PandoraPartyProject

シナリオ詳細

[404 Not Found] 00358-β

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●404 Not Found

 ――この依頼書は後に消失する。
 これは貴方達の記憶にだけ残る物語。

●あの日の事
 泣き叫ぶのを期待したのだ。
 生娘の様に。泣いて叫んで助けを求めて……それなのに。
「お父様。私の事はお気になさらず」
 この、領主の娘は――
「それよりも一掃を。彼らを潰せば、この街は必ず安定へと向かいます!」
 取引の場で。何一つ臆する事無く、全てを台無しにして。
「お父様ッ!!」
 場を一喝するような。響く声がとても耳障りだったから。

「こ、の女ァ!」

 逃げ帰ったアジトにて思わず殴り倒す。短い呻き声がその口から洩れるが、相も変わらず目は生きて。
 男達を睨みつける。彼女はクレア。ある貴族のご令嬢だ。彼女の父は幻想にしては珍しく――不正を憎み。街に巣食う悪を討伐しようとした、所謂かな良識のある貴族であった。
 だからこそ警備の隙を突き、娘を攫って。領主への脅しにせんとしたマフィアもどきがいたのだが。
「無駄な事はやめとけ。人質を傷つけたら、向こうさんはもっと躍起になるぞ」
「しかしボス……!」
「いいから下がってろ。外を見張っとけ」
 ボス、と呼ばれた年配の男は外への扉を親指で指し示す。そう。失敗したのだ脅しは。
 人質を見せつければ竦むだろうと思ったのだが。その人質は自らを鑑みるなと言い放って、舌を噛んで自ら命を断とうとした。それ自体は寸での所で防ぐことに成功したのだが――まぁ無論。取引なんてお流れになる有様で。
「やってくれたな。俺としては最悪、金との引き換えで新天地、てのも考えてたんだが」
 今となっては全て無意味か。
「さて、どうしたもんかねぇ」
 猿轡を噛ませたクレアを目の前に。思考の飛び交う煩い外を眺めて。
 ボスはこの先の展開を考えていた――

●突入出来ず
「なぜだ! なぜさっさと突入しない!!」
 同時刻。追跡が成功した憲兵はマフィア共のアジト付近へと展開していた。中の様子は不明だが、先のトラブルでてんやわんやしている事であろう。突入するのならば今すぐ行うが吉なのだが。
「しかしですね。こちらは頭を欠いているんですよ領主様。俺達じゃ中々タイミングが掴めなくてですねぇ」
「お前たちの隊長の事ならば、先日麻薬取引の罪で逮捕しただろうが……今更何を!」
「だからそれは何かの間違いだと思うんですよ」
 あの人はこの街の憲兵を長く勤めているベテランだ。そんな筈はないと下卑た表情を浮かべながら、憲兵の一人は領主へと言葉を紡ぐ。あの人がいてくれれば救出作戦も楽になるのだが、とも。
「領主様はどう思われますか? ねぇ。あれは間違いだったとは思いませんか」
「き、貴様らッ……!」
「いや。このまま突入してもいいんですがね。しかし――お嬢様の身の安全が確保できないやも」
 腐敗とは、悪とはどこにでもある。外にも。内にも。
 時間が無駄遣いされている。領主にとって信の置ける部下は少なく。それでも腐敗は正されねばならぬと断行した改革だったが――ここに来て急いだ弊害がついに来たか。このままでは『最悪』のパターンが訪れてしまわないとも限らない。
 だからこそ――彼は――

●ローレット
「貴方達に依頼したい事があるのですが」
 それは黒衣の女性であった。
 顔が隠れている。まぁ珍しい事ではない。そういう人もいる。どこぞの誰と明かさぬ者など多いから。

