シナリオ詳細
<チェチェロの夢へ>星霜戦域のせんそうごっこ
オープニング
●ずっとずっと戦争ごっこ
アーカーシュの空の上。ウェッジ・ガーデンと名付けられたその空域は、神翼獣ハイペリオンとローレットが力を合わせたことで到達できた未知の領域であった。
その領域には無数の精霊達が暮らし、元々アーカーシュの機能の一部であった彼らはアーカーシュ停止と共にいわゆる漏電状態にあったという。
いったい何年、何十年、あるいは何百何千年そうしていたのかはわからないが、気が遠くなるほど放置された精霊たちは怒りの因子に満たされ、荒れ狂う精霊へと変化してしまっていた。
そんな中での、おはなし。
「今日は暑い日にするべきよ!」
「いいえ、寒い日がいいに決まってます!」
燃えるプロミネンスのような髪をした精霊と、ふんわり積もった雪のような髪をした精霊が向き合い、ムーッと頬をふくらませると互いにぷいっと顔をそむけあった。
「どうしても譲らないのね?」
「そっちこそ。わからずやなんですから」
二人は飛行し大きく距離をはなすと、それを守るように無数の低位精霊たちが出現した。
かたや、小さなぬいぐるみのような、火の玉からかろうじて手足が生えたような造形の精霊たち。
かたや、雪ダルマに手足がはえたような造形の精霊たち。
彼らは敵意をむき出しにすると、「「こうなったら戦争!」」という精霊の声と共にぶつかり合った。
ここは『星霜戦域』。
気の遠くなるほど昔から、ずっとずっと精霊どうしが戦争ごっこを続ける領域である。
●空の天気は気まぐれ
「本当にそんな場所があったのですね」
なるほどなるほど……とハンモックでお昼寝していた『神翼獣』ハイペリオン(p3n000211)がゆーらゆーらされたまま言った。
大きなドラネコさんのぬいぐるみを抱っこしてこくこくと頷くユーフォニー(p3p010323)。
「なんだか、今日の天気を暑くするか寒くするかでずっと喧嘩してるみたいで……。喧嘩は良くないですよって言ってみたんですけど、聞く耳をもってくれないんです」
しょんぼりとした様子のユーフォニーに、ハイペリオンはむくりと起き上がって翼を広げた。
それだけでハイペリオンの身体はふわりと浮きあがり、ユーフォニーの抱いていたドラネコさんのぬいぐるみも浮かび上がった。彼女の媒体飛行能力にハイペリオンの加護が与えられたのだろう。この加護があれば、簡易的な飛行能力でも通常の飛行と同等の戦闘機動をとることができる。
一緒に行きましょうとばかりに空中旋回するハイペリオン。ユーフォニーは頷き、『星霜戦域』への案内を始めた。
「アイルさんに聞きました。アーカーシュは練達のように天候を操作する機能がかつては存在していたようです。熱気と冷気の中位精霊と永続的な契約をして、求めた気温になるようにそれぞれの力を行使してもらうというしくみでしたが……」
「あっ……。アーカーシュが止まってしまったから、今日は何度にしたらいいか分からなくなっちゃったんですね」
ユーフォニーの頭の中で、エアコンのリモコン権を巡って取っ組み合うひとたちの様子が思い描かれていた。当たらずとも遠からずというか、精霊達は『アーカーシュの気温を決める』という目的のためだけに設定された巨大な自然システムのような存在だ。たとえ多少の知能をもったところで、それ以外に価値を見いだすことなく、そして飽きることもなく永遠に戦争ごっこを続けていたのだろう。
「ですが、精霊たちがその程度の状態で維持されているというのは良いニュースです。行って、彼らには一度平常な状態に戻って貰いましょう」
