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シナリオ詳細

ダンジョンオブザデッド

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●死霊の館
 かけだし冒険野郎は熱き冒険心に燃えていた。
 必ずやダンジョンを踏破し、ダンジョンシーカーとしての評判をあげんとしていた。
 今回彼が目をつけたのは『死霊の館』。
 シンプルきわまる名前だが、かつて恐ろしい死霊魔術師(ネクロマンサー)がつくりし未開拓ダンジョンであるという。
 日夜墓場を掘りかえし、死霊を集めに集め、時には生きた人間まで手をかけて行なわれた恐ろしい研究は、ついには館の主すらもとりこみ館そのものを魔術のダンジョンへと変えてしまったというのだ。

 いわくつきなど望むところ。
 冒険野郎はあふれ出る冒険心から初見トライで挑んでみたが、この館の不気味なことといったら……!
 幻想(レガド・イルシオン)のはずれに位置する館は、近づくだけでおどろおどろ雰囲気がぼわぼわと沸きだし、今すぐにでも帰りたい気持ちにさせてくる。夜になんて行ったら絶対にダメなところだ。
 不気味なのはそこだけじゃあない。適当な窓でも割って侵入しようと試みたが、石を投げても鈍器をぶつけても、なんなら火であぶってもガラス窓にヒビひとつ入らないのだ。しかも窓からは昼間にも関わらずぼんやりとした闇しか見えない。闇の中からこの世ならざるものがのぞき返しているような気がして、長く見ていると気分が悪くなりそうだ。
 そんなわけでスゴスゴ帰った冒険野郎……だがしかし、トライはまだ終わってない!
 後に酒場で仕入れた情報によれば、館は特別な魔術で保護されていて窓にキズをつけることはおろか、壁を焼いたり穴をあけたりといった破壊的な干渉の一切をはねのける処置が成されているというのだ。
 それどころか、館に入れば食堂や物置や寝室や、ありとあらゆる部屋が空間をねじまげたかのように入り乱れ、立ち入るものを迷わせるそうだ。
 この館を恐ろしい魔術から解放する手段はただひとつ。
 館に隠された『地獄の鍵』と『天獄の鍵』を見つけ出し、自ら歩く屍(リビングデッド)となった館の主を『人獄の棺』から解放し、戦って倒すことだという!
 ここまで聞いた冒険野郎は……すべて忘れて寝ちゃうことにした。
 命あっての冒険である!

●ダンジョン解放クエスト
「ということで――今回は幻想貴族からの依頼で、ダンジョン化している館を攻略して魔術から解放することになったのです! ダンジョン解放クエストなのです!」
 手をグーにして突き上げるは『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 でもってここはギルド・ローレット。皆ご存じなんでもやさんである。
 ユリーカは冒険野郎くんの噂話を語りつつ、今回の概要を解説していった。

 お話にもあるとおり、今回攻略をめざす『死霊の館』は死霊魔術師によって作られた魔術ダンジョンである。
 館の内部はぐちゃぐちゃに入り組んだ迷宮のようになっており、入り込んだ者を襲う死霊やリビングデッドがうようよしているという。
 ダンジョンの原因となっている魔術を解くことで館は元の姿を取り戻し、とらわれていた死霊たちもまた解放されるのだ。
「解放条件はただひとつ! 館のどこかに隠されている『地獄の鍵』と『天獄の鍵』を手に入れて――!」
 ビッとシャドウ右ストレートを繰り出すユリーカ。
「『人獄の棺』を鍵で開き――!」
 ビッとシャドウ左フックを繰り出すユリーカ。
「リビングデッドとなった主を倒すのです!」
 最後はなんでかネコの構えでニャーンするユリーカ。

「死霊の館を解放すれば、うっかり迷い込んだ人が新たな犠牲になる危険をなくせるのです! みなさん、よろしくおねがいするのです!」

GMコメント

 ご機嫌いかがでしょうか、プレイヤーの皆様。
 こちらは死霊術がテーマのダンジョンシーカーシナリオです。
 呪われた館を攻略し、とらわれし魂たちを開放するのです!
 というわけで、探索能力や霊関係の能力、ついでにトラップ対策なんかがあるととっても便利となっております。

