PandoraPartyProject

シナリオ詳細

弱肉強食

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある日の昼下がり、ローレットにて
「よう、イレギュラーズ諸君。肉食ってるか?
 なに? そんなぽっちしか食ってないのか! っかぁ~~~!
 そんなんじゃ強くなれねーぞぉ!? 期待してんだからよ、頼むぜホントに。
 しかたねえ。そんなら俺が一肌脱いでやらあ!
 そうと決まればいったん帰らねえとな……善は急げってなあ!」

●あくる日の昼下がり、ローレットにて
「みなさん、鉄帝……ゼシュテル鉄帝国から依頼が届いているのです」
 手をぱたぱたさせて「きいてくださーいっ」と呼びかける『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)にイレギュラーズが振り返る。
「依頼内容は肉の調達。ある地主さんの家畜を狩ってくることなのです」
「狩る……? 盗むのか?」
「ううん、違うのです。依頼主が地主さんなので、仕事のお手伝いって感じなのです」
 答えながら依頼書をテーブルに広げる。そこには豪快かつ簡潔に「肉持って来い!!!!」とだけ書かれていた。
「うわぁ……」
「ひかないでください……」
 当然ながらこれだけでは依頼として成立しないので、ユリーカが取りまとめたらしき細やかな情報や条件が追記されている。
 いわく、依頼主の所有する広大過ぎる牧場にて放牧されっぱなしで野生化している家畜を狩って来いとのこと。
 種類は問わない、量はなるべく多く。ただし奴らも生きる為反撃してくるだろう。
「それは家畜とは言えないのでは」
「鉄帝だからなあ」
「弱肉強食だと依頼主は言っていたのです。みなさんも餌にならないように気を付けて下さい」
「肉食なのか!?」
 冗談なのです、と返して笑うユリーカ。ただ、返り討ちに遭うかも知れないというのは冗談ではないのだろうなと、イレギュラーズは察し始めていた。


GMコメント

殺してバラして売り払いそして食う。
それでも畜産家は家畜を愛していると思います。
さて、鉄帝ではどうなのでしょうか。
以下依頼詳細です。

●依頼内容
「肉持って来い!!!!」
・依頼主の所有する土地に放牧されている家畜を仕留め、持ち帰る
・種類は問わない
・量は多い方が良い
・時間は朝から夜まで。陽が落ちると危険なのではよ帰るべし
・肉が少ないと依頼失敗

●家畜の種類
・牛的なものから羊的なもの、鶏的なものもたくさんいる
・モンスターもいる
・群れるもの、反撃するもの、無関心なものなど、多種多様
・動物知識やモンスター知識、エネミースキャンなどで情報がより多く分かる
・基本的に近付き過ぎたり刺激しなければ襲ってはこない

●土地について
・広い
・草地、森、川などが有る
・あちこち行こうとすると移動だけで陽が暮れる

●ユリーカアドバイス
・確実に依頼をこなすにはどこでどんな動物を狙うのか決めた方が良いのです
・狩る方法も重要なのです
・一発大逆転に賭けるならおいしそうな動物を探し回ると良いのです
・お肉の運搬方法も忘れちゃいけないのです
・弱肉強食、戦闘の準備も忘れずに……なのです

  • 弱肉強食完了
  • GM名天逆神(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月28日 21時50分
  • 参加人数10/10人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

レッド(p3p000395)
赤々靴
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
ノベルギャザラー
アレフ(p3p000794)
純なる気配
サングィス・スペルヴィア(p3p001291)
宿主
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
ケイティ・アーリフェルド(p3p004901)
トラッパーガール

リプレイ

●出立
「さて」
 大男が一人、遠ざかる十の背中を見送った。
 行く先はたかが農場、されど野生化した大型獣が蔓延る原野だ。
 向かう十名のイレギュラーズは、やがて二手に分かれて進みだす。一方は内部の様子も知れない森林へ、もう一方は真逆に隠れ潜む事も出来ない平原へ。
「例のちんまい情報屋から危険だと知らされて居たはずだが――」
 原生生物についての情報は特別集めてはいないようだ。
 唯一ミディーセラという少女然とした老翁がいくらかの知識を持ち、質問もしていったが……。
 言ってしまえば行き当たりばったりだ。
 しかし、突然にイレギュラーズと成って戦う事になった彼等にしてみれば、それが常でもあるのだろう。
 果たしてそれは余裕と覚悟なのか、油断と怠惰なのか。
「鴨撃ちのつもりで虎を狩る羽目にならなければ良いがな」
 そう言いながらも楽しそうに笑う大男は、嵐が来るのを待っていた。


