PandoraPartyProject

シナリオ詳細

絢爛桜花【春の宴】

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幾重の大鳥居護られた見事に咲き誇る桜の木の下で、大勢の人々が楽しげにすごしている。赤ら顔の爺が杯を煽り羽衣を纏った艶やかな美女がゆうらりと風に舞う。
 幻想郷というものがあるのであれば、きっとこんな場所なのだろう。そう感じさせるくらい、目の前の光景は浮世離れしていて。しかし頬を撫でる柔らかな風はこれが夢では無いのだとあなたに教えてくる。
 此処は常春の國の咲夜神社。
 木花咲耶姫を祀り、千年の桜を抱えるこの神社は現在彼女を讃える祭り『咲夜祭』を開催している。
 いつにも増して賑やかで楽しげな雰囲気は、きっと女神も喜んでいるに違いない。
 赤ら顔の者達が多いのは、この祭りの時だけにしか味わえない銘酒『宵桜』のせいだろうか。

「あら、もうお料理無くなっちゃったの?」
「あそこのお爺様よく食べるからねぇ……きゃっ!」
 この日雇われた給仕の女性達が厨房で話している。
 その足元を子狸が擽り転ばせた。
「まぁ〜、悪い子ね! どこから入ってきたのかしら」
「すみません、俺達の足元を潜ってしまって」
 祭りを妖から警備していた男性達が申し訳なさそうに子狸を抱えあげた。
 悪戯が成功した事に満足気な子狸の鼻を軽くつつくと、くしゅんと嚔を一つ。
 こんな可愛らしい悪戯っ子も入れば、宴に浮かれた人々を拐かそうとして妖も出ることがあるのだ。故に警備は多くて困るということは無い。
「もう、しっかりしてよね!それにしても、今年は外の國の人達はいらっしゃるのかしら?」
「昨年は沢山いらっしゃってわよねぇ、お話聞きたいわ……あと手伝って欲しいわ……」
 どんどん消えていく料理に反比例してどんどん増えていく洗い物を横目に女性は溜息を吐いた。


「よっ、こうも暖かいと眠くなっちまうわな」
 黒衣の境界案内人、朧は小さく欠伸をした。
 おっと、失礼と朧は本棚から一冊の本を取りだし、ぱらと骨張った手で捲る。
「あった、あった。ほら、前に咲夜祭開催してたろ。今年もやるってんで大規模な宴会をやるらしいぜ」
 朧は更に続ける。
「宴会を手伝う奴……所謂、給仕だな。それに舞台で演目を披露する演者、宴会を狙う妖から護る警備、勿論祭りを楽しむ奴らも必要だわな。滅多にお目にかかれねぇ酒やご馳走にありつけるってよ」
 すらすら読み上げた朧はあなた方にほいと依頼書を渡す。
「春は出会いの季節だからな、お前さん達も行ってきたらどうだ?」
 もしかしたら、何かのきっかけになるかもしれねぇぜ?
 朧はひらひら手を振り、あなた方を送り出した。

NMコメント

 はじめましての方ははじめまして。
 そうでない方は今回もよろしくお願い致します。
 ノベルマスターの白です。

 今回は異世界のお祭りに参加していただきます。カップルでもお友達でもグループでもお一人でも、お気軽にお越しください。
 複数名参加の際はタグをお願いいたします。
 今回のラリーは一章構成を予定しておりますが何度でも参加して頂いて大丈夫です。
 以下のURLと同じ舞台ですが前回に参加していただいてない方でも勿論OKです。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5549

※このラリーの性質上他のPC様とのアドリブの絡みが発生することがあります。アドリブNGの方はその旨明記ください。

●全体目標 
 咲夜祭りを楽しむ。
・PCの解像度あげたい!交流のきっかけが欲しい!とにかく遊ぶ!という方向けのシナリオなので全力で楽しんでください。

 ただしお酒は20歳以上でないと飲めません(unknownの方はキャラシやリプレイ等拝見して判断します)
 またこの場所で暴れる、傷つけるのはNGです。ご理解ください。

