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シナリオ詳細

ラサにもバニーガールのいるカジノはありますよ……竜宮にも負けないバニーが……。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●バニー・イン・ザ・ラサ
 ラサ。商人と傭兵の国。
 富と名声、そう言ったものの集う砂漠の地には、その欲望を解放するための場所ももちろん存在する。
 具体的に言うと、カジノである。
 ラサ、ヒューレインド・カジノ。商人ヒューレインドの創設したというこのカジノは、ラサでもかなり大きな遊戯施設の一つだ。日夜多くのものが欲望と金を吐き出し、時にその懐に蓄え、時に素寒貧になって外に出てくる。
 そんな社交場に、今八名のイレギュラーズ達が姿を現していた。
 すずな (p3p005307)
 エルス・ティーネ (p3p007325)
 プラック・クラケーン (p3p006804)
 ボディ・ダクレ (p3p008384)
 小金井・正純 (p3p008000)
 コルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)
 ニコラス・コルゥ・ハイド (p3p007576)
 ユウェル・ベルク (p3p010361)
 以上八名であり――そして全員がバニースーツを着ていた!!!
「どうして」
 すずながぼんやりとした様子で言う。その姿はバニーである。ばにーわんこ。かわいい。
「どうしてもこうしてもないよなぁ……」
 プラックが肩を落とす。その姿はバニーであった。ばにーぷらっく。かわいい。
「これが今日の依頼だってんなら、もう諦めるしかないんだろうな……」
 プラックがそういうのへ、皆はため息をついた。というのも、これが仕事であるからだ。