【シチュエーション】
 死霊の館を攻略するにあたって、探索メンバーを編成しましょう。
 勿論参加者全員で探索するのですが、『8人ひと塊』『4:4』『2:2:2:2』といった班分けが可能です。
 といいますのも、ダンジョン攻略には『地獄の鍵』『天獄の鍵』『人獄の棺』という三つのキーアイテムを発見しなくてはならないからです。
 あくまで目安のハナシですが、全員一塊になると探索時間が延びてAP切れの危険が、全員バラバラに探索すると今度はHP切れの危険が近くなります。
 集まったメンバーの特技やスタイルにあわせて編成なさってください。きっと濃密な編成タイムがお楽しみ頂けます。

 なお、バラけて移動した際の再合流はしやすいものとします。

【探索判定】
 館には無数の部屋がめちゃくちゃにくっついて迷宮のようになっています。
 その中を探索し、三種のキーアイテムを見つけ出しましょう。
 当シナリオ限定で、館内の探索には以下の判定方法をとります。
・新しい場所(主に部屋)に訪れたところでロール
・ロール値に応じて四種のうちひとつの状況が発生
 A:悪霊やリビングデッド1~3体が襲ってくる(戦闘状態に突入)
 B:ダメージトラップが発動(罠解除や探索関係の技術があると回避可能)
 C:無害な幽霊をみつける(素通りしてもいいが、何かに利用できるかも……?)
 D:キーアイテムを発見(レア。探索系の技能その他を持っていると確率上昇)

【エネミー】
●悪霊
 館にとらわれ自我をうしなった悪霊です。とにかく人を見つけては呪い殺そうとします。
・縋る呪い(神秘/近距離/単体【呪縛】)
・淀む呪い(神秘/中距離/単体【呪い】)

●リビングデッド
 死体が魔術によって動いているものです。霊魂のたぐいはないからっぽ死体。
・殴りつける(物理/至近/単体)
・しがみつく(物理/至近/単体【乱れ】)

●館の主
 死霊魔術の研究がいきすぎて、自らが呪いそのものとなってしまった者の末路です。
 強力なリビングデッドなので、できるだけ力を合わせて戦いましょう。
・呪いのナイフ(物理/至近/単体【呪い】)
・死を招く儀式(神秘/遠距離/範囲【ショック】)

  • ダンジョンオブザデッド完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月27日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

国東・桐子(p3p000004)
斬り裂き魔
メド・ロウワン(p3p000178)
メガネ小僧
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
ローラント・ガリラベルク(p3p001213)
アイオンの瞳第零席
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
黒鉄 豪真(p3p004439)
ゴロツキ

リプレイ

●語られなかった物語
 噂に聞く『死者の館』は木々のカーテンに隠されたかのようにひっそりと存在していた。
 しかしその雰囲気たるや、たとえ嵐の夜であっても立ち寄らないほどのおどろおどろしさである。
 フハハ! と、『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)が本を片手に笑った。
「ダンジョンというからには墳墓の有様を想像していたのだが、このようなものもあるのだね。これはいい。毎日同じものしか読めなければ飽きるというものさ!」
 ここまで乗ってきた馬車をおり、深呼吸する『メガネ小僧』メド・ロウワン(p3p000178)。
 瓶の底のような眼鏡をからりと光らせて、長い前髪を指でかき分けた。
「呪われた館の探索だなんて、いかにも冒険という感じですね」
「できあがった経緯がいただけねぇがな」
 同じく馬車を降り、首をこきりとならす『ゴロツキ』黒鉄 豪真(p3p004439)。
 口から顎にかけて生えそろったヒゲをなで、館をまじまじと観察していた。
「噂通りの館なら報酬は期待できねぇが……ま、この世界にきて初の冒険だ。楽しませて貰おうじゃねぇか」
「……」
 豪真の振る舞いを横目に、メドは沈黙で同意を示した。
 やはり冒険心というものは、誰にだってあるものなのかもしれない。

 一方、館に冒険心とは別の感情を抱く者もあった。
「死したものは皆土に還り、魂は天に還るもの……」
 シンボルを握って祈る『ねこだまりシスター』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)。
 彼女の横に『正直な嘘つき者』リュグナー(p3p000614)が並んだ。
「死霊術が気に入らないか?」
「いいえ。巡る環から逃れることもありましょうから。けれど、新たな犠牲をうむものであれば、見過ごせません」
「それが貴様の境界線というわけか。クハハハハ!」
 リュグナーは大胆に笑うと、両の手と腕をおおきく開いた。
「では館の主には我々の贄となってもらおう。もっとも、贄とする命など既にないだろうがな!」