●出来ること
 ①参拝
 この神社で神様にご挨拶しましょう。桜御籤という御籤も引けます。PCの願い、目標、決意など神様に語るのもよいですね。

 ②千年桜
 中央に聳え立つ巨大な桜です。
 この木の下で願いを込めた桜の枝を相手に贈ると願いが叶うという伝説があります。
 自分自身へのプレゼントとして送っても良いかもですね。
 間違っても登ってはいけませんよ!(怒られます)

 ③給仕
 OPの通り、料理を作る人も運ぶ人も洗い物をする人もお掃除する人も足りてません。お手伝いしましょう。
 ご希望であれば巫女服を貸してもらえます。ええ、男性でも。

 ④警備
 宴の人々を狙う妖から宴を護るための警備も必要です。
 場合により戦闘描写が発生します。
 なお悪戯したいだけの可愛い子達もいるので非戦等でそっと返しても大丈夫です。

 ⑤演舞
 境内に特設された舞台で芸を披露します。舞、歌、演奏、手品エトセトラ。公共良俗の範囲内ならなんでも結構です。
 参加者たちを楽しめましょう。
 
 ⑥春宴
 もうそのまんまです。飲んで食べて楽しく過ごしましょう。
 縁日も開催されてるのでそこで買ってもいいし、この日の為に拵えられたご馳走、幻のお酒『宵桜』も振舞われます。
 

●サンプルプレイング
 プレイングには行く場所、何をしたいかをご記入ください。お相手様がいる場合はタグor相手のID、お名前をお願い致します。
 おひとり様の場合他の方と絡みが発生することがありますのでNGの場合のみ絡みNGとご記載をお願い致します。

●NPC
 朧
 リプレイには基本的に登場しませんがご指名があればホイホイついていきます。ちなみに桜は結構好きらしいですよ。
 ⑤
 黒衣としてはまあ……楽しませることが役目とも言えらぁな。浄瑠璃でもやるとするかね。
 ……ん? お前そんなことできるのかって? はは、俺はこう見えて人形遣いなんだぜ、知らなかったろ。
 お前さん達も見ていくかい?

 こんな感じです。それではいってらっしゃい!

  • 絢爛桜花【春の宴】完了
  • NM名
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年05月08日 21時30分
  • 章数1章
  • 総採用数6人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

玉ノ緒月虹 桜花(p3p010588)
神ではない誰か

 清水が心まで沁みゆき、桜花は本殿へ歩み出す。清浄な空気に目を細め、そこに居るのであろう春の女神にゆるりと微笑んだ。

「桜で弓を作りたい?」
「ええ、ご神木から世界を護る一枝を頂けませんでしょうか」
 そう桜花が申し出た時、神主は困った様子であった。参拝客に授けられる千年桜の枝は自然に落ちたものから、剪定の際に出たものばかり。
 弓にしたい、という申し出はこれまでに一度も無かったからだ。
「枝をお持ち帰り頂くのはもちろん構いません。お持ち帰り頂いた先で弓をお作りになられるのも良いでしょう」
 しかし、と一拍置いてから神主は続けた。
「良いですかな、世界を護るという事は誰かを傷つけるという事です。くれぐれもお忘れなき様」

「――誰かを傷つけるという事、ですか」
 折れぬ様に大切に抱えた桜の枝を見つめて神主の言葉を繰り返す。波間に揺蕩う花弁の様に流れて流れて、気が付けばこんな所まで来ていた。
 振り返ればとっくに足跡は見えなくなっていて、まだ見ぬ太陽を求めてまた流れていく日々。
(いつか、世界を壊してでも護りたいと思うような方と巡り会えるでしょうか)
 ふと目の前を横切り舞い落ちた花弁に意識が引き戻される。
 手馴れた様子で桜花は手を清め鈴を鳴らす。
からんからんと澄んだ音色が響いた。

 ――神話は神でさえ間違うことを教えている。
 いつ、どこで。誰の言葉だったかは忘れてしまったが、どこか懐かしい桜の香に瞼を閉じた。

成否

成功


第1章 第2節

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚

 借りた巫女服に身を包んで、オラボナは給仕に勤しんでいた。
「宴会、花見の類で在ればやはりホイップクリームは不可欠だ。鮮血の様な深紅の薔薇でなくともな」
 素敵な甘味に喜ばしい花弁。紅茶にこぼれたならば脳まで豊かになる筈よ。
「最も――私に脳髄は無いがな。Nyahahahaha!!!」
「そうだわ、お肉の準備をしなきゃ」
「嗚呼、肉。肉を焼くのか」
「ええ、そうよ」
「ならば私の肉片を焼き給えよ、半生だ、半生が好ましい。つまりは何事もブルーだ」
「えっ」
 引き攣った女性の表情に首を傾げたオラボナだったが嗚呼と手を打つ。
 
