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シナリオ詳細

ディトルセ村の子怪鳥

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●果物荒し
 王都メフ・メフィートとバルツァーレク領に挟まれた山間に位置する場所に、ディトルセという小さな村がある。
 村人達は農業に精を出し、村に実るラタの実という果実が特産品である。
 このラタの実、実に美味で、バルツァーレク領を治める貴族ガブリエル・ロウ・バルツァーレクも愛して止まないという。
 生のままフルーツとして食す他、パイ包みや、すり下ろしてジュースにするのも良い。
 安価でありながら、ほどよい酸味にほのかな苦み、そしてそれらを包み込む芳醇な甘みが絶品である。
 ディトルセ村に行くのであれば、ぜひ味わうのがここ幻想のお約束であろう。

 ――だが、そんな絶品フルーツに危機が迫っていた。

「くそ、またやられてる!」
「収穫の時期も近いのにこれじゃあ生きていけないわ!」
 ここ最近、山間部より現れる怪鳥ハーピーの子供達が揃ってディトルセ村に現れ、特産であるラタの実を狙って食い荒らしていくのだ。
 ラタの実の収益に頼って日々を生きるディトルセ村の村人達は、子供とは言え恐ろしい魔物ハーピーの前に手が出せず、揃って手を上げた。
 ああ、村の命運はこのまま潰えてしまうのか――。
 村人達の嘆きを前に、しかし、村長はその重い腰をついにあげるのだった――。

●怪鳥害対策
「と、いうわけでしてな。ディトルセ村に襲い来る子ハーピー共を追い払ってほしいのじゃ」
 ギルド・ローレットに集まった特異運命座標(イレギュラーズ)を前に、ディトルセ村の村長ロウ・ギーマは村の実情を語って見せた。
「ボクの方で裏付けはとれているのです。確かに子ハーピーによる被害が拡大しているようなのです」
 ユリーカ・ユリカ(p3n00002)も村長の話に頷くようにいうと、改めてイレギュラーズに依頼内容を説明する。
「今回の依頼はラタの実を食い荒らしにくる子ハーピー三体の撃退なのです。追い払うに止めるか、退治してしまうかはお任せなのです」
 ハーピーは両翼で空を自在に飛び回りながら、鋭い爪で襲いかかってくる人の顔をもった怪鳥だ。子供とはいえ、その膂力はすさまじく、数は少ないとはいえ経験の少ないイレギュラーズには強敵だ。
「単純な依頼ではありますが、空飛ぶ相手とどう戦うか、考えておく必要があるのですよ」
 ユリーカの言うように、空を自在に飛び回る相手だ。うまく対策を考えておく必要があるかもしれない。
「今言う事ではないかもしれませんがの、うまく追い払ってもらえた後は歓待の準備ができておりますのじゃ。ぜひラタの実を味わっていってください」
 村長はそういうとしわがれた声で笑った。
 せっかくのお誘いだ断る事もないだろう。子ハーピーを退治しその後はフルーツパーティーと洒落込むのも悪くないはずだ。
「悪戯好きの悪い鳥さん退治なのです。少し強敵ではありますが皆さんならできると信じています。無事に帰ってきて下さいね」
 ユリーカはそういってイレギュラーズ達を送り出すのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 このたびは、ご参加頂きありがとうございます。
 依頼の補足情報を下記に纏めておきますので、ご覧下さい。

●依頼達成条件
 ・子ハーピー三体の討伐、または追い払うこと。

●情報確度
 Aです。想定外の事態は絶対に起きません。

●子ハーピー
 三体居ます。戦闘能力は普通、連携をそれなりにしてきます。敏捷性が高く、空を自在に飛び回ります。
 攻撃方法は単純にかぎ爪で引っ掻いたり突き刺したりです。
 カマイタチを起こすなど特殊な攻撃は一切しません。

●戦闘地域
 山間にあるディトルセ村内、ラタの実の収穫場です。退治が終わるまで村民は近づかないので一般人が巻き込まれる心配はありません。
 また障害物もなく戦闘に支障はでないでしょう。
 ラタの木が多数生えているため、そこに登る事も可能です。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • ディトルセ村の子怪鳥完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月30日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
一津神 除夜(p3p000327)
天秤の騎士
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ウィリア・ウィスプール(p3p000384)
彷徨たる鬼火
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
エイカ・クインクラント(p3p002341)
煌めく剣戟
ミリアム(p3p004121)
迷子の迷子の錬金術師
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻

リプレイ

●準備
 ディトルセ村の村長ロウ・ギーマに連れられ、ディトルセ村に辿り着いた特異運命座標(イレギュラーズ)達。彼らを迎えるのは村人達からの熱い眼差しだった。
「あんた達が村長が連れてきたギルドの人達か。頼むよ、あいつらを追っ払っておくれ」
「期待してるよ! がんばっとくれ!」
 村人達からの熱いエールが飛ばされる。
「すごい歓待っぷりですわね」
「それだけハーピーの子供達が、村にとっては脅威なんだろうね」
 『強気な銀猫』エイカ・クインクラント(p3p002341)の言葉に、『大空緋翔』カイト・シャルラハ(p3p000684)が返す。
 それを肯定するように先導する村長が頷いた。
「村の物では手も足もだせんのです。ほとほと困り果てていたものじゃから、皆さんが依頼を受けてくれてホッとしておるのですよ」
「でもこうやって歓迎されるのは嬉しいね。やる気がでてくるよ」
「そうっスね。依頼によっちゃ歓迎されないってのもあるかも知れないっスからね」
 『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)が嬉しそうにそう言うと、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が相槌を打った。
「さて、見えてきましたぞ」
 村長がそう言うと、道の先に大きな木が整然と並ぶ広場が見えてきた。果実園だ。
 辿り着いて見ると事態の深刻さが見えてくる。
「うわー、これはひどいね」
 所々食い荒らされたラタの実が腐り地に落ちる。悪戯につまみ食いするように果実園全体で食い荒らされている。
「こんなにも大切に育てた物を荒らすなんて許せませんわ」
 惨状を改めて確認し、ぷんすこと怒るエイカ。
 こんなにも食い荒らされているとなれば、収穫量は激減しているだろう。ギルドへと依頼するのもうなずけた。
「特産品を食い荒らされるって言うのは地元にとっては死活問題だよね。及ばずながら協力させてもらうよ」
 『迷子の迷子の錬金術師』ミリアム(p3p004121)が村長にそう言うと、村長は一つ頷く。そして「奴らがやってくるのは決まって昼頃なのですじゃ。時間にして――あと一刻ほどでしょうか。あまり時間はないですが、どうか宜しくお願い致しますよ」と言った。
「任せておいて。依頼には全力で応えるよ」
 村長にそう答えると、さっそく下準備に入る。
 戦場となる果実園の地形を調べ、ヘイゼルの提案で、ラタの木の三メートル上に村から借りたロープを張り巡らせる。
 相手は自在に空を飛ぶ怪鳥だ。飛行の邪魔になるような障害物を設置し、行動に制限を与える考えだ。
 村人達と手分けしながら、半刻ほどで準備は完了した。ヘイゼルは自分用にとラタの実一つを貰って置いた。
 額に浮かぶ汗を拭いながら、ゆったりとした風を感じる。
 平和でのどかな村だ。本当にこんな村に恐ろしい魔物が襲ってくるものかと思ってしまう。ゆらゆらと雲の影が果実園を流れていった。
 村人達からの差し入れをもらいながら、更に半刻ほど待つ。時刻は昼を過ぎたくらいのことだった。
「やつらがきたぞー!」
 果実園の奥から村人の声が聞こえた。本当に現れた魔物達。緊張が一瞬にして高まる。
「では、いこうか」
「ええ、行きましょう……」
 重い腰をあげ、村人の声があったほうへと走って行く。
 逃げ出すように駆けてきた村人が「あとは頼みますよ!」と言って、果実園から離れていった。
 奥へと進む。果実園の一番奥。近づくにつれ羽ばたきの音が大きくなってきた。
 そうして視界に移る、三つの影。
 巨大な羽根を羽ばたかせながら空中を浮遊し、器用に果実を啄む人の顔。するどい足爪は細く長い。三羽の子ハーピー達が、ラタの実を食い荒らしていた。
「うわ、思ったよりでかいっスね!」
「子供と聞いてましたが、よほど栄養が足りているのでしょうね」
 葵と桜咲 珠緒(p3p004426)が感想を述べる。二人の言うように子ハーピー達はかなり大きいサイズ感を持っていた。
 予想外のサイズに戸惑いながらもイレギュラーズは武器を構える。
 敵意を向けると、ハーピー達は「ケェェ――!!」と一鳴きし、ラタの木から離れ、その場を旋回し始めた。
 明確な敵意が感じとれる。それは、ナワバリを主張するハーピー達が、自身のナワバリに侵入した敵へと向ける物。
「その勘違い、根本から正して差し上げますわ!」
 村の果実を食い荒らす、子ハーピー達との戦いが始まった――。

