シナリオ詳細
<spinning wheel>ヘイムダリオンの炎
オープニング
●大迷宮ヘイムダリオン
「ここが……!」
ユーフォニー(p3p010323)は、目の前の景色に絶句した。元は静かな森林だったのだろう。だが、すでにあちこちに火の手が上がっており、その大半は無残に焼け落ちていた。
大迷宮ヘイムダリオン――外界と妖精郷を繋ぐ、不思議な迷宮である。その内部は、エリアごとに様々であり、例えば極端な話、宇宙のような空間が広がっていたり、突然海の中に放り出されたり、メルヘンチックなふわふわとした世界の繋がったり……と、状況によって滅茶苦茶だ。
かつて、イレギュラーズ達が妖精郷へと向かうために踏破したこの迷宮に、再び足を踏み入れたのは、妖精郷より深緑へ向かうこのルートを使い、茨の内部へと踏み込むためである。
ヘイムダリオン使用の条件は、内部に潜む危険を相当し、妖精たちを守る事。かくして、ユーフォニーを始めとするイレギュラーズ達は、ヘイムダリオンへと入り込んだのだが……。
「ひどいな」
仲間の一人がそういう。前述したとおり、元は森林が広がるエリアだったであろうこのフロアは、今は苛烈な炎にまかれている。
「……また、混ざり合った音……不協和音じゃない、音」
ユーフォニーの脳裏に、音が響く。かつて感じた音。外で遭遇した、炎の怪物から感じた音だ……。
「……やはり、『シェーム』の手の者か……?」
仲間がそう尋ねるのへ、ユーフォニーは頷いた。きっと、そうに違いない……皆は、ルドラ・ヘスとの会話を思い出していた。
「おそらく、皆が遭遇した炎の敵は、伝説の炎の嘆き、シェームの手によるものかもしれない」
ヘイムダリオンへと出発しようとしていたイレギュラーズ達に、ルドラはそう告げる。
シェーム……今はもう、幻想種たちも忘れたような、古い古いおとぎ話に語られる、伝説にして原初の大樹の嘆き、とされる存在だ。
かつて、悪徳を働いた幻想種によりファルカウが傷つけられた際、深緑内の炎の精霊と大樹の嘆きの声を飲み込んで生まれた、すべてを焼き尽くす炎の化身……。
「だから、不協和音じゃなくて、どこか調和の取れた音だったんですね。もとから、精霊と、嘆きが、デュエットして生まれた存在……」
ユーフォニーがそういうのへ、ルドラは頷く。
「だが、そんなおとぎ話の存在が、実在するとは……そして、よりにもよって敵に手を貸しているとは、信じがたいものだ。
なんにしても、炎の怪物は、これからもみんなの前に立ちふさがることになるだろう。
くれぐれも、気を付けてくれ。シェームは、すべてを飲み尽くす怒りの炎のような存在らしいからな――」
ごくり、とつばを飲み込む。言われてみれば、暴れまわる炎は、まさに怒りの象徴だ。だが、イレギュラーズ達が、炎に立ち向かうのを、あの怪物たちは歓迎していた節もある。ならば、シェームの思惑とはいったい何なのか……?