「ヒューレインド・カジノの調査をお願いしたい」
 と、商人ヒューレインドが言う。ラサ様式の豪奢な屋敷である。砂漠の熱をとる様な魔術・クーラーが部屋を冷やす快適な高級応接室。これ見よがしに飾られた壺などに興味深げに視線をやりつつ、ボディがいう。
「調査、ですか? 妙ですね。ご自身のカジノなのですから、ご自身か、その部下のものが調査なさるのが一番なのでは?」
 ボディの――ちなみに、特に断りが無ければ、このシナリオに登場するボディは男性体である。というのも、ニコラスやプラックに「俺たちだけ男でバニーなんて嫌だ」とごねられたからなのだが、これはさておき――言う通りだろう。ラサの豪商ともなれば、自由に動く手ごまなどは履いて捨てるほどいるに違いない。なれば、内内に処理するという意味でも、身内で調査を行った方がいいのではないか、と疑問に浮かぶのは当たり前のことだ。
「それは、そうなのだが。実は、調べたいのは、その部下のことでな……」
 そういうヒューレインドに、ふぅん、とコルネリアが鼻を鳴らした。
「アンタ、部下に裏切られてのね」
 歯に衣着せぬいいように、ヒューレインドは苦笑した。
「言い換えしようがないな。まぁ、まだ疑惑の段階だが」
「別にしょうがないじゃない。身体がでっかくなるにつれて、懐には虫が入り込むもんよぉ?」
 冷えた水を飲みつつ、コルネリアが笑う。
「なるほどね。だから自分の部下は動かせないのか。どうつながってるかわからないから」
 ニコラスの言葉に、ヒューレインドが頷く。
「うむ。正直、今のところだれが味方で誰が裏切り者なのかわからぬ状態――故に、君たちには内部調査を頼みたいというわけだ」
「金持つってのも大変だな」
 ニコラスが言う。
「それは構いません。仕事ですからね。それで現場は、あなたの所有するカジノ……でしたね」
 正純が言うのへ、ヒューレインドが頷く。
「ああ。そこでバニーとして潜入し、私の部下……リッグテールの素性を暴いてほしいわけだ」
「成程、それが今回の」
 と、言った所で、正純が変な顔をした。
「失礼、今なんと?」
「バニーとして潜入し、私の部下、リッグテールの素性を暴いてほしいと」
 その言葉に、なんか部屋の空気が『ゆるく』なった。真面目な潜入依頼だ音持っていた間に、「ははあ?」というような、何かを察したような空気が混じる。
「失礼しますが」
 すずなが言った。
「もしかして、あなた、アライグマの獣種だったりしますか?」
「いや、確かに最近肥えて、娘にもタヌキみたい! とは言われるが、カオスシードだよ……?」
 不思議がるヒューレインドに、すずなはこほん、と咳払い。
「失礼しました。ちょっとした確認事項で」
「ちなみに、私がアライグマの獣種だったらどうするのかね?」
「とりあえず皮をはいで鍋にしようかと……」
「ローレットはアライグマの獣種になんか怨みでもあるの?」
 ヒューレインドが目を丸くした。
「いえ、ちょっと色々ありまして」
 ボディが遠い目をした。
「まぁ、聞いてほしい。ヒューレインド・カジノはバニーガールとバニーボーイが売りの、非日常が楽しめるカジノというコンセプトでな。ほら、遠い練達のテーマパークとやらだと、頭にマスコットの耳をつけたりするらしいじゃないか。ああいうノリで、皆でバニーになって非日常を味わおう見たいな」
「嫌な非日常だなぁ……」
 ユウェルが嘆息する。
「でも、やらない事にはどうしようもないパターンでしょ。別にいいけど、バニーになって、どうするの?」
 ユウェルがそういうのへ、ニコラスとプラックとボディが異口同音に言った。
『男衆の意見を聞いてほしいのですが』
「いや……だってもう、やるしかないでしょ……?」
 ユウェルの言葉に、男衆は黙った。そう。もうやるしかないのである。
「ええと、話、つづけて?」
 ユウェルの言葉に、ヒューレインドが頷く。
「実は、カジノのコインの一つに、盗聴魔法を仕掛けてあるのだ。それにリッグテールの素行が記録されている。
 問題は、リッグテールはカジノの管理者の一人で、カジノコインの管轄を行っているという事だ。これは私でも触れることはできない。盗聴魔法を仕掛けたのは、カジノにコインを搬入するとき。私はカジノの象徴でもある、ミリオン・コインという特別なコインにその魔法をかけた。ミリオン・コインは、カジノでも最もレートの高いコインだ。めったに持ち出されることはないし、コイン管理者であるリッグテールが、常に胸にかけている……だからリッグテールの素性を盗聴できるし、同時に、私たちには触れる事すら叶わないのだ。
 そこで。君たちには、カジノで大勝ちしてほしい」
「はい?」
 と、エルスが首をかしげた。
「どうして――ああ、いえ、察したわ。つまり、実力で大勝して、ミリオン・コインを交換する、という事ね?」
「そうだ」
 ヒューレインドが頷く。
「カジノから取り返せないなら、合法的にその手にすればいい。ミリオン・コインを手に入れたら、此方のマジック・メモリをコインに接触させてくれ。一瞬でデータを回収できる。
 そうしたら、そのコインで何をしようが自由だ。もっと遊んでもいし……まぁ、換金、したいなら……それは、少々報酬に色を付ける、程度で勘弁してくれると助かるな」
 わはは、と笑うヒューレインドに、エルスが頷いた。
「わかったわ。この依頼、受けさせてもらうわ」
 そういうイレギュラーズ達は、安心してほしい、というように、力強く頷いた。
 ちなみに、此処でギャンブルをするという話で上書きされていたのでみんな忘れていたのだ。
 バニー服を着ないといけないという事を……!

「って、カッコよく出てきてしまったけれど」
 エルスが嘆息する。
「この格好は……」
 バニー服を着たエルスがそういう。というわけで、全員がバニーである。もうバニー。どこをどう見てもバニー。完全にバニー。
「……実際着てみるとすごい嫌だな……」
 ニコラスが言うのへ、プラックとボディが頷く。
「体を変えても……?」
 ボディがそういうのへ、プラックとニコラスが異口同音に言った。
『だめだ』
「そうですか……」
 ボディがうなだれた。
「ま、やるしかないわねぇ」
 コルネリアがそういう。バニー全身を持っているので余裕である。
「いや、バニー全身を持っている=余裕ではないのですが」
 虚空を見上げながら、正純が言った。
「んー、とにかく、さっさと仕事してかえろっか」
 ユウェルが言うのへ、皆は頷く。
 とにもかくにも。
 お仕事である!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 これはリクエストシナリオなので、僕の罪も帳消しになりませんか。

