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シナリオ詳細

再現性東京202X:メドゥーズの庭園

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――なじみさんへ。
 水夜子さん達がお花見をするって言っていたんだけれどタイミングを逃したから今度一緒にどうかな?

 そんなメッセージを越智内 定(p3p009033)から受け取っていたは良いがクラス替えと進路相談でてんてこ舞いだったのは綾敷・なじみ (p3n000168)。
 勉強は正直得意ではないなじみではあるが、将来は希望ヶ浜学園の大学部へと進んで教育に携わりたいと考え居てる。
 永遠の先輩で永遠の高校生的な立場であるひよひよこと音呂木・ひよの (p3n000167)はズルい存在ではあるが、彼女の進路はそもそも神社の跡継ぎだ。普通の一般家庭に生まれて、『夜妖に魅入られちゃった』だけのなじみには普通の生活だってある。
「もーーーーー しーらない!」
 ぽいっと参考書を投げたなじみが居たのはカフェ・ローレットであった。
 テーブルにはアイスキャラメルラテと差し入れとして千石・夜迷が準備してくれたクッキーが置いてあった。
 放課後は勉強に身が入らないなじみを案じたひよのがカフェ・ローレットで自習するようにと言いつけてくれていたのだそうだ。
「なじみちゃん、そこの公式間違ってるからじゃない?」
「夜迷ちゃん、違うぜ? この公式がなじみさんの事を好きだったんだ。
 つまり、なじみさんが間違えたのではなく、この公式がなじみさんに使用されてみたかったと言うことさ。
 この公式を当て嵌めることで新たな解法が見つかる可能性を……可能性を……うう……」
 ぐったりとテーブルに額を着けたなじみは所謂内部生となる夜迷始めとする希望ヶ浜生達に「いいなあ」と呟いた。
「うーん……あ、そうだ。ひよのちゃんから『煮詰まった時用のお手紙』預ってるからどうぞ」


「つまり、なじみさんのリフレッシュ?」
「ええ。珍しく真面目に勉強していたなじみがそろそろ頭も沸騰してしまう頃かと思いましたので。
 希望ヶ浜にある観光農園で『メドゥーズ』という場所があるんですが……其方で薔薇を見るついでに夜妖を『えいや』としておこうかと」
 つまりは夜妖をちょっちょっと倒すついでの観光なのだと少女である。そんな彼女の隣には何故自分が呼び出されたのか分って居ない様子のしにゃこ(p3p008456)が立っている。
「実はメドゥーズに新種の薔薇が発見されたそうでして……桃色で、可愛らしい小ぶりな花なんですが。
 なんでも、その薔薇の名前が『クイーンニャーコ』というそうなのですよね。ニャーコは『若光』から来ているとかなんとか……」
「え? 女王しにゃこの薔薇? いや~~、そんなに可愛さが知れ渡っていただなんて、しにゃも罪ですね!」
 元気になったしにゃこがふふんと鼻を鳴らした。つまり、彼女の名前に似た薔薇が発見されたからとお呼び出しされたそうだ。
「まあ、その薔薇に夜妖が憑いたんですけど」
「しにゃ薔薇の魅力に負けてしまったんですね!」
 簡単に言えばそういう事らしい。新種の薔薇として発見された其れは最近になって奇妙な現象が起こるようになった、と。
 薔薇の世話をしようとするものを拒み薔薇の手入れを行おうとしたものに不幸が訪れるのだそうだ。
 その現象をひよのが調査してみた所、薔薇を我が物にしようとする夜妖がいたという。目撃情報では金色の髪の毛のビスクドールが薔薇を護るようにふよふよ浮遊していただとか。
「……人形に何かが憑いてるってこと?」
「ですかね。その人形はウチの神社で供養しますから、夜妖を倒して人形を確保するのが仕事です。
 その後はグロッキーななじみと一緒に薔薇を見るのはどうかと思いまして……定さんに呼びに行かせたんですが……」
 どうやらなじみが「この問題だけ解いてから~~!」と泣きついた様子でまだ合流は果たしていない。
 初夏の日差しが熱すぎるばかり、外出の様の夏服に着替えて『えいやっ』と夜妖を倒したら共に薔薇をのんびりと眺めようとひよのは微笑んだ。

