PandoraPartyProject

シナリオ詳細

酒を浴びるように飲め

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

● 尾佐家田伊耒の災難

「会長……どうしましょうか」
「ううん、そうじゃのぉ……」
 尾佐家田グループが保有する酒造にて保管された大量の酒を見上げ、会長である尾佐家田伊耒は困り果てていた。ずらっと並んだこの樽、瓶達は尾佐家田グループの新作で本日行われる試飲会で来賓客に振る舞われる筈だった物だ。
「まさか、来賓の方々が来られなくなるとは……」
「仕方ないのう、飛行機が飛ばなくなってしもうたんじゃから……」
 こればかりは誰のせいでもない。
 誰のせいでもないのだが。

 試飲会で出す予定だった為、売ることもできず、かと言ってこの大量の酒を廃棄するのは相当な時間と費用がかかるだろう。
「何より皆が懸命に作った我が子の様なお酒じゃ。出来れば飲んで頂きたいものじゃ」
 うむむと唸る伊耒に隣に控えていた秘書が「あっ」と閃いた。
「今回も「外」からお客様に来ていただいたらどうでしょう?」
「……君、天才じゃの……。ボーナスあげちゃう」
「マジですか」

● 酒を浴びるように飲め

「今回のオーダーは酒を飲む、楽しく飲む、とりあえず呑む。以上だ」
 淡々と告げられた内容にあなた方は目を白黒させた。その様を見て朧が二回同じことを言おうとした為、止めて続きを促す。
「ほら、前にあったろ。尾佐家田グループ、あそこで大規模な試飲会が行われる予定だったんだが、中止されたんだ」
 試飲会に招待されていた来賓達を乗せる筈だった飛行機が飛ばなくなってしまったのだという。
 このままでは新しい酒を造ることもままならず、自分達で到底飲み干せる量ではない。
 また、試飲会で出される『試作品』である為に一般客に振る舞う訳にはいかないという。
「それに自分達が愛情かけて造った酒を廃棄するってのは相当堪えるだろうからな」
 つまり、特異運命座標の仕事はその酒を飲んで飲んで飲みまくることらしい。頭が痛くなってきた。
「いいじゃねぇか、ツマミは自由に持ち込んでいいみてぇだしある程度用意もされてるみたいだぜ」
 けらけらと笑って朧はあなたがたを送り出した。
「まあ、酒は人の本性を暴くっていうからな。あんまりハメ外しすぎんなよ」
 朧の忠告は果たして聞こえていただろうか。

NMコメント

https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3628

 初めましての方は初めまして、白です。
 PCが酔ったらどんな風になるかなー。
 煩いかもしれないし、やたら艶かしくなったりするのかな〜とか考えてたらシナリオ出てました。ようはPCの酔ったところ書きてぇな……ってヤツです。
 このラリーは一章構成の予定ですが、何度参加頂いても大丈夫です。同行者様がいらっしゃる時はタグの記載をお願い致します。

 以下詳細!

●目標
 お酒を飲む! 食べる! 呑む!!

 尾佐家田グループの管理するパーティ会場でずらっと大量のお酒が並んでいます。試飲会限定なので持ち帰りは出来ませんが、いくら飲んでいただいても構いません。未成年の方には同じく試飲会で振る舞われる筈だったソフトドリンクが提供されます。
 お酒やソフトドリンクはほぼご用意できますのでお気軽に。ツマミも用意されてるので指定あればお願い致します。

●NPC
 尾佐家田 伊耒(オサケダ・イスキ)
 お酒と人の話を聞くことが大好きなおっとりとしたおじいちゃまです。
 尾佐家田グループの会長も務めており、今回の依頼人です。ニコニコして皆さんにお酒やツマミを振る舞ってくれます。以下のシナリオで登場しておりますが、読んで頂かずとも構いません。

https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3628

●境界案内人
 朧
 ご指定がなければ登場しません。ご指名があればホイホイついていきます。絡まれたら軽率に絡まれます。


●サンプルプレイング
 どんなお酒を飲むか、ほろ酔い、泥酔、酒癖等を記載してください。
 酒ねぇ、俺も好きだが黒衣が酔っ払うなんざ学校もつかねぇや。程々に楽しませてもらうとするかね。
 んっ……ちっと身体が熱いな……俺もそんなに酒に強い訳じゃねぇがこの日本酒結構度数が強いのか……?

 以上です。貴方にとって良き旅路になります様に。
 それではいってらっしゃい!