●成功条件
 カジノで大勝ちし、ミリオン・コインを手にする

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 ラサ、ヒューレインド・カジノ――そのオーナーであるヒューレインドは、カジノを仕切る部下のリッグテールの不正を暴くべく、彼の持つ最上級換金コインミリオン・コインに登頂魔術を仕掛けました。
 しかし、彼はコインを肌身離さず持っているため、回収できません。合法的に回収するには、カジノで大勝ちし、正規のルートで換金するしかないのです!
 というわけで、皆さんの出番です! カジノには、バカラ、ブラックジャック、ポーカー、ルーレット、スロット、ビンゴ……と言ったゲームがあります。要求されるのは、とにかく大勝ちする事だけです!
 パラメーター、スキル、あらゆるものに紐づけてプレイングをかいてください!
 例えば、「私はEXAが高いのでカードを二枚とるイカサマができます!」などと言い張ってギャンブルゲームを有利に進めるのです!
 相手はバニーの店員さん達! いずれも優秀なディーラーたちですが、しかしプレイングの巧妙さは皆さんの方が上のはず!
 ゲームを選び、プレイングで技術を描き、ミリオン・コインに手を伸ばしましょう!
 イカサマや番外戦術もありですが、くれぐれもやり過ぎたりバレたりして追い出されませんよう……。

 それでは、皆さんの強運をお祈りしております! グッドラック!

  • ラサにもバニーガールのいるカジノはありますよ……竜宮にも負けないバニーが……。完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年09月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

すずな(p3p005307)
信ず刄
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)
名無しの
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
月瑠(p3p010361)
未来を背負う者

