PandoraPartyProject

シナリオ詳細

誘蛾灯に殺人鬼は踊る

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●恐怖とは極上の甘露である
 静まり返った街角を一人の少年が駆けていた。
友達と遊んでいてすっかり遅くなってしまったのだ。早くしないと両親に叱られてしまう。
 暗いクローゼットに閉じ込められて反省しなさいと言われるのは絶対に避けたかった。
 ふと少年の視界の端に何かが映った。
 眼球を動かしその正体を確かめると一人の花売りが鼻歌を歌いながら立っていた。
 街頭の灯りを受けてぼんやり浮かび上がるシルエットと、その手の中に一輪咲いていた真っ白な薔薇が妙に幻想的であんまりにも綺麗だったので、少年はふらふらと吸い寄せられてしまった。

「坊や、花は要らんかね」
「うん、ひとつ下さい」

 少年はポケットからコインを取り出し花売りへと差し出そうとした。
「あれ……?」
 花売りがいない。気の所為だったのか?
 首を傾げた少年だったが、疲れていたのだろうと結論づけコインを仕舞い直して後ろを振り返った。
「え」
 道がない。
「え?」
 周囲を見渡す。建物がない。
「えっ、えっ……?」
 あるのはただの、闇、闇、闇。
 そして誰かが自分を追いかけてくる硬い足音だけ。

「花は、花はいらんかね」

「あっ、アア、ああ……!!」
 冷や汗がダラダラと滝のように出てきて小さな背中を悪寒が駆け巡る。真っ青に顔色を変えた少年は訳も分からず走り出した。
「なにも、何も見えない!暗い!怖いよ、助けて!」
『ああ、君が最も怖いと思うのは『暗いところ』なんだねぇ』
 足音を響かせて、愉しそうに花売りは笑う、嗤う。
「パパ! ママァ!」
『ああ、実に心地よい悲鳴だ。表情だ。花達もとても喜んでいるよ』
 泣き叫ぶ少年に笑いかけた花売りが真っ赤な口を開く。ぐぽり、と不気味な音が鳴って数秒後にはゴリゴリと何かを削りグチャグチャと何かを潰す嫌な音がした。純白の薔薇が真っ赤に染まって、ああ綺麗だ。綺麗だなあと花売りはまた嗤っていた。
 誘蛾灯に引き寄せられた蛾がバチりと弾けて堕ちていた。

●誘蛾灯に殺人鬼は踊る
「お前さん達に連続殺人鬼の討伐依頼が入ってるぜ。ホラー小説が舞台見てぇだな」
 朧は本棚から一冊の古びた本を取り出す。
 オーダーはシンプルだ。
 連続殺人鬼の撃退。ただそれだけ。

「だが、気ぃつけな」
 そう言った朧の顔は黒の薄布に遮られ相変わらず読めないが、その声色から彼がいつになく真剣なのだろうということが伝わってきた。

「そいつは恐怖を支配するって噺だ。お前さん達の恐怖――もしくは、トラウマの様なものに化けられる。恐怖ってのは思考を奪う、思考が奪われるってことは動気に障害が出る。
どれだけ有能な戦士であっても剣が震えなきゃ野犬の餌になるって訳だ」
 ピン、と指で弾かれたコインが宙に舞い回転しながら落ちてきた。カツンと無機質な音を立ててもんどり打ったコインは裏だった。
「――恐怖に、打ち勝て」
 それだけ言って朧はあなた方を送り出した。

NMコメント

 初めましての方は初めまして、そうでない方は今回もよろしくお願いします。
 某金色北海道冒険譚漫画と某ピエロの殺人鬼の話を読んでいたら書きたくなりました。
 あとPCの恐怖で凍りついた顔とか反応からしか得られない栄養素ってあると思うんですよね。
 以下詳細。

