PandoraPartyProject

シナリオ詳細

花火の香り

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

・不思議な花火

 潮の香りが漂う街。海を目の前にしたその場所には、不思議な花火を売るお店があるらしい。

「特別に作った花火さ。おひとつどうだい?」

 花火師の青年が差し出したのは、ありふれた見た目の花火が入れられた袋。手持ち花火を中心に、いくつもの種類の花火が入れられている。

 火花自体は、普通のものと変わらないという。途中で色を変えるもの、弾けるように火花を散らすもの。どれに火をつけても、鮮やかな花を咲かせるだろう。
 ここまでは、普通の花火。違うのは、「良い香り」がするということだ。

「火薬の匂いはしないよ。花の香りだったり、蜂蜜の香りだったり、いろいろさ」

 この花火は、特別な材料で作られているらしい。だから火をつけたときにする独特の匂いはしない。代わりに、花だったりお菓子だったり、何か別の「良い香り」がするという。

「同じ香りに感じられるようには作ってはいるけど、誰しもがそうなるわけじゃない。同じ花火でも、人によって感じ方が違うかもしれないね」

 感じ方も楽しみ方も人それぞれ。花火師はそう口元に笑みを浮かべる。

 花火を買ったあとは、浜辺まで行って花火で遊ぶことができる。夜の海の香りがする場所で、思うままに楽しんでいってほしい。


・火花を散らす

「夏といえば、何を思い浮かべる?」

 本の頁から顔を上げ、静かに問うたのは境界案内人の雨雪だ。俺はかき氷と花火かなと呟き、雨雪は頁をめくる。

「不思議な花火を売っているお店があってね」

 とある海辺の街には、火薬の匂いの代わりに「良い香り」がする花火を売るお店がある。見た目も火花もありふれたそれだが、不思議なことに花や蜂蜜などの匂いがするという。

「同じ花火でも、嗅ぐひとによっては違う匂いに感じるかもしれないらしいよ」

 つまり、花火はそれぞれの感性で楽しんでいいということだ。

「花火を買ったあとは、浜辺に行くといいよ。そこでは花火も自由だから」

 それじゃ、楽しんでね。そう呟いて、雨雪は口元に笑みを浮かべた。

NMコメント

 こんにちは、椿叶です。
 いい香りのする花火を買って遊ぶ話です。このラリーは一章構成です。

世界観:
 現代日本に近い世界で、舞台は海辺の街です。時間帯は夜です。
 その街にはいい香りのする花火を取り扱う店があります。その花火は何の変哲のない見た目ですが、火薬の匂いの代わりに花やお菓子などの香りがするそうです。
 店から歩いてすぐのところには海があり、浜辺では花火で遊ぶのも自由です。

目的:
 花火を買い、遊ぶことです。
 花火師は花火を楽しんでもらえると、花火に心を動かされることを喜びます。思うままに楽しんだり、香りを楽しんだり、感傷に浸ったりするのが良いでしょう。

花火について:
 いい香りのする花火ですが、必ずしも皆が同じ匂いに感じるとは限りません。例えば花火師が苺の匂いになるように作った花火だとしても、桃の香りに感じられることもあるかもしれません。ただ、感じる香りが違っても「良い香り」に感じることは皆同じだそうです。
 花火はいくつも袋に入れて売ってくれたり、一本だけ売ってくれたりします。線香花火だけ購入することもできます。自由に楽しんでもらえればと思います。

出来る事:
・花火を買う
・店主と対話する
・花火で遊ぶ


サンプルプレイング:

 へえ、良い香りのする花火か。花の香りがするのとかあったりするのかな? え、違う香りに感じるかもしれない? まあそれはそれで面白いか、じゃあ、それ下さい。
 さて。浜辺まで行って早速やってみようか。


 希望する香りがあれば花火師に伝えてみてください。その香りがする花火を渡してくれます。花火師にお任せしても構いません。
 よろしくお願いします。

  • 花火の香り完了
  • NM名花籠しずく
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年08月01日 22時15分
  • 章数1章
  • 総採用数6人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

紲 寿馨(p3p010459)
紲家

 寿馨が店の暖簾をくぐると、薄っすら優しい香りがした。店にずらりと並べられた花火からほのかに漂っているものらしい。

 良い香りのする花火か。なるほど、良い。これなら火薬の臭いが気になる人も楽しめそうだ。調香師としては、チェックしないわけにはいかないだろう。

 一つひとつを手に取り、それが何の香りなのか確かめていく。こうやって楽しむのもいいけれど、こちらの様子をそっと伺っている花火師が気になった。
 香りを選んでもらうことは、自分にとってはなかなかない。だから、これらを丁寧に作った彼に選んでもらいたいと思った。