リプレイ

●バニー・イン・ラサ
 というわけで、ラサ、ヒューレインド・カジノ。きらびやかな外見と、ウサギをモチーフにしたSDキャラの看板が輝くその扉を開けば、内部には多数のうさ耳が揺れる。
「くそ、マジで皆バニーじゃないか。イカれてるのか?」
 バニー・スーツを着た『救海の灯火』プラック・クラケーン(p3p006804)がそういう。
「非日常にもほどがある……」
 当然ながら、そこに潜入するイレギュラーズ達も、全員がバニースーツである。バニーのプラック君も可愛いよ。
「ただ、それ以外は結構いいいカジノらしいんだよな……」
 バニースーツの『名無しの』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)が嘆息する。
「俺も話には聞いたことがあるんだ……このカジノ。入ったことはなかったが。ただ、最近は色々、悪いうわさも聞いている。なるほど、新しい店のマスターとオーナーの確執か」
 ふむ、とニコラスは唸った。
「ま、やることはシンプルだぜ。かちゃいいのさ」
 ニコラスがにやりと笑う――その隣で、みちみち、とバニースーツの生地を鳴らせる偉丈夫がいた。『紫香に包まれて』ボディ・ダクレ(p3p008384)である。
「…………」
 無言で見やるモニターには何も映っていない。
「止めてくれ、ボディさん、その圧は怖い」
 プラックが、思わず頬をひきつらせた。笑っているのだ。恐怖と笑いは紙一重と言うが、その非日常的なシュールさは、恐怖と笑いを同時にたたきつけていた。
「お二人とも」
 ボディが言った。
「後でお話があります」
「待ってくれ、俺もこうなるとは思っていなかったんだ」
 ニコラスがそういう。まさかこんなみちみちぎっちりバニーボディになるとは。
「はっ!? 焔さん!?」
 ぐるる、とバニースーツの『オトモダチ』すずな(p3p005307)があたりを見回した。すぐに、はっ、と息を吐いて、
「いえ、これは情報精度焔ではなかったですね……いけないいけない」
 こほん、と咳払い。
「賭け事をするのは構わないのですが、本当に、まったくこの格好は。こういうの、本当に、まったく」
「まぁ、気持ちは分かりますが、今回の持ち込みはエルスさんですからねぇ」
 バニースーツの『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)がそういう。視線を向けてみれば、むふー、と目を輝かせるバニースーツの『青鋭の刃』エルス・ティーネ(p3p007325)の姿があった。
「ふふふ、皆、私の事を可愛いお嬢ちゃんとか乙女扱いしているけれど。
 この機会に見せてあげるわ! 私が大人の女だって事を!
 そう、混沌に召喚されてから、賭け事だって学んできたつもりです!
 今こそ! 見せてあげるわ!」
 ぐっ、と気合を入れるエルス。そんな様子を見ながら、正純は笑った。
「ラサの女もやる気ですから。まぁ、賭け事……ギャンブルにワクワクしているというのは、私も否定できません。
 格好は――諸々よりマシでは?」
「そう……かもしれませんね?」
 すずなが小首をかしげた。なれとは恐ろしいものである。
「んーと、カジノ、コイン食べちゃダメ、おぼえた!」
 バニースーツの『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)がにこにこと笑いながら言う。
「ぎゃんぶる? のルールはよくわからないけど、コインを集めればいいのは分かった!
 ぎゃんぶるって、こんな変な服着ないといけないんだね。でも可愛いからいっか!」
 あれ、ちょっと無知系むちむち女の子がバニー着てるのよくない……?
「邪悪な思念を感じる」
 ユウェルがなんか寒気を覚えた。
「ふふん、ま、アタシに任せておきなさいよ」
 バニースーツの『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)が、にやり、と笑った。バニーガール姿もなんだか堂に入っている。
「ギャンブルと言えばアタシ。アタシと言えばギャンブル。言われたことないけど、今は総自負させてもらうわ、ええ。
 様々な賭けに買ってきたアタシよ! 皓は大船に乗ったつもりで居なさい!」
 わー、とユウェルがぱちぱちと拍手する。
「実際、コルネリアには期待してるよ」
 ニコラスが言った。
「ここのメンバーはほとんどが初心者……って事は、俺たち経験者が何とか稼ぐ必要がある。
 皆には、むしろギャンブルを楽しむ気持ちでやって欲しいもんだ。必死でやるギャンブルってのは、何かな。健全じゃあない」
「分かってるわね。ギャンブルってのは、人生の余暇であるべきよ。普通の人はね。アタシらレベルになると違ってくるけど?」
 ふふん、と笑うコルネリア。そこには確かな実力と実績に裏打ちされた自信があった。
「頼りにしてますよ、コルネリアさん」
 すずなが笑う。
「ええ、この依頼、とったも同然ですね」
 正純が頷いた。
「プレイスキル、参考にさせていただきます」
 ボディが頷いた。
「ま、コルネリアさんがいれば、俺たちは気楽だな」
 プラックが笑った。
「そうね、コルネリアさん、よろしくね?」
 エルスが微笑んだ。
「コルネリア、かっこいい!」
 ユウェルが言った。
「ええ、ええ、任せなさい! さぁ、アタシについてきなさい!
 ここまでリプレイ文字数2600文字くらい! 依頼解決までに3000文字も必要ないわ!
 後はただアタシたちが豪遊してるだけのリプレイを、洗井落雲にかかせるわよ!!」
 おーっ、とみんなが手をあげた。コルネリアは肩で風切って、カジノのホールを歩く。仲間達はその後を、ゆっくりと進み始めた――!