●草地
「罠を作りますわ」
 言うが早いか、『トラップ令嬢』ケイティ・アーリフェルド(p3p004901)が馬車を飛び降りた。
 馬車を走らせていた『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)は慌てて手綱を引き、急停止する。
「ここでかい?」
 ジョゼが手元のメモに視線を落としながら「ここは難しいと思うけど……」と続ける。メモは地元のダチコーが書いてくれた狩りの定石や手順なんかのガイドだが、そこには平原のど真ん中に罠を張るなんて事は書かれていない。
「時間が無い以上、罠を使うなら追い込み猟だ。私はケイティに賛成する」
 止まった馬車から降りつつ 『堕ちた光』アレフ(p3p000794)は辺りを見回す。
「それに、私達が近付けば察知して直ぐ逃げているようだ。メモを頼りにベストポジションを探り当てるより、さっさと仕掛けて追い込んだ方が良いように思える」
 超聴力を持つアレフが耳をすませばそこら中から動物の呼気や動き、草葉の擦れる音が聞こえてくるのだが、しかし近付けども近付けども視界に動物を捉える事は無かった。
 避けられている。
 それは既に気付かれているという事。
 罠を巧妙に隠し獲物が掛かるのを待つ、なんて事は、始めから無理難題だったのかも知れない。
「まあその場合の手順も教えてくれてたけど、やっぱりダチコー本人が来てくれなかったのは痛いなあ」
「仕方ないっすよ、こんな牧場じゃ同行するだけで命懸けになるっすから」
 伸びをしていた『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)が平地の向こうを指差して言う。そこには遠目で分かるほどに巨大なモンスターが地響きを立てながら歩いていた。
「それもそうか」
 さすがにダチコーが死んだり大怪我したりするのは夢見が悪いとジョゼは納得して頷く。
「それより、狙うなら大きい牛や丸々太った豚……猪っすよ。量を狙うのもいいっす」
「筋肉で丸々太ったやつならたくさんいそうだな……」
「それなら狙うのは草食の若い雌の個体が良いな、お肉が柔らかくて美味しいよ!」
 レッドとアレフの会話に混ざりながら最後に馬車を下りた『髭の人』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)が腰を叩きながら言う。
 ムスティスラーフは元の世界では狩りを行っていた事も有る。久し振りの狩り、それも異世界かつ、混沌肯定により狩りの技術も縛られた状態ではあるが、経験は貴重なものだ。
「メス……見分けられるか?」
 しかし知識もまた重要であると、誰ともなく呟いた一言が沈黙を生んだ。
 その時、
「出来ましたわ」
 ドレスの裾を翻す様に砂ぼこりを叩き落とし、ケイティが戻ってきた。その背後には半分ほど隠蔽されているがかなり大きな落とし穴がある。
「子象くらいなら落とせますわ。みなさんもこれを参考に手伝ってくださいませ。それと、底にはトリモチとマキビシをお忘れなく」
「流石だねえ」
 凛と言い放つ笑顔の令嬢に、ムスティスラーフが楽しげに笑って返した。