そう考えた刹那、ぼう、ぼう、と炎が巻き上がる音がして、イレギュラーズ達の思考を中断した。見れば、周りには複数の炎の魔人と形容すべき存在が現れ、イレギュラーズ達を囲んでいる。上半身だけが、宙に浮いているような、人型の魔人だ。下半身はなく、代わりに苛烈に燃え盛る炎が、まるで上半身を浮かせる雲の台座のようにも見える。
「……こいつらか! このエリアを焼いたのは!」
仲間が声をあげ、構えた。
「シェームがなにを持っているのかは知らないけれど、ヘイムダリオンを焼いて、妖精郷まで迫ろうって言うなら容赦はしないわ!」
仲間の言葉に、ユーフォニーも頷く。ここで逃げ出すわけにはいかない。この炎の魔人たちが如何に恐ろしい相手だとしても、倒し、先へ進まなければ……深緑に、未来はない。
「頑張りましょう、皆さん!」
ユーフォニーの言葉に、仲間達は頷いた。
かくして、ヘイムダリオンにて、炎の魔人との闘いが始まろうとしていた――。
- <spinning wheel>ヘイムダリオンの炎完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年04月06日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●灼熱に燃える迷宮
轟、と巻き起こる炎。木々を焼き尽くす、赤の暴力。
その暴力の源泉は何か。怒りか、嘆きか。
炎の嘆き、と伝説の言う。その一片と、物語る。
「……これは酷い……な……、森も嘆いてるよ。
これだけの被害、元通りになるのはどれだけかかるだろう」
『微睡む水底』トスト・クェント(p3p009132)が声をあげる。ヘイムダリオンの常識は、外のそれとはいささか異なる。さながら異世界のような場所がこの景色だが、だとしても、これほどまでに木々が炎に焼かれては、ダメージは相当なものといえただろう。
「ふぅん? この炎。前回の奴と同じ感じだ」
『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)が、僅かに肌を焼く熱さに、以前深緑で戦った溶岩の巨人を思い出す。
「アイリスさんも、炎の嘆きと戦っていたのですね」
『未来を願う』ユーフォニー(p3p010323)が尋ねるのへ、アイリスは頷いた。
「うん。ボクは同士討ちをしている奴とね。その様子だと、ユーフォニーさんも、同じものを感じている様だね?」
「はい。精霊と、嘆き。混ざり合ったような、デュエット……」
「なるほど、シェームという奴でありますね」
『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)が、ごくり、とつばを飲み込んだ。熱さもあるが、それ以上に、これほどの火炎を操る怪物を使役するという敵に対しての、若干の畏怖を覚えての事だ。
「奴がなにをたくらんでいるかは知りませんが……しかし、奴の行動がこのような光景をもたらすのなら!
このムサシ・セルブライト! 己が身をかけて、敵を討伐するつもりでありますよ!」
ぐっ、とこぶしを握り、決意の言葉をあげるムサシ。その言葉に称賛を送るかのように、轟、と炎が揺らめいた。気づけば、炎の魔人、とでも形容すべきか、炎から上半身を生やしたような浮遊する怪物が、燃え盛る木々の中より生まれいずる。そして、中天に輝く太陽のような炎塊が、ぼう、と燃え盛った!
「……来ましたね。これが、シェームの眷属、とでもいうべき存在ですか」
風花(p3p010364)が静かに呟く。そう、イレギュラーズ達に迫る魔人たちは、おそらく先にイレギュラーズ達が対峙した、炎を模った大樹の嘆きと同等の存在。つまり、炎の嘆きシェームによって生み出された存在であることが予測された。そして、その予測はおそらく正しい。
「さらに、あの不釣り合いな灼熱の太陽。あれも怪しい所ですが……」
じろり、と中点を睨む。太陽のような炎塊は、世界の隅々までを照らしていた。まるで、『存分に戦え』と双方に促すかのように。
「ふぅむ、この覇竜一の知識人にしてスゥーパァインテリジェンスドラゴォニアの吾輩を以てしても、あの太陽はよくわからぬな、ご同輩!」