GMコメント

なじみさんもそろそろ進路を考える時期になりました。幼稚園の先生になりたいそうですよ。

●目的
 夜妖の撃破
 薔薇をのんびり眺めましょう

●観光農園『メドゥーズ』
 再現性東京202X:希望ヶ浜に存在する観光農園です。薔薇庭園の他に動物と触れ合える場所もあるそうです。
 今回向かうのは薔薇の庭園ですが、お仕事の後は観光農園で遊ぶことも可能です。ひつじやいぬ、ねこと遊べますし買い取れます。
 餌やり体験や散歩体験などもできるそうですよ。
 薔薇庭園の中には新種の薔薇『クイーンニャーコ』が発見されたことで話題を呼んでいます。
 が、どうやらその薔薇には曰くがついたようで夜妖が存在するようです。『えいやっ』とやっつけてやってください。

●夜妖
 何らかの禍根が人形に憑いたものです。ふわふわと飛び回っており、呪ってやると雄叫びを上げてきます。外見と合っていない。
 簡単に倒すことが出来ます。それ程警戒しなくても良さそうです。
 薔薇に対して何らかの思い入れがあるようですであり「薔薇は私のものだー!」と叫び回っています。
 倒した後は御人形は音呂木神社で供養されます。

●綾敷なじみ
 進路に迷う夜妖憑き。怪しくないよ、普通だよ。ちょっぴり怪しい女の子。
 誰に対しても気易くてハイテンションガールです。お勉強が苦手なので、今日はリフレッシュしにきました。

●音呂木ひよの
 今回の引率さん。なじみのリフレッシュを兼ねてやってきた音呂木神社の跡取り希望ヶ浜学生。
 年齢は秘密なので何時だって高校生♪のノリで生きています。実際は、希望ヶ浜学園にやってくるイレギュラーズのサポート役なのだそうです。

●千石・夜迷ちゃん
 越智内 定(p3p009033)さんの関係者。カフェ・ローレットのアルバイト。実は夜妖の痕跡を消す『掃除屋』さんです。
 今回は特別参加せず皆さんの仕事が終わった後に『企業秘密』な方法で痕跡を消していってくれます。

●その他
 夏あかねの担当NPCのうち、再現性東京に訪れることが可能なNPC(自由に動けるNPC)はお呼び出し頂ければ戦闘後の薔薇園散策や牧場散策にご一緒致します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 再現性東京202X:メドゥーズの庭園完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
一条 夢心地(p3p008344)
殿
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
越智内 定(p3p009033)
約束
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫

リプレイ


「ホントは万年桜を一緒に見てみたかったんだけど、真性怪異が関わってるって言うならどうしようもないもんね」
『希譚』と呼ばれた怪異の蒐集の一環としてイレギュラーズが花見に訪れた地を思いだしてから『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)はそうぼやいた。ひよのはそれらに嫌われている為か立ち入ることが出来ない。花見は諦めたが――
「あの時皆でお花見が出来なかった分、今日の観光農園巡りを思う存分楽しんじゃおうっ! 勿論、お仕事の夜妖退治も忘れずにねっ!」
 仕事の一環ならば、楽しむことが出来るのだと花丸はウキウキとした気分で集合場所である観光農園『メドゥーズ』に赴いた。
「花見の代わりに薔薇見ってか。なかなか粋じゃねえの。
 俺もそういや覇竜やら何やらで花見やってなかった気がするぜ。折角だからこの機会に楽しませて貰おうか」
 そう言いながらもaPhoneをちら、と見遣った『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)の仕草に「定様はなじみ様のお迎え中でしょうか?」と問うたのは『陽だまりに佇んで』ニル(p3p009185)。その脳裏に過ったのは天義騎士イル・フロッタが先輩騎士と仲良くするお手伝いをした時の事だ。ニルには色恋沙汰や其れに類するあれやこれは未知そのものではあるが――「今回は、なじみ様たち、なのでしょうか……?」とこてりと首を傾げる。
「まあ、そういう事!」
 千尋ががしがしと頭を撫でれば『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は「夜妖も『えいやっ!』ですむなら……こわくないね……」とふんすとやる気を漲らせていた。
「メドゥーズのバラは、クイーンニャーコ……? しにゃこの名前がついた花とかすごい。どれかな? どんな感じのお花なのかな……?」
「ふふん、クイーンニャーコですか……名付けた人は最高のセンスですね! 100にゃこポイントあげちゃいます! というかあらゆる新種にしにゃの名前付けて世界制覇しましょう!天才!」
 地図を確認して夜妖退治の現場にも向かおうとするリュコスの傍で案内としてクイーンニャーコの名が掲げられているとaPhoneで激写し続ける『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)。その背後からずいずいと近寄ってきたのは『殿』一条 夢心地(p3p008344)である。
「はぁ~~~~~~~~??? しにゃこの名を冠した薔薇じゃと???
 だめだめだめだめだめだめ! 全然だめー! アーカーシュアーカイブスでもないのにそんなのだめー!
 薔薇の名前になる……その価値をぜーーーったいこのぽんぽん娘は分かっちょらん! うむ。この気品であればキングユメゴコチと改名した方が良いのではないか? ん? ん?」
「しにゃは気品凄いですけど??」
 リュコスは思った――夜妖よりこの人達の方が怖い可能性がある。にゃーこと呟いたのは『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)。
「新種の薔薇『クイーンニャーコ』……猫さんみたいな薔薇、なのかな。
『若光』……にゃーこ……可愛いね。どんな可愛い薔薇なんだろう……?」
 そう、本来は若い光と書いてにゃーこ。しにゃこではないのかも知れないが――それはそれ。キングユメゴコチとなる可能性が示唆された薔薇へと一行は向かうのであった。