●森林
「よろ、しくね」
 馬車を引いて来た『孤兎』コゼット(p3p002755)が森の入り口で仲間達を見送る。牧場と言えどここは危険地帯、見張り役を買って出た彼女に仲間達は「そちらも」と返し、森の中へと歩を進めた。
「でも、襲われる事はないと思いますわ」
 そう言って自前の知識と得られた情報から外敵を思い浮かべる『灰かぶりのカヴン』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)。モンスターにしろ獣にしろ、牧場に居るのは草食で、馬車をすすんで襲うような者は居ない。もし馬車を襲うとすればせいぜいが死肉狙いの鳥くらいなものだ。
 しかし作戦は変更しない。得た情報は事前に決めた作戦の中でだけ活かす。
「それで、狙えそうな獲物は居るのかしら?」
 冷笑を浮かべた『宿主』サングィス・スペルヴィア(p3p001291)が問うと、一度唸ってミディーセラが返す。
「兎、鹿、猪。それとカウボーア、ギガントディール。魔獣・モンスター枠ではアルミラージとデミコカトリス、ラタトラット、ダーカーゴート、ウッドウルフ、レッサーゴリラ、モチノキ、カゼナキドリ、フォックスバインド、ぽにゃ、グレーターグリズリー……」
「多い多い多い!」
 つらつらと名前を上げ続けるミディーセラを『任侠』亘理 義弘(p3p000398)が制す。崩れないバベルのおかげで分かったのは最初の方だけで、得体の知れない名前が多過ぎた。
「俺達で狩れる奴だけで良い。魔物よりは獣の方がいいだろう」
「同意ね。兎と鹿だけでも十分だと思うわ。ただ……」
 スペルヴィアが話しながら周囲を見渡す。
 木洩れ日の多く差し込む明るい森には鳥のさえずりや動物の声が響いているが、それらは全て遠くから聞こえてくる音だ。
『逃げられているようだ』
 スペルヴィアから別の誰かの声がする。彼女の有する呪具、サングィスのものだ。
「ああ。でかいのはまだ余裕は有りそうだけどな、気付かれていそうだ」
 義弘も耳を澄ませてみるが、結果は同じ。
「やれやれ……これは骨が折れそうだね。探知は万全だが、近付き仕留める用意はしていなかった」
 上方、木の幹に刺さっていた『KnowlEdge』シグ・ローデッド(p3p000483)が下りてきて言う。
「と言っても素人が集まったって出来ることには限りがある。幸い探知は出来ている、そこから少しずつ進めていこうか」
 シグの言葉に皆が頷き、一同は森の奥へと向かった。


●狩猟
 はっきり言えば失敗だった。
 基本的に移動しない草食動物を罠に掛けるには、専門家だって猟犬を使うか黙って何日も待つ。
 加えて草原、平野となれば、大型草食動物の逃走・突撃を阻む物も無い。安全かつ確実な狩猟には車などの移動手段とライフル等での狙撃が必要となってくるが、無辜なる混沌でこれらを揃えるのは非常に困難だ。
 それでも平野での狩りは可能であるが、それは歴戦の狩人が集団で行う狩りである。
 それを己の力だけで成し遂げようとするイレギュラーズは、まさに不可能を可能に塗り替えんとするパンドラの申し子だった。
 まあ、やっている事は非常に途方の無い長距離走なのだが。
「つ、疲れた……っす!」
「もう動けないぞ……!」
 レッドが肩で息をすると、その隣にアレフが倒れ込む。
 酷い有様だった。
 都合よく罠に近付いて来る獲物なんて居なかったのでかなり遠くから誘導したものの、相手はたいてい大型草食動物、追えばものすごい勢いで逃げるし、挑発して誘き寄せようとするとあっさり追い付かれどつかれた。
 そもそも大型草食動物は人間よりよほど強い。鉄帝で他のモンスターなどと同じ場所で育ったこの牧場の動物達なら尚更だ。如何に鍛え上げたイレギュラーズであっても易々と狩り殺せるわけではなかった。
 それでも逃げ足やら遠距離攻撃やらを駆使して、なんとか獲物を落とし穴に叩き込むのに成功したのだが――
「少ないですわ」
 不満そうにケイティが言う。
 自慢の罠は二つ発動し、それぞれに牛と、牛の角を持った巨大猪・カウボーアが落ちていた。
「罠は完璧でしたわ」
「私の超聴力も索敵面では完璧だった」
「ボクの足跡と逃げ足も役に立ったっす」
 三人が顔を突き合わせる。
 掃討依頼では十数体の魔物や人を打ち倒す事も多いイレギュラーズにしてみれば、これだけ時間を掛けて二頭しか狩れなかったというのはやはり少なく感じるだろう。
 しかし、
「逆なんじゃないかな」
 そう言いながら牛の血抜き作業を進めていたムスティスラーフが言う。
「全員の力を合わせたから、二頭も狩れたんだよ」
 でなければ何も狩れずじまいと言うのも大いにあり得ただろう。
 今回集まったのはケイティを除けばいずれも猟師でもなければ畜農家でもないイレギュラーズ、それも分担したので五人きりだ。となれば、万事が上手く進む事の方が有り得ない。
 実際、アレフが超聴力を活かして狙う獲物を定めなければ今の倍以上の時間が掛かったろうし、レッドの逃げ足が無ければ何人かは戦闘不能になっていただろう。罠も戦闘を回避し獲物をなるべく良い状態で入手するのに欠かせなかった。
「成功しただけで上出来だよ。正直、最初の数時間は絶望的だったしな」
 くたびれた様子のジョゼも言う。
 最初はただただケイティの動きに付いて行けず連携もガタガタ、集めた情報も活かしきれなかった。それでも彼が集めた情報も経験(主に苦い)とすり合わせる事でかなり有用になったし、ムスティスラーフの知識や、瞑想を挟んで維持した戦闘力もなくてはならないものだった。
 牛の群れに轢き殺されそうになった時は人の足で逃げ切るのは無理なんじゃないかと本気で思ったし、実際無理だったので追われて逃げる者とそれを守るため攻撃を仕掛ける者に分かれて動いていたくらいだ。
 魔種だって牛の群れに轢かれたらただでは済むまい。たぶん。
「……そうですわね。不満を言っても仕方ありませんわ」
 ケイティも思い直して息を吐く。
 罠は完璧だった。それはこうして証明されているのだ。
 依頼もこの調子ならば成功するだろう。
 そう、なにも問題は無い。
「ああ、ケイティ。悪いけどそっちの獲物を罠から引き上げといて」
「言うまでもないけど、めちゃくちゃ重いのと、トリモチとマキビシに気を付けてね」
「……もっと浅く掘ればよかったですわ」
 問題は、きっと、無いのだ。