  • 酒を浴びるように飲め完了
  • NM名
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年05月23日 19時50分
  • 章数1章
  • 総採用数10人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

天閖 紫紡(p3p009821)
要黙美舞姫(黙ってれば美人)

「これは依頼ですからねっ! 依頼ならしかたないですよねぇ~!」
 艶やかな紫の衣とは裏腹にその表情はでへへと締まりがない。黙ってれば傾国の美女と称される美貌なのに天閖 紫紡は酒が絡むとこうなる。
 用意された数多の酒に目移りしていた紫紡だが、まずはブランデーを選んだ。くいとグラスを傾ければ喉をカアッと燃え盛らせる様な、しかしそれが心地よい感覚が身体を駆け巡る。
「くぅ~、喉にキますねぇ~
こういう洋酒に合うオススメのオツマミってなんですかね~?」
「ビターチョコレートは如何でしょうか? ブランデーの甘さを引き立ててくれますよ」
 勧められたビターチョコレートを摘んでから、再度ブランデーを煽ると確かに甘味が口の中に広がった。
「ん〜! 美味しい!」
 そんな調子であの酒もこの酒もと欲張っていたので、数分後にはフラフラと千鳥足になっていた。

「洋酒も味わい深いんですけどぉ~。やっぱり、日本酒が飲みたくなっちゃうんれすよねぇ~。
 ヒック、今日はぁ、この日本酒にぃ〜、いかそーめん~、貝ひも~、そしてぇ~鮭とばああああ!!
 んふふ~時間が許すまで飲むんだぁ~」
 すっかりベロベロになっていた紫紡だったが、会場の隅で佇んでいる尾佐家田に気が付いた。挨拶をせねばと紫紡は声を掛ける。

「あ、ごいらいぬしさんですかぁ~今日はありがとうございます~一献如何ですか~?」
「お客様、そちらは柱です……」
「あぇ?」
「ほっほっほ」

成否

成功


第1章 第2節

玉ノ緒月虹 桜花(p3p010588)
神ではない誰か

「日本酒、ですか。そう言えばこちらも御神酒の用意も儘ならない状況」
 玉ノ緒月虹 桜花はふむと日本酒の展示を眺めていた。その中の一つを指差し、試飲をしても良いかと尋ねる。首が縦に動いたのを確認し、透き通った酒を一口。純米酒の仄かな甘みと、その中にキリッと鼻を抜ける辛さが心地好い。
「んむ、これは良いな良い」
 何度か飲み、すっかり気に入った桜花は朧の元へやってきた。朧は相変わらず隅で書物を読んでいる。退屈ではないのだろうか。
「朧さん、少し宜しいですか」
「うん? ああ、先日の桜の御子さんかい。どうしたよ」
「実は……」
 桜花は朧に先程の清酒が気に入った事と、御神酒として定期契約が結びたいので、取り持ってくれないかと頼んだ。

「してやりてぇのはやまやまなんだが……
 そいつは厳しいな。お前さんは自覚がねぇかもしれねえがここは『異世界』だからよ」
 朧は申し訳なさそうに頬をかく。
「もしやるなら図書館を経由してお前さん自身が行き来することになるが、俺の管轄の場所は飲食物の持ち込み禁止させて貰ってるからよ」
「そうですか……信仰を表す為にデザインも考えていたんですが……」
 肩を落とした桜花にまあまあと朧は背を叩く。
「まっ、ここで飲んで味覚えて似たようなモン作れるようになりゃいいんじゃねぇか」
「簡単に言ってくれますね……」
 少し恨めしげに桜花は朧を見上げた。
 面布の下は笑っている様な気がした。