「この娘を、救っては下さいませんか」

 差し出されたのは小さめの絵画だ。それには、一人。凛とした女性の絵が描かれていて。
「……失礼ですが、この方は?」
「ある領主の娘、クレアと言います」
 受け付けたのはギルオス・ホリス(p3n000016)だ。どうも話を聞いてみると、この令嬢がマフィアに攫われているらしい。だが腐り果てた憲兵では役に立たぬとか。成程。それでローレットに依頼が来たのか。
「ただ。今回の依頼には一点条件がありまして……『ローレットである』という事は隠して遂行して頂けませんか」
「それは、なぜでしょう?」
「単純に人手がいなくて外部組織に助けを求めた、ならいざ知らず。内部統制できていないから外部組織に助けを求めた――は、些か領主様にとって外聞がよろしくありませんので」
 威信に揺らぎが生じる、という事か。成程それは道理だ。
 となると偶然を装って……別組織も事態に介入し、令嬢を奪い取る事に成功するも途中で逃げられ領主の館に帰還――などという体で送り届けるのが最上だろうか? 少しばかり強引かもしれないが、最終的に令嬢が無事ならそれで良し、だろう。
「方法はお任せします。先程身分は隠して、などとは言いましたが……あの娘には伝えて逃亡の協力を仰いでも結構ですよ。とにかく外部に漏れさえしなければそれでいいですので」
「承りました。ところで、こちらの領主殿。たしか奥方様は……」
「ええ――長年病気で、些か引きこもりがちな人がいますねぇ」
 突然のギルオスの世間話……に。女性は口元を隠して、優しく返答を行う。
 ま、そんな者でも散歩ぐらいは出来るではないですかね、と呟いて。
「領主様もクレアも……どこか、頑固な所があるのが困った所です。最速最短の道ばかりが良い訳では無いというのに。もう少し柔軟な思考を持っていれば……あぁ。クレアなんていざとなれば自らを犠牲にでもするでしょう」
「……意思が強い、のも困りモノですか」
 ともあれ。依頼としては確かに引き受けた。
 令嬢救出の任――しかと果たしてみせるとしよう。

GMコメント

 お世話になります。新人の茶零しです!!!!!!!!
 ちょっと不思議な依頼となっております。
 排他処理等はありません。よろしくお願いします。

■依頼達成条件
 クレアの救出。
 ローレットである事を名乗らず依頼を完遂する。

■戦場(マフィア・アジト)
 周囲は林に包まれています。時刻は夜間。かなり薄暗いです。一般人の影は無し。

 二階建ての普通の一軒家ですが、構造上地下室も存在しています。
 表口・裏口があるようです。また、クレアは地下室に囚われています。
 建物内の具体的構造は不明ですが、複雑な造りにはなっていないでしょう。

 全ての扉・窓には鍵が掛かっています。何らかの技能がない場合強引に破る必要があるでしょう。

■憲兵側×15人
 全員が『テレパス』を所持しています。
 剣を持った前衛が12人。弓を持った後衛が3人の編成です。
 総じて戦闘能力はそこまで高くありませんが、数は脅威です。

 表口側に10人。裏口側に5人それぞれ配置されています。
 クレアの確保を狙っていますが、即座に動く気配はありません。
 領主となんらかの交渉を行っているようです。ただ交渉がどうあれいつかは動きを見せるでしょう。

・領主
 ある地域を統括する貴族です。
 娘を救出しようと動いていますが、憲兵の要求を呑むかどうか非常に悩んでいます。
 戦闘能力はありません。

■マフィア側×5人
 憲兵側の包囲を抜けようと隙を伺っています。全員が一階に集中しています。
 戦闘能力は、個々人で言うと憲兵側よりは少し高いようです。
 しかし数の差がありすぎます。マトモに戦えばマフィア側は全滅するでしょう。

・ボス
 【腹芸】・【ハッキング】の非戦技能を持ちます。
 憲兵側のテレパスを感知して動きを伺っているようです。

・部下×4人
 【罠設置】の非戦技能を持ちます。何らかの簡易的な罠で造っているようです。
 時間が経てば罠は段々と増えていくことでしょう。

 憲兵の突入が遅い事を訝しんでいます。
 が、これ幸いとばかりに迎撃態勢を整えています。

■クレア
 戦闘能力はありません。
 地下室で囚われています。縄さえ解けば走ったりする事はできるでしょう。

  • [404 Not Found] 00358-βLv:2以上完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月16日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゲンリー(p3p001310)
鋼鉄の谷の
ラデリ・マグノリア(p3p001706)
再び描き出す物語
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
刀崎・あやめ(p3p005460)
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ

リプレイ

●救う意思
 例えば誰かを救ってくれと願われたのならば。

「……んっ? なんだ――」
 マフィア・アジトの裏口側。五名で展開してた憲兵が何がしかの気配に気づいた――
 時にはもう遅かった。腐った憲兵共を蹴散らさんとする意思の霧が炸裂。もはや奇襲と言っていいその一撃が、ものの見事に憲兵らの背後から叩き込まれ。
「正体隠しての救出依頼かー お上っていうのは威信だとか面子だとか大変だねー」
 気楽じゃないやーと、先の一撃を放ったのは『悪意の蒼い徒花』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)である。なぜ接近まで気付かれなかったか、と言えば灯の類を一切使わず自然会話に置いて周囲の木々から情報を得ていたからだ。
 無論それは断片的なモノ。憲兵の位置など詳しい事までは期待できない故――得たのは木々の位置だ。向こう側からの視界から見つかりにくい所ぐらいならなんとか探し出せたようで。そのおかげかかなり近くまで接近できていた。更に追撃する形で。
「街を守る衛兵が自分達の都合でお仕事サボっていやがらせだなんてとんでもないよね! こんな人たち一回成敗されなきゃ駄目だよ成敗!!」
「まーったく……公権力が腐ってると弱者に被害が行くのはどこの世界でも同じなのね……憲兵なんかに任せていられないし。なんとしてでもボクたちの手でご令嬢を助け出そうね……!」
 直上より『見習いパティシエ』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)の召喚したハバネロミストが憲兵らを包み込む。それはもはや辛いではない。痛覚に影響を及ぼす痛いという感情である。ヒィッ。
 されど腐ってる公権力などそんな目に遭っても仕方なし。『ペリドット・グリーンの決意』藤野蛍(p3p003861)もまた、有毒ガスの霧で彼らを包み込み――体の内部から激痛を響き渡らせる。意図せずして何というコンボだ。
「――よし。この調子なら迅速に行動できそうだ」
 されど効果は甚大。『信風の』ラデリ・マグノリア(p3p001706)は冷静に状況を分析する。範囲攻撃にて五人纏めて攻撃出来ている現状は非常に効果的だ。乱戦になればこうはいかない。予想よりも早く、この裏口の突破が叶うかもしれないと。
「……囚われのご令嬢の救出。ん、すごく真面目な依頼……暗殺とかよりもよっぽどマシ」
 言うは刀崎・あやめ(p3p005460)だ。依頼主――それは、名乗りこそしなかったがきっと、クレアの母親なのだろう。親族から出された救出依頼。果たさねばなるまいと決意新たに。
 忍び足にて林を駆ける。狙うは扉の解錠だ。強引にぶち破る事も十分できるだろうが――敵は恐らく罠を構えて待っている。それに対応するためにも扉を破るのに体力は使いたくない所で。
「くそ、なんだアイツらは……! おい、表口の連中に連絡を――」
「おっと。そういうのは野暮じゃろうが――寝とけい」
 起き上がる憲兵の一人。激痛に耐えているその身に、すかさず衝撃を叩き込んだのは『鋼鉄の谷の』ゲンリー(p3p001310)だ。適当な布を口元に巻いて、目線をサイバーゴーグルで覆った彼の顔はパッと見では誰と判別できない。
 いや、実際は彼だけではない。先のあやめも、蛍も。仮面やサイバーゴーグルを付けて顔を隠している。『ローレットである事を伏せる』それ故に。依頼に沿った忠実な対応と言えるだろう。
「しかし――強い意志は良くも悪くもなるから困りものね。特に、今回の様な……」
 悪い方向へ傾いた時は、と黒きローブを身に纏った『青き戦士』アルテミア・フィルティス(p3p001981)は言葉を告げる。
 強い意志は中々に得難いモノだ。誰しもが有しているモノではない。しかし『強い』というのは、いついかなる時も。あるいは誰であろうと『最善』であるとは限らない。例えばこの依頼の様に。
「それでも、必ず助けてみせます」
 そして。そのアルテミアに続いて。
「クレアさんの意思は『最善』ではなかったかもしれません。それでも、間違っているのは道具としてしか扱わない盗賊や憲兵……彼らの方です。彼らの意思が、間違っている方なんです」
『儚き雫』ティミ・リリナール(p3p002042)が紡ぐ思いは、心の奥底からのモノで。
「だから――この依頼は。必ず果たします」
「ええ、そうね。必ず果たしましょう」
 最悪の結末を回避する為に。ティミの言葉に、己も同じ決意だと目線を合わせるアルテミア。
 往く。裏口の扉はすぐそこだ。往く。往く!

 一つの命を――救う為に!