●子怪鳥との戦い
「君たちに恨みはないが天秤に掛ければ君たちの方が軽い。そういう事だ」
 『天秤の騎士』一津神 除夜(p3p000327)がハーピー達に呟きながら戦場を確認する。すぐさま優先順位を暫定的に決定し、今にも襲いかからんとするハーピーの一体へと地を蹴り肉薄する。
 手にしたレイピアで羽根を狙い突き刺し抉る。俊敏なその動きに対応できないハーピーが悲鳴を上げながら上空へと逃げようとする。
「逃がすか――!」
 手にした盾をブーメランの様に投げつける除夜。しかしこれは空を切りラタの木にぶつかった盾は地に落ちた。
 思わぬ攻撃行動を受けたハーピー達は一斉に反撃に移る。長く鋭い鉤爪を引っ掻くように突き刺してくる。
「痛――ッ!」
 切り裂かれた痛みにヘイゼルは顔を歪ませる。
 残る二体もまたヘイゼルを狙うが、連携するように一人が牽制を行い、イレギュラーズ達の動きを止め、その隙をついて攻撃を行ってくる。
「鳥人間のくせに随分生意気な動きを致しますわね! 注意を引きますわ!」
 声を上げたエイカが、仲間の前へと躍り出てハーピー達へと剣を突きつけ名乗りをあげる。
「我が名はエイカ・クインクラント! おいたする子は軽ーくお仕置きしてあげますわっ。かかってらっしゃい!」
 ふふん、と挑発するように余裕を見せれば、ハーピー達の怒りがエイカへと向けられる。
 エイカはラタの木を傷つけない様に位置取りに気をつけながら、遮るように攻撃を加える。翼狙いの一撃はしかし、掠るに留まった。
 上空へと逃げようとするハーピーはしかし、事前に張り巡らせたロープに邪魔され上手く飛行するのが困難になっていた。
 その隙を狙って敵の懐へ飛び込むのはカイトだ。
「逃がさないぜ!」
 ハーピー達と同じように飛行できるカイトは内一体をマークし、行動を阻害する。さらに素早く敵の足を止める多段牽制を叩き込むと、その場に釘付けにし動きを止める。
「足止め……ありがとうございます」
 カイトにお礼をしながら『彷徨たる鬼火』ウィリア・ウィスプール(p3p000384)が手にしたスタッフに炎を宿らせる。
「あなた達も……生きる為、でしょうけど。それは……村の人たちも、同じだから」
 燃え盛る火炎を魔力の刃とし槍の様に振るえば、ハーピーの羽根を焦がしていく。悲鳴を上げながら炎の射程より逃げようとすると、今度は純粋な破壊力を帯びた魔力の塊が叩きつけられた。
 怨嗟の声をあげるハーピーが連携を取ろうと一カ所に集まろうとする。
「それはさせねっスよ!」
 戦況をサッカーと同じように考える葵は、フリーの相手がでないように立ち回る。今も又連携を取ろうとするハーピー達を邪魔するように移動し、曲芸射撃で牽制していった。
 連携を阻止されたハーピー達が、葵へと狙いを定める。敵視を稼いだことを確認した葵はすぐさま、距離を取り時間を稼ぐ。
「わりぃ、ちょっと人数足んねぇ! フォローたのむっス!」
 不利なことを仲間に声かけ、お互いにフォローを入れる。仲間達もよく通る葵の声にすぐさま反応して対応していった。
「自由に飛び回る敵……思ったより厄介だね。ただ、半径30m以内は全部僕の間合いだよ」
 その言葉通り、相手の射程に合わせて自在に魔力を行使するミリアムは、葵を狙い追い回すハーピーへと近距離用術式を放つ。
 すぐさま距離をとり離れると、今度は魔力を放出し、より損耗しているハーピーを狙い攻撃した。
 この一撃が致命打となったのか、一体のハーピーが地に落ちる。
「まずは一体――」
 止めは今は必要無い。まずは残り二体の戦意を失わせるのが先だ。
「たあぁ――!」
 ヘイゼルが大地を蹴り瞬間ハーピーへと肉薄すると格闘術を仕掛ける。
 低空飛行に留まっていたハーピーは見事にこの格闘術を喰らうことになる。反撃の鉤爪が腕を切り裂く。鋭い痛みに歯を食いしばり、こちらからも反撃の一打をカウンター気味にお見舞いした。
 仲間達がハーピーと戦ってる最中、最大距離まで離れてハーピーを狙う者がいた。珠緒だ。
 攻撃に集中しマギシュートを放つ。最大レンジの一撃を次々と放っていく。
 放たれた魔力弾をハーピー達は地上戦同様に避けようとする。その動きを珠緒は気にかけ、仲間達に伝える。
 いくつかのマギシュートを放った後、すぐさま珠緒は移動する。今度は仲間達に対して遠距離に。ハーピーの鉤爪でやられている仲間達がいる。特にエイカとヘイゼルが負傷の度合いが大きかった。