 カフェローレットの前を右往左往為ているのは『なけなしの一歩』越智内 定(p3p009033)である。
「ああ、待ってたよ。お手紙は渡したけど『これだけ!』って離れなくってー」
 手をひらひらと振ったのは本日のシフトに入っていた夜迷である。定は「うーん」と首を捻った。折角、問題集に齧り付いているならばあまり邪魔はしたくはない、が……。
「そっちの公式もなじみさんに使われたいけれど、恥ずかしくて言い出せないみたいだぜ」
「あ、定くん。この公式照れ屋なのかな。なじみさんはアピール力抜群のこの子ばっかり見て……んー……あー……こう!」
「正解」
 それとなく解を出るようにアドバイスをした越智内 定。今日ばかりは年上である事を天に感謝したのだった。
 外部からの受験となるなじみは希望ヶ浜学園の大学に進学したいそうだ。定もなじみが目標を定めたのならば応援したかった。
 ――……別にやましい思いはないぜ? ないったら、千尋さん! 空で親指立てないで!


「あ、待ってたよ!」
「バラ、あっちだって……」
 手をぶんぶんと振った花丸の後ろからひょこりと顔を出したリュコスはそわそわと身を揺らす。怖くなさそうな夜妖を『えいや!』して薔薇を見てのんびりと過ごすことが楽しみなのだ。
 一方で夢心地はバラの名前に関してのクレームを叫んでいた。その声を聞きながら『にんげんってこわいんだ、ぷるぷる』としていたリュコスは宙に浮かび上がっている謎の人形を視認して――
「薔薇は私のものだー!」
「Uhーー!!? 声こわいーー!!」
 勢い良すぎた。びくっと肩を跳ねさせたリュコスの傍らでなじみが「一体何が」と生唾をゴクリを飲む。
「金色の髪のビスクドールと薔薇って言う組み合わせはとても映えてて綺麗だけれど……
 なんで薔薇を触られたくないのだろう? どの道倒さないといけなくても気になっちゃうよね。普通に聞いて教えてくれるだろうか?」
「実は僕も気になってたんだ。農園や薔薇やここに来る人達にこれ以上被害を出したくないから供養はするけど……。
 きっと僕より薔薇の綺麗さを知ってるんだろうけど、薔薇を独り占めしようとするなら、対処するしかないんだ……ごめんね」
 定が理由を聞きたいと人形に向き直るが「ああああー!」と叫んでいる人形には声が届かない。しょんぼりとした祝音の傍らで千尋は「話聞いてないな、この人形」と指差した。
「しかし何かこう、人形と恨み節のギャップでやりづらいんだよな。何らかの禍根ってなんだ? 薔薇は私のものだ、って……クイーンニャーコが原因とか?」
「薔薇は私の物だーーー!! 近寄るなーー!」
「きれいな花を独り占めするの、ニルはもったいないと思います。みんなで見ると、きっともっともっとすてきになるのです。
 それに、お世話や手入れをする人まで傷つけちゃうなんて、花のために、ならないと思うのです。
 お人形だって、せっかくきれいなのに……こんなふうに暴れているのはかなしいです」
 しょんぼりとしたニルに夜妖は「でもやだーー!」とバタバタと暴れ回っている。
「お世話も出来ないと貴女が独り占めしたいって思った薔薇たちも弱っちゃんだよ。だから、ごめんね?」
『えいやっ』とした一向に人形は「だってーー! この薔薇の名前を『ドキドキフラワー』にしたかったんだもんー!」と叫ぶ。
「よーしわかった! 俺がお前の禍根を受け止めてやる! 思う存分不満ぶちまけて来いや! まあ、死ぬことはないだろ、たぶん……」
「薔薇を頂戴ーーー!!」
「渡せないけどッ、なッ!」
 千尋が受け止めてしにゃこ&夢心地が『えいやっ!』としてみせる。
「いやいやいや、クイーンニャーコでいいじゃないですか! ってか、薔薇より本物のしにゃの方が可憐で可愛いですよ!
 見惚れるならしにゃ本体にしてください! いくら見てもいいですよ! 有料ですが! 今ならサブスクでお得です!」
「いやいや、待たれい! 重要な話をしておるところじゃ! 夜妖なぞに構っておる暇はない。即座にバッサリ、さよなら哀愁。
 ちょっぱやで倒してクイーンニャーコの件の続きじゃ!なんとかせねば~なんとかせねば~。なんとか! せねば!」
 ――薔薇の名前だけで此処まで大騒ぎになるのだ。人間ってやっぱり怖いと感じながらリュコスは「なむなむ……二度と怖くならないでね……」とひよのに人形を手渡したのだった。


