PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夏と祭りと短冊と

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●縁日
 昼の日差しの痛さが和らぐ夕暮れ時。
 風が吹き始めれば汗ばんだ首筋を少しだけ涼しくしてくれる、そんな季節。
 とある世界の小さな田舎町の少し大きな神社で、この日は縁日が行われている。
「いらっしゃい! 焼きそばでもどうだい?」
「縁日限定の金魚すくいでーす! いかがでしょうかー」
「おっ、坊ちゃん、鉄砲でも撃って行くか? 倒した景品は、全部持って行っていいぞ!」
 年一度の夏祭りに、屋台を出している地元の人達のやる気もひとしお。活気のある声が神社のいたるところで聞こえてくる。
 この祭りを楽しむのは、主催側だけではない。勿論遊びに来ている人間たちも同じことだ。赤、白、青……色とりどりの浴衣を着た女性たちや夏らしい涼しげな格好をした男性、老若男女が楽しそうに縁日を見て回っている。
 そんな縁日だが、ちょっとしたイベントが存在する。
 ──短冊に願いを書いて笹に飾る、「七夕イベント」だ。
「宝籤が当たりますように」という平凡な願いから「世界を制する王になるのだ」というちょっと痛々しい願い事まで、思い思いの願いが笹を彩っていく。

 そしてこの神社、いわゆるパワースポットでもあり、こんなジンクスがある。

「七夕の縁日の願い事は、神様がしっかり見ていてくれて必ず叶う」

 嘘か本当かはわからないが、そんなジンクスを信じる人は多い。
 ……叶うとしても、常識的な範疇だろうが、それでも。

 ──願うだけなら、自由なのだから。

●願掛け
「お祭りってとても楽しいわ。普段やってないことに飛び込んでみるのって、改めて考えると新鮮よね」
 ポルックスはにこりと笑うと、少し熱いのか手をパタパタさせて顔の近くを仰いでいる。
「暑い夏だからこそ、風が吹く時間なら涼しく楽しめるし、何よりも短冊に熱い思いを託してみてもいいんじゃないかしら? ……あ、そうそう。今回は浴衣を着て行ってもいいし、持ってないっていう人は浴衣の貸し出しサービスもあるから借りてみてもいいかも。勿論、いつも通りの服装ならそれはそれでいいと思うし。」
 夏の始まりの夕涼み。扉を開けばチリンと、夏らしい風鈴の音が聞こえた気がした。

NMコメント


おはようございますこんにちはこんばんは。
水野弥生です。
もうすぐみずゆかが来ますね。
今回はその「浴衣」を着て回れるようなお話をご用意しました。勿論浴衣を発注してないよという方もぜひ楽しんでいただければ嬉しいです。

●舞台は?
 現代日本の小さな田舎町にある少し大きい神社です。
 この日、ここで縁日兼七夕まつりが行われています。

●目標
 夏祭りを楽しもう

●出来る事
 ・縁日を楽しむ
  →食べ歩きしてもよし、ゲームを楽しんでもよし。
   基本的に夏祭りにありそうなものならどんな屋台を用意していただいてもOKです。
 ・短冊への願掛け
  →お願い事を書いて願掛けをしましょう。モノによっては叶うかもしれません。
   ただし、黒歴史的な内容を書けば、一週間ほど神社に飾られるのでご注意ください

●サンプルプレイング
「じゃ、今回は金魚すくいに挑戦してみようか。
 ……あっ、くっそ、金魚の奴めっちゃ逃げるじゃん! 悔しい……!
 よーし!もう一回!」

「七夕のお願いかぁ。うーん、いざお願いって言われても迷っちゃうんだよね。
 どうしようかなぁ……そうだ! こうしよう。
 『イレギュラーズのみんなが、いつまでも元気でいてくれますように』
 うん。みんなとはいつまでも一緒にいたいから、ね」

●というわけで
 縁日や七夕、楽しんでいただければ幸いです。
 皆様のご参加を心よりお待ちしています!

  • 夏と祭りと短冊と完了
  • NM名水野弥生
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年07月14日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者
フーガ・リリオ(p3p010595)
青薔薇救護隊
雑賀 千代(p3p010694)
立派な姫騎士
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい

リプレイ

●たとえそれが仮初でも

 縁日が行われている神社の境内に降り立った綾辻・愛奈(p3p010320)は目の前に広がる景色をハッとしたように見つめる。
 ──知っている。私はこの世界を「知っている」。
 屋台から漂う焼きそばの香りに、忙しそうに境内を駆け回る法被を着た男たち、そして思い思いの願いを語らう楽しげな声。
「半ば諦めていましたが、仮初とは言え「故郷」の地を踏めるとは」
 二度と見ることはできないと思っていた故郷とよく似た風景を前に、思わず目頭が熱くなる。
 それに気づいてか、「いけない」と一つ深呼吸をして、この祭りを楽しむべく肩の力を抜く。
 幼いころを思い出したのか、人込みを眺めながら自分の知る縁日の記憶がふと蘇ってきた。
「子供の頃、祖父に連れられてお祭りに来たことはあります……迷子になった挙句、他の親子連れが羨ましくなって悲しくなった記憶がありますね……」
 ──両親の代わりに自分を育ててくれた祖父。そのあと迎えに来てくれたのはいいものの、勝手に逸れるんじゃないと叱られましたっけ。
 そんな懐かしさと過去に思いを馳せながら、せっかくだからと彼女は浴衣の貸出コーナーへと歩いていく。
 色とりどりの浴衣の中で彼女の目を引いたのは、青い生地をベースにゆらゆらと水面を漂う赤い金魚があしらわれたシンプルな浴衣。
 色味とモチーフも相まって、多少マシとはいえまだ暑い夏の夕暮れ時に清涼感を足してくれる。帯もまた赤色で飾り紐には真珠があしらわれており、本当にきれいな水の中にいる金魚のようだ。
「すごーい! 本当によくお似合いですよ!」
 長い髪を一つに束ね、くるりと団扇をもって回ってみれば、浴衣美人の出来上がり。クォーターとはいえ、現代日本に育ったこともありその浴衣姿はとても様になっている。

 着付けを終え、改めて縁日を見渡すとふと射的の店が目に入った。
「おや、射的。こういうのは乗ったもの勝ちでしょう。おじさん、一回挑戦で。」
 5発ど渡されたコルクの弾を詰めて、まずは目の前の駄菓子に向かって1発撃ってみる。
 パン、と乾いた小気味いい音が響くが、弾は少し軌道からそれている。
「おじさん、これちゃんと整備してますか? ほらこれ、バレルが歪んで」
 説明する愛奈の顔を、怪訝な顔をして店主が見ている。それに気づいた愛奈は思わず口を噤む。
(これは玩具のコルク銃。私の「猟犬」とは何もかも違うもの……だというのに、私の感覚はもはやイレギュラーズのそれになっている)
 2発目の弾を籠め、今度は後ろの棚の招き猫を狙う。
 無意識のうちに弾道を計算したのか、今度は眉間に見事命中。嬉しいことではあるのだが。
(――私は、もうこの世界においては異邦人なのですね――)
 イレギュラーズとしての自分は、かつての自分とは違う自分なのかもしれない。
 ニマリと笑う招き猫を抱きかかえ、愛奈は店を後にした。

 しばらく境内の中を見て回っただろうか。
 七夕祭りの短冊コーナーでは、緑色の笹の葉に色とりどりの短冊が飾られ、風に靡いている。
「嗚呼、七夕でしたね……」
 そう零すと短冊コーナーに向かい、青い短冊を手に取った。機織り名人の織姫にあやかって願掛けをしたのが切っ掛け。
 であれば、と彼女がさらさらと書いた願いは。

『航空猟兵の皆が長く元気でありますように』

 物欲というより、自分のこれからを。
 彼らの怪我は私が治しましょう。
 そう笑った彼女は、裏にも書けますねともう一つの願いを短冊の裏に込めていく。

『私の友人達に幸有れ』

 仮初の故郷ではもう異邦人でも、前に進んでいくしかない。
 ──彼女には、それ以上に大事にしたい仲間がいるのだから。

●縁
「なんだ、兄ちゃん1人かよ?」
「へへ…こんなふらふらとした男に声をかけるなんざ親切だな?」
 口角を釣り上げると、『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)は『黄金の旋律』フーガ・リリオ(p3p010595)の肩をがっしりと掴む。
 フーガは悪くないといった顔でクウハを見遣った。
「そういう俺様も1人だけどなァ! ま、こういうのは連れ立って回ったほうが面白ェもんだ」
「そうだな、おいらの国にはなかった文化だから、エンニチのことを知らない。是非とも一緒にいて教えてもらえると心強いぜ」
 ──おう、縁日の楽しみ方ってヤツを教えてやるサァ!
 まったくの初対面の二人はなぜか意気投合。楽しい楽しい縁日巡りの始まりだ。
 
 まず2人の目に入ったのは、フルーツ飴の屋台だった。
 果物の爽やかさと砂糖が溶けた香り、そして宝玉のように真っ赤なりんご飴が、何となく2人の興味を引いた。
「すっげえ……真っ赤な艶の塊……!」
「あれは林檎飴ってんだ。林檎に飴が掛かってる。」
「へえ、林檎飴というのか。林檎丸ごと飴にかけるってすげえよな」
「甘くて美味いぜ。試してみるか? 苺飴っていうのもあるぞ。そっちも似た様なもんだ」
 クウハは林檎飴と苺飴の両方の代金を支払うと、普段の悪戯を仕掛けるときとは違った笑みを浮かべている。
「俺は甘党だからよォ、こういうのかなり好きなんだわ」
「苺もあるのか…へえ、アンタも甘党か。おいらもなんだ…林檎飴、苺飴一本ずつ食ってみるか」
 クウハに続いて、フウガも同じものを購入。二人同時に飴を口の中に入れてみれば、べっこう飴のような甘みと、林檎や苺の果物の酸味が口の中に広がる。
「おぉっ、こりゃいいな!」
「だろォ、縁日限定ってやつサァ」
 初めて食べるフルーツ飴に、フウガは大満足。クウハも縁日だけの甘味を楽しんでいる。