 ギルド仕事にかける考えは人それぞれだ。
 『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)はこういうものは初めてだが触れて損は無いという気持ちで、依頼に挑んでいた。
「死霊術や霊魂には縁がありませんが、絶望の青で何が待っているか分かりません。夢の為には、何事も経験です」
 ……とは、彼女が馬車の中で語ったことである。
 馬車を降り、皆が館へ向かうさなか。
 彼女の横で『斬り裂き魔』国東・桐子(p3p000004)が複雑そうにしていた。
「リビングデッドはともかく、霊魂には肉がないよな」
 手にした包丁をじっと見つめ、軽く素振りなどする桐子。
 そんな桐子たちの先頭に立ち、ナックルウォークしていた『GORILLA』ローラント・ガリラベルク(p3p001213)が雄々しく振り返った。
「館では二手に分かれて探索をすることになるだろう。桐子殿、ともに力をあわせよう。メド殿には死霊術と冒険の知識で頼りにさせてほしい。クラリーチェ殿も頼りにしている。貴殿のいえのネコたちに美味いものを買って帰ろう」
 そうして、館の扉の前へ立つ。
 貫禄と共に、その拳で扉を開いた。
「では、行こう」

●終わらなかった魂たちへ
 外観からは想像もつかないような、広大なスペースが館内には広がっている。
 駆け回れるような部屋と上等な絨毯。つり下げられたシャンデリアライト。大勢がかけられる長いテーブルや美しい彫像。しかしそのことごとくが呪われている。
 机の下から這い出たリビングデッドが腕を振り上げる。
 メドめがけて掴みかかろうとしたところへ、割り込むようにローラントのパンチが炸裂した。
 椅子をなぎ倒して転がるリビングデッド。起き上がるより早く飛びかかった桐子が包丁をはしらせ肉を切り裂いていく。
 それでもまだ起きようとするリビングデッドに対して、クラリーチェは救いの祈りを捧げた。
 肉体から呪いのようなものがそげおち、くたりと力尽きるリビングデッド。
 安堵の息をついたクラリーチェは、部屋を改めて探索してから机に色の付いた小石を置いた。
「美しい石だ」
 石の模様をまじまじと観察するローラント。
 クラリーチェはおだやかに微笑むと、袋に入れた他の石を手にとって見せた。
「通った場所に石をおくことで、もう一方の探索班も探索済みの部屋が分かりやすいかと……」
「いい考えですね。見た目も綺麗で目立ちますし……っと」
 メドは部屋の簡単なマッピングを終えると、次に続く扉の前に立った。
「あやしいところは特にないみたいです。先へ進みますか?」
「行くなら私からだ」
 メドを一旦引き下げてから、桐子は扉のドアノブに手をかけた。
 僅かに開け、隙間から適当なものを放り込む。
 ピシュンという音と共に何かが飛び出した気配がした。
 それ以上なにもないことを確認すると、桐子は部屋の中に入った。
 すると、扉のさらなる開閉に応じて別の罠が発動し、斜め上の死角から矢が飛来した。
「あぶない」
 と述べた時には、ローラントが腕を翳して矢を受け止めていた。
「二段階の罠か……」
 更にいくつかあるかもな、と言って桐子は警戒を高めながら進んでいく。
 今回のチームはダメージトラップに対する探索能力や解除能力といったあれこれを特に備えてはいなかったが、それを補うべく、できるだけの工夫をしていた。
 トラップの専門家ほどではないにしろ、その努力はダメージの軽減や罠の回避といった形で役立った。
 腕に刺さった矢を捨て、あたりを探索するローラント。
「他に気を配るべきところはあるだろうか」
「そうですね。このあたりが怪しいんですが……強く押し込むと動きそうなんです」
 メドが冒険の心得を活かしてあちこち探索した結果、暖炉に隠しスイッチを見つけた。
 ごとごとと音を立てて開く隠し扉。
 その先に進もうとすると、ぼうっと音を立てて悪霊が姿を現わした。
 呪いの籠もった手を伸ばし、すがりつこうとする。
「メド君、さがってください」
 クラリーチェがホーリーシンボルを握って祈りを捧げると、悪霊がたちまちのうちに苦しみはじめ、最後には清らかな表情でかき消えていく。
「この先が怪しいな」
 手の込んだ罠や仕掛け。悪霊の存在。そうした先にはきっと守るべきなにかがあると桐子は考えていた。
 そのことを仲間に話してやると、クラリーチェたちは同意して先に進む提案を受けた。
「これは……」
 扉の先には何かの霊魂が漂っていた。
 漂うというか、膝を抱えて部屋の隅で震えるような状態である。
「何かあったのですか? 僕たちは館の主を倒しに来ました。そうすることで呪いからも開放されるはずです」
 メドがそんな風に話しかけ、霊魂にトラップや悪霊、鍵や棺の情報を尋ねた。
 すると霊魂はふるえながら、鍵のようなものを見たと話してくれた。
 例を言って、近道となるルートを通ると……。