●目標
 殺人鬼『花売り』の撃退
 
●戦場
 静まり返った市街地です。路地が入り組んでおり、見通しが悪いです。また、夜の為視界も良くはないでしょう。人はいません。

●舞台
 『誘蛾灯に殺人鬼は踊る』というミステリーホラー小説です。
 殺人鬼のモデルの人物は実在していたと言われています。

●敵
 花売り
 一見するとただの花売りですが、その正体は人の血肉を喰う殺人鬼です。獲物が最も恐怖を感じる物に自在に変化する術を持ちます。
 人々の恐怖に満ちた顔が最高に好きで、極上の味わいと語ります。説得はするだけ無駄でしょう。
 攻撃方法
・噛みつき
鋭い牙で噛みつきます
骨を砕く威力を持ちますが、予備動作として口を大きく開けます。
・極上の甘露
PCが最も恐ろしい対象に姿を変えます
精神力が試されます、恐怖で足がすくんでしまうかもしれません。
 

●サンプルプレイング
 通常のプレに加えて、あなたが最も恐怖を感じる対象と、それに対する反応を書いてください 
 恐怖の対象:自身を虐待していた母親
 あああ、嫌だ! 嫌だ!!
 良い子にするから!!叩かないでぇ……!!

 こんな感じです、それではいってらっしゃい。  

  • 誘蛾灯に殺人鬼は踊る完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年05月24日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
倉庫マン(p3p009901)
与え続ける
弟橘 ヨミコ(p3p010577)
えにしを縫う乙女

リプレイ

 建物の影に潜み、『与え続ける』倉庫マン(p3p009901)は目を閉じていた。瞼の裏にはこの街を見下ろす映像が映っている。
「何か見えるか?」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)がポケットからキャンディを取り出し口に放り込みながら尋ねた。
「まだですね。もうしばらくお待ちを」
 捜索を待っている間に『桜焔朋友』金枝 繁茂(p3p008917)が隙間から見える街並みに目を向ける。レンガ造りの街は絵画の様で、こんな時でなければ観光したい程であった。
「こんなに素敵な街を染めさせはしません、この世界の為にも悪を間引きましょう」
 恐怖を支配し、嬉々として喰らう殺人鬼。生かしておく理由は無い。
「恐怖でございますか」
 『えにしを縫う乙女』弟橘 ヨミコ(p3p010577)が思い浮かべたのは最愛の人を喪ったあの日。そっと骨壺に触れ、夫に語り掛ける。
(あなたは笑っていましたが、屹度怖かったでしょう? 痛くて、熱くて、苦しくて)
「――私なんかよりも、ずっと」
「え?」
「なんでもありませんわ、繁茂様」
 ヨミコが柔らかく微笑むと同時に、倉庫マンが僅かに揺らいだ街灯を見つけた。
「いました!」
「じゃ、行ってくるとするか」
 キャンディの包み紙を再度ポケットに仕舞い込み、世界が現場へと向かう。

「花は、花はいらんかね」
 白百合をもった花売りが立っていた。風に揺れる白色は暗い夜の中で光を受けて輝いている。
「それ、俺にも売ってくれないか?」
「いいとも。恋人へのプレゼントかな?」
 にぃと花売りが口角を上げる。
 世界が首を横に振った。
「残念ながら恋人は居なくてね」
 受け取った百合をそのまま、花売りへと向ける。
「――目の前の相手に手向ける花さ」
 真白の花弁が舞い落ちて、開戦を告げた。


(しかし恐怖するものへの変身能力ですか)
 熱砂の精霊を使役しつつ、倉庫マンは事前に聞いていた敵の能力を思い返していた。
「(私の恐怖するもの……特に心辺りは無いのですが。一体どん、な……)な……な、なぜその様な姿に!?」
「おや? 随分変わった味の恐怖だね」
 想像と違ったらしい花売りが自身の変化した姿をまじまじと見つめている。
 花売りが姿を変えたのは紳士オークと服を溶かすスライムである。

