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シナリオ詳細

<潮騒のヴェンタータ>半魚人たちの棲み家

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 シレンツィオリゾートのローレット支部に集うイレギュラーズたちは、いつもよりリゾート感溢れる装いに、南国風のフレッシュジュースを手にしている者たちが多い。
 偶然居合わせた綾辻・愛奈(p3p010320)と劉・雨泽(p3n000218)の手にも果物がふんだんにあしらわれたジュースがあり、「今日の髪型も素敵だね。編み込みをしてからアップにしているのかな?」から始まった会話は先日の教会での仕事へと着地した。
「しかし、何故あのマーフォークは態々崖を登ったのでしょうか……?」
 首を傾げた愛奈に、雨泽は笑みを濃くする。よくぞ聞いてくれました、という顔だ。
「それはね、これのせいだよ」
 袖から何かを抜き取った雨泽の指には、コインらしきものが挟まれていた。このリゾート地で使われるコインでも、他国のコインでもない、知らないコイン。それを手品師のように指の背を渡らせて遊んでから、雨泽は「はい」と愛奈の手のひらに落とした。
「これは……?」
 じっくりと見てみても、やはり解らない。
「それは『竜宮幣(ドラグチップ)』と呼ばれるものだよ。
 あのマーフォークはね、棲み家としている場所からあの付近に流れ着き、それを探していたんだ」
 偶然マーフォークは、あの教会付近でそれを見つけたのだろう。そうして、教会で鐘が鳴らされると結婚式があることを知り、人が集まればまた落ちているかもしれない――人々のキラキラとした装いもそう思わせる一因であったのだろう――と、思ったのだ。
「これが噂の竜宮幣ですか。初めて見ます」

 ――竜宮幣。
 その話を齎したのは、深海の都――『竜宮城』なる場所からやってきた少女だった。
 開拓二周年を迎え、各国の威信をかけたクルーズツアーが始まろうとしていたこの時に、何故かダカヌ海域には未知なる怪物たち『深海魔(ディープ・テラーズ)』が出現し、各国はその驚異を取り払うことができなかった。
 原因も対抗策も解らぬ首脳陣に、深海から訪れた少女は告げた。
 竜宮城に伝わる神器『玉匣(たまくしげ)』をもってすれば、深海魔を追い払うことができる、と。
 ならばそれを使用して欲しい。そう願ったのだが、しかし現在、それは叶わない。玉匣は破壊され、その力が竜宮幣となって周辺の海底や一部の島へと散ってしまっていたのだ。
 再び玉匣を完成させて深海魔を追い払うことが少女の願い。
 そしてそれは各国代表者たちの願いでもあった。
 こうして各国代表者たちはイレギュラーズたちに竜宮幣の回収を依頼した。
 ――されど、ここはリゾート地。困った事態とは言え遊び心は必要であるし、祭りのようになればこの地は賑わう。
 各国はマニフェストを掲げ、どの国が一番集められるかを競いあうのだった。

「『棲み家』とお話をされていましたし、『調べもついた』ということですね?」
「話が早くて助かるよ。また次のが来ても困るから、君たちには彼等の棲み家を潰してきてほしい」
 場所は、『静寂の青』にいくつもある無人島のひとつ。
 小型船で行くことが可能だ。
「それに――彼等が集めた竜宮幣もあるようなんだ」
 竜宮の女王は竜宮幣の場所をなんとなく感知することができる。雨泽が先にそこを調べたために、マーフォークの棲み家だと判明したのだそうだ。
 無人島に向かいマーフォークを倒し、そして家探しをして竜宮幣を回収。「先日の感じから然程強くはないし、君たちには簡単な仕事かな」なんて、雨泽が笑う。
 それじゃあよろしくね――と、しめようとしたところで、何かを思い出したかのように「あ、」と口を開いて。
「海だから、水着がいいと思うよ」
 装備が重いと海に落ちたら大変だし、濡れてしまうのも困るから。
 それから、加護もあるとかないとか?
 乙姫様ってすごいよねぇと笑った雨泽は、水先案内はするからねと垂れ布を揺らすのだった。

GMコメント

 海からごきげんよう、壱花です。
 夏です! 海です! 半魚人です!

