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シナリオ詳細

クッキー世界の恩返し

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●拝啓、クッキーの世界から
「手紙を書こうと思うのだけど」
 一人の少女が窓際に寄ってきたペリカンに話しかけていた。なおその手はペリカンの口の中にあるクッキーを取っては口に運んでいる。
「届けてほしいって言ったら何とかしてくれる?」
 ペリカンは場合によるかなぁと首を消しげるような動きをしてみせた。

 ここは少しばかり変わった世界。
 川は水の代わりにジャムが流れ、木にはクッキーが生り、小石はよくよく見るとチョコチップ。
 空からは雨の代わりにはちみつが降ってきて、地面はいろんな種類のクッキー生地、ちょこちょこ地面を歩く虫っぽいそれはジンジャーマンクッキー。
 コケコッコーと鳴く鶏がクッキーを産み、小麦は小さなクッキーを実らせてしなり、クッキーを嘴いっぱいに詰め込んだペリカンが湖から飛び立つ。
 あちらではパチパチと時折焼けたクッキーを吐き出しながらたき火が燃えており、こちらでは突然何もないところから(強いて言えば空気から)クッキーが現れて地面を転がっている。
 そちらには真っ直ぐに一本の道が出来上がっていて両脇に抉り取った分のクッキーが塀のように積みあがっていた。
 外にはテーブルが置かれ、おいしそうな紅茶の香りが漂っている。

 そんな世界を一羽のペリカンが翼を広げて飛び立っていった。

●親切な人たちへ
「やあやあ、今日は君たち宛てに手紙が届いているよ」
そう言って『緑の郵便屋さん』マフティは自身の郵便バッグからソレを取り出した。ソレというのはどう見ても彼が取り出したのがクッキーの板にしか見えず手紙には見えなかったからだ。
 だが、はいと渡されたそのクッキー板の表面にはチョコペンで確かに文字が書かれていたのである。
 親切な人たちへ、という書きだして始まっていた文章の内容はこれまでかけた迷惑への謝罪とお礼をしたいというものだった。お礼については詳しく書かれていなかったが、不思議な体験をさせてあげる、と書いてある。
「困ったことにはなってないみたいだし、この世界には君たちも何度か行ったことはあるんだろう? 送って行ってあげるから行っておいでよ」
 ぱたんと尻尾を振って彼はイレギュラーズたちを送り出した。

「わぁ、ホントに来てくれた! ほらほら、こっちに来て座って座って」
 クッキー世界にやってきたイレギュラーズを待っていたのはクッキーちゃんと呼ばれる少女。彼女は嬉しそうに皆を手招きすると小屋の外にあるテーブルへと誘った。そこには入れたてのおいしそうな紅茶と、小さな空のお皿が一枚だけ置いてある。
 この皿は? と誰かが口にした。その疑問にこたえるかのように空の皿の上にクッキーが湧いた。たった一枚だけだがどこか懐かしい香りのするクッキーだ。
 それぞれ皿の上を見やるとやはりクッキーが生まれている。だがその形や種類は皆それぞれ違うらしい。
「そのクッキーは私からのお礼の気持ちだよ。君たちの思い出をクッキーにしたの。食べたらもう一度『体験したい』と思う記憶の体験ができるんだよ」
 だから、食べてみて? クッキーちゃんはそう言って笑った。

NMコメント

 心音マリでございます。
 こちらは『クッキーなんてもう知らない!』の続編となりますが、読んでいなくても全く問題ございません。
 連続してずっとギャグ風味の内容でしたが今回は異なると思います。
 もう一度体験したい素敵な記憶を描けたらなと思います。

・できること
 これまでの出来事によりクッキーちゃんがお礼の気持ちを込めてクッキーを生み出してくれました。
 これは皆さんの記憶をもとに作られているもので、食べることで特定の思い出を追体験できる不思議なクッキーです。クッキーの形や味はそれぞれ異なるものになっているため、指定していただければそのように、特にないようでしたらこちらで良いようにご用意させていただきます。

 クッキーを食べてもう一度体験したいと思っているような思い出を再び体験するのが目的となります。
 クッキーを食べるとなんだか眠くなってきて気づいたら思い出の中にいます。思い出と同じ行動をとっても、とらなくても。これは追体験をしていると覚えていても覚えていなくても構いません。
 またクッキーを食べる前にクッキーちゃんとお話しすることもできます。