●『星霜戦域』
「あらいらっしゃい、アイルさんのお客さんよね! 今日こそこの空をメラメラに暑くしてあげるんだから。協力してちょうだい!」
「きっと来てくれると思ってました! 寒ーい空のほうがいいですよね。私と一緒にこの子をこらしめちゃいましょう!」
現地、発見者であるユーフォニーが名付けた『星霜戦域』へと到着するやいなや、ユーフォニーたちは二人の精霊に詰め寄られた。
「え、えぇ……?」
戸惑っているユーフォニーに更にぐいっと詰め寄る精霊達。
「熱気のほうがいいわよね!?」
「冷気のほうがいいですよね!?」
ユーフォニーは『どっちも良いといえば良いんですけど……』と思ったが曖昧な返事を許さない空気が二人にはあった。助けを求めるようにサッとハイペリオンに振り向くと、ハイペリオンは困ったように微笑むだけである。どうやら喧嘩の仲裁は苦手らしい。
「折角お客さんが来てくれたんだもの。今日こそ決着をつけてあげるわ!」
「望むところです。ひんやり日和の良さを分からせてあげるんですから!」
向き合い、にらみ合い、ビシッとゆびさす先はユーフォニー。
「「この子たちと一緒に!」」
「……私もですか!?」
再び助けを求めて振り返ると、ハイペリオンはぱふんと手を叩いた。
「良いのではないでしょうか? 折角ですから、思い切りぶつかって気持ちを発散させてあげましょう」
「私がですか!?」
- <チェチェロの夢へ>星霜戦域のせんそうごっこ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年05月27日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●天の気分と書いて、天気
「熱気チーム期待の助っ人! 海洋にその名を轟かせる――カイトだぜ!」
っていいながら、『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)はハイペリオンのおなかに顔を埋めて深呼吸していた。
「…………」
「…………」
熱気の精霊と冷気の精霊がじーっと見つめるなか、ハッとして顔をはなすカイト。
「暑いと言ったら夏!夏と言ったら海!さんさん照る中にザブンと飛び込むと気持ちいいぞ!
海洋生まれの鳥さんなので海は大好き。
寒いのは羽毛で平気だけど空飛ぶのがやっぱり寒いので暑いほうがいいなぁ」
「そ、そーだそーだ!」
話と意識が戻ってきたと察して、熱気の精霊がガッツポーズで身を乗り出した。
「あなたも言ってやんなさい、そこのそのええっと、猫みたいな人間の子!」
「ねこじゃあないんだよ!」
がおーって言いながら両手を振り上げる『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)。
「そ、そうだね……暑い日は良い汗をかくのが最高だし、運動の後の冷たい飲み物も最高だよ!」
待ち遠しいね、夏! て言いながらビシッと親指を立てて見せるマリアに熱気の精霊がうんうんと頷いて見せる。
「銀の森出身の精霊種としては寒さ推しの俺……」
腕組み(?)しながら聞いていた『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)がカッと効果を出しながら振り返った。
「やっぱり涼しい日は過ごしやすくて、どんなに動いても疲れにくいのがいいよな!