「グロテスクが酷くて食べる気にならないと?
 ……仕方がない――貴様等の選んだものを調理してやろう。加工してやろう」
 命を屠り、捌き鉄の網で焼くことには変わりがないだろう。
 しかし肉が焼ける音と食欲をそそる匂いの前にはそんなこと些末なことだ。
 そして宴とあらば酒は欠かせない。
「樽を用意せねばな――嗚呼、視界がくらりと歪んで眩暈がしそうだ。Nyahahahaha!!!」
 高らかに哂って、席について杯を傾ける。
 ふわりと桜の香りが混じった透明な液体が、味わい深い物語が。
 喉、食道、胃を駆け抜けてその存在を体内へ刻み込む。かの蜂蜜酒とどちらが美味だろうか等と不遜な問いかけをする愚者も此処には居ない。
 少しくらい羽目を外しだって良いだろうよ。我等は戯れの為に身を投げたのだ。

成否

成功


第1章 第3節

フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと

「朧さん、一緒に警備しよう。朧さん強いし……」
「お前さんの足元にも及ばねぇっての」
 からからと笑う朧の袖をフラーゴラは引いた。
「見て、桜。ここからも見えるくらい大きくて綺麗だね……」
「そうさね、立派なモンだ」
 桜を愛でる二人に大きな影か覆いかぶさる。強大な妖鳥だ。
 空から急降下してきた彼は運が悪かったとしか言いようが無い。
 彼が獲物だと見定めた少女は誇り高き白狼だったから。

 ――奇襲など、受ける筈もなかった。

 奇襲に失敗し隙だらけの妖鳥は朧の糸に囚われ、フラーゴラの放つ進撃の弾幕を喰らい妖鳥は逃げていった。

「警備のお仕事も終わったし……朧さん、お花見しよう。朧さんにお土産、用意してあるんだあ……」
「お土産?」
「うん、お肉屋さん始めたのでハート型のコロッケだよ」
「肉屋? お前さん、骨董品を売ってたんじゃなかったか?」
「……こっちの方がお金が堪るんだ……」
 耳と尻尾が下がったフラーゴラに苦笑しながら、頂きますと朧は呟き面布をそっと捲り上げコロッケを齧る。
「こいつは美味いな、俺も直接買いに行けりゃあな」
「今度図書館にも持っていてあげる……」
「おいおい、図書館は飲食禁止……ま、いいか。ご馳走さんでした、美味かったぜ」
 褒められ喜色の笑みを浮かべたフラーゴラは再度朧の袖を再度引き、境内の方を指さす。
「あとあと神社にお参りして御朱印もらいたいな……」
「お前さん相変わらず元気だねぇ」

成否

成功


第1章 第4節

金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸

 祭りが行われるならば警備をする必要もあるだろう。そう考え、繁茂は持ち場に着いた。
 折角の宴と神聖な桜を血で穢したくはない。
 この拳を振るうことが無ければ良いのだが、そう思っていたが今回は可愛らしい悪戯っ子が姿を現した。子狐だ。
 好奇心旺盛なこの子狐は、構ってくれるのが嬉しいのかちょくちょく人に悪戯をするのだと警備に着く前に聞かされていた。
「はいはい、お祭りだからって騒ぎすぎちゃあダメですよ」
 今回も繁茂を『遊んでくれる人』と認識したのか早速その足元へじゃれ付いた。
 時に甘噛みし、時にドヤ顔でふんすと鼻を鳴らして登ってくる姿は可愛らしい。
 しかし宴に入れてしまえば盗み食いをするかもしれないし、人を化かすかもしれない。
 警備を請け負った以上、此処から先に通すわけにはいかなかった。