「すぐに回復致しますね」
 ハーピーとの間に木を挟んで近づきにくくしながら、一人ずつ簡易な治療魔術を施していく。
 そうして仲間を支えながら、珠緒は距離を維持しながら攻撃を繰り返していった。
 ――戦いはイレギュラーズ達優勢に進んでいった。
 すでにハーピーの内一体が地に落ち戦意を失っている。残る二体もまたかなりの負傷度合いだ。もう一押しで追い払う事が可能になるはずだ。
 だがイレギュラーズ達も無傷と言うわけにはいかなかった。鋭い鉤爪に身体のあちこちを切り裂かれ、全身傷だらけだ。
 子ハーピーとはいえ、その膂力はすさまじい。珠緒の治療術式がなければ、瞬く間に戦闘不能者が生まれていたかもしれない。
 怒りの形相に威嚇の鳴き声をけたたましく上げるハーピー達は、最後の力を振りしぼり攻撃へと転じる。
 二体が旋回し、一気に速度をあげると、奇声を上げながら爪で鷲掴みにしようと迫る。
 何度か身を翻しながら躱すが、その鋭い一撃にエイカと葵が切り裂かれる。
「まだまだ、そんな攻撃じゃエイカは倒れませんわよ!」
「チッ、こんなもんでやられるかよ!」
 裂帛の気合いを込め、立ち上がる二人。すぐに珠緒から治療魔術が放たれ、二人の傷を癒やしていく。
 回復を行う珠緒にハーピーが気づき狙う。しかしエイカがすぐに間に入り珠緒へは近づけさせない。
「そろそろ終わりにしてあげますわ――!」
 飛び込んでくるハーピーの深い間合いにまで踏み込み、エイカの剣が一刀のもと両断する動きを見せる。
 深く斬り込まれたハーピーが地面へと墜落するが、まだ戦意は衰えていない。すぐさま羽ばたき距離を取ろうとする。
「もう少しだ、追い詰めるぞ!」
 カイトが声をあげ、追いかける。
 ギフトで風を読み、安定した飛行を試みながら、木々を回り込みハーピーをマークする。
 追い込まれるのを嫌がるハーピーに多段牽制を放ち足を止める。
 動きを止めたハーピーの上空からウィリアが迫る。ラタの木に登って跳躍からの攻撃を試みたのだ。
「ここから……立ち去って、ください。火は……恐ろしいものですよ」
 焔をあげるウィリアの魔術にハーピーが悲鳴を上げた。
「バックアップはこっちに任せとけ!」
 駆けながら声をあげる葵は仲間の位置を確認しながら、ハーピーに迫る。
「こういうのはどうっスか!」
 高く跳躍する葵は、空中で半身を捻りながら左足で蹴撃を決める。サッカーで鍛えられたその一撃が、ボールを蹴り飛ばすかのようにハーピーを蹴り飛ばした。
 怒りに身を震わすハーピーが怨嗟の鳴き声をあげる。
「そう喚かないでほしいけどね」
「まったく、自分の思い通りにならないと騒ぎだすのはどんな子供も同じね」
 ミリアムが遠距離術式を放ちハーピーに傷を負わせると、ヘイゼルが突撃し、得意の格闘術を放つ。
 腹部に決まる強烈な一撃、ハーピーは上空へと逃げようと飛び立つ。ヘイゼルの前で除夜が盾を構え背中を見せた。ヘイゼルが駆ける。除夜の構えた盾に足を載せ、ハーピーに追いすがる。そしてハーピーの顎を狙ったアッパーは見事直撃し、ハーピーの視界を明滅させた。
「では物理的天秤といこうか、支点は僕で梃子は君だ」
 落ちてくるハーピーを下で盾を構えていた除夜が睨めつける。
 盾とレイピアから手を離し、ハーピーの羽根をクロスさせ後ろから羽交い締めにすると、ひと思いにハーピーを投げつける。
 地面に叩きつけられたハーピーは、意識を朦朧とさせながら、地に崩れ落ちた。
 二体のハーピーを倒したところで、残す一体のハーピーから戦意が失われていくのを感じた。
 ヘイゼルが、事前に貰っていたラタの実を取り出すと、ハーピーに放り投げる。
「倒れた姉妹を掴んで帰るのですね。一度の食事のために命を捨てたくは無いでしょう? ここの実はそいつで最後にするのですね」
 知能の低い魔物にその言葉が理解できたかはわからないが、放り出されたラタの実を加え、倒れたハーピー達を支えるようにして飛び立つと、脱兎の如く逃げ出すのだった。
 喧噪は止み、静かな農村の昼下がりが戻ってくる。
「はぁーなんとかなったぁ……」
「もう傷だらけですわ」
「やれやれ、あれで子供とは、親がでてきたらただではすまないだろうね」
 戦い終わり、思い思いの言葉を投げかけながら、腰を下ろす。
 大きく息を吐き、深呼吸。イレギュラーズ達の顔に笑みが浮かんだ。
 戦いは終わった。イレギュラーズ達の勝利だ――。

