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シナリオ詳細

<濃々淡々>消えてしまった夜の色

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夜の端から色が消えてしまった。と、絢が依頼を受けたのは知り合いの妖怪である傘屋からだった。
「夜の色が……?」
「幸いなことに人間は気付いちゃ居ないが。雨降らしが雨を続かせてるが、長くは持たねえ。ったく、商売繁盛だってぇのにお前に頼む俺の気持ちも考えろ!」
「でも、どうやって夜の色なんて戻せば良いんだろう。おれ、そんなの聞いたことないよ」
「そりゃ、ねえもんは塗るしかねえだろ。俺にもわかんねえ」
 絢の飴屋は妖怪たちが集う小さな喫茶店にもなっている。
 最近妖怪の間で何かが起こっていることは知っていたけれど、まさか夜の色が消えるなんて誰にも想像はつかない。かくいう絢だって傘屋から正式に依頼を受けるまでは気付かなかっただろうから。
「でもお前が読んできてくれる正義の味方さんがたならなんとかしてくれるだろうさ」
「おれの友達……イレギュラーズのことかい?」
「いれぎゅらあでもなんでもいい! 横文字はわからん! ともかく、雨雲が無くならん内に夜の色を塗ってくれ。俺達みてえな普通の妖怪にゃ無理だ」
「おれも普通の妖怪だよ。ただ……そう、知り合いが多いだけのね」
「なんでもいい。塗料はこっちで用意しとくから、頼んだぞ。お前に物事を頼んどきゃだいたい解決するんだ」
 まったく困ったものだ。
 だけれど夜から色が消えてしまうのだって困ってしまう。
 重い腰を上げて、絢は店から分厚い雨雲を見上げたのだった。


「ってことでね、夜の色を取り戻すのを手伝ってほしいんだ」
 汚れてもいい服らしいツナギに着替えた絢は、サンタクロースのように紺色の染料が詰められたであろう袋を担いでいた。
「空って紙とか布だったの? って思わなくもないんだけど。人間が混乱しちゃうから、空に色を取り戻さなくちゃいけないんだ」
 星もなくなっちゃったんだっけ、とメモしておいたであろう用紙を取り出してはため息をつく絢。
「空までは雲で運んでもらえるんだって。だからあとは夜の色をぬるだけなんだけど……どうせ頼まれたんなら好きに塗っちゃおう。とはいっても、夜らしく暗い青にはなるだろうけどね」
 ここまできたらやってしまう他ないのだろう。塗料を担いでは運び、星を担いでは運び。そうしているうちに最初は綺麗だった絢のツナギも少しずつ青くなっていく。
「さすがに夜……空を一人で塗るのは大変なんだ……ってことで、皆に頼んでもいいかな?」
 真っ白になった空。広大な白。
 人間に気づかれないうちにと笑った絢は、悪戯な猫のようだった。

NMコメント

 スマホで星空を撮りたい染です。だいたい失敗しています。

●依頼内容
 夜の色を塗る

 空の一部がぽっかり真っ白になってしまったようです。
 今は雨を降らせる妖怪の協力の下隠せていますがそれも長くは続きません。
 真っ白な部分に夜らしい色を、それから星を塗り、飾り、元の空に戻しましょう。
 五人もいれば一日で出来るだろうという計算です。
 高いところは雲で登って塗ってしまいましょう。ふわふわなので身体にも優しいです。

 塗料や星は絢が持っていきますが、今回面白いものを入れておくと次回以降のシナリオで登場するかもしれません。不思議な天候として採用させていただきたく思います。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。
 また、ヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神様的存在です。
(大まかには、明治時代の日本を想定した世界となっています)

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいます。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。

 ツナギを着ています。脚立を運んで高いところを塗ってくれます。

  • <濃々淡々>消えてしまった夜の色完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年09月11日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

リプレイ


「……お空って、色が消えちゃうのね……!」
 あんぐりと口を開けたのは『桜花の決意』キルシェ=キルシュ(p3p009805)。ぽっかりと真っ白な部分だけがある空。目下に広がる雨雲が空を隠していなければ、世界は混乱で満ちていただろうと思う。
「ほんまに……お空のお色がなくなっとる。こんな経験この先一生ないかもしれへん、ふふ」
 雲に乗ってやってきた『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)。
「綺麗な星空が欠けて真っ白やなんて、寂しいわ。絢くんの世界を直すお手伝い、張り切って行きましょ」
「そうね、蜻蛉ママ! 雨降らしさんが頑張ってくれてる間に新しいお空を塗るの、一緒に頑張りましょ!」
 大きな空。きっと沢山汚れてしまうだろう。キルシェは後ろで荷物を運ぶ絢の元へ。
「絢お兄さん! ルシェサイズのツナギってあるかしら?」
「うん、無いことは無いと思うよ。こっちにおいで」
「はーい!」
 キルシェと絢に入れ替わって『とべないうさぎ』ネーヴェ(p3p007199)と『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が空を見る。白い。
「夜の色は、元々どなたかが色をつけた、ものだったのでしょうか? それに……どうして、色が消えてしまったのかしら。誰かの悪戯にしては…度が過ぎているようにも、思えますが」
「こんなに綺麗さっぱり夜の色が無くなったら永遠に昼になって一生寝ないで生きていける……なんていうふうになったりしないかな、しないよな」
「ともあれ、消えてしまった、なら…塗り直して。皆様が思わず見上げてしまうような、素敵な夜空にしたいです、ね!」
 奇想天外だとため息を吐いた世界。それでもこんなことが起きてしまうのは此処が色を基調にした世界であるから。
 さぁ、失った色を取り戻そう。



