PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夜空の徒花

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●まばゆい思い出
 生温い風が人々の頬を撫でる。彼らが眼差す先は、星を戴いたばかりの暗い空。
 光の種がゆるゆると立ち昇り、夜空にて勢い良く炸裂する。
 流麗な焔は七色の花々を咲かす。
 ひとときの華やかさは瞬く間に色を散らすも、すぐに次の花火が打ち上がる。
 ――そうして、さまざまな色の光が地上に降り注ぎ、人々の笑顔を照らし出す。見慣れた瓦屋根も、川の水面も、この時ばかりは違う色。
 夏の終わりを告げる、一年に一回のお祭り。
 天に咲き誇る花火の数々は、この小さな宿場町の風物詩であった。

「でも最近、皆冷めてきてる気がするんですよね」
 町の中央、一際大きな邸宅の一室にて。
 毎年恒例。月末に開催する予定の花火大会について、議論が行われていた。
「まあ……毎年同じことばかりやってたら、ね」
「こっちはいつも違う花火考えて頑張ってるんですけど?」
 ある者のぼやきに、またある者は苛つき気味に反応する。
 夜空に咲く花火はあんなに綺麗なのに、なぜ議論は紛糾してしまうのだろうか?
 話が怪しい方向へと向かう前に、「まあまあ」と別の者が話題を切り出した。
「他のところの花火大会では、夏祭り特有の屋台が出るとか、前に泊まった旅人たちから聞きましたよ」
「で、でも、うちにそんな、のうはうは無いですし……」
 現状のままでは、この町も花火のように弾けて消えてしまう。一瞬の煌めきさえ見せずに。そうに違いない。暗澹とした想像が室内を覆おうとしていた。
「うーん……。どうします、長老さま?」
 突如として話を振られた長老は、ううむとだけ唸り、黙りこくった。厳かな沈黙の後、わざとらしく顎髭を擦り、最終的な結論を導き出す。
「神使たち――ローレットに頼めばいいのではないか?」

●ギルドにて
「そんなわけで、あなたたちに依頼がなされたのです」
 情報屋の少女、リゼリィは集まった特異運命座標たちを見回した。
「端的に纏めるとすると、花火大会を盛り上げろーって任務です。夏祭りっぽい屋台を出店すればいいわけですね」
 りんご飴に綿飴、焼きそばにたこ焼き。夏祭りらしい食べ物はさまざま。お祭りのわくわくが詰まった食べ物は、きっと何だって美味しい。
 射的に金魚すくい。そんな定番の遊戯を提供してみても、楽しんでもらえることだろう。
「ちなみに、依頼内容はあくまでも"花火大会を盛り上げてほしい"ですから。屋台以外でも、何か盛り上げられる方法があるなら、それでもいいと思いますよ。皆さん、出身地によって文化って違うでしょうし」
 ふわぁと、のんきなあくびが一つ。
「ま、屋台の設営や材料の仕入れなんかの面倒臭いやつは、街の人たちがやってくれるらしいですから。気軽に行ってくればいいんじゃないですか?」
 ――街に住む人々の思い出の一片を、より素晴らしいものにするために。そして、来年以降の思い出の種を蒔くために。
 足を運んでみるのも、いいかもしれない。

NMコメント

 こんにちは。ノベルマスターの梢と申します。
 今回が初めてのシナリオとなりますが、精一杯頑張りたいと思います。何卒よろしくお願いいたします。

●目的
 夏祭り(花火大会)を盛り上げましょう!
 屋台を出すのが一例として取り上げられていますが、それ以外でも盛り上がりそうならばオールオッケーです。
 このシナリオはカジュアルシナリオであるため、必ず「成功」します。気楽にお楽しみください。

●状況
 豊穣辺境の宿場町。人の集まる中央広場に、特異運命座標用のスペースが用意されている様子。
 リプレイは「夏祭り当日の夕方。花火が打ち上がる少し前」からのスタートになります。
 OPにも記載してある通り、屋台の設営や材料の仕入れなどなどのお仕事は町役人さんたちがやってくれるようです。要するに、細かいことは気にしなくても大丈夫です(もちろん、ご自分でやるのもOKです!)。