ガーッハッハハ、と笑うのは、『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)である。
「だが……不自然なら警戒しておくにこしたことはない! と、この赤い脳細胞が言っているのであるが。
しかし、まずはあの魔人を何とかせねばならぬ!」
練倒の言う通りだ。ひとまず、積極的に脅威をもたらしてくるのは、あの魔人たちである。ならば、今行うべきは調査ではなく、討伐。
「そうだね。わたしたちの役目は、とにかくヘイムダリオンの突破。そして安定。
このルートを開拓しなければ、深緑内部を調査することもできないからね」
『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)がそういう。その言葉通り、このチームの目的は、ヘイムダリオンの踏破と安全の確保だ。それがなされなければ、そもそも敵に迫ることもできないし、調査などは以ての外。
「……それに、個人的に、だけど。森を焼くような奴は嫌いなんだ。
酷く怒ってるんだよね、わたしの物語が。きっと森を舞台にする物語だったに違いない」
そう言って、じ、と魔人たちを睨みつける。その手に輝く腕輪が、ひんやりとした冷気を肌に滑らせ、周囲の熱気から守ってくれる。Я・E・Dの鋭い眼にも、魔人たちは動じず――いや、それよりも、明確にぶつけられた敵意を歓迎するかのように。
「……はっ。抵抗、迎撃、大歓迎、って奴デスか?」
『犬の一噛み』わんこ(p3p008288)が、ぐるる、とその歯をむき出しにして笑った。この時、Я・E・Dが静の獣であったとしたら、まさに動の獣はわんこであった。わんこは、その身体に力を一杯にみなぎらせて、狼が飛び掛からんとするときにそうするように、その肩をいからせて手を広げた。爪を突き立てる獣のように。
「ユーフォニーサマ、アイリスサマ。奴らの姿勢は変わりありまセンね?」
「はい。歓迎しています。此方の戦意を……!」
「やっぱりシェームって奴の基本姿勢みたいだね。かかってこい、って事かな?」
ユーフォニー、そしてアイリスがそういうのへ、わんこは笑った。
「ならよし、徹底的にボコって……おしえてやりマショウ!
ローレットを、舐めるんじゃねぇぞってナ!!」
轟、と、わんこの気迫に震えるように、炎が波打つ。合わせるように、仲間達も一気に武器を構えた。笑うように、魔人たちが構える。喜ぶように、中天の太陽が燃え盛る!
「頑張りましょう、皆さん!」
ユーフォニーが声をあげるのへ、仲間達は頷いた。かくして、燃え盛る戦場の中、イレギュラーズ達の戦いが幕を開けた!
●炎・舞
まるで炎が意思を持って襲い掛かって来るかのようだ。燃え盛るは12の魔人。それは一斉にその両手を掲げると、頭上に炎の弾丸を生み出した。一斉射――が、それよりもはるかに速く動いたのは、Я・E・Dだ。
「わるいけど、わたしはもっと速い」
掲げたその手に収束される魔力! 破壊の魔砲が解き放たれ、地を薙ぎ払うように光が駆ける! その射線に飲み込まれた複数の魔人が、その光の内に炎の銃弾を爆散させた。炎と光が混ざり合い、強烈な爆発を巻き起こす! その光景を見やりつつ、極射の反動に腕を振るいながら、Я・E・Dが声を上げた。
「わたしはできる限り全体のダメージを増やすから。止めは皆に任せるね」
「了解であります!」
続くのはムサシだ! うち放たれる炎の弾丸の雨をかいくぐりながら、ムサシはレーザーブレードを振るい、突撃! 魔人の振るう炎の刃と切り結ぶ! レーザーの飛沫と、炎の飛沫が飛び散り、地上を赤く照らした!
「宇宙保安官、ムサシ・セルブライト見参ッ!
ヘイムダリオンをこれ以上焼かせはしない……魔人共! 自分が相手になるであります!!」
名乗り口上をあげるムサシ! 魔人たちが、ならば耐えて見せよといわんばかりに殺到する! 振るわれた炎の剣を、レーザーブレードで受け流すムサシ。が、一体をいなしても、すぐに二体目が現れる。横なぎに振るわれたそれを、
「なんとっ!」
後方に宙返りして回避してみせる。ずざっ、と着地した所へ、炎の弾丸が着弾した! 衝撃波が、ムサシの身体を撃つ! 痛いみに顔をしかめつつ、しかしその戦意は衰えない!