成否

成功


第1章 第3節

暁 無黒(p3p009772)
No.696

「こ こ が ヴ ァ ル ハ ラ っ す か !」
 ずらっと並ぶ酒瓶、酒樽は天空の宮殿の柱の様に神々しく、とくとくと注がれる輝く液体はまさに生命の水といっていいだろう。暁 無黒は手を広げ目を輝かせた。食べ放題、飲み放題の依頼など歓喜の極み。ましてや、混沌では味わえない酒のオンパレードである。
「うおおおリミッター解除! いざ突撃っす!」
 と、言っても無黒は苦い酒は好みではない。花の香りに誘われる蝶の様に無黒の足は自然とカクテルのコーナーへと向かう。カルーアミルクの口当たりは優しく、口に含んだチョコレートを甘やかに溶かす。
「ん~チョコとカルーアの相性はやっぱ最高っすね~♪」
 次は程よい塩っけの生ハムで着飾った瑞瑞しいメロンとピーチと王道のカシスオレンジ。その次はさくりとしたクラッカーに生クリームと新鮮なフルーツを乗せたカナッペと甘酸っぱいファジーネーブル。
「はぁ~ヤめられないトまらないっすね~♪」
 すっかり上機嫌な無黒はウェイターの制止など耳にはいらずグラスの中身を一気に飲み干した。
「……あ……はれぇ?」
 アルコールが回っていたところにトドメを刺した様に無黒はカウンターへ倒れ込む。
「お、お客様! 大丈夫ですか!?」
「……くぅ~~……うぇ~い……どんどん酒持ってくるっすよ~……ひっく……スヤァ……」
「お、お客様……?」
「ほっほっほ、酔いが回ったんじゃな。寝かせておいてあげなさい」

成否

成功


第1章 第4節

ミシャ・コレシピ・ミライ(p3p005053)
マッドドクター

 酒好きのミシャ・コレシピ・ミライは羽目を外さない程度に楽しもうと、ビールサーバの前に立った。
 注がれていく黄金の輝きとその輝きを引き立てるた白い泡の比率は完璧だった。差し出されたグラスをミシャは「ありがとう」と受け取った。
 グラスのひんやりとした感覚を楽しみ、ビールを口内へと迎え入れる。
 つまみは甘めのタレと黄身に潜らせた手ごねの鶏つくね。濃い目の味付けがビールとよく合い、どんどんグラスの中身が減っていく。
「くーっ、キンキンに冷えててこの喉越し! おつまみが進むわ!」
 ビールを楽しんだ後で、ミシャはふと日本酒が欲しくなった。キリっと冷えた日本酒に刺身は最高に合うだろう。
「この日本酒を頂けるかしら」
「はい、ただいま」
 注いでもらった日本酒を一気に飲み干し、慌てて猪口を置いた。
(け、けっこうキツめね……ぐっと飲み干すには不向きだったわね……ちびちびいくのが正解かしら)
「でもクセになる味わいね、もう一杯ほしいわ……」
 新鮮な魚介類と交互に口の中に放り込んでいけば多幸感に包まれる。もう一杯、もう一杯を繰り返しているうちに、ぐわっと胃の奥が揺れて慌てて口元を手で覆った。
「ご、ごめんなさい……お、お手洗いはどちらかしら……?」 
 ふらふらと目的地へ向かいながらミシャはもう少し自制が必要だと反省する。
(でもあの日本酒はおいしかったわ)
 美酒の味を思い返し、緩んだ口元を慌ててミシャは再度覆った。

成否

成功


第1章 第5節

玉ノ緒月虹 桜花(p3p010588)
神ではない誰か

(それにしても美味い)
 この怜悧で、それでいて甘美な味を忘れぬ様にと桜花は杯を傾ける。持って帰れぬのならせめて、海馬へその味を刻みこむ。
「こちらはまだまだあります?」
「はい、度数が強いせいかあまり減らないもので……」
「確かに、周りは大分ふらふらですね」
 死屍累々、実際にはもちろん酔いつぶれて撃沈しているだけだがその言葉がぴったりなほどに酔っ払いが多い様だ。
「こんなに美味いお酒なのに、勿体ない」
「残念ですがこの酒は廃棄するしか……」
「おや、 お酒を捨てる位なら私は吞みますよ」
 目を丸くした社員を横目に、桜花は再度酒を煽る。
「私は毎日御神体に御神酒を供え、その度御下がりを頂くので一日一升瓶三つ吞んでますから」
「一升瓶三つ……!? ま、毎日ですか!?」
「ええ、ですからお酒には強い自信があります。残り幾つかは知りませんが持ってきてくださいませんか」
 社員が運んできた清酒の数は一、二、三……まぁ、とりあえず『沢山』だ。にぃと目を細めた桜花はまさに獲物を見つけた蛇の顔だった。さっそく樽の一つに向かい、掬い上げて飲み干す。
「蟒蛇と呼ばれた私が酔い潰れるか、それとも新作試作品清酒が勝つか勝負です!」

 次々に空になっていく樽の山。その最後の一滴を胃に納めて桜花は口元を拭う。
 勝負は桜花に軍配が上がった。
「さて、試作品無駄にしないよう頑張りましたがどうですか?」
 その顔は名の通り薄紅に染まっていた。

