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シナリオ詳細

亜竜騎兵隊(ドラグーン)・トライアル

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●亜竜騎兵隊
「亜竜を用いた騎乗戦闘じゃと?」
 そう首をかしげたのは、アオ、と名乗る亜竜種である。
 覇竜領域、と呼ばれる地。その危険な地にて、人がようやくその生息地として手にした集落の一つ。
 そこに住まう、『白(ハク)一族』の一人であるアオは、野生の亜竜、ワイバーンや、家畜などを馴らすための、いわばブリーダーのようなことを生業とする一族である。
「そう、どうかなぁ?」
 と尋ねるのは、リトル・リリー (p3p000955)だ。先般、フリアノンのさる一族(これも、ワイバーンを馴らし、亜竜種(ヒト)の役に立てていた一族である)に招かれたイレギュラーズは、そこでワイバーン調教の術を身につけた。
 もちろん、ワイバーンとて、亜(デミ)とはいえ竜の名を冠する誇り高き生き物だ。人にそう簡単に馴らされるわけではなく、成体となったワイバーンは、如何にその技術に卓越した一族、彼のフリアノンの一族や、白一族であろうとも、決して手に負えるものではない。
 そう言った事情を踏まえてなお、イレギュラーズの可能性に未来を託したが故の実験のようなものであったが、イレギュラーズ達は各々で、ワイバーン調教の技術をしっかりと習得したらしく、現時点では、幼体のワイバーンと、ある程度のつながりを持つものもあらわれたようである。
 未来は分からないが、少なくとも現在は、良き可能性を提示していると言えただろう。
 閑話休題。リリーの提案とは、つまりワイバーンをより、戦いのパートナーとして深く運用するための話だ。
「ワイバーンは、集団戦闘みたいなことするっスよね。やっぱり、群れ為す種類もいるみたいでスし、この間の練達の時も、上位種である竜に率いられていたっス」
 佐藤 美咲 (p3p009818)の言う通り、群れ為し、上位個体に従うワイバーンも多い。となれば、イレギュラーズとて、上手に統率できれば、ワイバーンを用いた、騎兵隊のようなもの、文字通りのドラグーンが運用できるのではないか――という事なのだが。
「……竜に率いられたのは個体は、あれはもう別格だ。人間が真似してどうこうというものではなかろう。なので、ここではその話はせんぞ」
 アオはこほん、と咳払い一つ。
「ワイバーンは群れるか、と言えば、イエスじゃ。それも種類によるが、お主等が主に使っておるであろう、フリアノン・リトル・ワイバーンは、そのタイプじゃ。それに比較的気性もおとなしい。よって、ワイバーンを用いた集団戦闘は、可能性はある、と言える」
 が。とアオは言うと、
「できるかとなると、話は別じゃ。当然、わらわ達も、そうした運用を考えたこともある――が、やっていない、という事は、つまりできなかった、という事なのじゃ。これは、他の同業者も同じじゃよ。よって、わらわはからいえることは、一つじゃ。あきらめい」
「お言葉ですが……」
 ハンナ・フォン・ルーデル (p3p010234)が、静かに声をあげた。
「ローレットイレギュラーズは、様々な可能性を実現してきました。
 無茶だ、無理だ、といわれるような状況も、覆してきたのです。
 ……もちろん、私達だからできる、等と己惚れる気持ちはありません。
 ですが……こう言ってはなんですが、私も、自分たちの可能性を信じてみたい」
 ハンナの表情は硬いままだったが、しかしその目の奥には、何か真摯な、情熱のようなものを感じさせた。アオは、むむ、と唸る。
「……おぬしらの言いたいことは分かる。そして、その可能性を紡いできた事実も。
 ……じゃが、わらわの立場としては、無理じゃ、としか言えん。
 その上で、これはおぬしらへの『依頼』としよう」
 に、とアオは笑った。
「みごと、無理を覆して見せるが良い。
 依頼の内容はこうじゃ。今後、一族の調教技術発展のために、亜竜の集団行動による、狩りの試験を行う。
 つまり、お主らはワイバーンと共に、デザストルの怪物たちを狩りとって来ればよいわけじゃ。
 その結果によっては、わらわ達にも、良いデータが残るじゃろう」
「……!
 わかったよ! その依頼、絶対にこなして見せる!」
 リリーが、力強く頷いた。
「うむ。騎乗用のワイバーンを持っていないもののために、貸出も行おう。
 可能性を見せる、と言ったのはお主たちじゃ。見事依頼を達成してみせい」
 そういって、アオは、信頼の色を乗せた笑顔を浮かべた。イレギュラーズ達は、その信頼にこたえるように、力強く頷いて返す。
 かくして、ローレットには、「ワイバーンを用いた集団戦闘試験」の依頼が齎されたのである。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 此方のシナリオは、リトル・リリー (p3p000955)らの働きかけ(リクエスト)によりもたらされた依頼になります。