「フフ、いやあグレーテルを追っているようで楽しいな」
 一方で、グリムペインは机の上に置かれた綺麗な小石をつまみあげていた。
 ふむと腕組みをするリュグナー。
「ここは探索を終えているようだな。別の扉を探すか」
 盾を手に、頷くグリムペイン。
 引き返してまだ探索していない扉を開いた。
 奥にぽつんと蝋燭が灯った部屋だ。この蝋燭がいつから燃えているかなど、死体が出歩く呪われた屋敷で考えるようなことではない。
 考えるべきは……。
「私が壁となる。トラップやアンデッドは――」
 そこか、と身を転じるグリムペイン。
 床に転がっていたリビングデッドが起き上がり、グリムペインへと掴みかかってくる。
 グリムペインはリュグナーやフロウを庇うように立ちはだかり、リビングデッドとのつかみ合いになる。
 別のリビングデッドがむくりと起き上がったところで、こっちは任せなとばかりに豪真が襲いかかった。
「本当は銃が使えれば良いんだけどな。今回はこれで行かせてもらうぜ?」
 刀を二本抜き、殴りかかろうとするリビングデッドの腕を切りつける。
 バランスを失ってよろめいた所にさらなる追撃。
 転倒したところに、フロウが遠術を打ち込んだ。
 何発か打ち込んだところでぐったりと動かなくなるリビングデッド。
「ようやくこの場のコツが掴めてきました」
 額の汗をぬぐってほっといきをつくフロウ。
 すると、リビングデッドの奥にかわったデザインの扉があるのを発見した。
 ここまでの道のりにあったように罠が仕掛けられているかもしれない。
「扉を開けるときには注意しろよ。こういうのは大体やべぇんだ」
 冒険の心得を語る豪真。それに応じて、グリムペインとフロウはそれぞれ盾を構えつつ部屋へそっと入っていった。
 罠の解除や探索といった専門的な特殊技能をもっていない彼らは、彼らなりにできることを工夫していた。
 豪真の冒険適正を参考にしたり、グリムペインやフロウが防御を固めて罠発動時のダメージ軽減を狙ったりといった具合である。
「――!」
 飛んでくる矢を盾で受け、更に飛んできたもう一本の矢を耐えるグリムペイン。
 フロウも回り込んで中を確かめる。他に罠らしいものはないようだ。
 が……。
「む。これは」
 矢を抜いていたグリムペインが、壁の模様を凝視した。
 普通は分からないが、目の錯覚を利用した模様が描かれていたのだ。
 模様のあるところをはがし、奥にあったレバーを回してみると……。
 ごとごとと音を立てて扉が開いた。
 そして、小さな部屋を見つけた。
「罠でしょうか?」
「どうかな、わからねえ」
「いや、ここは我のステージと見える」
 スッと前に出たリュグナー。
 彼が顔を上げると、天井から少女が逆さに吊るされていた。
 否、少女の霊魂が呪いによって縛られていたのだ。
 リュグナーには、彼女がしきりに『ここからだして』と唱えているのがわかった。
「貴様、自由になりたいか」
 少女の反応は変わらない。どころか『ここからだして』に『でられない』と『おそとはこわい』が加わった。リュグナーはフッと口の端を上げると、両腕を広げてみせる。
「外はいいぞ。我についてくれば良い」
 ぱたり、と少女の呟きがやんだ。
 『いいの?』と言われているように思えて、リュグナーはわざと尊大に笑って見せた。
 一連の様子を不思議そうに観察していた仲間たちに振り返る。
「喜ぶがいい、鍵と棺のありかが分かったぞ」

●巡って終わる物語
 ある部屋に八人のイレギュラーズが集まった。
 彼らの手には二種類の鍵。彼らの前には、大きな棺があった。
「フハッ、地獄の鍵と天獄の鍵か。ならここは煉獄といったところだろうかね」
 グリムペインは笑って鍵を棺にさした。
「ま、偽物じゃあなさそうだ」
 桐子は笑いもせずに棺へ鍵をさす。
 二人同時にがちゃんとひねったその途端、棺から呪いのエネルギーが吹き出した。
 いそいで飛び退く二人。
 その場の全員が身構える。
『のろわれよ』
 精神を直接ゆらすような声色で、リビングデッドが棺より現われた。
 自らが呪いそのものとなってしまった、館の主である。
 さあ、戦いの始まりだ……!