●目的
 『深怪魔』マーフォークを倒す

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●フィールド
 『静寂の青』にいくつもある無人島のひとつが今回の舞台です。無人島には船で向かいます。『小型船持ってる! 持っていきたい!』という人がいなければ雨泽が手配して皆さんを島まで連れていきます。船番もします。
 島は切り立った崖のように高くなっており、浜辺はありません。切れ目のような洞窟がポッカリと口を開けていますので、そこが出入り口です。中は薄暗くジメジメとしており、生臭いです。下水道の洞窟バージョンみたいな作りをしています。
 進んでいくとマーフォークたちの居住スペースなのか、複数体のマーフォークたちが居ます。ウロウロしていたり、転がったりしています。主食は生魚な原始的な生活を送っているようです。 
 また、音の出る(モーター等がついた)小型船は侵入前に気付かれている可能性が高いです。その場合は出入り口へと向かって走ってきて遭遇します。

 倒したらマーフォークたちの棲み家の調査をしましょう。
 マーフォークたちは『竜宮の波紋』を集めているので、どこかにあるはずです。

●『深怪魔』マーフォーク×10体
 魚に手足が生えたタイプの魔物です。得物は銛。ギョロリとした大きな目に、ぬるりとてかる気持ち悪い色の鱗を持ち、腐ったような生臭い臭いを発しています。
 水を操ったりしますが、ぬめぬめしています。回避・命中・防御が高めですが、HPはそこまで高くなく、頭もあまりよくないです。

●名声に関する備考
<潮騒のヴェンタータ>では成功時に獲得できる名声が『海洋』と『豊穣』の2つに分割されて取得されます。

●特殊ルール『竜宮の波紋』
 この海域では乙姫メーア・ディーネーによる竜宮の加護をうけ、水着姿のPCは戦闘力を向上させることができます。
 また防具に何をつけていても、イラストかプレイングで指定されていれば水着姿であると判定するものとします。
 拘りの水着である場合は、『水着イラストタイトル』をプレイングで指定してくだされば見に行きます。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

 それでは、素敵なプレイングをお待ちしております。

  • <潮騒のヴェンタータ>半魚人たちの棲み家完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
武器商人(p3p001107)
闇之雲
チェレンチィ(p3p008318)
暗殺流儀
一条 夢心地(p3p008344)
殿
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
パーフェクト・オーダー
綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者
嶺 繧花(p3p010437)
嶺上開花!