●カジノ・バトル
 コルネリアが土下座していたので、正純はポーカーテーブルから目を離さず舌打ちをした。
「また負けたんですか」
 正純が言う。足下に積んであるコインケースに、コルネリアの視線が向かったので、もう一度正純は舌打ちした。
「私のコインを見ないでください」
「あ、はい……」
 コルネリアが地面に額をこすりつける。
「で、なんですか。さっきはエルスさんにコイン借りてましたよね」
「あ、はい……」
「その前は、すずなさんから。その前は、プラックさんから。その前は、ボディさんから。ニコラスさんからは断られていましたね」
「あ、はい……」
「それで、私ですか。今度は」
「あ、はい……」
 ふぅ、と正純は息を吐いた。煙草があったら吸っていたかもしれない。ここは禁煙だった。ちっ、と舌打ち一つ、正純はコインケースに手を突っ込むと、コイン一枚掴んで、コルネリアの目の前に落とした。すごい勢いで、コルネリアがしゅばっ、ってコインを拾った。
「あ、ありがとう……!」
「次はありませんよ」
「はい……! やさしい……優しい正純さん……!」
 コルネリアがへこへこ頭を下げながら立ち上がる。そのままくるりと振りかえると、託児所(頭にうさ耳をつけた普通のかっこをした子供たちがいる)が目に入った。ユウェルが、数字と色を合わせてカードを出していく子供用の遊戯をやっていた。ウーロ、というらしい。
「コルネリア、また負けたの」
 かわいそうなものを見る目で、ユウェルが言った。ちなみにユウェルもブラックジャックで敗北している。「21になればいいんだよね! ってことはカードはひけばひくほどお得!!!!」とかわけのわからないことを言いながらバーストしまくって負けたのである。ちなみに、ユウェルはみんなの事を「せんぱい」と敬称をつけて読んでいたが、ここ数時間の働きで、コルネリアを呼ぶ際に敬称が消えている。
「確かに、アタシは負けたわ」
 コルネリアが頷く。
「でも――それも、ここからの大逆転の布石なのよ」
「ふーん。ねぇ、ウーロやらない? この子達結構強いよ」
「アタシはお子様じゃあないわ」
 ふふん、とコルネリアが笑う。ユウェルとお子様たちが目を見合わせた。
「じゃあ、ねーちゃんが来るまで待ってる。そんな時間かかんないだろ」
 託児所の少年がそういうのへ、コルネリアが鼻で笑った。
「生意気な奴ねぇ。いいわ、そこで待ってなさい――パパが迎えに来るまでね!」
 わーっはっはは、とコルネリアが笑いながら去っていく。
 十分くらいしたら、コルネリアが半べそで帰ってきたので、ユウェルとコルネリアと少年少女たちはウーロをで遊び始めた。