少しばかり冷気が強い日だってちょっと重ね着して簡単に調整できるし、あったかい食べ物や飲み物が身に染みて嬉しくなるぜ!」
「そのとーりです!」
反撃だとばかりに手をグーにして突き上げる冷気の精霊。
「追撃をお願いします、ギターのひと!」
「おう」
『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)がぽろろんとギターをかき鳴らしながら、腰掛けていた岩から立ち上がり振り返った。
「真夏のクーラーほど気持ちの良いものはない。ついでにキンキンに冷えたビールがあるに……こしたことはない!」
カッと効果を出して叫ぶヤツェックに、マリアが『わかるよ!』て言いながら手を出し両者は握手を交わした。
「熱さがあるから寒さのありがたみが……寒い時だから温かいもののありがたみがある……」
「両者が手を取り合えば、世界はありがたみで溢れるのですね……」
いつのまにか肩を組んでいた熱気と冷気の精霊が、ハッとして飛び退き合った。
「しまってしまいました、なんだか空気にあてられてしましました!」
「冷気は敵! めっこめこにしてやるんだから!」
きしゃーって言いながらにらみ合う両者。
このこら本当は仲悪くないんじゃないかなって思ったけど、『未来を願う』ユーフォニー(p3p010323)は咳払いをしてからドラネコのリーちゃんを『炯眼のエメラルド』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)へと渡した。リーちゃんだけだと寂しいからって、ふよふよーっと一緒についていくエイミア。
「本当は、戦うのには気は進みませんが……確かにこういう子達は一度発散したほうがギスギスしないかもしれませんね」
「それに、すごく面白い文化というか、技術というか……」
マリエッタはドラネコをだっこしながらむんむんと考える。
「精霊を用いた永久機関なんですよね。機能が完全に停止して、途方もないくらい長い時間がたってもシステムの一部がこうして機能し続けているんですから」
「確かにね。想像以上に高度な技術をもった都市だったようだ」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が興味深そうに精霊達を観察している。
聞けば地上(というかアーカーシュ地表部)では気象コントロール装置が発見されたという。この子達と繋がりのある装置なのだとしたら、いずれ同じことができるようになるのかもしれない。
まあ、ソフトとハードが揃ったところで動力やその他の要素が必要になるのでまだまだ先だとはおもうが……。
「ま、今はこの場所の問題を解決しようか。やるからには全力でいくよ?」
「そうだね! がんばろうね!」
って言いながら『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)がハイペリオンのおなかに顔を埋めていた。
「ハッ!」
つい気を取られていたとばかりに顔をあげ、ファイティングポーズをとるリュコス。
「それじゃあ、戦争開始だよ!」
●星霜戦域のせんそうごっこ
「こっちこっちー! かかってこーい!」
リュコスは拳をシュッシュッてしながら冷気チームの精霊たちへとアピールを始めた。
「あったかいのはいいよ…温かいお日様の下でもふもふのお布団に寝っ転がって日向ぼっこしたり……。
ハイペリオンぐらいにもっふもふ…Uh…でもハイペリオンのもふもふ以上にもっふもふはないよね?
はっ、ということはお日様で温まったハイペリオンのもふもふは最強…?
そう、そんな最強を味わえるのがあったかい日なんだよ!
それに温かい日こそ冷たいものを食べる楽しみがある…冷たいだけじゃできないことだ!」
そーだそーだと勢いづく熱気の低位精霊たち。
火の玉に手足のはえたぬいぐるみのような精霊体がうおーって言いながら敵陣へ飛び込み、大して雪ダルマのような冷気低位精霊たちはリュコスめがけて突撃してくる。
「とう!」
雪ダルマパンチをジャンプで回避し、アクロバティックな連続バク転を繰り返し精霊たちの攻撃を回避していく。
おお……という顔で見ていたユーフォニーが、自分の役割を思い出してぷるぷると首を振る。
「私、夏ってまだ知らないんです!
水着も! 浴衣も! 着たいですー!
プールも! スイカも! 夏祭りも!
暑い季節にやりたいこと、たくさんあるんですー!!