 観光農園には馬や牛を始め、わんにゃん盛りだくさんである。祝音は猫さんが居ると聞いていたから楽しみとそわそわとその体を揺らした。
 どうやら首輪を付けた猫はリードを付ける事でお散歩を一緒にすることが出来るらしい。折角ならば薔薇を猫たちと眺めたいと祝音はのんびりと農園内を歩き出す。
「ひよの様。もしも大丈夫なら、1輪だけクイーンニャーコを摘んで、お人形にあげたいです。
 きっと、とってもとっても好きなお花なのでしょう? 全部はだめでも、少しだけから……。
 ひよの様のところできちんとお人形に戻れますように、それか、一緒にお花を仲良く見に行けるようになったらいいのになって、思うのですよ」
「ええ、よいと思いますよ。一輪頂きましょう。それから、一緒に供養して上げませんか?」
「……、はい!」
 こくんと頷いてからニルは初めての観光農園をすいすいと走って係員へと声を掛ける。微笑ましそうに眺めるひよのは「眩しい」と優しい気遣いを見せたニルを見遣ってから目を細めた。
「わあ、これが、クイーンニャーコ……小さな薔薇、可愛いね。猫さんがいるとじゃれちゃうかな?」
 手をひょいと伸ばした猫に「だめだよ」と祝音はぎゅうとその小さな体を抱き締める。ふわふわで、小さくて可愛くて。猫じゃらしで遊んでみるだけでも心がぽかぽかと暖まる。
「それにしてもなんとも良い咲きっぷりじゃの。秋の薔薇も落ち着きがあって良いが、やはり春薔薇の目覚めるような輝きは格別よ。
 天気も良し、香りも良し。絶好の薔薇園日和、楽しまなければ損というものじゃ。
 ちなみに麿の好みの品種はメルヘンケニゲンという愛らしいピンクのハイブリッドじゃな。こやつはとにかく色と花形のバランスが――」
 朗々と夢心地が薔薇について説明する傍らでリュコスは「ねえ、しにゃこみたいな顔じゃない……!」と薔薇を指差して慌て出す。
「しにゃみたいな薔薇だと可愛すぎて全薔薇が嫉妬しません?」
「Uh……そうかも? あ、これ、いい匂い……。ステキなかおりがして好きだけど、もふもふもいいね……!」
 お散歩中であった犬が足下に遣ってきたことに気付いてリュコスはなでなでとその頭を撫で回す。姿勢を低くして、耳と尾を出したリュコスは「わー」と集まってくる犬猫にもふもふと埋もれて。
「どうして……だれかー……助けてー……。
 もふもふいっぱいで天国だけども…! このままかこまれたままだと帰れなくなっちゃう……たくさん困る……」
 慌てるリュコスを見遣ってから「お、イイネ」と千尋が参戦する。
「ねこと戯れながら薔薇の香りを優雅に楽しもうじゃねえか。ワルとねこという黄金のコンビ、さらに薔薇も合わさった完璧な黄金比だぜ。
 どうだい皆? めちゃくちゃ映えると思いませんか? 今がシャッターチャンスだよ! 花丸ちゃん!」
「それじゃ千尋さん、猫さんも。撮るよー?」
 シャッターチャンスを逃さぬ花丸と千尋の間に咄嗟に滑り込んだのはしにゃこ。
「いえーい! だぶぴ!
 ……すいません、写真にはつい割り込みたくなる性分で……可愛いしにゃが写った方が――