●帰還
「……これ、は」
 コゼットは迷っていた。
 いや、躊躇っていた。
 馬車を見張り留守番をしながら付近の獲物を狩る、そうしようと思って見付けた最初の獲物を前に。
 それはとても小さく、丸くふわふわとした身体に張り付けるようにして大きな耳を持ち、鼻をぴすぴすと鳴らしながら森から出て来た小動物。
 ウサギだ。
 兎はコゼットに気付かず、その辺をうろちょろしては立ち止まり、立ち止まってはうろちょろしている。
「う……うぅ……」
 狩り難い。
 自身が兎のブルーブラッドである上にココゼットというミニウサギまで飼っているコゼットにしてみれば、これはいわば同胞殺し、人間種で言う人狩りに等しい……かも知れない。
「でも、な……」
 正直ただ待つだけで何の成果も上げていないのは忍びない。見張りが必要だと思ったとは言え、このままではイマイチ活躍した気がしない。
 仕事をしなければ。
「……でもぉ」
 などといつまでも躊躇っていると、ふいに兎が跳びあがり、森とは逆方向に走り出した。
 次の瞬間、反射的に追い掛けようとしたコゼットの背後で、森が爆発した。
「!?」
 驚くコゼットの元に巻き上げられた木々や草花の破片がぼたぼたと落ちて来る。
「コゼットさん!」
 それと同時に、ミディーセラからハイテレパスが届いた。
「森の中で範囲攻撃はマズかったんじゃないかしら」
「いや森の中で腸抜きするのもマズいだろう」
『我等程ではないにしろ、中身を抜けば持ち運びが容易になる』
「大量の肉を小動物で賄うには範囲攻撃ほど有益なものは無かった」
「ああうるせえ! どっちも最高で最低だったってだけだろうが!」
 殿を務める義弘が言い争うスペルヴィア達とシグを怒鳴り飛ばす。
 その背後には木々を薙ぎ倒しながら巨大な鹿、ギガントディールが迫る。
 どうやら森の主の怒りを買ったらしい。
「臨戦態勢、戦闘開始!」
 テレパスを通じて短く号令が飛ぶ。
 コゼットはステップを踏んでナイフを構え、スペルヴィアと義弘は抑えに回り、シグとミディーセラは更に距離を取って後方から攻撃と回復を担う。
「結局こうなるのか」
 降り注ぐ木片や土塊を一つ残らず拳で叩き落とし、息を吐く。直後、頭上から振り下ろされた巨大な蹄を渾身の一撃で押し留め、弾き返した。
「分かり易くて良いわ」
 嗤うスペルヴィアは義弘が殴り返した蹄を伝い、ギガントディールの山の様な巨体を駆けあがる。狙うは頭部。サングィスを介した逆再生の術式は、自身より大きな鹿頭をどす黒く変色させ壊死させる。
「まったく鉄帝らしいというべきか」
 呆れたように言うシグが大剣と化す。その刀身に纏い燃え盛らせた炎は膨大な破壊エネルギー。ギガントディールの桁違いな巨大さが仇になったと言わんばかりに、放たれたシグの異想狂論「偽・烈陽剣」は巨獣の胴体を完全に貫き通し風穴を開けた。
「それなら鉄帝的にやりましょう!」
 苦しみもがくギガントディールを、ミディーセラがすっと指差す。ただそれだけの動作に組み込まれた災いの術式melum-melumは、ギガントディールの受けていた全ての不和を増幅し、内側から崩壊へと導く。
「賛成、だよ」
 全身からどす黒い血が溢れ流れ出したギガントディールの上をコゼットが駆け回れば、振るわれた薄氷の如き刃が鮮血に煌めき、致命的な血管や重要な関節をズタズタに引き裂いていく。