●NPC
・町の皆さん
 特異運命座標たちが出し物をすると聞いてざわついています。
 基本的には好意的かつ協力的です。

・情報屋『リゼリィ』
 いろいろと手伝ってくれるようです。
 名有りの話し相手が欲しかったりする場合には、ご自由にお使いください。
※プレイングでの言及が無かった場合、彼女はリプレイ中には登場しません。

●サンプルプレイング
 私が参加するとしたら、かき氷の屋台でも出しますね。
 ひんやりしてますし。カラフルで見栄えもいいですし。
 なにより作るのが楽で疲れない……あ、最後のは聞かなかったことにしてくださいね?

  • 夜空の徒花完了
  • NM名
  • 種別カジュアル
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月16日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
謡うナーサリーライム
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
佐倉・望乃(p3p010720)
赤薔薇の歌竜
玄野 壱和(p3p010806)
ねこのうつわ

リプレイ


 空は暮色に染まりつつある。
 広場には設営物が揃っていた。数々の屋台、椅子と長机、巨大なビニールプール、櫓、何かの土台。会場中は色とりどりの提灯で飾り付けられており、広場には絢爛な光が満ちていた。小さな町でやるにしては随分と大掛かりだが、それほど気合いを入れているという証左だろう。
「お願いする事……いっぱいでごめんね……」
「いえ、構いませんよ」
 淡白な抑揚に申し訳なさを滲ませる『玉響』レイン・レイン(p3p010586)へ、町人の一人は快く応じる。櫓を仰いだ町人の顔は期待で輝いていて――それは、人々の気持ちを代弁したものであった。
 さて、準備は万端。夏祭りは開催を告げ、町の住人達がやってくる。彼らは興味深そうに屋台を見回した。

 ――いらっしゃいませ、いらっしゃいませ。
 花火の祭のお客様。
 何色になるかは、灯りを選んだ人しだい。
 それぞれきっと、違う色。
 可愛い灯りは、いかがです。

 ポシェティケトの華やぐような声に惹かれて、一人の客が近寄る。多彩な提灯に囲まれた屋台は、神秘的で、儚くて、とびきりに可愛らしかった。
「人によって色が変わるの?」
「どうぞ、試してみても大丈夫よ」
 興味津々な客に手持ち提灯を差し出す。客が提灯を持ち上げてみると、提灯の中で光が渦巻く。光を見つめるポシェティケトの双眸が、オーロラのように瞬いた。
 最後には、魔法の提灯は情熱的な赤色に染まる。好奇心旺盛なお客様にはぴったりだ。
「ど、どうやって!?」
 驚く客に対して、ポシェティケトは唇に指を翳し、謎めいた魔女の微笑みで答えた。
 ……ふと、食欲をそそる香りが彼女達の鼻孔を擽る。
 匂いの源は『茶屋:猫之森 混沌支店』と掲げられた屋台。お手伝いの町人も動員して、夏祭りらしいB級グルメの宝庫となっていた。
「――あー、うん、難しい工程とか無いだろうしその通りに作ればおkっすかラ。そっちは任せるっス。わかんない事あったらこっちに言って貰えれバー」
 気の抜けたような口調で、しかしてきぱきと動く少年が、今日限りの小さな店長『迪ォのうつわ』玄野 壱和(p3p010806)であった。
「これを食べてみたいな!」
「ハイハイ、お好み鯛焼き一丁ネ」
 鯛の形に凹んだ鉄板に、生地、お好み焼きの具材、生地の順で流し込む。少し待てば、こんがりと鯛焼きが焼き上がった。
 一口食べれば、生地に封じ込められた香ばしい風味が溢れ出す筈だ。愛らしい鯛焼きの見た目も相まって、まさに夏祭りらしい品だった。
「熱いから気を付けろヨー」
 軽く手を振りながら、壱和は自らが発案した休憩所を見渡す。茶屋の食べ物だけでなく、甘味を食べながら談笑する人々もいた。
「佐倉のねーちゃんも、上手くやってるみたいだナ」