 次に二人が向かうのは射的屋。
 使っているのはもちろん玩具の銃なのだが、フウガの顔には困惑が見えた。
「鉄砲…あれ、一般市民が持ってても大丈夫なのか?」
「ん? あぁ、射的は見て分かる通り、銃で景品狙い撃って落とす遊びサ。弾は大体コルクだから、安全仕様だぜ。そこは安心してくれや」
 そういうことなら安心、フウガがほっと胸を撫で下ろす。
 ちょっとやっていこうぜと、クウハは笑って射的の弾を籠め始める。
「景品全部奪い取って店主泣かせてやろうや! ケッケッケ!」
 悪戯に関しては気合十分。乾いたパンッと乾いた音が響くと、真ん中の段のちょっとした知育玩具の箱を倒していく。
「へへ、アンタ随分と意地悪いことを考えるなあ……が、好きだぜそういうとこ」
 フウガもそれに続いて鉄砲を撃つ。狙ったのは小さなウサギのぬいぐるみ。正確にの重心をとらえた一発は、後ろに控えていた大きなクマぬいぐるみまで撃ち落としている。
「おいらはこう見えて衛兵だ。基本的な射撃訓練ぐらいはしてる」
「オイオイ! 俺様もそれなりに得意だが、オマエさん衛兵か!」
 クウハは腹を抱えてひとしきり笑った後、そりゃぁいい、とフウガに笑いかけた。
「店主さんにはすまないが……おいら達が客だったこと、不幸だと思うんだな」
「あァ、可哀想になァ〜」
 小気味よく響く、ちゃちな銃声。その後店主の悲壮感漂う泣き声が聞こえてきたのは言うまでもない。

 射的で気分が良くなって今度は水槽を漂う金魚がフウガの目に入ったようだ。
「金魚救いが気になるか? ポイで金魚を掬うんだが……コイツはちと難しい」
「へえ、『金魚』というのか。ポイ……なんか網っぽいので掬うんだな……」
「試しにやってみな! どれだけ救ってやれるか、お手並み拝見だ。 金魚掬いだけになァ!」
 クウハのおやじギャグをよそに、受け取ったポイで金魚を掬おうとする。
 素直にスプーンですくうように持ち上げたポイは、金魚の重みですぐに破れてしまう。
「ハ? 掬った途端に破れた? なんだこりゃ、ぼったくりじゃねえの? ……いや、他のやつがやっているのをみる限りコツがいるみたいか」
「ケケケッ! 裏表を交互に使うとか、斜めにポイを引き上げるとか、これには色々コツがあるのさ」
「なるほど……やっているのを見ながらどうにかコツ掴んで、一匹でも良いから掬ってみるぞ」
「良いんじゃねぇの? 大きい金魚を狙わない、ってのもコツの一つだが……ここで敢えて俺様は大物を狙わせて貰うとするゼ!」
 大の男二人で、夢中になっての金魚掬い。その表情は真剣そのものだ。

 本気を出してようやく大小一匹ずつ金魚を掬いあげたところで、2人は短冊コーナーへ向かう。
 突然願い事と言われてもパっと浮かばないのか、うーんと、頭を悩ませる。
 そんな2人のたどり着いた願いは──
「願い事なんざ特にねェが、『面白おかしく過ごせます様に』とでも書いとくか!」
 まぁ、こんなものに頼らなくともクウハは勝手にそうするのだろうが。
「おいらは『平和でありますように』だな。なにしたって平和が一番だ。ゆっくり昼寝もできるからなあ」
「あぁ? のんびりかよォ」
「そっちもマイペースじゃないか」
 言い合うと二人は一瞬の沈黙の後、何かが可笑しくなって互いに笑い合う。
 ひとしきり笑ったあと、クウハはフウガに切り出した。
「なァ、フーガ。俺とオマエさんは中々気が合うんじゃねーか? これからもちょくちょく遊ぼうや。こういう縁も悪くねェだろ?」
 ニッと笑いながら、クウハはフウガに手を差し出した。フウガが彼の手を握ればひやりとした冷たさが走るが、それでもフウガは笑っている。
「おいらも、なんとなく思ったよ。おいらとアンタ、一見違うようで似てるとこもある……って。次の朝を迎えても、アンタとの縁がそのままであることを祈る」
 初対面から始まった、よくわからない関係。
 よくわからないからこそ、これから紡がれていく。それこそ「縁」というものだ。

成否

成功

状態異常

なし

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