「そうさな、どれがいいか」

 花火師が眉を寄せる。難しそうな奴と思われたかもしれない。

「試験じゃないんだから大丈夫だよ。楽しみたいだけ」

 寿馨が笑みを浮かべると、花火師もつられて笑う。花火師は店の中をじっと歩き、いくつかの花火を渡してくれた。


 砂浜で、買った花火の一つに火をつける。すると、ふわりと花の香りが漂った。華やかで懐かしいこの香りは、牡丹だ。

 香りがいつ最も強くなるのか、どれくらい香りが続くのか等を確かめてしまうのはいつもの癖だ。いけないいけない、なんて苦笑していると、漂う香りが少しずつ変化していく。

 ああ、この香りは、あの時の。

 甘く優しい香りに触れていると、あの蝶のことを思い出す。お盆に帰ってくるなんてことはあるのだろうか。
 ぱちりと弾けた火花の輝きが、蝶の鱗粉を思わせた。

成否

成功


第1章 第2節

ビアンカ・ネーヴェ(p3p009455)
白と黒の夢

 花火は、久しぶりに見た気がする。

 店に並んでいる、様々な花火。花や果物等、香りが違うものだけなく、火花の輝き方が違うものまであるから、選ぶのはなかなか難しい。

 折角だから色が変わるものがいい。だけど一人で悩んでいると朝になってしまうから、ビアンカは花火師にお勧めを聞いた。

「香りはどんなものがいい?」

 花火師に問われ、どう答えようか迷う。
 火薬の臭いが嫌いなわけではない。だけど、良い香りの花火は面白いと思う。

「花も良いけれど、違うのも楽しい」

 ゆっくりと告げると、花火師はなるほどと呟く。そうして差し出された花火は、薔薇の香りがするものだった。薔薇である保証はできないけれど、という彼に、首をふる。香りが何になるのか、分からないならそれでよかった。


 花火を抱えて浜辺に向かうと、潮の香りがいっそう強くなった。その香りに心地よさを感じながら、人の少ない場所で静かに腰かけた。

 火をつけると、薔薇の華やかで、どこか柔らかな香りが弾けた。鮮やかな赤色の火花が、花びらを落とすように散らされていく。

 香りを求めるように深く息を吸うと、甘やかな香りが肺を広げていった。はらはらと舞い散る花びらを見つめながらこの香りを感じていると、満たされるようで、何だか切ない。

 花火が全て散ると、香りも薄っすらとしか感じられなくなってしまった。それが少しだけ寂しくて、残った香りを感じられるように、そっと目を閉じた。

成否

成功


第1章 第3節

天閖 紫紡(p3p009821)
要黙美舞姫(黙ってれば美人)

 紫紡が酔い覚ましに海辺の方に来ると、艶やかな色の提灯で照らされた暖簾が目に入った。そこに書いてある文字を見ると、花火とある。夏の風物詩だ。
 ほんの少し店の中をのぞいてみると、薄っすらと良い香りが鼻をくすぐる。その香りにつられるようにして店の中に入ると、花火師と目が合った。

「良い香りがしますね」

 聞けば、様々な良い香りがする花火だという。そんな珍しくて不思議な花火なら、買って遊んでみたいものだ。

 花火をあれこれと手に取って悩んでいると、花火師がどんな香りがいいか尋ねてくれた。
 お菓子にお花、それに果物。どれも魅力的で迷ってしまう。それなら、彼にお任せしてみようか。びっくり箱みたいにわくわくできるから、それも楽しいはずだ。

「なら、好きなものは何だい?」
「へ? え~っと、藤の花と甘い物とぉ~、日本酒です!」

 からりと答えると、花火師は紫紡が持っている布に包まれた酒瓶を見た。そうして静かに笑い、花火をいくつか渡してくれた。


 水を持って、いざ浜辺へ。花火に火をつけてみると、色鮮やかな火花が、花弁のように散らされていく。紫と翡翠が織り交ぜられたその色に、思わず歓声を上げてしまう。
 続いて漂い始めたのは、甘酸っぱい果物と、甘い酒の香りが重ねられたものだった。この香りは、果実酒だろうか。

 薫りたち 火花輝く 夏の夜

 ぽつりと浮かんだ一句に、なーんつって、と笑みを浮かべて、紫紡は火花を見つめた。


成否

成功


第1章 第4節

四(p3p010736)
特異運命座標

 花火で思い出すのは、自分の昔のことだ。
 家族も故郷も失って、お金も無かった。だから花火に憧れても買うことなんかできなくて、他の子どもが親に花火を買ってもらって喜んでいるところを眺めることしかできなかった。