●突入
 総員で裏口を突破しようとした策は見事に成功した。範囲攻撃で効率的にダメージを与えられた事も大きかっただろう。表口から増援が来るよりも早く、裏口の扉へと到着して。
「……開け……るよ!」
 ハリガネを使って開錠を試みたあやめが――成功した。短い金属音が響けば、抵抗もなく扉が開く。
 なれば臆する理由も無し。即座に踏み込んだ。されば。
「あっ? なんだ!? け、憲兵がもう――!?」
 罠の設置を試みていたマフィアが一人、至近にいた。故にあやめは止まることなく足を繰り出し、蹴りを相手の顔面へ。そのまま即座に組技へと移行して――固める。腕ひしぎ十字固め。腕に己が足を絡ませる様に出して固定する組技の一種。そしてそこへラデリの援護が加わる。
 毒撃。兵装に刻まれた呪印から相手に叩きつけるように。発動する。毒の威力が。痛みが。
「まずい。もう設置されてる罠があるぞ! 作動する……!」
 しかしその時気付いた。罠は全く無かったわけではないのだ。既に仕掛けられていたのが幾つかある。
 弓矢か。侵入者に反応して一つ撃ち出す簡単なタイプ。ラデリはあやめに伝えたい所だったが、生憎互いに攻撃したばかりだ。罠への対処は一歩遅れて――
「ミミ、ポポ手伝って」
 と。そこはティミが往く。跳躍一閃。己が携える妖精と共に。罠の対処を試みる。感知した罠。時間は短く、されど罠自体簡易的なモノであり難しくはない。紫髪のミミと薄赤髪のポポと共に、秒の中に己を詰め込み。
 ――解除する。作動する、その寸前に。
「ボ、ボス! 裏口から侵入者が……!! 何者だお前ら!!」
「流石に気付かれるわね……え、ああ? 私達?」
 そうね――と言うはアルテミアである。考え込む、フリをして一気に前進。距離を詰めれば。
「ただの死神ですよ、とでも言っておきましょうか?」
「……通りすがりの正義の味方……でもいいんじゃ……ないかな?」
「ふ、ざけやがって! 殺せ殺せ!!」
 トラップはあやめに主に任せ、己は戦闘に集中すべく。駆ける。
 速度を上げて相手の視覚を振り回しながら決して止まらない。家具を踏み台に、時として地を這うように跳躍して――接近すれば魔法剣を一閃。
 薙ぐ。薙ぐ。振るう剣激が敵を撫でる。死神の歩が、加速する。
「うん。こっちはなんとかする。俺も支援に回るから……そっちも、頼むよ」
 治癒魔術の構えを見せながら、ラデリが言葉を紡いだ先は――林の奥。
 闇夜の中だ。実は、全員が突入したわけではない。そこに残った者もいる。誰かと言えば。
「くそ!? まさか裏口側から奇襲されるとは……誰だ、マフィアの仲間か!?」
「いやいや違うよ。あんなのとは一緒にしないで欲しいなぁ」
 瞬間。裏口側に人数を回してきた憲兵へ降り注がれるは――再びなる赤き地獄。ハバネロミストを展開したのはミルキィだ。彼女は潜んでいた。憲兵撃破後も林の中に。いずれ憲兵が回り込んでくると分かっていたから。
 だから言う。私達はマフィアに非ず、私達は――
「通りすがりの、たい焼き屋さんさ――ッ!!」
「嘘つけぇオラァ――!! なんだそのクソ適当な受け答……なんだそのドヤ顔はぁああああ!!」
「嘘じゃないよ! よく分からないけど悪い事してそうな感じ受けたからやっつけにきたんだ! 君達込みでね!!」
 Vサイン。善意の第三者――そのような体をミルキィは装っている。まぁ正体に関しては別になんでもいいのだ。ローレットであると名乗りさえしなければ。だからたい焼き屋と名乗って何が悪い! あの甘味を味わえばお前らも正義の心に目覚める筈だああああ!! 服装だって一般市民っぽいのにしてきたんだ何が悪いッ!!
「舐めやがって殺す! 林の中に潜んでいやがるぞ追え――」
「いやーでもさー倒れるべきは善良なたい焼き屋さんじゃなくてそっちだと思うんだよねー」
 と、同時。近くにいた弓を持ちし兵士を狙って、クロジンデの見えない一撃が襲い掛かった。
 いや見えないのではない。超射程から繰り出されたその一撃が超速度で辿り着いたのだ。まるで、どこまでも追い詰める。どこまでも逃がさない一撃であるかの如く。
「領主の弱り目突くとかさー……色々終わってる気がするけれどー……まーそんなクソみたいなのの為に人一人死ぬとか馬鹿らしいしー。なによりそちら様にはー痛い目見てもらおうかなーなんてー」
 展開する呪符。開く黒の書。
 放たれるは不可視の一撃。あるいは――範囲に渡る殺傷の霧。
「……まぁ流石に殺すまでは後味悪いのでやりませんが。でも彼女を見捨てて――」
 と、息を吸い込むは蛍だ。彼女も林の中に。青き衝撃波を携えて迎撃態勢を整えながら。
「腐り果てた憲兵の手柄にしてやるのも癪なんです! ちょっと痛い目には見てらもいますからね!!」
 叫び放つ。殺しはしないがぶん殴りはすると。腐っているとはいえ憲兵を殺しまでするかは些か心情が異なるのが彼女である。そこまでが必要かと、思わないでもない。
「……ふむ。外は外で頑張ってもらうしかなさそうじゃの――さて」
 そして再び中。ゲンリーが立つは、地下への入り口前だ。
 ここから先、通すまじとばかりに仁王立ちしている。近付いてくるマフィアがいれば、背負う斧を担いで一閃。鈍重ながらも威力に特化した渾身の一撃を――叩き込む。
「ここから先は今暫く通せん。逃げるなら、止めんがの」
 されど近付くのならば容赦なし、と。ゲンリーは本気だ。
 闘争を経てきた瞳で敵を見据える。立ちはだかるは壁が如し。巨像の如し。
 背中側より流れ出でる冷気が――地下の雰囲気を、物語っていた。