「ぶぉおあああああああ!!!!!」

 それでも倒れない巨獣の雄叫びが大気を揺るがすが、イレギュラーズは退かずに立ち向かう。
 地を蹴れば大地が抉れ、角を振るえば森が千切れ飛ぶ。そんな化物も、獲物である事には変わらない。
 そう、獲物なのだ。
 ――森の中に置いて来た獲物にこの大物を加えればノルマはクリア出来る。
 そう気合を入れ直してイレギュラーズは再度化物へと向かっていった。
 

●謝肉
「御疲れさん」
 にこにこと依頼主の大男が笑う。
 労いの言葉と共に出された飲み物に飛び付く事も出来ず、イレギュラーズはぐったりとしていた。
「量は十分だな。傷みも少ない……いや、ギガントディールは半壊してるか」
 まああれを返り討ちに出来ただけで十分か、などと言って益々笑みを深くする男に、何か言いたいが声が出ない。
 イレギュラーズは全員無事に帰還した。
 五体満足。心身ともに疲弊し切ってはいたが、肉も十二分に手に入れていた。
 陽が暮れてきた途端宵闇と共に訪れた猛禽系魔獣の群れに襲われかけたり、水牛の群れの大移動に巻き込まれかけたり、帰り道も無事とは言い難かったが。
「しかしまあ、十人……いや、五人ずつで無事に狩猟できるとはな」
 コゼットとジョゼ、そしてムスティスラーフが引いて来た馬車にははみ出さんばかりの獲物が乗せられており、ギガントディールに至っては持ってこれなかったので報告だけ済ませた形だ。
 大男は満足気に頷き、部下らしき男達に指示を飛ばしてすぐさま肉を運ばせた。ついでに、馬車の洗浄・消臭なんかもやってくれるらしい。
「さて諸君、よければ今度の収穫時期にはまた呼ばせて貰って良いか? 今度は狩猟団の短期バイトとしてな」
 気を良くした大男はイレギュラーズに向き直り、一人一人の顔を見て言った。
「……狩猟団?」
「おう。収穫する時にだけ働かせる狩人軍団だな。30~50人編成で年数回ここで大狩猟大会を行う」
「今回みたいのは……」
「少数での狩りは突発的に肉が要り様になった時しかやらん。俺の小腹が減った時なんかは一人でもするが、初見数人編成で生還したのは珍しいな」
「おい……」
 どうやら今回の狩猟は鉄帝でも一般的とは言えない方式だったらしい。
 そもそもこの牧場自体がイレギュラーかも知れない。
 だがしかしこれも鉄帝。これが認められ実際に存在するという事。もしかしたら同じ形式の牧場も他にないとは限らない。
 ただ、それにしても、

「疲れた……」

 誰が言ったか、その言葉に大男以外は深く頷いたのだった。







成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大変お待たせしました。
 そして御疲れ様です。

 今回はイレギュラーズのほとんどが未経験、あるいは本業ではない狩猟に挑んでもらいました。
 なのでもっととんでもない行動をとるか、あるいは特に難しくない事だと思って臨むかすると思ったのですが、結果は皆様出来ることに集中したプレイングで素敵でした。
 狙う獲物もごく一部に絞ったり大物・大穴狙いもせず、実に堅実で、依頼成功に向けてのひたむきさを感じた次第です。

 余談ですが、この後は依頼主に肉料理を鱈腹振る舞われたりしたので、余力のある方、余力はないが肉食いたくてしかたない方なんかは御馳走になって下さい。
 ただし鉄帝式肉料理なので繊細な味付けは期待しないで下さい。
 だが美味いぞ!!!


 それでは、依頼へのご参加、有難う御座いました。

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