 ぱちぱちと煌めく火花と、子どもの歓声。子どもを愛おしそうに見つめる親の目。それらが脳裏に浮かんでは消えていく。今は昔みたいな状況ではないけれど、あの頃に感じた虚しさは、まだ、心に残っている。

 店に並べられている花火は、どれも良い香りがする不思議なものだった。火薬の香りはしないらしいから、ごく普通の、ありふれた花火ではない。それでも、花火というだけで、惹かれた。

「気になる香りはあるかい?」

 新しい花火を並べている花火師が、四に尋ねてくる。香りに特に指定はないから、選んでほしいと頼んでみた。

 花火師は店の中をぐるりと見渡し、それから先ほど並べたばかりの花火を渡してくれた。

「これは何の香りなのだ」
「それは後のお楽しみさ」

 微笑む花火師に見送られて、浜辺に向かう。
 そっと火をつけてみると、甘く優しい香りがふわりと漂った。砂糖をほんの少し焦がした、カラメルのような香りだった。

 良い香りだと思う。それに、白銀の火花が次々に弾けていく様子が、暗い夜に浮かび上がっていて、綺麗だ。

 いい買い物をした。そう四は呟いて、火花を見つめる。
 子どもの頃の自分も、ここで花火を眺めているような気がした。

成否

成功


第1章 第5節

佐倉・望乃(p3p010720)
貴方を護る紅薔薇

 波の音が、聞こえていた。

 寄せては返す音に誘われるようにして、夜の海にたどり着いた。昼の海とは違うきらめきは、どこかほたるの光を思わせる。それらを眺めながら、望乃は雨雪に教えられた花火の店に向かった。

 良い香りのする不思議な花火と聞いていたけれど、こんなにたくさんあるなんて。どれにしようか迷っていると、花火師が笑いかけてくれた。

「どんな香りをお探しだい?」

 望乃は少し首を傾げてから、ゆっくりと答えた。

「折角ですので、香りは店主さんにお任せで。わたしをイメージした、素敵な香りの花火をお願いします」

 彼は頷いて、それから望乃の目をじっと見た。そうして彼が渡してくれたのは、可愛らしい装飾のされた花火だった。


 花火は浜辺で静かに楽しむつもりだった。人々の賑わう声から離れて、そっと火をつける。

 ぱちぱちと弾ける火花は、咲いては散っていくのを繰り返している。そして花が咲いた瞬間に、香りが強く漂うのだ。息を吸い込むと、薔薇の香りだと分かった。

 森の中に咲き乱れた薔薇のような、華やかでしとやかな香り。それでいて優しい甘さに包まれていて、思わずほうと息を吐いた。

 彼にとっては、自分はこんな印象だったらしい。嬉しいような、くすぐったいような、そんな気持ちが胸のうちで弾ける。目の前の花火みたいだ。

 こんな「良い香り」が似合う、素敵な自分でいられますように。そう願いながら、望乃は弾ける火花を見つめた。

成否

成功


第1章 第6節

フーガ・リリオ(p3p010595)
君を護る黄金百合

 花火で思い出すのは、王国でのパレードやお祭りで使われるものだ。華やかで、盛大に打ち上げられるものばかりを思い浮かべてしまうせいか、花火で遊んでみようとは思ったことがなかった。折角だ、やってみようか。

 花火師に見守られながらフーガが選んだのは、百合の香りがする花火だ。まだ火をつけてはいないけれど、鼻を近づけると甘い香りを薄っすらと感じ取れる。

 百合の花は、好きだ。花自体ももちろん魅力的なのだが、「リリオ」というのは「百合」という意味があると昔父に聞かされていたり、エンジェルトランペットと呼ばれる花があったりと、自分と百合には何かと縁がある。だから、特別に感じてしまうのだ。

「楽しんできてね」
「ありがとうな」

 とにかく遊んでみようと、海辺で花火に火をつけてみる。途端、百合の濃厚な香りが鼻をくすぐった。

 いくつか買った花火の中でも特に面白いのは、棒から吹き出すような花火だった。火の色が白っぽくて、白百合に見えなくもない。それが楽しくて、無意識に振り回してしまう。

 くるりくるりと回すたび、百合の香りが強く漂う。空に残った光が花びらのように浮かんでは、その形を失っていく。それらに気をとられているうちに、花火を振り回す手が段々と大胆になってきた。

「アッツッ!」

 花は綺麗に咲いたけれど、弾けた火花が身体に当たってしまった。これは気をつけなければと、フーガは苦笑した。

 花火が消えるまで、あと少し。

成否

成功

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