【退廃世界グノーシス】峡谷集落サルバ

オープニング

●峡谷集落サルバ
　峡谷集落サルバ。断崖絶壁に作られた集落。
　ここ、退廃世界グノーシスの人類が滅んでからは当然ここの集落も人がいなくなっている訳だが。
　だが、そんな中でも変わらないものがあった。
　桜だ。
　ここは元は桜の名所として知られており、かつては観光客が春によく訪れる場所であった。
　ソメイヨシノにヤマザクラ、シダレザクラ。
　人の手入れがされなくなっているとはいえ、元は名所。
　見渡す限り桜のその光景は絶景と呼ぶにふさわしいだろう。
　今年もまた、桜が鮮やかに咲き乱れる。

●書斎
「よう、よく来たな、イレギュラーズ。待っていたぞ」
　境界案内人の海（カイ）。
　随分と久しぶりにその姿を見た訳だが。
「まあ、相変わらずグノーシスを彷徨っていてな」
　人類が滅び退廃した世界。現状ではカイ以外の人間は見つかっていない。
　が、いないと限ったわけではない。
　ゆえにいるかもしれない人間を探して彷徨っているわけだ。
ーーそれで？今回は何を手伝えばいいんだ？
「いや、今回は花見だ」
　花見？と首を傾げる一同に構わず説明を続ける。
「峡谷集落サルバで花見と洒落こもうや」
　峡谷集落サルバ。そこは断崖絶壁の場所に作られた集落。
　崖の壁面をくり抜き、居住区としている。
　また、崖同士を繫ぐ橋も無数にかけられている。劣化している為に使用は控えた方がいいだろうが。
「ここは桜の名所でな。崖からも桜の木が結構の数で生えていたりする」
　通常の桜は崖から生えたりはしないのだが、ここの桜はなぜか生えている。
　ちなみに崖から生えているのはシダレザクラだそうだ。
「もちろん崖の上にも桜はあるから、そこでも花見は可能だ」
　折角の花見。
　廃墟と化した住居から花見をするも良し。
　崖の上の平地で花見をするも良し。
　レジャーシートを敷くには石や草が邪魔だろうが、簡単に除去できるだろう。
　大切な人を誘って行ってみるのはいかがだろうが。
ーーそういえばミヤコは？
「ああ、あいつなら既に場所取りして酒飲んでる」

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第1章

第1章 第1節