●貫く事
 足音が響き渡る。けたたましく、急いで急いで。
 地下へと降りたのはティミとあやめラデリだ。暫く進めば見えてきた――
「――大丈夫です。私達は味方です。貴女を助けに来ました」
「……助、けに?」
「……ん、待って。今縄を斬る……から」
 牢の奥にて座り込んでいるクレアの姿が。
 すぐさま妖精の一体。今度はララという固体にお願いしてティミはいともたやすく開錠を果たす。ワイズキー。その技能を前にすれば、ただの鍵などあってないが如し。
 救出を果たす。縛る縄はあやめが己の魔剣にて瞬時に斬れば。もはや束縛するモノは何もない。安心させる為に、ティミは笑顔と共に手を握って。
「貴女は自分の命の価値を分かっているんだと思います。でも、それ以上に……貴女に生きていてほしいと願う人もいるんです。この世には」
 貴女は死を望まれている人ではないと、ティミは紡ぐ。
 家族がいるのだ。まだ、貴女には。自らにはもういない。皆あの世に行ってしまった。
 彷徨い歩いてもどこにもいなくて。振り返った先にしか彼らはいなくて――でも。いや、『だから』
「『家族』が悲しむ姿は見たくないんです」
 握りしめる手に熱がある。冷たくない、貴女は確かにここに生きているのだから。
「一緒に、帰りましょう」
 家族の元へ。
 温かい言葉がクレアの胸に落ちてくる。語る言葉は須くティミの本心。嘘偽り一切ない――だからこそ悲しい。『家族の死』を理解している彼女の言葉。それは何より重く、死を選ぼうとしていたクレアに響いて。
「……自分の命を軽く扱っちゃ駄目だよ……死んだら、悲しい想いをする人だっているもの……」
 特に、依頼者は。ティミに続いて語るはあやめだ。彼女もまた、クレアの強き意思――
「意思が強い……悪く言えば頑固者……だね。よりよい方向に必要な事だと思っても……家族を不幸に、悲しみの方向へ進めてまでもやる事ではないと思うよ……?」
 もとい、頑固っぷりをやんわりと窘める。自身や周囲を不幸にしてまで貫く意思、信念など価値があるのか。意味があるのか。誘拐されない様にも気をつけなければ、と言葉を続ければ。
「――ふふ。そうですね、肝に免じます。有難うございます。でも、貴方達は一体……」
「ローレット。俺たちはギルド・ローレットさ。まぁ君には伝えても問題ないだろう」
 ラデリの言がクレアへと紡がれた。極秘、と言う事だったが……相手は救出対象だ。問題はないだろう。ローレットの身分を明かしてほしくなかったのはあくまでも敵対勢力にその情報を依頼人が渡したくなかっただけなのだから。
「さて、それでは脱出といこうか。もうここに用はない。早急にこの場を離脱しよう」
 ここはまだ敵地。安全な所まで送り届けてこそ依頼の完遂なのだから。
 駆ける。手を引いて先導し、階段を駆け上がり――光のある場所へと。
「おお、来たか。待っておったぞ」
「ぬ、ぉ! て、てめぇらその娘をどこへ……やっぱり憲兵の側だったのか!」
 さすれば、敵の攻撃を凌ぎ続けるゲンリーの姿が真っ先に映った。
 クレアの救出に成功したと。それを察すればゲンリーは大斧を掲げて天へと一喝。全身全霊なる大喝は物理的な破壊力さえ伴い――そこをどけ、と言わんばかりに邪魔をするマフィア共を吹き飛ばさんとして。
「礼は要らん。挨拶もええ。振り返らずにまっすぐ家に帰るんじゃな」
 後はどこまで戦えるか。ゲンリーは、今度はクレアら脱出組を守るべく立ち位置を変え、備える。窓を一瞥すれば、脱出するだけならば表口から出た方が憲兵が少なそうだろうか? 裏の方がどうも騒がしいようだと救出班へ視線を送り。