 あれ、なじみさんとジョーさんはぐれちゃいますよ? ヘーイヘイヘイ! お二人さーんんんもゴォッ。あ、痛い! 何なんですか! まだしにゃ何もしてなくないです!? 分かった、よく分かんないけど分かりましたから顔はやめてください!」
 ずるずると花丸と千尋に引き摺られて行くしにゃこは「何ですかー!?」と叫んだ。
「だが~? 第一の目的ははジョー&なじみさんの観察だろ! しにゃこ!
 可愛い後輩の楽しい思い出作りとあれば偉大な先輩として出来る事をさせて貰うぜ。
 それとなくチラ見しつつ邪魔になりそうなしにゃこを物理的に排除していく。
 おーっとここで話しかけましたジョー選手! やや掛かり気味かと思われますが如何でしょうか解説の夢心地さん? ひよのさん?」
「なんじゃ伊達チャン、あのボーイ&ガールが気になっとるのか? えっラブ的なやつ?
 だめだめだめだめだめだめ!そんなんだめよ。 だってもし……えっちな展開になっちゃったら……見てられないじゃん?
 そんなわけで解説もここで終了~。あとは二人きりにして撤収じゃ。なーーーーーっはっはっは!」
 夢心地が「イヤーン」と顔を隠せば千尋がからからと笑う。ニルとリュコスは顔を真言わせて「ラブ?」「らぶらしいです」と頷き在った。
「成程……2人や皆が楽しそうなら僕も嬉しい。ひよのさん、皆……猫さん、撫でる?」
「ええ。そうしましょう。あっちで猫をもっと見ましょうか」
「普通こういう場所って触れ合いや餌やりだけなのに、ペットとして買い取ったりも出来るんだね。
 素敵な家族と出会えるかも知れないしね! 祝音さんも気に入った猫ちゃんがいれば家族になれるかも?」
 行こう行こうと祝音を手招いた花丸に手を引かれて花丸は「花丸ちゃんの場合、お家を離れてることが多いからそれも難しそうだけど」と唇を尖らせる。
 ペットのお世話は大変だ。仲間達と合同で飼育しているもふもふポメラニアンのポメ太郎も居る事もあり当面はポメ太郎で我慢だろうか。
「ひよのさんはどう? 好きな動物とか飼ってみたい子とかって居る?」
「そうですねえ……」
「ひよのさん飼いたい動物がいないならしにゃとか飼ってみてはどうですか!?
 可愛いですよ! 賑やかですよ! だから養って! あっ、足を囓らないで馬!!!」
 何故か傍に存在して居た馬にもぐもぐと囓られるしにゃこは「止めて下さい! 貴重な就職先への面接ですからァッ!」とばたばたと慌てている。
「……Uhhh……か、かじられてる……」
「お、おいしいのでしょうか……」
 馬にもぐもぐと囓られ続けるしにゃこを眺めておっかなびっくりしたリュコスに薔薇が食べられるのかと問うていたニルは『しにゃこ様は美味しい?』と首を捻る。余りの様子に怯えてしまった白い猫をぎゅっと抱き締めた祝音は「怖くない、怖くない」と猫をあやし続けたのであった。
 ――因みに、この可愛さで一生食べていくから進路は大丈夫だと告げるしにゃこに「土産物買いに行こうぜ」「猫さんのぬいぐるみが欲しい」と仲間達はスルーしたのだった。