(落ちたら…なんて、思うと。たとえ、とべるうさぎだったとしても、怪我してしまいそうで、血の気がひきそう…)
 ふるり。義足を軋ませる。見るに堪えない足の傷。
「……ネーヴェちゃん。手、こっちよ」
「ありがとう、ございます。蜻蛉様」
 差し伸べられた手に手を重ね。雲でバランスを取る。着物をたすき掛けして袖も汚れないように。絢が心配して押し付けたエプロンも着ければ完璧だ。
「うちは、まず……青が強めの紺色を塗って行こかしら」
「だな。俺も器用なことは出来ないから、取り敢えず一色に塗っていくことにするか」
「でしたら、わたくしは。元の色で、塗った方が良い場所は。塗り残しがないように、塗り進めていきましょう、か」
「うん、ありがとう。ネーヴェちゃん、世界さん」
 それぞれに出来ることを。持っている刷毛の大きさも、つける絵の具の量も違うけれど、それでいいのだ。
「雲さんふかふか……! リチェみたいね!」
「ふふ、気に入ったかい?」
「ええ、とっても! このまま寝転びたくなっちゃうけど、それは全部終わってからね!」
 和やかに語らう絢とキルシェ。絢が担いでいた脚立を下ろす。
「脚立は、ルシェだとあんまり届かないし、倒れそうだから……」
「キルシェは上の方を塗りたいかと思ってたんだけど」
「ううん! 今日は我慢の日よ!」
「はは、そう? じゃあ俺は上を塗るね」
「うん、お願い!」
 キルシェの届く範囲で上の方から塗料を塗って、塗って、腕が疲れたら少し休憩して、また塗って。空に青が満ちていく。
 蜻蛉が指揮を取ってくれるので、それに合わせて次は暗めの紫を。こうして世界が夜を取り戻していく。
「夜空の藍色と、瞬く星の金色……」
「ネーヴェお姉さんどうしたの?」
「い、いえ、なんでもありませんとも。作業、頑張ります!」
 キルシェが瞬く。ネーヴェが思い浮かべたのは、きっと特別な誰かの色。思い出した貴方は今何をしているのだろう?
(しかし、真面目にこなすだけなのも味がない。星の色は無駄にカラフルにして遊んだりしてみるか)
 星をぴちゃぴちゃ飛ばして塗っていく世界。想像と現実は非常に乖離しているものである。
「……なんかちょっとミラーボールのある室内みたくなったな。目に良くないから使う色の方向はある程度固定するか」
「ミラーボールやなんて。きらきらで、きっと遠くから見たら素敵やよ」
 蜻蛉が金色と銀色を混ぜて作った星を見る。お世辞なのか褒めなのか。きっと彼女の場合は前者であろう。七色の星も悪くはない気がしてくる。
 脚立を登る絢は空へと星を飾ろうとしていた。
「ねぇ、こっちの方で合ってる?」
「もう少し右やね、あ……行き過ぎ! 左。そこ、ちょうどええ具合やよ」
「よ、っとと。ふぅ。こんな感じ?」
「うん、そうそう。ありがとうね、絢くん」
「いいや、危ないことは女性にはさせられないからね。ね、世界」
「……俺よりも細そうなお前に言われると肩身が狭いぞ、俺」
「はは、まさか」
 今度は世界が脚立を運び、空へと星を飾っていく。良い連携は途切れることはなく。
 空が見る見る星空を取り戻していく。
「さて、あとは自由に空を飾って欲しいんだけど……良いかな?」
「自由に塗って、良いのなら。わたくし、オーロラを、塗ってみたいです!」
 恐る恐る掌を挙げたネーヴェ。
「R.O.Oで…その、親しい人、と…見たのですが。とても、とても、綺麗で…思わず、見惚れてしまいました!
 あの幻想的なカーテンを…少しでも、再現できたらと、思うのです。……できるかしら。いえ、頑張ります。むん!」
 むん、と両の手を握ったネーヴェ。
 沢山の塗料を持って空を登っていく。
 星屑の模様の中に、少しだけ雪の結晶と桜の花を真似たものを咲かせた蜻蛉。牡丹の花弁も書き足した絢。きっとこういうことだろうと、笑って。
「そういえば、雲が足りない気がする。どう思う?」
「せやね。じゃあええと……」
 うっすらと猫の形を象っていく。濃くなりすぎないようにも注意して。
「これで、三日月に座った猫……に見えるやろか?」
「うん、見えるよ。上手いんじゃない?」
「ふふ、おおきに」
「でも、ほら。……ここ、ついてる」
 自分の顔を指した絢。蜻蛉は照れたように頬を染める。
「……うっかりしてました。子供っぽいやろか?」
「ううん。可愛いね」
「もう、からかわんといて、絢くん」
「あはは。ごめん。で、世界はどうしたの?
「そりゃあ当然空に飴を混ぜて、雨ならぬ飴を降らせるってもらおうって思ってさ」
「お空から、飴?」
 蜻蛉が瞬いた。
「ベタではあるがこちらには飴作りのプロがいるんだ、試さない手はないだろ? というか星を飴玉にするのも十分ありだな」
「はは、確かに。じゃあええと……雲の中に飴をつけておいたらいいかな?」
 よいしょ、と。溶かした飴で飴を雲にくっつけていく世界。
「これで飴が降ってきたらいいよね」
「うん。その時は依頼を出してくれよ」
「はは。確かに、ちょっと面白いもんね?」
 世界と蜻蛉と絢が和やかに語る中、キルシェはリチェルカーレを呼んで掌を出すように頼んでいた。
「リチェ、お手てこれにつけて、それからここにぎゅってして!」
「きゅ?」
「ようし、こっそりリチェのお手て雲完成!!」
「きゅいきゅい」
「他の雲さんであんまり見えないと思うけど、晴れた夜に見えるの楽しそうじゃない? 後は……!」
 キルシェがリチェルカーレに刷毛を渡す。掌を空にぺたぺたとくっつけていくリチェルカーレ。
「お手て雲と同じ塗料で……」
 蜻蛉ママの猫さん雲よし。
 ネーヴェお姉さんの兎さん雲に。絢お兄さんも猫さん雲ね!
「ルシェは桜で、リチェ雲も描いちゃうわ! それから世界お兄さんは…………眼鏡雲……!」
 空をうんと彩る様々な形の雲。
「どれも晴れた夜にだけ見れる雲になるけど、気づいて喜んで貰えたら嬉しいわ! 眼鏡雲は、反応ちょっと想像できないけど……」
「キルシェちゃんは力作やね」
「俺の眼鏡まである。……これが空に浮かんでるのかって考えると、少し反応が楽しみだな」
「皆様、終わりましたか?」
「うん。ネーヴェも出来た?」
「はい。下に降りて、見えてみませんか?」
「さんせーい!」

