勢になった帝国兵の側頭部をガンブレードによって殴り倒し、カルネはシャノへと呼びかけた。
「おねがい!」
言いながら、素早く飛び退く。
シャノが矢に魔法を込めて放ったのと、全く同時のタイミングであった。
「固まってたら、狙い撃たれても、仕方ない。覚悟、する」
着弾地点に黒い鴉のような幻影が湧き上がる。巨大なそれは焔そのものとなって帝国兵たちの間を暴れ回った。
帝国兵ミケロが思わずライフルを取り落とす。
慌てて拾おうと手を伸ばしたその瞬間――。
「ふぁいあ~ぱ~んち」
ちょっぴりぬけたトーンで、胡桃の拳が迫った。
いや、迫ったという表現で正しいのだろうか?
地面すれすれを拳の甲面がかすり、その速度と風圧によって周囲の砂が舞い上がるほどの勢いで胡桃は腰から上半身までを見事にひねった超低空アッパーカットを繰り出したのである。
おちたものを拾おうとしたミケロの顎に命中した胡桃の拳は炎を纏い、炎は蒼い狐の形となってきりもみ回転をかけながら天空へと上昇する。
当然というべきなのか、ミケロもきりもみ回転をしながら真上に吹き飛び、そして鋭い放物線を描いて頭から地面に落ちた。
「くりーんひっと。コャー」
なんとなくキメたポーズをとってみせる胡桃。
いつになくアグレッシブな技を繰り出した胡桃であった。
「う……」
それでもまだ意識のあるミケロを仰向けに転がすと、ウィルドがその胸の上に乗った。
いわゆるマウントポジションである。
その姿勢のまま、ウィルドは馬車に隠れてこちらをちらちらと伺う老婆たちに微笑みかけた。
「さて、申し訳ありませんが、少しの間馬車に隠れていてください。守りは私が引き受けますのでご心配なく」
彼の笑顔に、老婆が何かを察してサッと馬車の幕を閉じた。
こくこくと満足げに頷くウィルド。
指輪をしっかりとはめなおし、あらためてミケロの顔を見下ろした。
既に腫れ上がった顔には哀愁すら浮かぶが……ウィルドはそこになにかの感情を見いだしはしなかった。
「鉄帝国は強さの国。しかも新皇帝派であるならば弱肉強食こそを誇るはず。なぜあなたは『強さ』を目指さない。弱者を踏みつけることに、いったいなんの喜びがあるというのです」
無感情に、まるでそういう機械であるかのようにミケロの顔面を正確に殴り続けるウィルド。
「それとも、安堵したかったのでしょうか。自らが『弱くない』などと」
●吹っ切れ、青春の名の下に
帝国兵を圧倒する風景。だが、帝国兵とて伊達に潤沢な武装を与えられたわけではないらしい。
身を隠し、馬車の後方へと回っていた帝国兵が飛び出してきた。
「ローレットをマトモに相手にするな! そのへんのババアを人質にし――」
飛び出してきたはいいものの、馬車の影で『そうくるだろう』と待ち構えていたウィルドの蹴りを思い切り腹に受けることになった。
「おや、こちらに抜けてきましたか。仕方ありません、少し遊んでさしあげますかね」
腹を押さえ転がる帝国兵を見下ろし、拳を握りしめるウィルド。
一方で、胡桃は――。
「らいとにんぐすた〜りんぐ~!」
圧倒していた帝国兵たちへのトドメの一撃を派手にぶちかましていた。
稲妻が駆け巡り、まるでポップコーンのように帝国兵たちがはねていく。
「射手、接近戦、苦手、思ったら、間違い。空で、舞って、反省して」
そちらを胡桃に任せ、回り込んできた帝国兵に鋭い膝蹴りからの急飛翔をしかけるシャノ。空に舞い上がった帝国兵へ、ここぞとばかりにユウェルがエアリアルアーツを叩き込んだ。
回転しながら吹き飛んでいく味方を見て怖れを成したのか、帝国兵の何人かが逃走を始めた。
「逃げるのであれば追いませんし、捕らえるのであれば処遇もお任せします。
ですが、またこうして収奪を繰り返すと云うのなら其の時は……」
アッシュが今度は銀の刀を抜き、美しい瞳で残りの帝国兵を見つめた。
睨むでも脅すでもない、冷淡なトーン。帝国兵たちがどうするかと顔を見合わせた所で、涼花が追い打ちのようにギターをかき鳴らした。
(心は熱く、頭は冷静に……)
声に出す言葉はなく、武器も構えていない。
しかし涼花の奏でた音は帝国兵たちの胸にズンと響き、まるで耳元で叫ばれたように心にひっかかった。
「く、くそ……」
冷静な判断ができなくなったであろう帝国兵が後じさりする。
鈴花が手をかざし、お前も放り投げてやろうかといわんばかりに一歩ふみだしたところで……帝国兵たちは慌てたように逃げ出していった。
「…………ふう」
カルネは肩の力をおとし……たと思ったらそのばにぺたんと座り込んでしまった。
「カルネっ?」
慌てて振り返る鈴花。
「あはは、ごめん。なんだか疲れちゃって……感情を表に出すのって、エネルギーを使うね」
苦笑するカルネに、鈴花もまた苦笑を浮かべ手を差し伸べる。
「んー……いっぱい動いたからお腹ぺこぺこ……。
え!? りんりん作ってくれるのー!?
それじゃねそれじゃね。んーと……豚汁!!!!!
カルネー! ベルフラウせんぱーい! 一緒にたべよー!」
見ると、ユウェルが背伸びをしながらそんなことを言った。
「ああ、目的地に着いたら食事をしよう」
それまで仲間たちをいつでもかばえる位置に立ち、帝国兵が八つ当たり気味な乱射をしかけてこないようにと旗槍を立てて構えていたベルフラウがやっと柔らかい表情をして振り返る。
「馬車に乗っている者達、我々……無論、カルネもだ。
共に食す暖かいモノは、良いモノだ」
「うん……そうだね。一緒に食べよ」
カルネは笑い、馬車へと呼びかける。隠れていた老婆がそっと顔を出し、ほっとした表情を浮かべている。
胡桃とシャノが顔を見合わせ、涼花もギターをおろした。
さあ、銀の森へと急ごう。
あたたかいご飯が待っている。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●シチュエーション
ローレット拠点移設のため銀の森へと移動中、帝国軍新皇帝派の兵士たちに止められてしまいました。
彼らはこちらの物資や民間人の物資を全て奪うつもりのようです。
彼らを撃退し、この場を切り抜けましょう。
●敵戦力
新皇帝派の兵士複数と戦います。中には強力なリーダーも混ざっていることでしょう。
少数ですが古代兵器を利用した武装を備えており、通常武装の一般兵と古代兵器武装のエリート兵に別れています。
ちなみに場所は首都からやや南西のあたり。鉄道を使えないので結構長い距離を陸路でとことこいく予定でした。
カルネの所属と実務の理由から、このソースはポラリス・ユニオン派閥のものとします。
●味方戦力
・カルネ
皆さんとまあまあ同じくらいの戦闘力をもったイレギュラーズです
連鎖行動と名乗り口上をもち、単体攻撃限定ですがオールレンジ攻撃が可能な物理アタッカーです。
あなたと協力して戦います。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
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