●成功条件
 騎乗用ワイバーンと連携し、狩りを成功させる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 ワイバーンを用いた、集団戦闘のテストを行いたい。
 リトル・リリーさん達は、その旨を、亜竜の飼育を行う一族の一つ、白一族のアオに告げました。
 しかし、ワイバーンは制御するのも一苦労の怪物。如何に調教に長けた一族とは言え、そのような戦闘の実績はありません。
 ……なければ作ればいいのです。実績も、データも。というわけで、アオは皆さんに、ワイバーンと共に集団戦闘を行うテストを依頼することとなりました。
 難しいことを考える必要は、ありません。皆さんのお持ちの、騎乗用ワイバーンと共に、デザストルの怪物と戦い、狩りとって来ればよいのです。
 騎乗用のワイバーンをお持ちでない方には、アオから調教済みのワイバーンを貸してもらえます。
 メタな事を言えば、本シナリオは、『お手持ちのワイバーンと協力するような描写がついてくる戦闘シナリオ』と言ったテイストになります。
 また、本シナリオにおける騎乗戦闘のルールや出力結果は、他のシナリオ等においてその有用性を担保されるものではないことをご留意ください。
 あくまでテストケースですので、今回きりの、特別な描写と考えていただければ幸いです。

 作戦決行タイミングは昼。周囲は木々が林立する林のような場所になっています。

●エネミーデータ
 狩り、という名目でのテストのため、戦うのは覇竜領域に住まう、人間も食肉にできる怪物たちになります。
 
 デザストリアン・ダイレッグ ×3
  デザストルに住まう、巨大な肉食鳥です。鳥とは言え、空は亜竜の領域。必然的に、彼らは陸上を走り回るように進化しました。
  筋肉質の足と、槍のような鋭いくちばしが特徴的です。移動力がとにかく高いですが、亜竜と力を合わせれば、追い付くことができるかもしれません。

 デザストリアン・マッドボア ×4
  デザストルに住まう、巨大な猪です。猪と侮るなかれ、この危険な地域で生態系を確立できるのは、それが尋常ならざる生物だからです。
  弾丸の如き体当たりは、非常に強力。陸上の王者と言っても過言ではありません。
  半面、上空への攻撃は苦手なようです。亜竜と力を合わせて、空から攻撃してみると、有効かも。

 デザストリアン・グライドエルク ×4
  デザストルの驚異的な自然から生まれた、強力な精霊鹿です。もし外なら、その生命力から神とあがめられるような存在かもしれません。
  特筆すべきは、付近のエレメントを利用した、神秘的な魔術弾丸による攻撃です。基本的に、後衛に位置して攻撃してくるでしょう。
  亜竜と力を合わせ、一気に接近し、倒してしまうのがいいと思われます。


 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • 亜竜騎兵隊(ドラグーン)・トライアル完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年04月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
※参加確定済み※
武器商人(p3p001107)
闇之雲
幻夢桜・獅門(p3p009000)
竜驤劍鬼
ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)
復讐の炎
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
※参加確定済み※
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)
天空の魔王
※参加確定済み※
大豊・恵(p3p010442)
その日の風向き