「ふふ、擽ったいですが耐久ならば多少は秀でていると自負しております」
 子狐が角にちょんと手を伸ばすので、その小さな手を掴み万歳させる。
「こら、イタズラする子はこうですよ
 お返しとしてモフモフのお腹をワシャワシャ擽ってやった。キャッキャと身をくねらせ喜び、遊んでもらい満足したのか子狐はぽてぽて帰っていった。
「よっ、交代の時間だぜ」
「おや、もうそんな時間でしたか」
 声を掛けてきた村人に軽く頭を下げ繁茂はその場を離れる。
「せっかくの宴ですし……私もお酒を頂きましょうかね」
 賑やかな声の方に、繁茂は歩いていった。

成否

成功


第1章 第5節

玉ノ緒月虹 桜花(p3p010588)
神ではない誰か

 桜御籤の結果に成程と頷いていた桜花だったが、ふと厨から漏れる声に耳を欹てた。
「困ったわねぇ、まるで人が足りないわ」
 頭を抱える女性達の様子に桜花は神主へと声を掛ける。
「忙しそうですが、手伝えるでしょうか?」
「それはありがたい。是非お願いいたします」
 桜花の申し出に神主は深々と頭を下げ、桜花は女性に声を掛けた。
「給仕手伝います」
「ありがとう、助かるわ」
「良かったら男の人も連れてきてくださらないかしら。重い物も多くて……」
 女性が視線を向けた先にはまるまる太った豚一匹を豪快に丸焼きにした料理が置かれていた。確かにあれを女性だけで運ぶのはなかなか大変だろう。
 女性に頷いた桜花だが、生憎男性の連れは居ない。
 どうしたものかと思案し、ふと境界案内人の事を思い出した。
 周囲を見渡すと、朧を見つけた桜花は彼に駆け寄った。
「朧さん急なお声がけすみません」
「桜の巫女さんじゃねぇか。どうしたよ」
 事情を説明すると朧は首を縦に振った。
「勿論演舞開始までの間だけですから」
「別に構わねぇさ、黒衣ってのは裏方に徹するもんさね」
 よっこいせと呟き、朧は重い料理を運んでいく。
 朧と共に給仕に勤しんでいた桜花が道中、舞台を見ると何人かの参拝客が席に着いている所だった。
「そういえばそろそろ演舞の時間ですね」
「お前さんも出るのかい?」
「ええ」
「そいつはいい。頑張んな」
 戻ってきた朧に頷き、桜花は舞台袖へと向かった。

成否

成功


第1章 第6節

玉ノ緒月虹 桜花(p3p010588)
神ではない誰か

 しゃなりと一歩踏み出す度に、清浄な気配がして、背筋が自然と伸びる。目の前を桜の花弁が通り過ぎて、ひらりと翻った。
 ふわりと微笑んで手を引かれるように桜花は舞台へと上がった。先程給仕をしていた時には数人程度だった客席は既に埋め尽くされており、彼らの視線は桜花へ集められていた。手馴れた様子で準備を整える桜花の様子に、参拝客からは。
「本格的だなあ」
「あれは何をしているのだろう」
 と、なんとも俗っぽい声が聞こえてくる。
 そういえば、と桜花は己のこの儀式がこの神社に迎合されていることに気が付いた。
 世界も変われば常識も変わるものだが、存外この世界は異世界の風習にも寛容らしい。
だからこそ、この様な舞台が設営されているのかもしれないが。

 御神酒として準備した宵桜の香りが空気に溶けて高揚感を煽る。夢心地、とはこの事を言うのだろうか。ゆったりと桜花が舞ってみせれば、まるで天女の様だと誰かが褒めたたえた。
 簪を外し、しゅるりと解けた髪が風に流れて緩やかに弧を描く。それを目で軽く追った後に簪飾りとしていた御神鈴を一回、二回と鳴らし八回目が鳴ったとこで止めた。
 かの女神に届いただろうか。
 すぐ近くで誰かが楽しそうに笑った気がして、桜花は笑みを零した。

 春うららか桜の雨。
 柔らかな陽光が降り注ぐ千年桜のその下で賑やかな声と人々の笑顔は絶えることは無く。
 絢爛たる春の宴はまだ、続いていた。

成否

成功

PAGETOPPAGEBOTTOM