 さておき。視点を戻せば、正純はポーカーテーブルで勝ちを続けている。コインは『その辺の勝ってる人たちにお願いしたらくれた』らしい。ポーカーで勝ちを続けるには様々な要因が必要だが、正純がここで選んだのは、シンプルなイカサマだ。義手に仕込んだカードを、的確なタイミングで交換する。
「お客様――」
 総ディーラーが言うのへ、正純は微笑んだ。
「イカサマをお疑いで?」
 尋ねるのへ、ディーラーはにこやかに笑った。相手も鉄火場の主だ。
「これもこちらの仕事になっております。身体検査をさせていただいても?」
「素直におっしゃっていただいて結構ですよ。義手、ですよね。見たいのは」
 正純はそういうと、ゆっくりと己の義手を外した。パフォーマンスのようにゆっくりと動いたのは、義手を印象付けるためである。
「どうぞ――この状態で、ゲームを始めても構いません。勝ちますから。私は」
 その言葉に――ディーラーが頷いた。ここからは、まったくの、真っ向勝負の始まりだった。
 その近く、スロットテーブルには、すずなの姿がある。涼しい顔でリールを眺めれば、瞬く間に動きが見える。
「温いものですね」
 すずなが微笑んだ。例えばそれは、今まで戦ったどんな敵の刃よりも『遅い』。そうだろう、スロットには『殺意』がない。もちろん、此方の財布を空にしようとしているのは確かだ。が、それは殺意ではないし敵意でもない。ただの、確率に則った空っぽの数字である。畢竟、すずなにとっては、紐にぶら下げられて、ただ左右に揺れている刀、程度の『動きが読める』ものであった。そして、そんなものの動きを読めないほど、すずなは温くはないのである。
 見えた。後は止めるだけど。それだけの素早さも、すずなは持ち合わせている。たたたっ、と素早くボタンを留めれば、狙った位置でリールは停止する。が、ジャックポットは狙わない。何故なら、その前後において理不尽にリールがずれることを、すずなは数回のチャレンジで学習したからだ。
「やりますね」
 ボディが感心した声をあげる。抱えたコインケースには、中コインや大コインがいくつも見える。小コインを100まとめたレートのコインが中、中を100……で大だ。大をさらに集めるとようやく交換が可能なのが、ミリオン・コインになる。とにかく、ボディは相応に大勝したのだろう。もちろん、イカサマをしたうえで、だが。
「まぁ、大勝、というにはいきませんけれど。ただ、皆さんの『弾丸』にはなれそうです」
 すずなは微笑んだ。
「この後は……ボディさんは、ルーレットですか?」
「はい。コルネリア様が、最終的にはルーレットにかけるのが良いと」
 その人、今大負けして子供たちと遊んでますけど、と喉元まで出かかった言葉をすずなは飲み込んだ。
「……確かに、大勝ちを狙うなら、ルーレットなどになるのでしょうね。スロットは、どうも操作を感じます」
「ここは混沌です。異能な存在なら、スロットの完全目押しなどは可能でしょう。すずな様のように。ならば、多少は操作をされてもおかしくはない」
「もう少し、試してみます……ボディさんも、頑張ってくださいね」
 そういうのへ、ボディは頷いた。道中では、エルスが涼しい顔でカードを手繰っている。
「あら――また、私の勝ち、ね?」
 妖艶に笑ってみせるエルス。おお、とギャラリーたちからの声が響いた。どうやら相当、目を引いているらしい。
「ふふ……これよ、これ。これが私の、本来のキャラというもの。乙女とか少女とか、そういうのじゃなくて!」
 エルスが目をキラキラとさせた。大人の社交場に立つ、ミステリアスな美女――イメージとしてはそんな感じである。
「順調ですね」
 ボディが言うのへエルスが頷いた。
「あら、ボディさん。ええ、とっても順調。
 ふふん、きっと皆さん見くびっていたわよね? 私のこと」
 そういうエルスに、ボディは苦笑するようにモニターを光らせた。相当気分がよさそうだ。
「ルーレットに行くのでしょう? ニコラスさん達が先に遊んでいるわ。私は――もう少しここで遊んでいくつもり」
 にこやかに笑うエルスに、ボディは頷いた。どうやら流れにも乗っている。邪魔してはいけないだろう。
 ルーレット場に行ってみれば、ニコラスとプラックの姿が見えた。プラックはバニースーツにもじもじとしつつ、
「ニコラスさん、やべーよ! 負けちまった……俺は知ってんだ、ギャンブルで負けたらけつの毛まで毟り取られるってな!
 三賊の話を聞いて回った数年前……親父がそれで痛い目を見てたって聞いてんだよぉ!
 こんな恥ずかしい格好に加えて丸裸になんのは嫌だって! ねぇ!」
「いや、此処は一応健全な賭場なんでそこまではしないと思うが……」
 ニコラスが苦笑する。プラックのギャンブル観はかなり悪い。まぁ、あの三賊の武勇伝に登場する賭場を想像してはしょうがあるまい。
「いや、やべー賭場ほどまともな顔してんだよ! 親父もそりゃあもう……」
「あの……お客様……当店はクリーンなお店ですので……」
 苦笑するバニーさん。ニコラスも苦笑する。そんな所へボディがやってきた。
「盛況のようですね」
「ボディさん! よかったぁ~~~~そんだけ稼いでるならとりあえず臓器は大丈夫そうだ!!」
 プラックが大喜びでそういうのへ、バニーさんが苦笑した。
「お客様……」
「ああ、いや……すみません」
 ニコラスが苦笑する。
「それで、如何ですか」
 ボディの言葉に、ニコラスが笑った。
「ああ、見ての通り。中々、だな」
 ニコラスも、相当のコインを稼いでいる。大コインもいくつか見られて、このまま順調にいけばミリオンまで手が届きそうだ。
「正純さんの方もしっかり稼いでおられるようです。すずなさんも安定供給をしてくれています。このままのペースで行けば」
「ああ……だが、もう一押し欲しいな」
 ニコラスが言う。このままルーレットで勝ち続ければ、相応に稼げる。だが、ギャンブルには流れというものがあり、その流れはわずかな瞬間、目を閉じただけで変わるものだ。今は流れに乗っていても、次の勝負では断ち切られるかもしれない。だから、流れに乗っているうちに、大きな勝負にベットをしたい――。
「一発、ビッグゲームと行こうか」
 ニコラスが言う。
「スロットで勝負しよう。うちの代表は、ユウェルさんで」
「……ニコラスさんが、ユウェルさんにベットした……という事なのですね?」
 ボディが言った。
「ギャンブルには、理論では測れない何かがあると理解しました。我々も、それに賭けましょう」
「なんだかわかんないけど、賛成だ」
 プラックが言う。
「ユウェルさんを呼んでくる。最後の勝負と行こう」
 プラックの言葉に、皆は頷いた。