 丸提灯の光の下、赤い蝶々が可憐に踊る――。
 『赤薔薇の歌竜』佐倉・望乃(p3p010720)は蝶々柄の浴衣を翻し、元気に動き回っていた。
「華やかな花火のお供に、甘くてひんやりなスイーツはいかがですか?」
 甘夏のジェラートや、苺シロップを掛けたかき氷などなど。
 ここでは見ているだけで涼しくなれる甘味を販売していた。客達が目を輝かせる理由も、望乃にはよく分かるものだったから、どこか微笑ましい気分で接客に励む。
 暫く接客を続けていると、見たことのある顔が訪れた。
「ポシェティケトさん。お買い物中ですか?」
「ええ。折角のお祭りだもの」
 ポシェティケトは望乃と、妖精のクララに向かって微笑んだ。
 ――飾り付け、占い、お店、応援!
 楽しいお祭りの日には、やりたいことがいっぱいあって。
 『全部やったら?』と、欲張りさんで、けれど素敵な答えを見つけてくれたのが、相棒のクララだったのだ。
 というわけで、一旦店番を代わってもらって、彼女達は屋台を回っていた。
「今度は『全部』は難しいわよねえ。どれがいいかしら」
 メニューを前に悩ましげに瞼を伏せて、指を滑らせ。選ばれたのは黄桃のかき氷。
「かしこまりました!」
 望乃は持参した調理器具の中でも、かき氷機に駆け寄る。くるくるとレバーを回すと、ふわふわの氷が器に降り積もる。惜しげもなく黄桃のシロップを掛け、祭りでしか許されない量の練乳を垂らせば――甘い氷菓のできあがり!
「ご注文の黄桃かき氷です!」
「ありがとう。あら、綺麗な色ねえ」
 ポシェティケトは礼を告げると、休憩所の椅子へと向かう。金色の綿飴のようなクララの後ろ姿に、望乃は思わず「ふわふわ……」と呟いたとか、呟かなかったとか。

「ヨーヨー釣りも繁盛してるみたいですね」
「リゼリィ……そうみたいだね……」
 片手に白桜色の提灯、片手に串カツを手にし、リゼリィはレインの元へ訪れる。先程他所の店番を終えたばかりであった。
 屋台の看板にはクラゲが描かれ、白の電飾で輝いている。だが何よりも、カラフルな水風船漂うビニールプールがこの屋台の目玉だ。水底も電飾で飾られていて、珊瑚礁のように鮮やかな色を見せていた。
 わいわいがやがや、喧騒は絶えない。ヨーヨーを掬う遊びは、子供達を中心に賑わいを見せていた。
「ゴリパンジーとの、店番。頼んでも……いいかな……? 干からびそうで……」
「はい。大丈夫ですが、――ゴリラ?」
 何かを言いたげにしつつも、リゼリィはゴリパンジーの横に並んだ。
 彼女の呼び込みを背に、レインはプールへばしゃりとその身を沈めた。痩せ細った体に、生気が蘇る感覚が染み渡る。「この後」を頑張るためにも、しっかり英気を養わなければ。
 近くでヨーヨーと格闘していた子供が、まじまじと彼を見つめる。
「本当にクラゲさんだったんだね!」
「クラゲの出店、だからね……」