 紳士オークと服を溶かすスライムである。

 他から見れば「えっ、たいしたことなくない?」と思うかもしれないが、彼らは倉庫マン自身に『えちち方面での需要』を見出し、一生消えぬ恐怖を刻み込んだのだった。

「ほら! ジャンル違うから花売り様も困惑されているじゃないですか!!」
「でも、未知なる味に挑戦するのも大事だと思う」
「グルメ漫画みたいなこと仰ってる!!!
 ミステリーホラーだったんじゃないんですか!?」
 筋骨隆々な癖に何故か魔術で糸を飛ばしてくるオークと、何故か服だけを溶かしてくるスライムから倉庫マンは逃げ回る。
「こんな! 需要などある筈がありません! 私にそんなものが……あるわけがありません!」
 息も絶え絶えに、真っ青な顔で倉庫バズーカの銃口をなんか今にも紳士的(?)に襲い掛かってきそうな群れに向ける。恐怖を見せる幻には、破滅へ誘う夢想の弾丸で立ち向かうのだ。
 
「私はほぼ無価値のものでございますから!
 私に、私に……需要を、求めないで下さい!!」
 放たれた弾丸に花売りの姿が融け元に戻った。

(需要……?)
 需要って何だろうと思いつつ、敵に出来た隙を逃す手は無い。
 ミヨコの針先が享楽の悪夢を刻み込まんと花売りへ手を伸ばす。
「お嬢さん。君は愛する人を喪ったんだね、わかるよ。わかるとも」
 不釣り合いな穏やかな口ぶりで花売りが姿を変えていく。
「……!」
 ――口惜シヤ…憎ラシヤ…恨メシヤ……。
 真白の髪が振り乱される。
 そうあの日、祝言の日に逃げ場のない船の上でそいつは現れたのだ。
 空は炎で、地は鮮血で赤に染まった。
 そして、それらよりもずっとずっと赤い眼で。
 復讐と、憎しみと、哀しみに包まれた鬼の姿。
「ああ、やめて」
 ――ドウシテ、アノ人が。
「その顔でわたくしの前に現れないで、いや」
 ――殺サレナケレバ、ナラナカッタ。
「嫌……来なイで、来ルナッ!!」
 ――ドウシテ、私ハ。

 死ネナカッタノ。

「アアアアアッ!!」
 ミヨコの顔が剥がれ落ち、目の前の鬼と同様に変貌する。ミヨコの恐怖は自身の心の中に棲む鬼であった。せめてもの救いは、この顔を最愛の夫が目にすることは決してないという事だけ。
 目の前の鬼を消さんと針を横に薙ぐ。
 脚が動かない。何も考えられない。最高の味わいに仕上がったミヨコに花売りが口を開く。しかし牙は空を切った。
「大丈夫か?」
 ミヨコの襟首を引っ掴んだのは世界だった。手を翳し、背を擦ってやると荒かった呼吸がだんだん落ち着いてきて元の射干玉の髪と目に戻っていく。長く息を吐いた後、ミヨコは元の姿に戻っていた。
「……ありがとうございます、世界様。このご恩は必ず」
「じゃあ、今度お高めのケーキセットでも奢ってもらおうかね。今は休んでおきな」
 ミヨコを退避させた後、世界は花売りに向き直った。ご馳走を目の前で取り上げられた花売りは詰まらなさそうな顔をしている。
「酷いじゃないか。あんなに美味しいモノをお預けだなんて」
「喰わせてやる気は更々ないんでね」
 目の前の花売りの変化に世界は肩を竦めた。
 忙しくて漸く買いに行けたのに、販売終了していた期間限定の苺のフレッシュタルト。
 目の前で売り切れた数量限定チョコバナナクレープ。
 過去に買い逃したもう食べられないスイーツたち。
「生憎というか残念なことに恐怖なんて慣れっこでね」
「そのようだね、君のはあんまり美味しくないな」
 そもそも、さっきのミヨコもそうだが闇が深かったり過去が重すぎる奴等が多すぎるのだ。
「彼女らと比べると俺の恐怖なんてのは鼻で嗤い飛ばせるレベルなんだよ。ご期待に添えられず悪いな」
 人差し指で虚空に白蛇を描く。命を与えられた白蛇が勢いよく飛び出し、花売りへ絡みついた。
「……後でパフェでも奢ってやるからそれでチャラってことにしておいてくれ。もっとも」
 背後の殺気に世界は目を向けた。
「生きていたら、の話だがな」
「はぁッ!!」
「がっ!!」
 突然飛び出してきた巨躯の拳に吹き飛ばされ、花売りは派手に吹き飛ぶ。目の前の世界に気を取られていた花売りに奇襲を回避する術は持たなかった。
「いやはや、びっくりしたよ。君は食べ応えがありそうだね」
 立ち上がった花売りが再度目を細めた。
 今度は繁茂が衝撃を受ける番だった。
 優しい眼差しに、見間違えようもない腹部の鬼紋。片時も忘れた事はない大切な人。