成否

成功


第1章 第6節

暁 無黒(p3p009772)
No.696

「いっつつ、ちっと額打ったか……」
 額の辺りを擦りながら無黒は目を覚ます。
 まぁ、これも良い薬だと無黒は額を擦った。
(それにしてもあの案内人、面白い事言うじゃねぇか)
『酒は人の本性を暴くっていうからな――』

 脳内で黒衣の男の言葉が蘇り、無黒はもう一人が起きるか様子を見たが、彼はまだ夢の中にいる様だ。
「ったく、この分じゃ当分起きそうもねぇな……しゃぁねぇ、とりあえず依頼中だし外の風でも浴びながら飲み直すか」
 席を立ち窓際へ向かおうとした無黒に女性社員が道を譲るが、足が縺れたか転びかける。
「おっと」
 とっさに腰を抱きかかえ、支えてやればうっすらと頬を染めた乙女の顔が間近にあった。
「怪我はないか?」
「え、ええ……ありがとうございます」
「礼にゃ及ばねぇよ。それじゃ良い夜を」
 この後女性社員は同僚に「バチクソイケメンがいた」と熱く語ることになるが今回は割愛する。
 
 夜風に当たると火照った身体が冷やされ心地よかった。
「賑やかだねぇ良い夜だ……ん?」
 ふと、人込みの中に鮮やかな紫が目を引いた。ああ、あいつも来ていたのかと眺めていると何故か柱に挨拶しだした。
「あ~ありゃダメだな、最終形態一歩手前だ。面倒だからほっとくとするかね」
 触らぬ神に祟りはないのだ。アレはただの酔っ払いだが。
 苦笑いを零した後で、無黒は再度グラスを傾ける。

「嗚呼……本当に……良い夜だ」
 人々の喧騒を肴に無黒は夜に酔いしれた。

成否

成功


第1章 第7節

ネイアラ・セレナータ(p3p007915)
ベリーダンサー

「お酒は良い物です、日々の生活を豊かな彩りを添え……人生を幸せにするのです」
 一杯傾けネイアラ・セレナータは一息ついた。その仕草は絵画の様に艶やかで美しい。
「勿論、飲み過ぎるのは駄目ですけどね。
 そうですね、たまにはハメを外す事にしましょう」
 ネイアラは日本酒が気に入った様であった。
「この日本酒は……濃厚な旨味がして……辛い感じがして良いですね。こちらは口当たりがスッキリしていて…後味が甘い感じがします」
「はい、一口に日本酒と言っても違いがありまして……」
 社員の解説にネイアラはうんうんと頷いた。と、同時にぱさりと羽織っていたショールが落ちる。
「あっ、お客様お召し物が」
「他にも頂きたいですね……あ、そうでした…先程まで頂いていた日本酒に合う物を出して貰えませんか?」
「えっ? は、はい。ただいま」
 社員の言葉が聞こえていないのか。わざとか。
 目をぱちくりとする社員だがショールをネイアラに手渡した後に、帆立貝の酒蒸しを用意する。
「先ほどの酒はあっさりした味付けの物とよく合う――」
「ありがとうございます、とても美味しそう」
 にこやかに料理を受け取るネイアラに、社員は固まった。ショールは何故かまた床に落ちているし何なら肌面積が圧倒的に増えている。

「お酒の所為かちょっと身体が火照ってしまって……ふぅ、まだ暑いですね」
「お客様! お召し物をこれ以上脱がれては困ります!! お客様ーー!!!」

成否

成功


第1章 第8節

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
タイム(p3p007854)
女の子は強いから

「え~飲み放題? ほんと!?」
「お得だねぇ、可愛い子ちゃんとお楽しみに……グフフ」
 会場に到着したタイムとコラバポス 夏子はちょっとした旅行の様だと高揚していた。

(酔った夏子さんどんな風になるのか気になるしどんどん飲ませようっと)
(タイムちゃんはどなんだろ強いんかな? どっちにせよ酔ったタイムちゃんとグフフ)
 互いに下心を抱きながら、手近な席へ移動する。