「大丈夫、ムサシサマ! わんこもすぐに行きマス!」
がおう、と吠えてわんこが飛び出す! 勢いのまま、手近にいた魔人に飛び蹴りを叩き込むわんこ。直撃した魔人が、ぐるると回転して地にたたきつけられた。起き上がろうとする魔人に、わんこは獣のごとく飛び掛かる! その手に雷が走るや、獣の牙のごとくぶち込まれた手刀が魔人の胸をぶち抜く! 炎と雷、この時に上回ったのは、雷だ! 地上で爆発するかのような音を立てて、雷が魔人を吹き飛ばす!
「さぁ、かかって来いよ。焼けるもんなら焼いてみな、魔人共……!」
がうるる、とわんこが唸る。魔人たちは、しかしその獰猛な笑みに応じるように、その炎を巻き上げて見せた!
「やる気十分って奴デスか!」
「ちがいないね。以前と同様。バトルマニア気取りかい?」
アイリスが、ふ、と鼻を鳴らす。その手にした機械刃が、激しく鳴動した。
「なんでもいいけれどね。ボク達も急いでいるんだ。サクッと殲滅して押し通らせてもらうよ?」
アイリスが跳躍する! 眼下に並ぶ魔人たちに向けて、その機械刃を振るった! 描くは月光、死の月なり!
「吉の月は昇る……天秤は振り切れ、断罪の刃は振り下ろされる……汝、咎人懺悔せよ!
大技で行くよ。巻き込まれないでよ? わんこさん!」
「合点!」
宙を蹴る様に一気に落下し、その『死の月(やいば)』を振り下ろすアイリス! 入れ替わる様にわんこは飛びずさり、大地に死の月が咲いた。斬! 剣閃は光を描き、月を描き、刃を描く! 魔人の一体が、胴体と台座(ほのお)を泣き別れに、吹き飛ばされる。宙で爆発するように、その身体と台座がはぜた。生き残った魔人たちが、その刃を振るいあげる――そこに突き刺さる、Я・E・Dの魔砲! じゅ、とまるで溶けるように、炎が光の内に消えていく。
「ナイス――!」
アイリスが称賛の声をあげ、跳躍。入れ替わる様に殺到する炎の弾丸が、大地を爆発させた。
「ふざけんな! アンタらの思惑なんざ知りまセンが、この地の精霊がアンタの中に混ざっているなら、この状況を悲しいとは思わないんデスカ!?
そこら中燃えてんだぞ……!」
わんこが吠える。トストが頷くように、ワイバーンの背の上で声をあげた。
「そうだよ。君たちは、本当に、深緑のことなんてどうでもいいのかい?」
困惑するように、トストは言う。だが、答えは炎の弾丸だった。低空飛行するワイバーンの周囲をかすめる。その熱に、ワイバーンがくあ、と悲鳴を上げるのを、トストは優しくなぜた。
「ごめんよ。でも、今は力を貸しておくれ」
その言葉に、ワイバーンが吠える。速度を上げ、地を奔る。炎の弾丸の雨を駆け抜けて歌うは、絶望の青の歌。歌に込められた魔力が、青の魔力が赤の炎を押しつぶすように叩きつけられる! ぎゅぅる、と炎が巻き起こり、青に魅了された魔人たちが異常行動をとり始める。
「このまま、敵の動きをコントロールするよ!」
トストが声をあげる。炎は、オオサンショウウオであるトストの身体をじりじりと痛めつけるように焼いていた。乾燥と、熱。それが身体にダメージを与えるのを、トストは耐えつつ、攻撃の手を緩めない。今この痛みに屈しては、全てが台無しになってしまうのだから。
「ダンジョンの一室とは言え、森を焼き払うとは言語道断である!
さぁ御同輩、我々ドラゴニアの力、外でも見せつけてやろうではないか!」
練倒の言葉に、風花が頷いた。
「外に出て初めての仕事。状況はまだまだ不明ですが、しかし倒さなければならない敵は分かります」
その手に巨大な魔術書を掲げ、
「植生豊かな森林にそぐわぬ炎の怪物よ、これ以上の横暴は許しませんよ!」
うち放つ、魔力砲撃! 練倒は同時、ハガルのルーンを描いた。力ある文字から生まれた雹が戦場に降り注ぎ、氷の礫が魔人たちを撃ち抜く! たたん、とまるで銃弾が肉体を貫いたように、ハガルの雹が魔人たちの身体を貫いた! その止めを担う風花の魔砲が、魔人たちを貫く! 雹と、魔力の奔流! 二つの攻撃にさらされた魔人が、はぜて消える!
