シナリオ詳細
Lonely Ghost Boy
オープニング
●暇なのも困りもの
「あ~、人間があまりにもこなさ過ぎて暇すぎるよぉ~」
森の奥の古ぼけた洋館で、一人……というのが正しいのかは微妙なところだが、体の透けた少年の幽霊がぼやく。
せわしなく鳴き続ける蝉の声がうるさいこの夏の季節でも、鬱蒼と茂っている木々のおかげでできた木陰と陰気な雰囲気も相まってここには人っ子一人来ないのだ。
たまに夜中に若い不良たちが現れては肝試しをしていくが、彼を見ると幽霊が出たということで一目散に逃げて行ってしまう。人間側の反応としては至極自然なものであるが、友達ができる間もなく幼くして亡くなってしまった彼にとってそれはあまりにも悲しいものだ。
「うん、わかるよ、そりゃボクだって生きてた頃はお化けとか怖かったし何なら怖すぎておねしょしちゃったこともあったよ。けどさぁ、いくら何でもそんな急に悲鳴を上げてダッシュすることもないよね」
一人でハハハと笑って見せるが、その顔はとても寂し気で。彼以外に誰もいない洋館で、ぽつりと胸の内を零す。
「ボクだって友達ほしかったなぁ……お空の上に行くにもタイミングを逃しちゃったし、定期的に遊びに来てくれる人がいれば、寂しくないしとても楽しいのになぁ」
うっそうとした森の中を、生温い風が吹く。彼の寂しさをごまかすように、窓からの隙間風がそっと彼の頬を撫でた。
●独りぼっちは、寂しいから
「まぁ、一人ぼっちでしかもそこから動けないんじゃ、退屈すぎて時間を持て余すことにはなるよね」
そりゃそうだ、とカストルは読んでいた本をぱたりと閉じてイレギュラーズを見回す。
本を戸棚にしまい込み、彼は説明を続ける。
「今回端的に君たちにやってほしいのは、お化け退治じゃなんだ。むしろ、友達になってあげてほしくてね……おっと、一緒にあの世に連れて行こうとしてるだなんてそんなことはないから、そこについては心配しないで。彼はただ、友達が欲しいだけなんだ」
カストル自信、ここから動くというわけにもいかないのでイレギュラーズに友達になってほしいといういわば「子守り」を頼んだということだ。
「まぁ、そんなに難しく考えることはないさ。普通の人間の男の子と遊んでくる……そのくらいの気持ちで臨んでくれれば問題ない。それじゃあ頼んだよ」
一瞬、生温い風が、こちらにも吹いてきたような気がした。
- Lonely Ghost Boy完了
- NM名水野弥生
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年07月21日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
●遊びの時間
「オマエさん、俺と似たようなトコに住んでンだなァ。違うのは、オマエさんは此処に一人きり。外にも出られねェってことか。」
少年を目の前に、『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)は少年の目線に合わせてしゃがむ。同じ幽霊仲間として、親近感がわいているのだろう。
幽霊と言えば、常に頭の中がハロウィンのことでいっぱいな『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)も、優しく少年に声をかけた。
「坊や、お名前は?」
「僕はね、レイだよ! あ、幽霊のレイとかそういうギャグはよしてよね!」
そうおちゃらけて笑った少年を、マリカはまっすぐ見つめる。
「そうか、レイくんか、よろしくね♪」
そんな優しいお兄さんお姉さんのやり取りを、少し離れたところから見守るのは『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)と『静観の蝶』アルチェロ=ナタリー=バレーヌ(p3p001584)だ。
「今回の仕事はぼっちの相手をするだけでいい訳だな」
「それでも……永い独りは寂しい。私はそれをよく知っているわ。だからこそ、坊やの為にも、出来うる限りのことをしたいと思うの」
「寂しい、か。人によって感じ方は違うんだろうな。まあ、ぼっち歴なら結構長いし、それを相手にするのも既に何回も経験しているから大船に乗ったつもりでいてくれ」
「大船って……」
悠久の時を生きてきたアルチェロと彼女から見れば断然若造とも言える世界とでは、感じ方も違うらしい。その違いが面白いのか、彼女からは思わずふふっと笑いが零れた。
「ところでオマエさん、やりてぇことはあるか?」
「やりたいこと? えーっとねぇ……」
うーんと、自分が生前やりたかったことに、レイは思いを馳せる。
「かくれんぼしたい!」
「かくれんぼか! 良いね!」
「良いじゃねぇか。隠れるなら館中に響くような声で呼び回りながら探してやるぜぇ」
かくれんぼの要望に二つ返事で答えるお兄さんお姉さん’sを前に、世界は驚いた顔をしている。
「かくれんぼや鬼ごっこで遊ぶのか? いつもと同じように俺の巡って来た数々の異世界の話を、と思ったんだが」
遊びたいと言っているのであれば遊ばないことには始まらない。小さく一つ息をつき、それならばと言葉をつづけた。
「人数が少ないと味気ないだろうし、俺も参加してやろう。」
「ほかの坊やたちが遊んでくれるようなら、私は遊び終わった坊やたちのお話を聴きましょう。楽しんでるのを見守るのも、『おばあちゃん』というものよ」
アルチェロは3人に微笑むと、ゆったりとした所作で古ぼけた椅子に腰かけた。
「ねぇ、ちょっといいかな? かくれんぼや他の遊びでもそうなんだけど」
マリカはレイにちょっと待ってねと言うと、クウハと世界に手招きして聞こえないように耳打ちする。
「レイ君に関しては手加減、ね! ……ただしあなたたには手加減はしないつもりだけど♪」
「おぉ、言ってくれるじゃあねぇか。だったら嬢ちゃんはすぐにでも見つけてやらぁ」
「……手加減は良いが何をこいつら張り合ってんの?」
「まあそれも、若さってことじゃないかしら」
なぜかバチバチと火花を散らしている2人に、世界は少し困惑している。そんな世界を見てアルチェロは若人たちを見守るように微笑んでいる。
「ねぇねぇ! はやくあそぼーよー!!」
待ちきれないといった様子で、レイは三人の方に駆け寄ってきた。
あぁ、ごめんねぇ、とマリカがレイの頭を撫でたところで四人でじゃんけん。
──最初はグー、じゃんけんぽん!
