PandoraPartyProject

シナリオ詳細

盗みという名のワイルドカード

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●クラブ・フォーカード
 ピアノミュージックと茜色のランプ。
 氷の溶けたショットグラスの小気味よい音。
 上品なバーの空気には似つかわしくない、ぼろきれをまとった男がカウンターに座った。
 横から滑るように渡された封筒を、グラスの底で乱暴に止める。
 それは写真機を使って撮影された画像シートだった。男はローブの隙間からそれを一瞥して、『ああ』とため息のように呟いた。
「知っているよ。そいつは『クラブ・フォーカード』だ。悪魔だか怪物だかと契約した、薄汚い強盗団さ」
 彼の話を、もう少しばかり聞いてみようではないか。

 クラブ・フォーカードっていうくらいだから四人組さ。
 ポーカーゲームのフォーカードととってもらっていいよ。僕が知ったことじゃあないからね。
 けれどクラブはスートマークのことじゃない、会員制の酒場を指すクラブだ。
 会員制のクラブに集まった連中が自分の利益のために商人を襲わせる。そういう仕組みの上にある――実行部隊ってわけさ。
 なに? 画像には八人写っている? 襲った商馬車の連中をのぞいてかい?
 ああ……そいつらは人間じゃあない。怪物だよ。
 さっき言ったろう?
 奴らは悪魔だか怪物だかと契約した、ってさ。
 よく見てごらんよ、奴らが石像を持っているのがわかるだろう?
 怪物たちとそっくりなやつさ。
 こいつを使って怪物を呼び出して、通りかかる商人や旅人を襲っているってワケさ。
 どんな怪物かって? ああ、見たことがあるよ。
 鋼が人の形をしたようなヤツさ。恐ろしくタフでパワフルで、馬車を軽々と持ち上げて破壊していたね。
 奴らはあの怪物さえあればやりたい放題だと思ってるのさ。

 ……なんだって。
 石像を奪えばいいって? はっはっは! 冗談だろう!?

●シーフ・ワイルドカード
「それが、冗談じゃあないんだよねぇ」
 所変わってギルド・ローレットの一角。
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は肩をすくめてそこまでの経緯を語って聞かせていた。
 誰にかといえば、このたび依頼に応募したイレギュラーズたちにである。
 クワブ・フォーカードの被害にあっている商人ギルドからの捕縛依頼プラスアルファだ。
「前に、貴族の雇った傭兵六人組がフォーカードの連中とやりあったことがあったんだ。
 腕に覚えのある傭兵だったけど、呼び出した怪物とフォーカードたちによって全滅したって話さ。
 今ここに居るメンバーが全力でぶつかれば……うーん、勝てるかもしれないけど、チョット苦労しそうだよね」
 ショウがテーブルに広げて見せたのは、フォーカードたちの住む町の地図だ。それぞれの住居の位置がマーカーで記されている。
 アーベントロート領のスラム街。治安が悪く各家のセキュリティも万全という場所だ。
「彼らの留守を狙って忍び込んで石像を盗み出す。カンタンだろう? ――言葉の上では」

 人家に忍び込んで貴重品を盗み出す。言うは易く行うは難し。
 それも金に換えられない貴重品にして最大のライフラインである。セキュリティはきわめて厳重。
 周辺の家々にはシンパの連中がうろついているので、よそ者を発見すれば警戒を強めてしまうだろう。石像を狙うことがバレれば命を狙われかねない。
 できるだけ人目につかずに移動すること。
 鍵のかかった扉や箱を開けられること。
 できれば罠への対応力も欲しいところだ。
「隙が出来るのは一日限りだ。盗みに入るなら四件同時にこなして貰う。皆で端から順繰りっていうのはナシだ」
 もしこのタイミングで石像を盗み出すことができれば、彼らにとって最大の強みを消し去ったことになる。
「怪物を呼び出せるのは彼らだけだから、他の誰が持っても邪魔な置物にしかならないけれど……『彼らが持っていない』というだけで既に強烈なダメージなるのさ。
 後はカンタン。アジトの酒場に乗り込んで、彼らを倒して連行すればいい」

 予め用意された情報はここまでだ。
「場合によっては、盗みを行なわずに4体の怪物プラスフォーカードを相手に実力行使って手もある。メンバーどうしで話し合って、好きなやり方を見つけてよ。
 依頼主はオーダーさえ完了すればいいって話だから、さ」

GMコメント

 ご機嫌いかがでしょうか、プレイヤーの皆様。
 治安のよい町に住んでいると窃盗というものが遠く感じますが、ところによってはドアに警報装置をつけたり窓に鉄格子をはめたり、ベッドサイドにライフルを置いたりしているそうですね。アーベントロート領のスラム街なんて、その最たるものかもしれません。
 さて、こちらは怪物四体と悪党四人とのバトルシナリオ――に先駆けた、シーフ(泥棒)シナリオです。
 戦う前に敵最大の武器を無力化してしまいましょう!