私に夏を、教えてくださーーーい!!!」
「「うおー!」」
『私に夏を教えて』って言われてやる気を出す精霊達。なんだかピュアなモチベーションである。
ユーフォニーは手応えに満足してガッツポーズをとると、今度は『願いの弓』に矢をかけた。
「それでは皆さん……行きます!」
放たれる矢に魔力が宿り、轟く稲妻の如く敵陣へと迫る。
それに対抗したのはマリエッタであった。
木で出来た優しい作りの杖を握ると、それを勢いよく横一文字に振り抜く。
彼女の魔力があふれ出し、巨大な魔術障壁となって味方の冷気精霊たちを包み込んだ。
「実際私は冷たいほうが好きなんですよ、本も読みやすくて集中しやすくて。
何より血も保存しやす…いえ、なんでこんなこと言ってるんでしょう、すみません」
コホンと咳払いするマリエッタ。ユーフォニーの矢が障壁によって止まるも、根性なのか願いの力なのか、矢は更なるブーストをかけて障壁をめりめりと削っていく。そのたびにうっすらと赤いヒビが入り、熱気が内部へと吹き込んできた。
それによって熱が伝わったのか、雪ダルマ型の冷気精霊たちが徐々にとろとろ溶け始める。
「あ、あついぃ……」
「大丈夫ですか!? いま冷やしますね!」
マリエッタは空中に何か紋様を描くように指を走らせると、パチンと鳴らして『暑気払い』の魔法を展開した。簡単な魔法だが冷気精霊たちは『へふー』って言いながら癒やされた顔になる。
「戦線を支えておきますので、反撃をお願いします」
「おう、任された」
ヤツェクはギターに手を添えると、トントンと指で叩いてリズムを取り始める。
「うまいこと終わったら乾杯しようぜ。世の中バランスだ。
働いたら遊ぶ、暑くなったら寒くする。で、ピリついたときは一旦殴り合う――だ」
星屑の和音こと『Chord Stardust』を奏でると、襲いかかる熱気精霊たちがぐわーといってよろめき始めた。
「そういうことなら、相手になってもらうよヤツェク君!」
マリアは独特のスタートフォームをとると、バチンと赤い電撃をあげながらヤツェクめがけて突進した。
砲弾のように撃ち込まれたマリア自身を、ヤツェクはギターを後ろに回し両腕をクロスさせることでガード――が、マリアは既にヤツェクの眼前から消えていた。
周囲に無数の反発型電磁パネルを出現させ、ヤツェクの周囲を準球形に囲んでいる。
「こいつは――」
「もう遅い。ここは鳥籠――ううん、虎の檻だよ!」
マリアはそれぞれのパネルを蹴りながらピンボールの如く縦横無尽に飛び回ると、ヤツェクを前から後ろから時には頭上から電撃を纏ったパンチやキックを叩き込んでいく。
「ふふ! 熱気とは違うけど、このチームに雷撃っていうのは悪くないと思わないかい?」
「電熱ヒーターってか? ならこうだ!」
ヤツェクは自身を対象にして涼やかな音色を奏で始めた。
「むっ」
背後に回り込み膝蹴りを繰り出そう――としたマリアに、素早く振り返ったヤツェックが拳銃を突きつける。狙いは額。ひかれるトリガー。
衝撃音と共に撃ち込まれたのは特殊摩耗弾であった。
「はうっ!?」
「摩耗攻撃はアンタの独壇場ってわけじゃねえ。それに連続攻撃が得意な分、燃費も悪いんじゃあねえのか?」
ニッと笑うヤツェク。大して、マリアもまた笑顔を返した。
「暑い日は、なんといっても野外での水遊びや海水浴なんかを楽しめることも素晴らしいね!
バーベキューなんかも最高だよ! 暑い日はアイスを食べるのも素敵だね!
暑さの中で風を感じて涼を取るのもまたいいものだ。風鈴も風情がある!