一斉に手を出した結果、クウハとマリカがグー、世界とレイがチョキという結果に。
「なぁ、最初の鬼は俺とレイの2人でやらないか? 何をするにしても話す相手がいた方が面白いだろ?」
見当違いの方向を探す鬼の姿に微笑んだり、逆に鬼が近づいてきたときにドキドキしたり、そういう気持ちの共有ってのは一人では絶対に体験できない故、貴重な経験になるだろうという世界の思惑を二人はくみ取ったのだろう。
「良いよ!ハロウィンパーティーは楽しいほうが絶対いいからね! まあイレギュラーズのあなたには手加減しないけど☆」
「さっきも言ってたけど俺達に本気かよ!」
「ケケケ、坊ちゃんもいることだしよォ、楽しんでいこうぜェ!」
言いあって、クウハとマリカは隠れ場所を探し始めた。
「……9、10! もういいかーい?」
「もういいよー」
レイの声掛けを合図に、二人の声が聞こえた。彼は世界の袖を引っ張ると、楽し気に屋敷を駆け回る。
「ただでさえ古いんだからこけるんじゃねぇぞ」
隠れた二人を探す鬼として、子供を見守るお兄さんとして、世界は優しくレイを見守っている。
それからレイはいろいろなところを探した。ダイニングの椅子の下から寝室のベッドの埃だらけのシーツの中。屋敷自体は広いので、少し探すのに手間取っているらしい。
「よし、それなら、子ども部屋に行ってみよう。あそこなら、隠れられる場所も沢山あるだろ?」
半べそをかき始めていたレイは、世界の提案にうん、と力強く頷いた。
一方そのころ、子ども部屋。
驚くことかもしれないが、2人とも同じ部屋に隠れていた。
クウハは、学習机の陰に、そしてマリカはクローゼットの中に。
「嬢ちゃん、なんで同じ部屋に隠れようと思ったんだよ」
「そりゃぁ……あの子と一緒に行動するなら、そりゃあ分かりやす方が良いんじゃないかなって☆」
「ハハハ、違いねぇや」
二人ニヤリと笑いあうと、それじゃあと各々の場所に隠れる。
そうこうしているうちに、ガチャリと子供部屋の扉が開いた。
「あと探してないのはここだけなんだけどなぁ」
「そうだな。それこそ、机の影とかクローゼットの中とか探してみればいいんじゃないか」
「うん!」
勢いよく扉を開ければ、マリカが「あらら」という表情で舌を出す。
それと同時に見つかったのが面白かったのか、クウハも少し笑い声が漏れて芋づる式に見つかっていく。
かくれんぼで見つけたことでご満悦という様子でレイは次に「鬼ごっこしようよ」とせがんだ。
鬼ごっことなれば、人数が正義。マリカと世界は精霊を召喚して遊ぶ人数を増やす。
「おいおい嬢ちゃんも兄ちゃんも、そりゃあ大人げないっていもんじゃね?」
「うるせぇ、何とでも言え。鬼になって良かった経験が一度もねえんだよ」
「それにぃ、お友達もいるし? あなたたちには悪戯しちゃおうってね」
それからというもの、普段人気のない怪しい屋敷の中には、楽しげな声が響く。
「先に逃げていいぜェ、捕まえてやるからよォ」
「あー、ったく、こういうのは得意じゃないんだよなぁ」
「あははっ、『お友達』も一緒に遊べて楽しいみたいだよ!」
鬼ごっこに、今度は隠れる側でやりたいとせがまれたかくれんぼに、ひとしきり遊んだ少年は満足げな顔をしていた。
●沢山の話したいこと
ワイワイと沢山騒いで遊んだこともあり、息を弾ませながら4人はアルチェロのもとに戻ってきた。
どうだったかい、と水出ししておいた紅茶を用意して皆をにこやかに迎えた。
「沢山遊べて楽しかったよ!」
「そうかい、それはよかったねぇ」
あのさ、とレイは嬉しさの中に今までの寂しさが少し滲んだような曇った表情を浮かべた。
「今まで、こうやって遊んでくれる人なかなかいなかったから、さ。また、遊んでくれるかなって」
少しの間、沈黙が包み込む。十数秒後に、ねぇ、とマリカが声を発した。
「あなた、アイスクリームは好き?」
「うん、大好き!」
「そう……でもね、溶けないアイスクリームは腐らない。腐らないけど風味は落ちる。永遠に冷たいアイスクリームも、いずれは己が行く末を決断しなきゃ……ね♪」
「うーん、よくわかんないよ」
「今はわからなくても、坊やがどうしたいかってことね」