【成功条件】
 依頼主からのオーダーは以下の二つでございます
・フォーカードの四人を捕縛して引き渡すこと
 →(最悪死んでいても咎めないが、死体をそのまま引き渡すこと)
・怪物の像すべてを引き渡し、破壊すること
 →彼ら以外に使えないとはいえ念のための再発防止策として

【シーフパート】
 このシナリオには、事前にそれぞれの家に忍び込んで最大戦力アイテムを盗み出すパートが存在します。
 長くならないように箇条書きでまとめます。
・チームを最大4つに分けてトライ
 →泥棒が得意な人が少なければ2組(2件)だけトライして後半のバトルパートで頑張るのもアリです。
・事前の情報精度『D』:家の位置情報のみ
 →情報収集や調査プレイングをかけることで精度が増し、当パート内のあらゆる行動の成功判定にボーナスが加わります。
・予測される事態:施錠された扉や箱、警報装置、見張りの存在、周辺に住んでいるシンパたち
・あると便利な技能:泥棒関係、情報収集関係、調査関係、その他意外なあれやこれ

 尚、つかまって突き出されるほどのことがなければ名声値への影響はありません。

【バトルパート】
 後半パート。シーフパートで『怪物の像』をすべて盗み出していた場合はきわめて簡単になります。
 逆に、盗み出せていなければその数に応じて怪物が1体ずつ追加され、戦闘難易度が上がります。
 取り巻きの連中は戦闘力をもたないので、フォーカードさえ片付けばあとは自治に任せて大丈夫でしょう。

・フォーカード:戦闘は怪物任せだったため戦闘力は低め。クラスは4人とも『アウトロー』。
・呼び出された怪物:鋼でできた人型の怪物。HPと物理攻撃が非常に高く、とても厄介。格闘による近接攻撃と、物を投げる遠距離攻撃の二つを使う。

【まとめ】
・調査プレイで情報精度アップが可能
・怪物の像を盗み出すと後半パートがかなり楽に
・盗まなかった像×1体が加わる戦闘で決着

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』と書かれたお客様にはアドリブを多めに、逆に『アドリブなし』とお書きくださればアドリブ控えめで対応できますので、ぜひご活用くださいませ。

  • 盗みという名のワイルドカード完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月25日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ダゴモンド=H=クトゥールフ(p3p000303)
触手紳士
ロク(p3p000306)
紫月・灰人(p3p001126)
お嬢様に会いに
パティ・ポップ(p3p001367)
ドブネズミ行進曲
リリー・プリムローズ(p3p001773)
筋肉信仰者
原田・戟(p3p001994)
祈りの拳
エルヴィール・ツィルニトラ(p3p002885)
銀翼は蒼天に舞う
妖樹(p3p004184)
彷徨う銀狐

リプレイ

●フォーカード・Cと怪物の像
 幻想の北にあるスラム街と呼ばれる土地のひとつ。
 ここには、王都や商人街にはない独特の活気があった。
「うわあ、どいつもこいつもギラギラしてんな。俺、似たようなところ知ってるぜ。どこにでもあるんだなー」
 周囲を見回し、紫月・灰人(p3p001126)はどこか嫌そうな顔をした。
 こっくりと頷くロク(p3p000306)。
 だから俺たちのような人間が必要になる……と言いたげな顔だ。
「とにかく、俺たちの仕事は見張りだ」
「分かってるって。まずはタゴさんの手伝いだろ?」
 どんな環境でも人はアートを好むという。
 それはスラム街の壁に広がるペイントを例にとるまでもなく、超感覚的ななにかをよびさますからだ。
 『触手紳士』ダゴモンド=H=クトゥールフ(p3p000303)の描くペーパーイラストもまた、見る者に複雑な感覚をもたらしていた。
 スラムのストリートを外れた、細道。フォーカードのうち一人の住居があるエリアをふらふらと歩いている。
 何のようだと因縁をつけようとしてくる輩にはイラストを手渡し、自分が絵描きであることを主張していた。
 ダゴモンドの容姿やヌルヌルした触手はともかくとして、描く作品の異様さたるやすさまじく、絡む連中も深く関わるまいと距離を取るほどだった。
 そんな彼が猛威を振るったのは翌日のこと。
 例の名状しがたきイラストをロクや灰人によってばらまかせながら、大声で演説を始めたのだ。
「皆さんご覧ください。触手の美しさを、触手のすばらしさを。肉塊に絡みつく触手、街を飲み込む触手、そして――!」
 前日の内にちょっとした名物と化していたせいか、ダゴモンドへの注目は凄まじかった。
 だがそれだけだ。
 かわった者がかわったことを主張している。ただそれだけ……かに思われた。