リプレイ

●ドラグーン・トライアル、開始!
 覇竜領域――竜とその眷属が覇を唱える危険な大地。されど、竜以外の生物も確かに存在する。それは、稀に見る恐ろしい怪物と評されるようなもの達であるが、ここでは生態系の下層に過ぎない。
 例えば、ここにいる三種の怪物たち。デザストリアン・ダイレッグや、同マッドボア、グライドエルクと言った怪物たちは、前述したように外では傭兵でも相応に手を焼くような相手だ。
 さて、三種の怪物たちは、本来ならば食らい食われ合うような間柄であり、仲良く共存するようなモノではない。が、殊この状況下においては、共通の敵と相対するような場合においては、一次的とは共闘・或いは利用して、共通の敵と戦うような動きを見せる程度の知能は持ち合わせていた。
 共通の敵。それは、例えば弱い所では亜竜種たちの狩人であったり、強力な所では亜竜や竜のようなこの地の支配者たち。そして最近やってきて、その実力を如何なく発揮しているローレット・イレギュラーズ――そう、ワイバーンを駆り、低空にて編隊飛行を組む、八つの影。
「ようし、いい子だ」
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)ゆっくりと、亜竜の背にてそう言った。調教師であるアオから借り受けたその亜竜は、厩舎にて最も頑丈で、物怖じしない、勇気ある亜竜であった。
 事実、仲間の多くが絆の結ばれた亜竜と共に空を行く中、即席のコンビながら手綱を任せ、さらに初対面に近い亜竜たちと編隊を組んで飛べるのは、集団で狩りをするという本能でもあるのか、その勇敢さゆえか。いずれにしても、武器商人の要求通りの個体を、アオは貸与したといえる。
「さて、信じているよキミ。一番イカれた役回りに、と臆病風に吹かれないコを選んでもらったからね」
 そういう武器商人に頷くように、亜竜はきゅい、と鳴いて見せた。『自在の名手』リトル・リリー(p3p000955)が仲間達に目配せをする。
「うん、いい調子! このまま狩りにうつるよ!」
 集団による連携行動は、騎兵としての基本だ。編隊飛行から、一気に分散。地上の敵へ向けて、急降下――! だが、もちろん、獲物とてただ逃げ惑うばかりではない。前述したとおり、この危険な地で生きてきた獰猛な怪物である! 空からの襲撃は有効打になりえるが、同時に急速な回避や、ダメージを受けた際に落下する危険性を伴う。それを本能で理解しているのか、グライドエルク達は周囲のエレメントを集め。無数の石礫を生み出した。礫と言えど、こぶし大ほどの背を高速で放てば、それはもはや銃弾とならん変わりはない!
「うわ、まるで対空ロケットってかんじスよ!」
 『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)がそういうのへ、美咲の亜竜、バーベが「くわっ!?」と鳴いた。
「対空ロケットは餌じゃない!」
 意図を察したのか、美咲が叫ぶ。その通りだ、放たれたグライドエルクの石礫は、まさに対空ロケットのごとくイレギュラーズ達へ向けて撃ちだされる!
「散開して回避! 相手の攻撃は直線的だ、撃ち抜かれるな!
 舞うぞ、風花!」
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)の言葉に、亜竜『風花』がきゅう、と鳴いた。まさに風花のごとく、優雅にふわりと礫の周りを飛びながら、大きく翼をはばたかせて射線から逃れる。一方、『復讐の炎』ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)は隙間を縫うべく直進。
「いい。どうせ下には下りる必要がある」
 むしろ、食らった所でどうという事はない、とでもいうように、ロック、そして亜竜エルゥドリンが降下! 強烈な風圧と衝撃がロックとエルゥドリンの体を揺らすが、その衝撃すらあざ笑うように獰猛な笑み浮かべる二匹の狩人が、流星のごとく大地に落着する! ガァ、とエルゥドリンが吠えた! 同時、マッドボアとダイレッグ達が一斉に動き出す! グライドエルクが対空ミサイルなら、マッドボアは地を奔る砲弾、ダイレッグは人馬一体の騎兵と言った所か。マッドボアのうち一体が、着地したロックとエルゥドリンを狙い駆けだす。一瞬でトップスピードに乗ったそれが、まさに砲弾のごとく飛び出した! が、降り立ってきたのはこの二人だけではない! 『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)は、マッドボアの頭上、飛び込むような形で愛竜『春風』と共にダイブ! 手にした刃に春風の速度を乗せて、マッドボアに切り込んだ! その分厚い皮膚と筋肉による、切断とはいかなかったものの、横なぎには割られたそれは、マッドボアの横腹に思い切り叩きつけられた! マッドボアは、勢いを殺せずに、前方に転がりながら横転、木に叩きつけられる!
「上にも目をつけておいたらどうだ? 猪野郎!」
 が、マッドボアはすぐに起き上がると、ぐるる、と吠えるように唸った。後ろ足を蹴り上げ、突撃の体勢に入る。