リプレイ

●竜宮城? いいえ、無人島です
 白い波を切り裂いて、小型船が大海原を征く。
 悠々と慣れた調子で舵を切るのは大柄のシロクマ――『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)船長だ。彼の持ち船である砕氷戦艦『はくよう』は、船首船底に若干の角度を持たせて氷にのしあげつつ割っていくのが一般的な砕氷船にしては珍しい、所謂ローター式を採用しているらしく、モーター音を響かせている。
「なーっはっはっは! 竜宮城で宴会じゃ~!」
 その音にも負けない声量で、甲板で笑う『殿』一条 夢心地(p3p008344)は、かなりのご機嫌状態。何故なら夏と言えば竜宮城探索だと彼の中では決まっているし、竜宮城とくれば――。
「宴会! 宴会! 宴会! そして……宴会じゃ」
「ご機嫌なところ悪いんだけどねぇ、殿様」
 行き先は竜宮城ではなく、無人島だ。しかも、半魚人が住んでいる。半魚人の見た目は、既に一回会ったことのある『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)と綾辻・愛奈(p3p010320)がよく知っており、豊穣の絵巻物に描かれる乙姫のような美しい存在ではない。
 無人島ではないと『闇之雲』武器商人(p3p001107)に告げられて「なぬ?」と眉を跳ね上げた夢心地であったが、ぽくぽくぽくちーんと少しだけ固まってから「そんなはずはない」と言い切った。
「だって麿聞いたもん。竜宮城へ行くって聞いたもん!!」
 ……誰から?
 そんな夢心地の姿に、船上には笑みが広がった。
 縁も片側の口端を上げ、向かい風に目を細めてから前方へと視線を向けた。
 眼前には夢心地曰く竜宮城――無人島が迫りつつある。
 思い返すのは、つい先日のこと。崖をわざわざ登ってまで結婚式場に執着していたマーフォーク。その狙いが明らかになったことに、縁は成程ねぇとひとりごちた。
「風が強いですね」
「全くだな。……しかし、ここの海は美しいな」
 海の風を、エイヴァンが操縦するはくようが切っていた。飛ばされないようにと赤いハイビスカスを飾った麦わら帽子を押さえた愛菜の隣で、『幻想の勇者』ヲルト・アドバライト(p3p008506)はそっと水着の上に羽織ったパーカーの袖を押さえた。パーカーの下――右腕を覆う包帯の下には、癒えない傷がある。半身とは言え肌を晒せば包帯の隠しようがないため、初めての水着に少し悩んだヲルトは、パーカーを纏うことにしたのだ。
(……潮風が沁みるな)
 口元を少しだけ歪ませるが、まぁいいと切り捨てる。水着を着るだけで加護が得られるのだか、多少のじくりとした痛みなど大した問題ではないのだ。
(ヒカリものに弱いのはヒトも魔物も変わりない、ということなのでしょうか?)
 光り物が好きなのか、それとも何か力を感じているのかは愛菜にはわからない。先日はマーフォークがリゾート地へ迷惑をかけていたが、今回はイレギュラーズたちが棲み家を襲撃する。彼等が集めた竜宮幣を奪うのは半ば押し込み強盗ようのようだとは思うが、海底に棲まう者たちにも、そしてイレギュラーズたちに依頼した各国にとっても必要なのだから致し方ない。
「あれだな。前に着けよう」
「うっ……じめじめして生臭い」
 島をぐるりと回りきることもなく島に亀裂のように走る細い切れ目を見つけたエイヴァンが船を寄せれば、暗い洞窟内から漂ってきた生臭く生暖かい風に思わず『夜を斬る』チェレンチィ(p3p008318)はパーカーの袖で鼻を押さえた。
 ゴツゴツとした岩場の向こうに、ポッカリと口を開けている、小さな闇。外から見通すことは出来ないけれど、生臭い香りが漂ってきていることから間違いないだろう。竜宮幣を集め所持している、マーフォークたちの棲み家だ。
「オラオラーッ! 出て来い半魚人どもー! ヒャッハー!」
 船首で仁王立ちし、全力シャウトするのは『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437) だ。高い位置でひとつに結んだ髪を揺らし、水着の胸の前で腕を組んでいる。
「ヒャッハー……って、中々聞きませんよね」
「一度言ってみたかったんだよねー!」
 一緒にどう? とウィンクを向けられ、チェレンチィも挑戦してみることにした。ここは海上で、リゾート地。仲間以外の人に聞かれはしない。
 皆さんご一緒に。せーのっ、ヒャッハー!(一部の人達は聞こえていない振り)
「麿じゃ~! この麿が来たぞえ~! 大いに喜び歓待せよ~~!!」
 バンバンバンバンバババン!
 派手に手摺を叩いて(エイヴァンに少し顰め面をされても視界に入れすらせず)夢心地も大きな音を立てて、マーフォークたちを呼ぶ。遠くから聞こえてきていた船が近付いてきていることに警戒し、洞窟の出入り口の偵察に来ているであろうマーフォークたちにも届いていることだろう。
 島に入った切れ目のような洞窟の入り口は狭い上に足場が悪い。目を凝らせば、そこに数体のマーフォークが岩陰から警戒心を露わに海を伺っているのが見て取れた。
 棲み家から飛び出してきたマーフォークは、5体と言ったところだろうか。それでも足場が狭いのと足場の悪さに、ザブンと2体が水中に降りた。
「思ったよりも少ないですね?」
「やァやァ、お出迎えご苦労。そして死んでおくれ」
 けれど小さな島だし、こんなものなのだろうか?
 首を傾げるチェレンチィの傍らで、武器商人が不敵に笑う。
「出てきた出てきた! ヒャッハー! さぁ、出すモン出してもらおうかー!」
「わざわざやられに来るなんて、ご苦労な事だ」
 繧花は始終ノリノリで覇竜大陸に流れてきた書物で読んだ世紀末ムーブをかまし、ヲルトは船上から挑発するように見下ろした。その態度に、マーフォークたちもイレギュラーズたちを招かれざる客――明らかに敵意のある者たちだと認識したらしく、ギェエエと叫んで威嚇を返す。互いに言語を理解していたら、罵詈雑言の応酬になっていたかもしれない。
「悪いな、特段お前さん方に恨みがある訳じゃねぇんだが……結婚式の御祝儀を取り立てに来たとでも思っておいてくれや」
「早いとこ仕事を終えてバカンスにでも洒落込みたいんでな、サッサと終わらせてもらおうか」
 水着の上に羽織った着物を縁が船の甲板へと落とし、操縦室から出てきたエイヴァンが掛かってこいと拳を打ち合わせるのに合わせ、水中に降りたマーフォークたちは銛を構えて船上に上がろうとし、イレギュラーズたちもまた船上で迎え撃ち――もしくは岩場へと得物を手に飛び移った。
 ……因みに、ただひとり、未だに竜宮城だと思い込みたい夢心地はと言うと。彼の脳内には絵巻物の内容(テロップ)が流れていた。あれは……あれは、そうだ。鯛や鮃が舞い踊ると言うし、歓待の舞手か海の幸的なものに違いない! 鮟鱇や瘡魚、鬼虎魚に魴鮄。見目は変だが美味なる魚は沢山ある。
「そぉれ、ずんばらり! じゃ!」
 魚は捌けば刺し身である。しかし魚や獣肉は、下手に傷つければ味が落ちる。食べる気満々の夢心地はなるべく傷をつけぬよう、大胆にマーフォークの懐へと飛び込むと素早く三度刀を振るい、豪快に首と手足を切り落とした。
「ヒヒ、殿様絶好調だねぇ」
 武器商人もまた、縁とエイヴァン同様にマーフォークを引き寄せ、集うマーフォークたちを邪を焼く光で愛菜が纏めて焼いた。
「動くな……いや、動くべきじゃない。味方を傷つけたくなければな」
 雷光を放ったヲルトは指先を噛んで、溢れた血を飛ばす。ギィと鳴いたマーフォークは藻掻くように動き――そして仲間へと銛を突き刺した。
 混乱が伝播するかのように、マーフォークたちが叫び合う。
「隙きあり! だよ!」
「うぅ……臭いがすごいですね……でもこれも仕事ですから……」
 その混乱を突くように背中を思いっきり殴りつける繧花。ぬるぬるとした液体が飛び散るのを避けたチェレンチィは出来るだけ触れないように気をつけながら止めを刺す。生臭い血と、マーフォークの操る粘性のある液体が船とイレギュラーズへと掛かるのは避けられない。――エイヴァンはマーフォークを引き寄せながら、竜宮幣探索後は仲間たちに甲板の掃除もしてもらおうと心に誓った。