「ガーッハッハハ! ドラゴニアの力、外でも健在であるな! それもこの紅色の脳細胞が導き出す計算があってこそ!」
「何色でも構いませんが、油断はしないでくださいね、御同輩君」
風花は、ふ、と笑ってみせた。二人の亜竜種は、その実力を存分に発揮する! 魔人たちは、イレギュラーズ達の総攻撃に、着実にその数を減らしていった。敵の数は多い。複数の敵を巻き込んで削りつつ、弱った敵を確実に仕留めていく連携。それはうまくいったといえるだろう。もちろん、敵の攻撃も苛烈ではあったが、引き付け役のわんことムサシが、しっかりと攻撃を誘導し、耐えることで仲間の被害を最小限へと抑えていた。
回復手が少ない分、攻撃も前のめり。まさに肉を切らせて骨を断つ、といった所か。苛烈な戦いは、しかし魔人たちも同様。前のめりに攻撃を続けるのは、魔人たちもそうだ。結果として、最大攻撃同士のぶつかり合いが激しく展開している。
「ムサシさん、わんこさん、無理はなさらないでください!」
ユーフォニーが声をあげる。手にしたのは願いの弓。大好きなこの世界を、傷つけたくないという願いのこもった、ユーフォニーの願いの弓。放たれた矢が、魔人を貫く。魔人が消滅する中で、しかしユーフォニーが感じたのは、喜び、の音色だった。
「……やっぱり……まるで、何かが立ちはだかるのを喜んでいるみたいに……!」
「ふぅむ? となると吾輩の紅の脳細胞が導き出すに、奴らの目的は吾輩たちそのもの……!?」
練倒が首をかしげる。
「だとしても、やることが大掛かりすぎるね」
Я・E・Dが周囲を見渡した。ヘイムダリオンの1エリアとは言え、ここにも何らかの生命が居たかもしれない。だが、その炎は、それらの痕跡すら消してしまうほどだ……。
「あの魔人達がどういう考えかは知らないけれど。
少なくとも今はわたし達の敵だっていう事だけは確かだよ」
Я・E・Dの言葉に、ユーフォニーは頷いた。
「そうですね。今はまだ、彼らの目的は分かりません。けれど……!」
彼らを放っておけば、命が奪われる。それは間違いない。
「だったら、ここで止まってはいられません!
ここを乗り越えて……深緑に着いて! それから、事件を解決します!
それが、私達、ローレット・イレギュラーズのなすべきことです!」
ユーフォニーの言葉に、仲間達は頷く。
「キャヒヒ! シンプルデスけど、良い鼓舞デスね!」
わんこが頷いた。
「そうだね。おれ達は、特異運命座標の看板を背負ってここにいるんだ。
相手の真意は分からなくても、突破してみせないとね」
トストが微笑む。
「ふふ、がぜんやる気が出てきたね?
敵はあと少し……ボク達の力を見せつけてあげようか」
アイリスが笑い、
「我が竜覇は空。カラの世界に火はたたず、故に我が矢は炎を掻き消すもの……。
そのことを、見せてあげましょう」
風花も静かに頷いた。
「よし……では、最後の総攻撃と行きましょう!
ローレット・イレギュラーズ……ムサシ・セルブライト!
見ているでありますよ! どんな障害も、ヘイムダリオンも……怒りの化身だろうとなんであろうとも乗り越える!」
ムサシが叫び、飛び出した。わんこも続く。二人は一気に魔人に飛び掛かると、レーザーブレードで/その手刀で、魔人を切りつけた。そのまま、同時に蹴り上げると、魔人がよろり、と身体をゆらし。そこへ、Я・E・Dの極大魔砲が突き刺さり、二体の魔人を焼いた!