「おっと、タフなのはタフみたいだな! 武器商人! 頼む!」
「ああ、任せておくれ。さぁ、ここからが正念場だよ、キミ」
 亜竜に声をかけ、戦場を低空で滑るように飛ぶ。引き付けられた獣たちが、武器商人を、亜竜を鷹揚に並走する。強烈な脚の筋肉が見えるダイレッグ。それがばだばだと足音を立てて殺到するのは、並の動物ならそれだけでい竦むような恐怖だ。だが、亜竜はそれを気にしない。仮に人の命を受けているといえども、空の王者の一族なのだ。
 ダイレッグが、その長いくちばしを槍のように突き出した。武器商人はその手をかざして受け止めた。ぞぶり、と掌をくちばしが貫く感覚――だが、身じろぎすらせぬ武器商人は、ヒヒヒ、と笑ってみせる。
「さぁて、キミたちには付き合ってもらうよ」
「みんな! まずは鹿(エルク)から!」
 リトル・リリーが声をあげる。この状況において、真っ先に警戒すべきは遠距離に特化したグライドエルクだろう。
 リトル・リリーが、騎馬にそうするように、亜竜『リョク』のおなかを蹴った。それを合図だと理解していたリョクは、ばさり、と翼をはばたかせて滑空する! 低空を飛び、エルク達の射線から逃れるように、エルク達の周囲を旋回。リトル・リリーとリョクが駆ける後ろへ次々と石礫が着弾、後を追うように木々に突き刺さる。
「おっと、こっちががら空きっスよ!」
 美咲がバーベの背の上で拳銃を構えた。トリガを引く。間髪を入れず二発。青の流星のごとく放たれた二発の銃弾が、隙を晒したエルクの頭部に容赦なく突き刺さった。ぐらり、と揺れるエルク。残るエルク達が慌てて美咲を捉えるべく視線を移すが、遅い! バーべは既に上空へと対比! じろり、と倒れたエルクを見やる。
「まだ食べちゃダメっスよ!」
 念のため、と制止する美咲に、くええ、とバーべが悲しそうに鳴いた。食べる気だったのか、と美咲が嘆息する。
 一方、浮足立つエルク達に、突き刺さる一筋の弾丸。まずは肩口に一発。きゅい、と悲鳴を上げたエルクの、その額に一発――無慈悲なる死神の弾丸、狙撃銃より放たれたそれは、確実にエルクの生命活動を停止させる。
「よぉし、いいこです」
 『天空の魔王』ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)が、自身の亜竜、ヴィントへと声をかけた。竜騎兵、この場合は火器で装備した騎兵だが、まさにドラグーンのごとく、狙撃銃を構え、亜竜の背に乗る。
 狙撃に重要なのは、安定である。銃身、重心を安定させなければ、僅かな誤差で大きく着弾点のずれるのが狙撃という攻撃方法だ。だが、馬ならまだしも、飛行する亜竜の上でそれをなしたという事は、ハンナの腕があってのことはもちろん、主の意を組み、身じろぎもせずに対空し続けたヴィントの働きもあっての事だろう。
 ヴィント。すなわち風の名を与えられた、ワイバーン。風は激しく吹き荒れる時もあるが、全く静かに、凪となる時もあるのだ。まさに風の如き科の活躍が、ハンナの狙撃を支えていた。
「他者の背に乗って飛ぶことも、その背の上から標的を狙う事も……初めてのこと尽くしではありましたが。
 しかし、中々どうでしょう。さまになっていますね。
 あなたの助力のおかげですよ、ヴィント」
 ヴィントは静かに、頷くように瞬きをして見せた。それにハンナは静かに頷き、
「さぁ、狩りはまだ続きます。飛びましょう、ヴィント」
 そう言うや、ヴィントは翼を羽ばたかせ、今度は激しく風邪を巻き上げて飛ぶ。凪から暴風へ。
「へぇ、みんなすごいねぇ」
 と、何処かのんびりというのは『その日の風向き』大豊・恵(p3p010442)だ。恵は亜竜ベッドラの背にもたれかかるように、戦場を飛ぶ。
「参考に……って思ったけど、一朝一夕でマネできるものかなぁ?
 でも、その為の訓練だよねぇ、これ。じゃあ、がんばらなきゃいけないねぇ。
 ベッドラ、出来そう?」
 くわ? とベッドラが鳴いて見せた。主のように、何処かのんびりとしたような雰囲気を持つベッドラだが、しかし亜竜であることは確か。もちろん、ここで逃げ出すようなメンタルはしていない。
「おっと、大豊の方。こっちのダイレッグの方を頼めるかな?」
 と、武器商人が言う。変わらず、敵にまとわりつかれている様だ。武器商人が敵を引き付けているとはいえ、確実に、全てを……とはいかない。ターゲットを外れたダイレッグやマッドボアが、他のメンバーへの攻撃を敢行していることは事実だし、そうとなれば、はやめに敵を制圧してしまうのがいいだろう。
「りょうかぁい。
 ダイレッグも足が速いみたいだけど……」
 ばさり、とベッドラが翼をはばたかせる。と、どうだろう。のんびりした雰囲気とは裏腹、刹那の間にトップスピードに乗ったベッドラが、恵を乗せて一気にダイレッグの内一匹へと接敵する!
「私達には、叶わないよ」
 とん、とダイレッグに触れる恵。同時、流れ込むは強烈な威風の奔流か。僅かに触れた手を通じて流し込まれた衝撃が、ダイレッグの体中を駆け巡る! 様々な変化と衝撃を叩き込まれたダイレッグが、たまらず転倒! その上から、ベッドラがどしん、と踏み降りて、その脚と爪で止めを刺す。