きっとまだまだ魅力はあるはずさ! 負けないよ!」
「「オー!」」
熱気精霊たちがやる気を出してヤツェクへ群がっていく。
「う、うお!? 数で攻めんのはナシだろ! タイマンの流れだったろ!」
「これは戦争なんだろう? なんでもありだよ」
ゼフィラがヤツェクを庇うように割り込み、熱気精霊たちの連続パンチをエネルギー障壁によって受け流す。
「ふふっ、どちらかといえば私も寒い日のほうが好きかな。
身の締まるような寒い時ほど頭も冴えわたるし。
雪の降る日は幻想的で見惚れてしまうしね」
だろう? と冷気精霊たちに呼びかけながら、ゼフィラは両腕の義手で魔力を増幅させた。
熱気精霊たちの攻撃を防いでいた障壁を一時的に解放。
オッとなった熱気精霊たちに両手を翳すと、手のひらが強いグリーンカラーに輝いた。
「まずは、私からの挨拶変わりだ」
解き放たれる拡散フラッシュビーム。
熱気精霊たちがひゃあといって吹き飛ぶ一方で、カイトが豪速でゼフィラへと突撃をかけた。
飛行し鋭角から繰り出されたショルダータックルに、ゼファイラが思い切り吹き飛ばされる。
「全力で戦うが、全力で楽しむ! もっと熱くなろうぜ!!」
カモン! と挑発をかけるカイト。
味方の回復役に回ろうと思っていたゼフィラは挑発に乗る形でカイトへと襲いかかった。
空をターンし、再びのタックルを浴びせるカイト――を横っ飛びに回避。
と同時に義手から伸ばしたエネルギーロープをカイトの脚に絡みつかせ、両手でしっかりと握りしめた。
「うおっまじか!」
即座に炎の羽根をナイフのように放ってロープを切ると、解放された身体を宙に転がす。
「そういや多対多だったぜ。こりゃ気ぃ抜いてたら相手も当ててくるな」
カイトほどの凄まじい回避テクニックを持っていても当たるときは当たってしまう。というより、全体的な命中水準が上がっているのでカイトもうかうかしていられないのである。
「ま、うかうかする気はねえけどな!」
ゼフィラの放つ更なる拡散ビームの中を豪快にくぐり抜けて飛行するカイト。
ゼフィラの横をすりぬけ、そして相手の精霊たちに怒り状態を付与する嵐を巻き起こす。
「冷気精霊は俺が引きつけ――」
「おっと、そうはさせねえぜ!」
リックが宙に浮かび上がり、尻尾でぴしゃんと宙をはじいた。
波紋のようなエネルギーが広がり、周囲の冷気精霊たちがぷるぷる首を振ってカイトへ集められていたヘイト状態を解除する。
「さらに、こうだ!」
リックがバシャバシャとヒレや尾を暴れさせて水しぶきを起こすと、冷気精霊たちがむくむくと大きくなっていった。
「やりますねサメの精霊さん!」
「いやサメの精霊じゃねえけど!」
冷気の精霊に言われて手をぱたぱたやるリック。
「味方が多けりゃ多いほど強くなるってのが範囲バフ型の強みだぜ。行け、雪ダルマ!」
むくむくと大きくなった雪ダルマ型の冷気低位精霊たちがカイトへ殺到。
その横で、冷気の精霊と熱気の精霊が互いに突撃し、熱気パンチと冷気パンチを放った。
「うおっ!?」
リックが思わず目を覆う。ぶつかり合った巨大な熱気と冷気が凄まじい光を起こし、周囲一帯を包み込んでしまったからだ。
が、痛みはなく、衝撃のようなものもなかった。
リックがおそるおそると行った様子で手を下ろすと、静かな草原に二人の精霊がぱたんと倒れているのが見える。それ以外の低位精霊たちはみな形を保てず因子に散ってしまったようだ。
「おいおい、大丈夫か!?」
駆け寄るリック。すると、なんだかすっきりした顔の熱気精霊と冷気精霊がむくりと身体を起こした。
「……なんだか喉渇いたわ」
「……汗かきましたしね」
ふーと息をつく二人。
ヤツェックが何かを察して歩み寄り、そしていつから用意してたのかわかんない缶ビールをカシュッとやった。
「汗かいた後は、やっぱこれだろ!」
●戦争ごっこはいつまで?