・登場人物について
 少女:クッキーを食べたくて食べたくてしょうがない子。本当は名前がないのですが『クッキーちゃん』と呼ぶと明確に反応します。
 一秒に一枚はクッキーを口に入れていたい系女子。過去にいろいろと我が儘を言ってはイレギュラーズに助けてもらっていた。今回は数々のやらかしに対するお礼の気持ちでこの場を用意しています。

・サンプルプレイング
 私のクッキーはチョコチップクッキーなんだ。もぐもぐ……なんだか甘くて、でも冷たいような、あっ。
 このお店、そっか。昔、友達と食べた大人気店だ!もう一度ここのパフェ食べたかったけどどうしても無理でお店もなくなっちゃって悲しかったんだよね。また友達とこのパフェを楽しめるなんて嬉しいな。

  • クッキー世界の恩返し完了
  • NM名心音マリ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年10月17日 22時21分
  • 参加人数2/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
獅子若丸(p3p010859)
百獣剣聖

リプレイ

●それは不思議な集まりで
「ここには一度しか来た記憶がないんだが……」
 困ったように頭をかいて『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が言った。そう、彼はかつて「クッキーが死ぬほど食べたい!」と我が儘を言ってのけたクッキーちゃんに会っているのである。それどころか放っておけば生焼け……否、焼いてすらない生地のままのクッキー(といっていいかは微妙だが)を食べかねない彼女に、他の人たちがクッキーを集めてくる間ずーっとビスケットを食べさせ続けていた過去があるのだ。
 なので「付け加えるとそのときに大したことをした記憶もないぞ」と続ける世界にクッキーちゃんはぶんぶんと首を横に振るのである。彼女にとってはとてもとても良くしてもらったという印象しかない。
「本人がそう言っておるのだからお前様は良くしたのだろうよ」
 ちょこんと椅子に座った小柄なライオンが言った。しっかりとした話し方とは裏腹に子供のように見える彼は『百獣剣聖』獅子若丸(p3p010859)といい、こう見えても四十を過ぎた立派な大人である。混沌世界に召喚され、思いっきり影響を受けてこのような小柄な姿になってしまったらしいが、そんなに気にせず過ごしているのだという。
「そういわれてもな……」
 再度頭をかく世界の目の前にはプレーンクッキーが一枚だけ乗ったお皿があった。何の手も加わっていないザ・普通という風の丸いクッキーだ。
 ちらと獅子若丸のお皿にあるものと見比べてから世界は続けて言う。
「少なくともそう思ってる状態で感謝のお礼としてクッキーを差し出されてもだな……」
(というか特に追体験したい出来事がねえ。厳密にはあっても底が知れてるというか何というか……。
そんなちっぽけな思い出の為にクッキーを彼女がわざわざ作ったとなると申し訳なさが半端ないよな)
「そうであるか。では吾は先にいただくとしよう」
 クッキーに手を付けがたい世界を横目に獅子若丸は自身のクッキーへと手を伸ばした。

●師匠との思い出
 獅子若丸の前にあるのは剣の形をしたクッキーだった。手に取って齧るとさっくりした触感と一緒に香りが口の中に広がる。クッキーの甘さの中に混じるしょっぱさ。塩バタークッキーだろう。
 食べ進めるうちに獅子若丸の脳裏に過ぎるのは今は亡き師匠との思い出。まだ達人となる、百獣剣聖と呼ばれるようになる前の話だ。
 弟子として、師匠との修行の日々。厳しい鍛錬、訓練は獅子若丸にとって辛く苦しいものであった。でも、それをまた楽しいと思う部分があったのも事実だ。口の中に溢れる風味はまさにこの日々を現しているようだ。

 不意に視界が変わる。混沌世界に来て低くなったはずの視界が高い。そして目の前には見間違えるはずもない師匠の姿。その手に真剣を持ち、獅子若丸へ向けている。
 何かを思うより前に身体が勝手に動いていた。一息で距離を詰め、斬りかかる。
 カン、キン、カン。
 右に左に下から、振るった刃は弾かれて鋭い音が響く。
 風を斬る音が響き、時折斬られた毛や汗が舞う。そこに鮮血が混ざっていないのはお互いにお互いの攻撃をいなしているからだ。
「おぉぉぉぉ!!!」
 激しい打ち合いが続く中でここだと全力を込めた一振り。獅子若丸の全力の振り降ろしを受け止める師匠。触れあったところから火花が散るほどの激しい鍔迫り合いへと発展する。
 これで師匠に一太刀を入れるのだと、これが修行の成果だと、見せつけるように。そして……。