「ナイス」
 恵が、ぐ、と親指を立てるのへ、ベッドラが嬉しそうに声をあげる。ダイレッグ達は、同胞が倒れたことに気づいて、方向転換。鋭いくちばしを槍のように突き出して、恵みに迫る。慌てて飛びずさるベッドラだが、鋭いくちばしは恵をかすめ、ナイフで切られたような傷を残した。
「危ない、直撃したら……」
「無事か、大豊!」
 エルクを仕留めたエーレンが、風花と共に疾駆、その刃をかざし、ダイレッグへと切りつけた。ダイレッグが、ぎゅい、と悲鳴を上げるように鳴く。
「礼を失する行いだが……名乗りより先に、斬らせてもらった。すまないが、命がかかっているのはこちらも同じだ」
 エーレンはそう断ってから、
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。俺達がどこまでできるか……試させてもらうぞ!」
 あらためてそう名乗ると、風花と共に突撃。先ほど切りつけたダイレッグが、反撃の体勢をとるのへ、さながら剣客同士が同時に刃を振るうがごとく、刃を交差させる! エーレンの刃が、風花の速度を乗せて、ダイレッグのそれをわずかに上回った。ダイレッグはくちばしごと身体を切りつけられ、どう、と倒れる。残るダイレッグが、いよいよ勝ち目がないと本能的に悟ったか、ダイレッグが怯えるように鳴いた。そのまま走り出す。逃走か。だが、その前に立ちはだかったのは、獰猛な亜竜――エルゥドリンだ! 轟! 強烈な咆哮が、ダイレッグを怯ませる! 刹那、ダイレッグを上空溶離強襲したのは、燃え盛る黒き獣、ロックだ! その手に強烈な炎を纏わせ、その身体は偽装を剥がし捨てて、獰猛な獣のそれを晒しだしている! 落下の勢いを乗せて放たれた強烈な一撃が、ダイレッグの頭部を殴りつけた。その勢いで首の骨をへし折り、ぎゅあ、と悲鳴を残したまま、ダイレッグが絶命する。
「エルゥ!」
 だが、その程度で獣はたまらない。エルゥドリンを呼ぶが、エルゥドリンは既に動いている。体当たりするようにロックへと突撃するエルゥドリンの背に、タイミングよくロックは飛び乗った。協力というよりは、お互いが好き放題にやっているが故に発生する連携。
「エルクの方は全部やっつけたよ!」
 リトル・リリーが叫んだ! イレギュラーズ達の猛攻により、既にエルク、ダイレッグは全滅している。残るはあちこちを走り回ってるマッドボア達だけだ。狂気、の名を冠するがごとく、正気を失ったように走り回るマッドボア。走り回っているだけなら可愛らしいものだが、その突撃は戦車砲の砲弾のようなもの。だが、そのような危険極まりない怪物とて――。
「狩りますよ、ヴィント」
 ハンナの言葉に、ヴィントが鳴いた。そう、亜竜騎兵隊(ドラグーン)には、もはや動き回るだけの狩りの獲物に過ぎない!
 ハンナは片手をあげて、ヴィントに静止を命じた。ピタリ、とホバリングし、僅かな上下動のみで停止するヴィントの献身を感じながら、ハンナはその上下動を加味したうえでてマッドボアをポイント。
「狙うは、前肢」
 呟きと共に放たれた銃弾が、走り回るマッドボアの前肢に突き刺さった! 高速で移動中、ここを狙われてはどうしようもない! マッドボアが転倒。派手に転がる中、恵がぱちん、と倒れたマッドボアへとタッチする。途端、内部に流れ込む奔流が、マッドボアの意識を刈り取った。
「よーし、次」
 恵の言葉に、マッドボアへと肉薄すべく、エーレンが風花を走らせる!
「先人は言った。信頼するということは、多少の無理をさせることだ。
 ――少し無理をしてくれ、風花」
 その言葉に応じるように、風花いっとう、スピードを上げた。高速で駆けるマッドボアへと接近すると、エーレンは刃を一刀両断、叩きつける! マッドボアが横合いからの衝撃に転倒すると同時、バーべが飛び掛かって、その牙で止めを刺した。
「えらい! けどまだ食うな! まだ!」
 あむあむと噛みつくバーべに、美咲が悲鳴を上げる。
「後一体だよ!」
 リトル・リリーが声をあげる。ホバリングしながら、マッドボアを狙うリトル・リリーとリョク。ホバリングしつつ放つ銃弾が、マッドボアを死角から狙い撃ち、追い込んでいった。
 同時、獅門は、亜竜の機動力を利用した一撃離脱戦法を敢行する。切り付け、一気にはなれる。敵の攻撃をいなし、切り付け、再びはなれる――翻弄するかのようなそれに、マッドボアは既に疲労とダメージが蓄積していた。
「なるほど、よくやってくれたぜ、春嵐!
 あとは、仕舞いと行こう!」
 獅門の言葉に、春風はきゅい、と声をあげた。抜き放った破竜刀がきらりと輝き、春風が疾駆! 速度を乗せた斬撃が、マッドボアを一撃の下に切り伏せた! マッドボアは、悲鳴を残す暇もなく、転倒。そのまま動かなくなる。
「やった! うまくいったね!」
 リトル・リリーの喜びの声に応じるように、リョクが声をあげる。なるほど、前例のない、ワイバーンとの共同戦闘。それはひとまず、成功を収めたようであった――。