「ちゅー、ちゅー、ちゅううう!!」
 道の端っこに手をついて、『ドブネズミ行進曲』パティ・ポップ(p3p001367)がなにかに呼びかけている。
 ぱっとみた限りは服を着たネズミさんだが、身の丈は80センチほど。茶色くて少しごわっとした毛皮が特徴の鼠獣人だった。
 彼女の呼びかけに応じてあちこちからネズミが集まってくる。スラム街だけあって不衛生なのか、ネズミの数もとても多かった。
 パティは持っていたチーズを配ってご機嫌をとると、齧歯類語(と思われるもの)で会話を始めた。
『ある家の情報を教えて欲しいんでちけど、こんな感じの……怪物の像をみなかったでちか?』
 こんな具合でネズミたちとうんうん会話を続けるパティ。
 しばらくチュウチュウやった後、ダゴモンドたちの集めたメモと情報を照らし合わせ……。
「このくらいで充分でちね」
 すっくと立ち上がり、『本業』を開始した。

 パティは器用に窓の鍵を開くと、気配を殺しながらするすると室内へと侵入した。
 メモをちらりと見て、ダゴモンドやネズミさんたちの情報と実際の状態を見比べていく。
 クラブ・フォーカードにはH、C、S、Dと呼ばれる四人がいる。今忍び込んでいるのはCの部屋だ。
 人を警戒して誰も部屋に入れないという噂のあるフォーカードCは部屋の外に関する情報はそれなりに得られたものの内部情報は少なかった。
 それを深く補ったのが、パティのネズミさん情報である。人の侵入を拒んでも、ネズミまでは拒めなかったらしい。
 パティはほどなくして『怪物の像』を発見。台座からそっと持ち出し――た途端、警報装置が鳴り響いた。
「このくらいは想定済みでちよ!」
 パティは入ってきた窓からていやっと飛び出すと、そのまま像をくわえて逃げ出した。

●フォーカード・Dと怪物の像
「あ、なんだいアンタは。ここはDの屋敷だよ。さっさと消えな」
 スラム街にしては妙に綺麗で大きなお屋敷。その門扉に立つ女が、眼前に現われた訪問者に威嚇した。
 訪問者とは、『祈りの拳』原田・戟(p3p001994)である。
 屈強なボディを晒し、無言で立つ男である。
 女は不思議と態度を大きくして、戟を追い払うべく押しのけ……ようとした途端。
「フンッ」
 磨き抜かれたハラパンが炸裂した。
 読者諸兄の中にハラパンマイスターはおられようか。一見ワンパターンと思われがちなハラパンにも種類がある。
 詳しい説明はマイスターに任せるとして、吐くハラパンや気絶するハラパン、痛みにもがくハラパンや黙るパラパンがあることは知っておいてほしい。いややっぱり忘れて欲しい。
 なぜなら戟がかましたのは黙らすハラパン。よい子も悪い子も絶対まねしちゃ行けないパンチだからだ。
「おい貴様、なにをした!」
「…………」
 戟はニチャアっと笑い、背を向け、そして走り出した。
 お腹を押さえてうずくまる女。戟を追いかけて走り出す男。
 そうやってがら空きになった門を、二人の二人の女がこじ開けた。
「我は思うのだ。筋肉は万能であると」
 『筋肉信仰者』リリー・プリムローズ(p3p001773)は南京錠のかかった門を筋肉解錠(ひたすらガッてやるやつ)すると、堂々とした様子で敷地へと入った。
 その後ろにつく『銀翼は蒼天に舞う』エルヴィール・ツィルニトラ(p3p002885)。
「Dと呼ばれるフォーカードのひとり……奴のシンパに説得する際にも、筋肉ひとつあれば事足りた」
 リリーは筋肉説得(『OK?』『OK!』で交わされる筋肉の会話)で得た情報をメモにしたため、ピッと投げた。
「さ、さすがであります! 自分はまだまだで……」
 なんて言いながら、エルヴィールも自分が集めてきた情報のメモを突き出す。
 自分には特別有利な技能がないからとあちこち足を棒にして稼いだ情報である。
 そのかいあってか、リリーのものとあわせてなかなか精度のよい情報が集まっていた。
 そうしたメモを受け取る『彷徨う銀狐』妖樹(p3p004184)。
「まさか、最初の仕事が盗みになるとはね」
 妖樹はそう言って、ギフト能力を展開し始めた。
 他者から自分への感知能力を和らげ、無意識に認識しづらくするというもので、潜入にはうってつけの能力だ。
「まあ、うん。能力的にもいけると思うし、これも仕事だから……」
 頑張ろうかな。
 そう言った頃には、妖樹は既に潜入を終えていた。