●洞窟の宝探し
「さァて、後はお宝探しだけだねぇ」
 洞窟奥から飛び出てきたマーフォークを転がし終えた武器商人がアオザイめいた水着の裾を払うと、どろりとした液体が手に付着し、唇を歪めてペペッと手を振り払う。
 仲間たちを見れば、皆同じような状態だ。臭いに鼻は慣れてきてはいるが、戻ったらすぐにシャワーを浴びるか、ひと泳ぎしてから帰りたいところだ。
 けれど今はそれよりも、やることがある。
 各国が、そして深海の都の者たちが探している、竜宮弊の捜索だ。
「まぁ、こういうのはだいたい奥の方にまとめて置いてあるもんだろ」
「大事なモンなら奥の方に隠しておくってのが定石だろうしな」
「ボクも大切な物なら奥かな、と思います」
 転がっているマーフォークの死骸の前にしゃがみこんだエイヴァンが、一応な、とマーフォークを覗き込む。マーフォークたちには装飾品で己を飾るという習慣はないらしく、どの個体もそれらしいものを身に着けてはいなかった。飲み込んでいたら厄介だが――それは、棲み家に見つからなかった時の最終手段として考えよう。
 イレギュラーズたちは互いに同じことを思っていることを確認し合うと、暗い洞窟の奥へと顔を向け、歩み始めようとし――。
「洞窟って聞いてたからね、暗いところでも平気なように――って、うわっ!? 殿、眩しっ!?」
「なーっはっはっは! 麿の必殺技のひとつ、シャイニング夢心地じゃ!」
 ――たところで、夢心地がピカーーーーーっと発光しだした。
 薄暗さに慣れつつあった目には、正直かなり眩しい。実際に繧花がわぁと目を覆っているほどだ。
「あはは、びっくりした。でも助かるよ、ありがとう!」
「者共、麿に着いてくるのじゃ!」
「手が空くのは便利ですね」
 発光する夢心地を先頭に、一行は生臭い臭いに満ち、そして時折ドロッぬめっとした液体のある洞窟を進んでいく。
 洞窟内は中央に水路があり、左右に歩くスペースのある下水道のような作りをしていた。道幅は狭いが奥行きはそれなりにあるようで、ペカーっと光るシャイニング夢心地を持ってしても突き当りの壁はまだ見えなかった。
「うぅ……奥に行けば行くほど臭いが強いですね……」
「奥は行き止まりなのかもしれないな」
 風が吹き抜ける作りでなければ、臭いも籠もるのだろう。
「おぉ、開けた場所がみえてきたのじゃ。ここが宴会場じゃな~!」
 そんな会話をしながら先へと進んでいたイレギュラーズたちであったが――突然岩陰から、光り輝いて目立ちまくっている夢心地へと銛が襲いかかる!