●ショウ・ダウン
「で、どうすればいいの?」
 ミリオン・スロット。このカジノでも最も高額なレートのスロット。その巨大なスロットの前に、ユウェルが座り込んでいる。
「簡単。このレバーを倒して、ボタンを押す。そんで、この絵を合わせる。それだけ」
 ニコラスの言葉に、ユウェルは笑った。
「へー、ギャンブルって簡単だね! ルーレットとかぶらっくなんとかはよくわかんなかったけど!」
 がこん、とレバーを倒す。イレギュラーズ達の全財産が、飲み込まれた。リールが回る。ユウェルが、首を振りながら、リールの回転を見つめる。
「……目押しは容易でした。ですが」
 すずなが言うのへ、コルネリアが頷いた。
「ええ、大体は、滑る、ように設定されてるわね」
「その制御は難しい。ならば、最終的にものをいうのは、運、か」
 プラックが言う。
「流れ、なのでしょう」
 ボディが言った。
「その流れが、ユウェル様にある――と」
「よっと」
 ぱちん、と、ユウェルがボタンを押した。左。7が止まる。
「よっ」
 真ん中。7が止まる。ジャックポット手前。
「右側を止められれば――」
 正純が言った。ぱちん、とボタンを押す。止まる。チェリーのマーク。外れた、とだれもが思った。が、それは『動体視力の良さゆえに、先読みしたから』に過ぎない。実際には、ずれる。リールが。たんっ、と。下へ。
 強烈な光が巻き起こって、にぎやかな音が響いた。ユウェルが目を丸くする。
「えっ、壊れた!?」
 じゃらじゃらと、コインを吐き出す、スロット。リールを確認する。7・7・7。ジャックポット。クリティカル!
「すごい、やったじゃない!」
 エルスが、ぱちぱちと拍手しながら、笑った。ユウェルは事態を飲み込めていなかったが、ニコラスはさっさとコインを集めきってしまった。
「な? 流れ、って奴さ。最後は運かもしれないが、その運に挑戦するためには、皆の実力が必要だった」
 ニコラスが笑う。皆も、自然、笑った。これはユウェルが止めを刺したが、そこに至るまでの経緯には、皆の助けが必要だった。皆で勝ち取った、勝利だ。
「さぁて、じゃ、お宝を拝みに行こうか?」
 ニコラスの言葉に、皆は頷いた。
 その日、ヒューレインド・カジノ史上、初めて『ミリオン・コイン』がとある客の手にうつった、と誰もが口々に囃し立てたのだった――。

成否

成功

MVP

月瑠(p3p010361)
未来を背負う者

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 この日、カジノは大騒ぎのお祭り騒ぎとなったようです。
 その一方で、後日一人の横領犯が、カジノを去ったわけですが――。
 それもまた、皆さんの活躍のおかげなのでした。

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