 屋敷には魔法による映像記録装置や、感知能力の鋭い見張りがついているという情報がある。
 仕掛けられている罠も多く、隠し扉を使わなければ『怪物の像』にたどり着くことすらできないらしい。
 が、その情報は既に集まっている。
 妖樹は(一応念を入れて)こっそりと屋敷を進み、人目を忍んで隠し部屋へと入った。
 目前に見えるは『怪物の像』。
 しかしこいつを持ち上げると(アナログな)重量感知識の警報器が鳴り響き見張りたちを呼び寄せるという。
 が、そこはそれ。
 妖樹は時計を取り出し、タイミングを待った。
 そう、見張りの交代や移動のパターン上、逃走ルートが確保できるタイミングである。
「今だ――」
 妖樹は、『怪物の像』を掴み取った。

●クラブ・フォーカード
「像が盗まれた!?」
 仮面をつけた人々があつまる会員制の酒場、クラブ・フォーカード。
 その中でもVIP向けの広い部屋で、机を強かにうつ音が響いた。
「あれほど警備を完璧にしろと言って置いただろ!」
「はーあ、あんたたちのせいだからね。アタシの仕事が倍に増えるんだから」
 大柄な男と大きく太った女。二人は自分の像を手に、残る二人を責め立てていた。
 見たとおり、盗まれていない者と盗まれた者の構図である。
「分かってる。どうせ他の奴には使えないんだ。一刻も早く見つけ出して――」
「見つけ出して、どうするって?」
 ばん、と扉が開かれた。
 乱入を許した覚えはないぞと振り返る四人に、見慣れぬ青年――灰人が拳を握って翳した。
「あんたらがフォーカードだな。噂は聞いてるぜ。商売の邪魔になる奴を襲ったり、貴重なものを略奪したり、好き放題らしいな」
「だったらなんだ。お前のようにタテつくやつがいなかったとでも? そいつらはコレを見たら大人しくなったぞ」
 フォーカードのHとSがそれぞれ像を握り、怪物を呼び出した。
 鋼の巨体が室内に現われ、テーブルをパンチで粉砕してみせる。
 飛び散る破片がほほを切るも、灰人は――。
「なら、俺が最初の一人だ」
 殴りかかる怪物。
 灰人はそれを、真正面からパンチで迎撃した。
 拳と拳がぶつかり、衝撃がはしる。
 その隙をつくようにして、残る仲間たちが部屋になだれ込んだ。
「――」
 戟が怪物のわきを抜けるようにして走り、慌てて武器を抜いたDのハラにパンした。
 ダッシュハラパン。それも痛みのハラパンである。
 ぐぎゃあという醜い声をだしてうずくまるD。
 妖樹とパティがここぞとばかりに飛びかかるも、それを遮るように怪物が腕で薙ぎ払いにかかった。
 ぶつかり合いになる妖樹たちと怪物。
 その一方で、ロクとエルヴィールがHへと襲いかかった。
「怪物をひっこめろ」
「誰がひっこめるもんですか。あんたら全員血祭りよ!」
「わかった。それでいい。だが――」
「少し手荒な手段に出であります」
 ロクがHに素早く組み付く。そこへ、エルヴィールがグレートソードによる水平斬り。
 Hの持っていた剣が跳ね飛び、慌てた彼女をロクとエルヴィールが勢いよく組み伏せた。
 もがくHをしっぽで殴りつけ、気絶させるエルヴィール。
 その直後、Hが呼び出した怪物が椅子を豪快に投げつけてきた。
 翼で防御し、再び剣をとるエルヴィール。
「結局怪物とも戦うことになるのでありますね!」
「慌てることはありません。柔軟に対応しましょう」
 ダゴモンドは触手をうねうねとさせると、触手魔術を解き放った。
 戟に襲いかかろうとする怪物を遮るように、魔力の触手を鞭のように叩き付ける。
 のけぞった所にリリーが組み付き、引っこ抜くように持ち上げた。
「フハハハハ、像の通りの怪物だな。我の芸術的に肉体に比べれば路傍の石も同然!」
 壁に頭から叩き付けると、怪物はぼろりと崩れて動かなくなった。
 その一方で、怪物と殴り合っていた灰人がボロボロになりながらも怪物を破壊しきっていた。
 崩壊した鋼の巨体を蹴倒し、口から垂れた血をぬぐう。
「硬いボディだったけどよ、殴りまくったらぶっ壊れたぜ」
「然様!」
 グッとリリーが筋肉を漲らせた。
「いかに強固な壁でも、筋肉を鍛えて殴ることで破壊できる。そなたはどうだ、我の肉体を破壊するほどの筋肉を備えているか!?」
「ぐ、ぐぬう……!」
 頼みの怪物を破壊されたからか、それともリリーの筋肉魔力が働いたのか、フォーカードたちは膝を突いて降伏の意志を示した。
 念のため、降伏した彼らを組み伏せたり縛ったりしておくパティ。
「とりあえず、無事に終わってよかったでち」
「そうだね……」
 こくりと頷く妖樹。
「頼みの兵器も失い、降伏したのです。これ以上奪うこともありませんね」
 ダゴモンドはヌメヌメした触手を満足そうにくねらせた。