 協議の結果、今年の花火は二部構成となった。前半が特異運命座標による演目に合わせた部で、後半が花火のみを楽しむ部である。
「焼きそば一丁っト。そういや花火に合わせてそこのステージで何かやるらしいっすヨ」
 宣伝も欠かさずに、壱和は焼きそばを手渡す。広場にあった謎の土台は、壱和達の手を借りて立派なステージへと変貌を遂げていた。
 リゼリィとの共闘の末に獲得したラメ入り水風船を一旦預けて、望乃は舞台へ上がる。
 観衆の注目が望乃に集まる。彼女はちらりと頭上を見る。櫓の上にいるレインは、無表情の内にもやる気が灯っているのが窺えた。
 ゆっくりと、望乃の歌声が夕闇に響き渡った。自分たちの辿った旅の軌跡を思い起こしながら、想いを乗せる。
 この一夜も、ずっとずっと心に残り続ける思い出になりますように。きらきらと、色褪せない輝きを放ちますように。
 夜空に花火が打ち上がり、二つの舞台が交錯した。歌の流れに寄り添って、レインが上から長髪を振り乱す。彼のギフトこと「ナナイロミラーボール」。クラゲの触手の如き髪は七色の煌めきを放ち、舞台を盛り上げる。
 広い世界を唄う勇壮なメロディには、激しい光の大波を。
 穏やかな道を辿る清冽なバラードには、さざ波の優しい揺らめきを。
「とってもとっても楽しくて、素敵ねえ」
「おー、やってんネー。佐倉のねーちゃん頑張レー!」
 光と歌声が夢幻の協奏曲を奏で、幻想的な虹色が降り注ぐ。フロアのテンションはブチ上がり、最高のパーリィナイトを迎えようとしていた。
 ……やがて全ての曲を歌い終わり、望乃はぺこりと一礼。同時に一際大きな花火が咲く。会場を盛り上げた二人へと、大きな拍手が巻き起こった。

「つ……つかれたぁ……」
 その光景を見届けたレインは、ごろりと大の字に寝転がる。尤も、不思議と嫌な疲労感はなかった。
 視界いっぱいに広がる夜空、満天の星々。
 ぼんやり眺めていると、どんと花火が打ち上がった。後半の部の始まりだ。次々と大輪の花が咲く。まるで、手を伸ばしたら届いてしまいそうな距離感で。
「ふふ、ここから見るの、特等席みたいだ……」
 微笑みが漏れたら、なんだか気も抜けて。自分のお腹が減っていたことに気が付いた。
 頑張った彼を労うように、水色の花火が満開に咲いた。

「花火って、海洋でも見たことがあったかもしれないけれど、こんなに綺麗だったかしら」
 自分の屋台に戻ったポシェティケトは、ゆったりと花火を楽しんでいた。
 菊花火、柳花火、万華鏡。一つずつ、丁寧に心に刻んでゆく。
「……ふふ。なんだか特別素敵に感じるわねえ」
 囁く彼女の隣で、提灯が淡い色彩に微睡む。それはきっと、幸せを示す色に違いなかった。

「これ、玄野さんも如何ですか? 働き詰めでしたでしょう?」
「ン、ありがとナ」
 町人の一人からお好み焼きを差し出される。円形の隅の小さな三角は猫耳のつもりなのだろうか。
 彼らも教えたての頃は少々手間取る姿が見られたが、今日を通して手際よく作れるように成長した。これなら来年も問題なく屋台をやれるだろう。
「しっかし、一般的な夏祭りってこんな感じなんだナ。賑やかって言うカ。明るいって言うカ」
 壱和は穏やかな眼差しで広場を見渡した。皆、晴れやかな表情で花火を見上げている。先程まで人に囲まれていた望乃も、全員で共に夜空に見入っていた。舞台への注目は、そのまま花火の盛り上げに寄与したようだ。
 花火に冷めてきていると聞いた割には、皆が花火を楽しんでいる。あるいは目の前の光景が特異運命座標の成果というべきか。
「オレらの祭りって言やぁ、山ん中で行われるガチの神事だシ。オレは御神体なんてクソつまんねぇ役割やらされてたし、こっちの方がよっぽど楽しいワ」
「もしや玄野さんは厨房を司る……あ、最後の花火ですよ! 見逃さないでくださいね!!」
「わかってるっテ。急にどうしたんだヨ」
 ぺろりとお好み焼きを平らげ、壱和は空を見上げた。

 最後には一風変わった花火が打ち上げられるのが毎年恒例だそう。
 沢山の人々に見つめられ、夜空に広がる火花は文字を描き出す。
 「ありがとう」。
 五文字が弾けて、そして消えていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

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