●祝杯の宴
「さあどんどん食べておくれ。この村自慢のラタの実フルコースさ!」
 戦い終わり、村に吉報が届けられると、一転して村はお祭り騒ぎの様相となった。
 もともと祭りの少ない村なだけに、こういうときに楽しむ必要があるのだと、村長は笑って言った。
 イレギュラーズ達もまた、今回の戦いの功労者として贅沢な歓待を受ける事になる。
「ふむ、なかなか美味いね」
 貰い物は遠慮無く。神様マインドを発揮する除夜はフルーツの盛り合わせを一口ずつつまんで食べる。
「ん~、すっきりした甘さが美味しいですわ! フルーツタルトやパフェに使ってもいいですわね……お土産に少し頂けないかしら?」
 ラタの実のパイ包みを食べご満悦なのはエイカだ。あれやこれやと使用用途を考えながらラタの実を食していく。
「うぉ~うまいなぁ!」
 ラタの実を生のまま囓りつつ、パイやジュースでもその味を堪能するカイト。果実酒にして船旅に使えないかなぁ、と考えては見るものの、自分はまだ未成年だから飲む事ができないことに気づき、残念がっていた。
「ふぅ……とってもおいしいですね」
 落ち着いてフルーツに舌鼓を打つウィリア。お土産用に実を購入する事を決めていた。
「もし、また……荒らしに来たら。その時は……ギルドを、頼ってくださいね」
「ああ、今度もまたお前さん方を頼らせて貰うよ!」
 威勢の良い返事にウィリアはコクリと頷いた。
「ラタの実ケーキにラタの実グラタン、うぉラタの実ステーキなんてものもあるのか。全部試すしかないっスね! ……あ、でも少し血も欲しいっス 」
 葵は様々なラタの実の調理法に驚きながらも一つ一つを味わっていく。どれもラタの実の素材が活かされた大変おいしい物だった。
「これがラタの実か……僕の前いた世界にはなかった木の実だよね。戦闘中はじっくり観察できなかったけど、子ハーピーがしつこく狙ってきただけあってなかなかおいしそうだね」
 じっくりとラタの実を観察するミリアムに、村の者が「見てないでどんどん食べな!」と声をかける。
 ゆっくり味わうように口に入れると、芳醇な甘みが口の中に広がっていく。
「ん、おいしい。なるほどこれは絶品だ」
「ほんと、美味しいね」
 ミリアムに相槌を打ちながらヘイゼルもラタの実を頬張っていった。
「村長」
 珠緒が村長に声をかける。今日の戦いを経て考えた事を口にした。
「……再発の可能性を否定できませんので、再依頼の備えをおすすめいたします」
「ふむ……そうですか。確かにまた悪さしにくる可能性はありますしのう」
 村長の言葉に珠緒がこくりと頷く。
 原因の追及は難しいが、また起こる可能性は否定できないだろう。なにかうまい対策ができればいいのだけれど、と珠緒は思った。
 ――でも。
 ひとまず今日の仕事は無事に終える事ができた。
 次なる依頼が舞い込むまでまだ時間はある。
 それまでは、この絶品フルーツを楽しみながら、ゆっくりと待つとしよう。
 勝利に乾杯、ラタの実に乾杯。
 祝杯の宴は夜通し続くのだった――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

シナリオ参加頂きありがとうございました。お疲れ様でした!

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