●そして今は、紡がれた絆を
「おお、期待通り、無事に戻ってきたようじゃな……!」
 アオが、帰ってきたイレギュラーズ達を歓迎するようにそう言った。他のワイバーンを警戒するため、帰り道こそ陸路を通ったが、その背にはかりとった獲物の肉を満載している……というか、バーべやベッドラなどは、肉の匂いがするのだろうか、口から涎が垂れている。
「もう、もうちょっと、もうちょっとでスから! ステイ!」
「Zzzz……」
 制する美咲と、気にせずベッドラの上で眠っている恵。ある意味対照的な主人ではある。
「だが、こいつらにも充分、褒美はやらねばならん」
 ロックが言う。エルゥドリンも、自らのかりとった獲物に興味を抱いているらしい。
「そうだねぇ。
 ああ、このコには一番上等な肉を与えてやっておくれ。
 我(アタシ)と一緒に攻撃を受け続けてくれた功労者だからね」
 武器商人が言うのは、借り受けた亜竜だ。武器商人と共に最前線をかけたその鱗には、流石に傷がついている。
「もしよかったら、このまま譲り受けたい所だけれど、どうだい?」
「ふーむ、もし気に入っているようなら、申請させしてくれれば、という所じゃな。
 相性もよさそうだし、引き取りも検討しておくれ」
 アオがそういうのへ、武器商人が頷く。
「で、データとり、だったか。まぁ、俺たちは上手いことやれたと思うが……なんて説明するべきかな……」
 あー、と獅門が頭をかいた。確かに狩りは成功したが、今回の事をまとめて報告書にしなければならないのだ。
「行ってない、アオさんにもわかる様に、だろ? 狩りより難しそうだな」
「違いない」
 エーレンが笑った。
「だが、それも込みでの仕事だからな? 少し休憩してから、報告書作りも頑張ろう」
「そうですね」
 ハンナがくすり、と笑った。
「私だけの視点ではわからないこともあります。意見交換もしたいですね」
「じゃあ、少し休んでから、みんなで意見会をしよっか」
 リトル・リリーの言葉に、仲間達は頷いた。もちろん、亜竜達も、様々な声で、皆をねぎらうように、鳴いた。
 今はまだ、紡がれたばかりの絆。
 それがどのように花開くかは、これからにかかって来るのだろう――。

成否

成功

MVP

武器商人(p3p001107)
闇之雲

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 アオも、今回のデータには満足しているようです。
 亜竜と共に、強敵と戦う……という時も、いつか訪れるのかもしれませんね。

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