 雨はもうすっかり止んでいて、空は紺碧、星も輝いていた。
 あんなに色を塗っていたのに遠くから見てみるとしっかりと空。不思議なものである。
「あ、俺の描いた星……案外まともだな」
「あそこ、眼鏡雲! ルシェ、上手く描けてたみたい」
「足跡雲もあります、ね。ふふふ、かわいい」
 目を凝らして空を眺める世界。絢におぶられながら空を指差したキルシェ。くすくすと笑うネーヴェ。
「でもほら、彼処」
「ネーヴェちゃんの力作やね。ほんに、綺麗」
 空を彩るオーロラ。
 本来ならば寒いところでしか見ることは出来ないけれど。ネーヴェの努力が実を結んだのである。
「世界さんも、ネーヴェちゃんも、キルシェちゃんも、絢くんも、皆お疲れさまでした。これで安心して、夜を迎えて貰えます」
「……えへへ。はい、おつかれさま、でした」
「あー疲れた。絢、どこか泊まれるところを知らないか? 今日は疲れたから朝になってから帰ろうかなって」
「じゃあおれのところにおいでよ。何人か泊まれるようにしているんだ」
「へぇ、いいな」
「じゃあルシェも! 汚れちゃったしこのまま帰ってもお家が汚れちゃうもの」
「……じゃあ、晩ごはんの用意をしないとな」
「ふふ。今日は絢様のお家で、パーティです、か?」
「そうなりそう。近くの銭湯を探さないとね」
「今日は沢山働いて疲れも溜まったしな。これくらいは受け取ってもいいだろう?」
「ええ、良い夢を見られそうよ」
 空はもう欠けることはなく。美しく星が輝き、雲は流れ。そして、オーロラは煌めいていた。

成否

成功

状態異常

なし

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