「なじみさんはこっちの大学部を目指してるみたいだけれど、ひよのさんはどうなんだい?」
「ひよひよって、学年も不明だよね。制服以外着て学園に居てって言えば大学生のお姉さんもしてくれそう」
「確かに」
「それに、さ。定くんとキャンパスライフも良いよね。私、頑張れるかなあ」
「出来るさ。なじみさんならね」
 くすくすと笑ったなじみに定は笑う。花丸も含め四人でキャンパスライフというのも夢ではある。
 夏休みになれば合宿勉強を為ても良いと思うと提案すれば「夏休みは暇なのかい?」となじみは首を傾いだ。
「僕? 僕は……自動二輪免許の合宿に行こうかと……って……あれ?」
 楽しげな一行が距離を取ってしまった事に気付いて定はきょろきょろと周囲を見回した。
「いつの間にか皆居なくなってるんですケド……え? 僕となじみさん置いてかれてる? なんで?
 う~ん、取り敢えず折角の気分転換だし、色んな所見て回って皆を探してみようぜ。薔薇の日時計やアーチもあるし」
「そうだねえ。何でか置いてかれちゃったし……皆でお土産見に行ったのかも知れないぜ?
 後でお揃い買おうよ。定くんは紫色の猫を買うのは決定だぜ?」
「どうし――……ああ、いや、そうだね」
 紫色の猫なんて、君じゃないかと言い掛けて定はふい、と目をそらして「赤色のイメージがある薔薇だけどピンクや黄色も綺麗だね」と言った。
 のんびりと歩き続ければ動物たちとのふれあいコーナーが見えた。どうやら、牧場の動物は購入することが可能であるらしい。
 気に入った動物が居ればその飼育権利を買い取って此の儘連れて帰る事が出来るらしい。
「なじみさん、ほら。犬や猫までいるぜ。
 へえ……引き取れるのか……働き始めてさ、余裕が出たら猫とか迎えてみたいんだよね。
 昔は犬派だったのだけれど、最近は猫の気ままさも良いなって思うんだ」
「其れはどうして?」
「どうしてだろうね」
「なじみさんは猫が好きだよ。猫、気ままで、のんびりしていて、それから……君だけに心を許す」
 そういう事を言うと定が叫びだしそうになりながら、早足で向かえば馬に囓られて叫んでいるしにゃこが見える。
「あ、居た」
「おーい! ひよひよ、花丸ちゃん! 皆! 酷いぜ、置いていくなんて!」
 手をぶんぶんと振りながら走ってくるなじみに気付いて祝音が「あ、やっと」と手を振り返す。
 馬に囓られるしにゃこに「おしいいのですか?」と首を傾げるニルと慌てるリュコスを眺めていた祝音は猫の手でも借りたい気分だったのだろう。
 千尋がクイーンニャーコをドライフラワーにすると宣言すれば『キングユメゴコチ』に改名した体で話を進める夢心地が「素晴らしい出来映え! 天晴れ!」と黄色の薔薇を飾り立てて居た。
「ちょ、ちょっと、しにゃを助けて下さいよ!」
「馬の餌やり体験をしているの? いや、随分と活きの良い餌みたいだけど」
 衝撃でも受けたように見遣る定にしにゃこが足をバタバタとさせている。
 ボーイ&ガールの密会が終わったことに気付いて夢心地が「伊達チャン伊達チャン、どうかしら~?」とにやりと笑みを浮かべる。
「いやあ、後輩も掛かり気味ですが、良い感じであったのでは!? どうですか、ひよのさん!」
「なじみの方が上手ですねえ」
「カッー!」
 揶揄うような千尋と夢心地に定は「ゴホンッ」と咳払いを一つ。花丸は「リフレッシュになった?」となじみに問いかけた。
「勿論! 大学生の定くんに進路相談をする機会をくれたんでしょ?」
「……うん」
「はい。ニルは、皆さんのお手伝いをしました」
「うん。二人でお話しできたなら何より」
 今回の良心であるリュコス、ニル、祝音がこくりと頷けばなじみは「有り難う!」と嬉しそうに微笑んだ。
 お土産屋ではクイーンニャーコを記念したグッズの他、猫のぬいぐるみ等も購入しよう。
 今日の思い出にぴったりだとなじみは嬉しそうに微笑んだのだった。
 美しい薔薇咲き誇るその場所で、君との思い出を数えて過ごそう。今日も良い日でした――!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。飄々としたなじみさんもそろそろ進路を考え始める時期です。
 ひよのは、高校生『ぽい』ですが実年齢は不明なので、大学生として通ってきてくれ!と言えば案外其の儘大学生として生活してくれそうですね。

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