 ぱちりといつの間にか閉じていた瞳を開けた。目の前にはクッキーをくれた少女の姿で師匠の姿などあるはずもない。なんなら視界も低い。
 ただ、クッキーを持っていた手は空だったが震えていた。全力で師匠と戦った興奮、鍔迫り合いになった時のあの高揚感。それらはつい先ほどあったかのように獅子若丸を包んでいた。
「どうだった?」
「二度とあの身震いするような高揚感は味わえぬと思っていたが、思い出させていただき、誠に感謝する。クッキー殿」
 興奮で震える手をぎゅっと握り、顔を覗き込んできたクッキーちゃんへ彼はそう頭を下げる。
「それはよかった! ところで……」
 ぱっと笑うクッキーちゃんの視線は獅子若丸へ。正確に言えば彼の鬣へ。
 視線を追って合点が行った獅子若丸は顔をクッキーちゃんの方へ近づける。
「……吾の毛皮が気になるなら、お礼として触っても構わぬぞ」
「ほんと! やったー!」
(これがお礼になるなら安いもの)
 もふもふ~、と楽しそうに触るクッキーちゃんを見てどこか穏やかな顔になっていたとか。

●また会おうね、さよなら
 一方で世界は特別なクッキーをノーサンキューだと断っていた。
 しょぼくれるクッキーちゃんに、特別なクッキー一枚よりもそこそこ美味いクッキーを沢山食べる方が好きだと言った彼はこう提案した。
「感謝してるってんなら適当にお茶と大量のクッキーを用意してくれ。二人で茶会と洒落込もうじゃないか。ついでにこの世界のこととかお前のことを色々話してくれるとありがたいね」
 思いがけない提案に彼女は目を丸くして、続けて元気よく頷いた。

 空になったティーカップはおかわりが注がれてもう何回目か。ペリカンやらアリやらジンジャーマンクッキーというクッキー本人(?)やらが山盛り持ってきてくれたクッキーはすっかりなくなっていた。
 クッキーの世界の話といっても何をしてもクッキーになるだとか、クッキーの雨が降るだとか、世界はクッキーでできてるんだよとか、さすがは異世界、何でもありである。
 ただクッキーちゃんのことに関して言えば、お喋りできる相手はおらず世界たちイレギュラーズが来てから話したのが実は初めてだったのだという。だから話せるだけでも嬉しかったのだと彼女は語った。確かにこの世界にいる生き物はとても話せるような生き物はいない、人型なのはジンジャーマンクッキーぐらいだし、食べられるし。
 そんな話をしていれば時間というものは過ぎていくもの、今が何時かはわからないがクッキーの減り方から結構話し込んだのだろうというのはわかる。
「……随分長居してしまったな。もう少ししたら帰るとしよう」
「たくさんクッキー食べられてお話もできていつもよりクッキーがおいしかったよ」
「そりゃよかった。ああ、そうだ」
 にこにこしたクッキーちゃんに空のお皿を指して世界は言った。
「不躾なお願いで悪いが例のクッキーをもう一度だけ焼いてもらえるか?」
「え? いいけど、おいしいクッキーをたくさん食べるのが好きなんじゃないの?」
 空のお皿を手に取ってクッキーちゃんが首をかしげる。
「それはそうなんだが、今ならほら、クッキーを保存しておけば今日の茶会を思い出すことができるだろう?」
 世界の言葉を聞いたクッキーちゃんの顔が目に見えて明るくなった。心からの嬉しそうな笑顔を浮かべ、ちょっと待っててとかけていく。

 帰り道、世界の手には最初と同じプレーンクッキーがあった。綺麗にラッピングされたそれは最初に作られたものとは少しだけ違い、片面にアイシングでいろんな種類のクッキーの絵が描かれていたという。
「クッキーにクッキーの絵が描かれているのであるな?」
「ああ、このクッキーはそれでいいんだよ」
 また体験するのは楽しいお茶会で十分だから。

成否

成功

状態異常

なし

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