●解決
「おお、これが『怪物の像』か……なんと禍々しい」
 依頼主のオーダーはフォーカードの四人と怪物の像を引き渡すことだ。
 イレギュラーズたちは依頼主のもとへ行き、捕縛したフォーカードと共に『怪物の像』を提示した。
「確か、破壊までが依頼内容だったな」
「きっちりと遂行するのであります!」
 ロクが腕組みをして仲間へ行動を促すと、エルヴィールが剣を高く振り上げた。
「これを壊せば、もう怪物が呼び出されることもないんだね。略奪や暗殺もできなくなる」
 妖樹がしげしげと『怪物の像』を眺めている。
 もう壊して良いのかという視線を受けて、パティがこくんと頷いた。
「クラブ・フォーカードも解散でち」
 ぶん、と振り込まれた剣によって『怪物の像』が粉々に砕け散る。
 飛び散った破片を拾って、ダゴモンドは少し考え事をしているようだ。
「皆さん、今回の依頼はどうでしたか?」
「うむ……」
 それまでずっと黙っていた戟が拳を握って翳す。
「拳の渇きが、わずかには潤った。だがまだだ。まだ至高には遠い……」
「わかるぞ。筋肉はいくら鍛えたとて至高とは言えない……」
 へんなところでリリーが同調した。
 ならばと軽くハラパンを繰り出す戟。
 それを腹筋ではねのけるリリー。
 二人はニッと笑い会った。もう二人にしか分からない世界である。
「なるほどな」
 灰人は灰人なりに彼らの考えを察すると、粉々になった像をもういちど見つめた。
「最初は盗みとか情報収集とか俺向きじゃねえと思ってたけどよ……要するにズルして儲ける悪人どもに鉄拳ぶち込む依頼だったわけだよな。そう考えると、なんだか俺らしい気がしてきたぜ」
 うんうんと頷くエルヴィール。
「では、おきまりの台詞を言っておくであります」
 剣をおさめ、ビッと敬礼をした。
「これにて一件落着!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お帰りなさいませ、イレギュラーズの皆様。
いくら強力なアイテムを持っていても、事前に盗み取られてしまっては意味が無いものですね。
皆さんの個性や技能をいかした活躍、とっても素敵でした。
また次の依頼でお会いしましょう。ごきげんよう!

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