「そういうこと♪ここから先はあなたの選ぶ道。でも『お友達』にならなくとも、マリカちゃんとはもう“お友達”♪」
自分が次の一歩を進むのか、このままここに留まるのか……それはレイ自身の選択。幼い彼にもそれが伝わればいいのだが、まだ少し難しいのかもしれない。
それでも、今目の前にいる友達は、彼にとってはとても大きな存在であることに違いない。
「まぁただ、オマエさんも辛かったろ。理解のない人間共は困るよなァ。ただ幽霊っていうだけでギャーギャー騒いで逃げ出しやがる。そういう非日常を求めて肝試しに来やがるくせによ。根性無したァ、あの事だゼ。」
クウハからしたら面白おかしいことであっても、レイにとってはそうでなかったことは彼にもわかっている。
これからも来てやるからよと口角を上げると、クウハはレイの頭をポンポンと撫でた。
「それから……お茶、坊やの分もあるからね」
「え、でも」
ボク、幽霊だよ、という言葉を受け止めたうえで、アルチェロはつづけた。
「一緒にお話ししたいからっていう気持ちよ。たとえ坊やにそれが必要なかったとしても、ね」
一瞬で、ぱぁっとレイの顔が明るくなる。
「嬉しいと思ってもらえたのなら何よりだわ。おばあちゃんはね、坊やたちのお話を聞くのが大好きなのよ」
「ありがとう……また会いに来てくれる?」
「えぇ、坊やが望むなら、いつでもね」
温かいやり取りを横目に、世界は少し面倒だなと思いながらも一つ溜息をついた。
それでも、楽しくなかったかと言われればそうでもないらしい。まぁ良いかと一つ溜息をついた。
「まあ俺は色々な世界を調べて回ってるし、ここも調べるついでに坊ちゃんの所に寄るくらいなら別に構わないがな。定期的にっていうのは難しいかもしれないが」
楽しく和やかな時間が流れていく。
初めての遊び、初めてのお話、そして──初めての、友達。
またいつかお話ししよう。そんな約束をする「坊やたち」を、おばあちゃんとして、そして永い時を生きてきた者としてアルチェロは目を細めて眺めていた。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
おはようございますこんにちはこんばんは、水野弥生です。
大人になった今でも友達はたくさんほしいですし、子どもならなおのことだと思う今日この頃です。
イレギュラーズの皆さんはどうですか?
……それでは、今回のシナリオの概要です。
●舞台は?
どこにでもありそうな鬱蒼とした森の中にある洋館です。
洋館そのものは結構広く、外遊びができる程度の広さの庭もあります。
ただし人が住まなくなってから時間がかなり立っているので、洋館内で走り回ると床が抜けてしまうかもしれません。走り回るならお庭にしておきましょう。
●目標
幽霊少年とお友達になって遊びましょう。
●幽霊少年について
9~10歳くらいの、身なりの整った金持ちのお坊ちゃまです。
ちなみに金髪碧眼の美少年です。
彼自身はいろいろな遊びに興味津々ですが、病弱だったため友達もおらずめいいっぱい遊ぶことももなく亡くなりました。
年相応に明るくお調子者として振舞いますが、やはり寂しがりな所はあるようです。
●その他
少年は幽霊ですが、あまりにもこの洋館に地縛霊としていた期間が長すぎて、体が透けて影がないという点以外は普通の人間と同じようにものを持つことができます。
ちなみに、体に触れるとそこはやはりなくなっているので、生きているときの人肌のぬくもりはありません。
●サンプルプレイング
「ずっと一人ぼっちでそこから出られないのは寂しいよね。
そうだ、せっかくだから外にでて鬼ごっこでもしてみようか。
逃げ回っていい範囲は、このお庭の部分だけね!」
「幽霊なんて得意じゃないんだけどな。まぁ子守り位ならやってもいいだろう。
……おう、坊主、とりあえずババ抜きでもやろうか」
●というわけで
子どもが好きな方、幽霊と触れ合ってみたい方などなど……
皆様のご参加を心よりお待ちしております!
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