「みなさん、この度はありがとう御座いました。精霊達はフラストレーションを発散しきって、すっかり元通りになったようです」
穏やかな気候のなか、ハイペリオンがほっこりとした笑顔を浮かべている。
ヤツェクやマリアたちは缶ビールで乾杯し、リックやカイトたちが復活(あるいは再成形)した低位精霊たちと一緒に円を描いて踊っている。
「そうね。おかげでスッキリしたわ。なんだか今までずっと決着がつかなくてモヤモヤしてたけど」
熱気精霊が顎肘をつき、フウとため息をつく。
様子を見ていたゼフィラは気になったことを聞いてみることにした。
「疑問なんだが、この戦争はどれくらい続けていたんだ?」
「どれくらい? さあ……一年くらい?」
「百年じゃなかったでした?」
「そんなかなあ。先年かも」
時間感覚がバグりすぎたような会話をかわす熱気と冷気の精霊。
「すごい長い間だったんだね。疲れちゃわない?」
「私達そういうのないし」
リュコスの問いかけに、熱気精霊がふあーあといってあくびをした。
「けど、今はなんだかヘトヘトな気分よ。力を出し切ったからかしら?」
「そうかもしれません。私もそんな……ふわーあ」
冷気精霊も同じようにあくびをして、即席のテーブルによりかかってぐだぐだしはじめた。
「暫くはお休みしたらいいんじゃないでしょうか。気象コントロールシステムも復活していませんし、まだお仕事はないはずですよ」
マリエッタがそういうと、『そうしましょう』といって二人がさらなるぐだりを見せ始める。
戦いが終わってほっとしたのか、ユーフォニーが戻ってきたドラネコをなでながら微笑む。
「私は、暑さも寒さも両方ある方が嬉しいです。
冬に飲んだ温かなチョコミントドリンクとか、熱気と冷気、相手の中でこそ映えるものもあります。
お花見をした春も、まだ見ぬ秋も、熱気と冷気の協力があってこそ。
歯車が噛み合って、世界は季節を巡ってる……そう思うんです」
ユーフォニーの言葉に、精霊たちが『そうですねえ』といって顔から力を抜いた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
GMコメント
そんなわけで始まってしまった熱気と冷気の精霊による戦争ごっこ。
両者の勢力は完全に拮抗しているようで、今までは両者消化不良のまま終わってはまた戦争を始めるを繰り返しつづけていたようです。
今回はそこへ皆さんが加わることで思い切りぶつかりあい、互いの気持ちを発散させてこの永きにわたる戦争ごっこを終わらせましょう。
●ルール
今から皆さんはID順ごとに2チームに分かれ、「熱気チーム|冷気チーム」となって戦います。
簡単に言うと、参加者一覧のリストの左←のほうが熱気チーム、右→のほうが冷気チームとなります。
そしてこの勝負の目的は『両者のパワーを出し切ること』です。どっちかが勝利することではなく、できるだけ相打ち辺りを目指して戦い方を工夫してみましょう。
また、皆さんには熱気と冷気の低位精霊たちが友軍として戦います。
彼らは熱気パンチや冷気パンチといったぽこぽこした技で殴り合っており、放っておくと大体引き分けで終わるようです。
暑い日の良さや寒い日の良さを語って聞かせることで彼らを焚き付けることができ、それによって戦況にも影響するようです。
ルールのおさらい
・2チームに分かれます
・低位精霊(火だるまと雪だるま)が友軍にいます
・暑さ寒さの良さを力説することで友軍がやる気をだします
●ちょっと詳しい解説
アーカーシュの天候調整システムの一環として存在していた熱気と冷気の精霊(なまえはない)は、そのシステムが停止したことで意見をぶつけ合うようになりそれはもう永遠かってくらい長い間喧嘩をしています。
この喧嘩をとめてあげることはアーカーシュを修復するという意味で非常に重要になってきます。
もとは同じ種の精霊を二つにわけた存在のようで実力は完全に拮抗しており、喧嘩をすると必ず引き分けになって明日に持ち越しというループを繰り返しています。
仲直り(?)するにはお互いに力を完全に出し合い、そして一緒に戦う人達もまた力を出し合ってぶつかり合うことで発散されるのです。
ガチガチの喧嘩ではなく『戦争ごっこ』という闘技場コンテンツの延長みたいな形で行うのは、これに儀式魔術的側面があるためです。ちなみにこれをナーサリーマジックといいます。精霊さんの気分を変えるためにごっこ遊びをするというのは、古来からある魔術形態なんですね。
●特殊ルール『新発見命名権』
浮遊島アーカーシュシナリオでは、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
発見者には『命名権』があたえられます。
※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
命名権は放棄してもかまいません。
※放棄した場合には、何も起りません。
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