 ――繁茂、稽古をしようか。

 あの頃と変わらない姿だが、目の前の彼は偽物。解っている、そんなことは分かっているのだ。
 だって彼は、射られて自分の腕の中で亡骸に変わったのだから。鬼である自分は、判ってしまったのだから。どれだけ泣き叫んだって、枯れてしまった樹木が蘇ることは無いのだという事を。
「ぐっ!」
 ――手加減はしなくていいんだぞ。
 言葉とは裏腹に命を刈り取りに来る一撃を辛うじて防ぐ。反撃しろと脳は命令を出しているのに身体がいう事を聞かない。
(ッ! ”私”じゃないわずかに残った”俺”が震えている……!これが恐怖!?)

 今までいろんなことがあって、乗り越えてきたつもりだったのに。
 強くなったのは気の所為だったというのか。
 偽物とわかり切っている相手に惑わされる程自分は弱かったというのか。
 じわじわと心の内に侵食した恐怖に足が竦んだ。 
「ック! 防ぐだけで手いっぱいですか、腹立たしい!」

 私は、俺は、このまま喰われるのか。
 こんな奴に、反撃すらまともに出来ないままで。
 街灯の光が目に入る、その眩しさに見覚えがあった。こんな人工的な灯りではなくて、目を覆いたくなる程残酷で、美しい光を知っている。

 ――朝日だ。

『……なあ、繁茂。獄人と、八百万が、笑い合える、未来を。俺は、必ず、信じ……』
「……!」
 がっ、と繁茂は自身の腕に思いきり噛みついた。口の中に広がる鉄の味と、突き破られた肌の痛みに急速に思考がクリアになっていった。何に怯えていたというのだ。

「ふぅーッ、ふぅーッ……」
 血を吐き出し、前を見た。
 憎たらしいほど彼にそっくりだ。
 だが、それだけだ。
 
「自分が情けない、危うく彼を穢してしまうところでした」
 ――繁茂?
「よくも私たちを虚仮にしてくれましたね」
 祈りも祭壇も必要ない。
 救いなど受けるべきではない。
 断罪を受け入れろ。

 目の前の獲物を見つけた全てを喰らい尽くす暴食の大鎌が振りかざされた。
「私の逆鱗に触れた奴は必ず殺す、惨たらしく死ね」
 その刃に映る自身の貌に花売りはこう叫んだ。

「ああ、なんて美味しいんだ!
 最期の晩餐に相応しい!!」


 薄っすらと空が白み始めていた。
 太陽が昇り始め、街が目覚め始める。
 ぐしゃりと、顔を踏み抜いて繁茂は花売りの死を確認した。遺体を雑に除けた後に繁茂は殺された者達への祈りを捧げる。
(仇は取りましたよ)
 その背を見ながら倉庫マンは、無事依頼が完了したことに胸を撫でおろしていた。
「恐ろしい敵でした……何とか達成はできて一安心です」
「ええ、そうですね。ところで、倉庫マン様。需要って……」
 ミヨコの問いに倉庫マンは微笑みを浮かべるだけであった。
「何故かはわかりませんが、ともかく次はこの様な目にあっても取り乱さない様にしたいものです」
「それ、フラグって」
「あーー! 聞こえません! 世界様がなんて仰ったのか私には聞こえません! あーー!!」
 一同の笑い声が静かな町に響く。
 恐怖とは大なり小なりあれど、それと人間は縁を切れない。だがしかし。
 恐怖を乗り越えた時、人は確実に未来への一歩を踏み出すのだろう。 
 


 


成否

成功

状態異常

なし

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