 後は脱出さえできれば良いのだ。故に、殿の如き役目を務めるは彼だけでなく。
「『最悪の結末』――はこれで回避出来そうかしらね……あぁそうそうクレアさん?」
 アルテミアも、だ。追い縋ろうとするマフィアの一人に、突風の如き跳躍から蹴りを繰り出す。追撃しようとするその脚部を狙って。折らんとする如くの勢いと共に。
「強い意志を持つことは悪くないけれど、時には柔軟な思考をすることも大事よ?」
 片目だけを閉じて、ウインクの形。
 固ければ道が狭まってしまう。取れる未来の選択肢が少なくなるのは弱点だ。柔軟を覚えるべし。さすればこのような機会は――無くなるかはさて。しかし少なくはなるだろう。
 決死の妨害から表口の扉を開けて、マフィアのアジトを出る。
 広がる闇夜。騒がしい裏口側。故に駆ける。今が絶好の好機だ。まともに憲兵・マフィア全てを相手取ろうと思えば数が違う。放っておける敵は放っておけばいい。
「――そうだ。さっき言った『俺達はローレット』の件は口外しないでほしい。誰にも、ね」
「それは……なぜ? 私が貴方達に助けられたのは事実で――」
「依頼人からの要請だ」
 必要があれば、後ほど確認してみればいいとラデリは言う。念には念を押しておくべきだと。
「おっー向こうはちゃんと脱出出来たみたいだねーじゃあこっちも撤収かなー撤収ー」
「わああああ! じゃあ急ごう急ごう!! 流石にこの数相手に迫られたら厳しいよ――!」
 一方で裏口側に布陣していたクロジンデとミルキィ。クロジンデの超視力でアジト側の様子は伺えた。どうやら無事、救出できたようだ。しかし――この闇夜の中で如何に黒いフード付きローブを纏っていると言っても万能ではない。多くの憲兵に迫られれば流石に位置は特定されて追撃厳しく。
「まー林に紛れればなんとかなるでしょー 行こうかーたい焼き屋さんー」
「最後にもう一回……特性ハバネロをぷーれぜーんと!」
 放たれる魔力の一撃。放たれる赤き霧。撤退戦は今暫く続きそうだが――やがては憲兵の足は振り切れるだろう。彼らとて、命を尽くしてまでミルキィらを追いかける理由はないのだから。

 そして。

「クレアさん――お怪我は大丈夫ですか!? 憲兵達も振り切れたので一旦治療を……」
 蛍だ。裏口側から撤退し、ついに合流できたのか。己が技能たる医療知識に基づいて、マフィア共が殴りつけた部位を手当すれば。
「……誘拐されてつらかったでしょうけれど。これからもどうか……どうか、お父様の改革を応援して、支えてあげて下さいね」
 正しい心は。正しい行いはきっと天へと通じ、人を、世を動かすと。
「ボクは、信じてるから……」
「ええ、勿論です。この程度でへこたれてはいられません……どうか信じていて下さい!」
 クレアが蛍に抱擁を。あぁ、命を救われた相手でもあるのだ。
 期待には応えねばならないだろう。救われた命で、精一杯に。明日を信じて――

 笑みを浮かべて、生きていこう。

成否

成功

MVP

ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード

状態異常

なし

あとがき

404 Not Found

――お探しの依頼は見つかりません――

しかし一点だけ。各種スキルの組み合わせ、並びに強い心情を貴方に感じました。
素晴らしいプレイングだったと思っております。MVPです。おめでとうございます。
それではご参加ありがとうございました。

PAGETOPPAGEBOTTOM