「酔っタイムちゃんとこの後部屋で過ごすのも楽しみでさ?」
「後の事なんてまだ考えなくていいよう!」

 燥ぎつつ『まだ』ってことはワンチャンあるな……と夏子は脳内でグフフルートへのシミュレートを開始する。
(イケるか? イケるな! イクぞぉーッ!)
「夏子さん?」
「んふふ~なんでもないよ。
 そいや、タイムちゃんって酔うとどんな感じ? 色っぽい感じ? はしゃぐとかさ~」
「うーん、とにかくゴキゲンになるかな~?」
「ゴキゲン?」
 鼻歌唄いだすとか? 可愛いなあ。
 この時はそう思っていた――。


「タタタイムちゃんちょい
 ちゃんと食べてから飲んで。飲んだらお水飲まないと、悪酔いしちゃうよ」
 水もツマミもタイムの目に入っていない。
 唯、酒を求めている。
「酔ってないまだ全然平気よおかわりくださーい」
「それ酒瓶だねぇ~」
 弱い、弱すぎる。弱さの極地。
 飲む前は艶っぽい雰囲気を想定していたのにそれどころではない。なんなら酒を飲む暇が無い。

 夏子が甲斐甲斐しくタイムの世話を焼いているにも拘らず、タイムの表情は拗ねた幼子の様に膨れている。夏子がいつもと変わらないのがお気に召さないらしい。
「夏子さん酔ってないの? ねぇ~いつも通りでつまんなぁい! もっと飲んでよう!!」
「つまんない!?」
「もっと飲むのぉ~!」
「えっ? ああうんうん! お酒好きなんだねぇ」
 問答無用で酒を注ごうとするので、夏子は慌ててグラスを手に取り酒を迎えに行く。
「だって酔ったトコ見たいのにわたしばっかりぃ~」
 耳まで赤く染めて指を突き合せ口を尖らせる姿は本当に可愛らしい。口角が上がるのを夏子は自覚した。
「もっと……酔った……トコ……」
「ありゃ?」
 うつらうつらと舟を漕ぎだし、タイムが夏子の肩に凭れ掛かる。
「あれれ、タイムちゃんおねむな感じ?」
「違うの、寝ないし。一瞬目を瞑るだけだから……」
「一瞬目を瞑るって、もうそれ寝るって言ってる様な……あらら……寝ちゃった」
 むにゃむにゃ可愛らしい寝言と共に、陽光の姫は夢の世界へ遊びに行ってしまった。
「僕と一緒だから良かったモノの。一人外飲みとか無理そーねぇ」
 無防備な頬を突くと一瞬眉間に皺が寄るが、すぐに解けて幸せそうな微笑みに戻る。
「ソレはソレとて、タイムちゃんの部屋には行くけどね」
 華奢な身体を軽々抱き上げ、夏子は席を立つ。
「ましてや、他の狼達に搔っ攫われるわけにはいかないからね」
 すやすや寝息を立てるタイムの笑みが深くなった。


成否

成功


第1章 第9節

リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)
氷の狼

「酒をひたすら飲めばいいとは斬新な依頼だね。
 だが、美味い食事と酒に合法的にありつけるというのはとても有難い。折角の機会だ、楽しませて頂こう」
 リーディア・ノイ・ヴォルクは狙撃手である。
 任務中は携行食を食えればいい方で、丸一日何も食べずに張り込む事もざらであった。
 合法的に腹を満たせるともあり、彼の真白の尾はゆらりとゆっくり揺れている。
(いつもはウォッカやホットワインを飲むのだけど……うん?)
 寒さに耐え凌ぐ酒には馴染があるが、リーディアの目を引いたのは甘酸っぱい香りを放つ酒だった。

「この梅酒というのは?」
「はい、梅の実から作られておりまして。おすすめはロックです」
「なるほど、氷だけ入れて直接注ぐのか」
 勧められるままに口を付けるとふわりと香りが強くなって、とろりと舌の上で流れ込んでくる。
 嚥下し、じっくりと味わうとリーディアは柔らかな笑みを浮かべた。
「うん、甘酸っぱくて美味いね、香りもとてもいい。ツマミのサラミとよく合うね」
 満足そうなリーディアが、ビーフジャーキーに気が付いた。

「レディ、すまないがそちらも頂けるかな。私の大好物でね」
「あらそうなんですか? はい、どうぞ」
「ありがとう、うん歯ごたえがあって美味い」
 リーディアは穏やかな性格だが狼の獣種である。
「つい目に留まると食べたくなるんだ、これ」
 はにかんだリーディアの顔は氷の狼とは程遠い、夏の日の少年の様な顔だった。

成否

成功

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