「――ッ、危ない!」

 ――ガキンッ!
 ひとり警戒を絶やさずにいた縁が夢心地を押し退け前に出て、青刀でそれを受けた。返す刃で切り捨てて、どうと倒れたのは、表へ飛び出してきたマーフォークよりも一回り小さな個体であった。幼体か雌なのかもしれない。
 居住空間を除いて、洞窟は広くはない。中央に水も流れているせいで足場も多くはないため、大きな音が聞こえたとて、彼等が一挙に飛び出していく訳がない。最初に見に行ったマーフォークたちが帰ってこなかったため、棲み家に残ったマーフォークたちも警戒しながら出入り口へと向かい――そうして明らかに発光して目立っているイレギュラーズたちを見つけ、奇襲することにしたようだ。
「あなや! 驚いたわい。よくぞ麿を守ってくれた。褒美を取らせようぞ」
 勿論、マーフォークたちから奪った戦利品で。

 一行は警戒をしながら洞窟を進み、棲み家らしき場所にたどり着くまでに計4体を相手にし、棲み家前の最後の守りつに着いていたマーフォークを斬り伏せた。
 どうやらこれ以上は居ないらしく、夢心地が「ここが竜宮城か!?」と騒いでも出てこない。――けれども潜んでいる可能性は拭いきれないため、イレギュラーズたちは警戒を緩めずに探索に当たった。
「めぼしいものがあれば貰っておくが良いぞ。麿が許そう。なーーーっはっはっは!」
「目的のモンを見つけてさっさと撤退しようや」
「賛成です。ボク、長居したくありません……」
 何やら竜宮幣以外にもキラキラとしたものを溜め込んでいるようだが、海藻やら何かの骨やらと一緒にごちゃっと置かれていて、それがまた厭な臭いがする。夢心地は気にせず玉手箱を探す気でいるようだが、チェレンチィと縁は外の青い空と清浄な空気が恋しい。
「……? ドラネコちゃん、何かありましたか?」
 ここ掘れニャンニャンと寝床をひっくり返していたドラネコが何かを見つけたらしい。覗き込んだ愛菜は「あら」と口を開けて。
「ドラネコちゃん、お手柄です」
 猫に小判、ドラネコに竜宮幣。
 ぎゅうっとドラネコを抱きしめ、そうして仲間たちを呼んだ。
 その寝床はマーフォークのリーダーの寝床だったのかもしれない。彼等の一番安全と思う安易な場所に隠されていた竜宮幣をイレギュラーズたちは囲んだ。枚数は、丁度8枚。発見したイレギュラーズたちで分けていいことになっている。
「これが竜宮幣か。こんなものが神器の欠片であると」
 ピンと弾いた貨幣めいたそれは、小さい。ローレットで目にしているから見た目は知っているものの、改めて手にしてみると、そう感じてしまう。こんな小さな貨幣のようなものに、本当に神器の力が宿っているのだろうか、と。
 落ちてくるのをパシリと掴んだヲルトは、そうひとりごちるのだった。

成否

成功

MVP

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍

状態異常

なし

あとがき

警戒されないように静かに行って奇襲を掛けるかと思っていたら、皆さんお元気で楽しかったです。
ですので行動描写が多くなったため、戦闘はさらりと。
あまり強くないので大きな怪我もなくマーフォークたちを殲滅し、竜宮幣を持ち帰っております。

一度は言ってみたいですね、ヒャッハー!
お疲れ様でした、イレギュラーズ。

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