「噂通りクソ陰気な野郎だぜ!」
 豪真は剣をとり館の主へと斬りかかる。
 まがまがしいナイフとぶつかり合い、呪いのエネルギーが火花のように散った。
 その隙にと回り込んだメドやフロウたちが構えた途端、館の主が口をあり得ない大きさにまで開いた。
『死を受け入れよ』
 呪いのエネルギーが爆弾のように凝縮され、メドたちへと飛んでいく。
「――!」
 そこへ飛び込むグリムペイン。
 仲間を庇って攻撃をうけると『pain,pain,go away』と唱えて自らを回復しはじめた。
 彼の意図をくんでライトヒールをかけつつ敵の攻撃をしのぎはじめるメド。
 その一方で、フロウが魔弾による攻撃をしかけていった。
 着弾したフロウの魔弾が館の主を一歩二歩と後退させる。
 リュグナーは手を突き出して唱えた。
「さぁ、朽ち果てし者共よ。貴様らに今一度命を与えてやろう! 対価に命を頂くがな!」
 突如として生み出された死骸盾が、館の主が放った反撃にめりめりと音をたてる。
「畳みかけましょう」
 フロウとリュグナーがさらなる魔弾による追撃を開始。
 それを振り払おうとする館の主に、クラリーチェが深い祈りを捧げた。
「貴方の魂に、安らぎが訪れますように」
 クラリーチェの祈りから生じたとても強いエネルギーが館の主に直撃。動きをがくりと鈍らせた。
 好機である。
「見えた」
 桐子が包丁をギラリと光らせた。
 彼女の放った美しい斬撃が、館の主の腕の肘を切断させた。
 呪いのナイフが腕ごと落ち、びくんとけいれんする。
 バランスを失った館の主は、どたどたとたたらを踏んだ。腕を、大きく振りかぶるローラント。
「命のサイクルから外されし魂たちよ。君たちが正常な命の輪の中に戻り、新たな命として再び芽吹くことを心より願う!」
 祈りを込めた拳に野生の力が漲り、強烈なパンチとなって館の主を粉砕した。
 それでもなんとか動こうとする上半身に詰め寄り『燃えよ燃えよ魔女を暖炉へ突き落せ』と唱えたグリムペインは炎を放ち、館の主を完全に焼き払ってしまった。
 剣をしまい、こきりと首を慣らす豪真。
 フロウも安心したようにいきをつき、仲間たちに振り返った。
 途端、ごとごとと音を立てて揺れる館。
「呪いが解け始めています。早くここから脱出しましょう」
 誰がそう言ったのかは定かでは無い。
 八人は急いで館から脱出した。

 館が突如火を噴き、ごうごうと燃えている。
 不思議と近隣の木々に燃え移ることはなく、館だけがくずれていった。
 まるで弔えなかった死者たちを火葬するかのように、煙が空へと上っていく。
 八人はそれぞれの反応で燃える館を見上げていた。
 暫くの間沈黙が続き……。
 メドが瓶底のような眼鏡の奥でスッと目を細めた。
「これで、終わりましたね」
「そのようだ」
 リュグナーが明後日の方向を見上げて皮肉げに笑っている。
「ほら、馬車を出すぞ。とっとと報酬を貰いに行こうぜ」
 つないだ馬車を解く豪真。
 桐子やフロウたちもそれに伴って歩いて行く。
 そんな中、クラリーチェとローラントは館の主を倒すときに唱えたような祈りをもう一度だけ唱えて、それぞれの作法で手を合わせた。
「……」
 ここまでくればもはや語るべきことなどないだろう、とでも言うようにグリムペインは背を向け、本を閉じた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お帰りなさいませ、イレギュラーズの皆様。
呪われし館の主討伐、ご立派でございました。
特に冒険技能以外には特別な対処技能がないとみるや柔軟に罠の対処にプレイングをさく手際、大変見事でございました。
皆様には報酬が支払われ、とらわれていた霊魂たちは解き放たれ、その一部は誰かとともに旅だったようです。

今回も皆様の活躍にご一緒できたこと、光栄でございました。
イレギュラーズの皆様、またの依頼でお会いできる日を、お待ち申し上げております。

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