「がおー、ってね。
今回の最大火力はわたしだから。出し惜しみも容赦もしない。
わたしが手折れるか、あなたたちが斃れるか。いずれにせよ、それが決まるまで一分もかからない」
Я・E・Dが再度、極大の魔力砲撃を撃ち放つ! その光に身を焼かれながら、残る魔人たちが火炎銃弾を撃ち放った! どどど、と大地に突き刺さり、爆散する火炎銃弾! イレギュラーズ達の肌を叩く炎が、灼熱の痛みを走らせる!
「炎の魔物だっていうののなら、水底からの響きは苦手だろ? 確認済みだよ。
さぁ、水底の青に眠ると良い」
トストの青が、魔人たちをからめとる! 水底に引きずり込むような、青の歌。炎を消化するように、青が魔人を消滅させる!
「吾輩も一気に続くでありますぞ!」
練倒がその両手を突き出した。生み出された魔力のミサイルが、風切り音をあげながら炎を突き破って飛ぶ! ずどん、と音を立てて、魔人の頭部に突き刺さる! 爆発した魔人がよろけるのへ、突き刺さるのは風花の魔力砲撃だ!
「消えなさい、苛烈なる炎よ」
激しく明滅する魔砲とは対照的に、静かに呟く風花。魔力の奔流に巻き込まれ、魔人に突き刺さった魔力ミサイルが爆発! 強烈な爆風をまき散らし、魔人を吹き飛ばした!
「ユーフォニーさん、援護をお願い!」
アイリスが、最後の一人に向ってかける! 手にした機械刃が、激しい駆動音を奏でる。戦場に満ちる音。旋律。そう言ったものをききながら、ユーフォニーがその手を掲げた。
「この光景に、どんな旋律(おもい)があったとしても……それが、どれだけ崇高な旋律(おもい)だったとしても!
私は、それを否定します! こんな、辛い光景の先に……幸せなんて、きっとない!」
ユーフォニーが放つ願いの矢が、魔人の身体を縫い留めた。ぐぐ、と魔人が呻いた刹那、好きを晒した魔人を、大上段から機械刃が切り裂く! アイリスの刃だ! 魔人が、ぼう、と炎を巻き上げて、消滅していく。
「これで最後かな?」
アイリスが言った刹那、周囲の炎が激しく巻き上がった。それが太陽に吸収されると、次の瞬間、太陽は燃え尽きた炭のように、真っ黒な塊となった。炭になった太陽が、ボロボロと崩れ落ちて消えていく。
「……あの太陽は、魔人たちの大元だったのでしょうか……?」
風花が、静かに呟く。同時、皆の脳内に、何か、男の声のようなものが響いた。
『見事じゃ。それでいい。嗚呼、まったく、実に良い。
貴様(きさん)らの雄姿、しっかりと覚えておくぞ』
それが、炭の塊から発せられたのだと気づいた刹那、炭の塊は風に乗って消えていた。後には、すっかりと消化された森の姿があった。
「……今のが、シェーム……?」
トストが呟く。
「分かりません。ですが、今までみられていたのは、確かでありますね」
ムサシが言った。
「ちっ、悪趣味なヤローデスね。高みの見物デスか」
わんこが唸った。
「……さて。ただ、ひとまず、この森の安全は確保されたみたいだ」
Я・E・Dが顔を伏せた。
「元通り、とはいかないけれど。再生まで、どれくらいかかるのだろうね」
「この吾輩の頭脳を以てしても、わからん……妖精の加護のようなものがあればよいのであるが」
練倒が言う。すぐには、この焼けた森は復活はしないだろう。それ故に、如何にシェームに理由があろうとて、その行いは許されるものではないのだ。
「行きましょう、皆さん。こんな行い、止めないと」
ユーフォニーの言葉に、仲間達は頷く。ここはまだ、道半ば。歩みを止めるわけにはいかない。
イレギュラーズ達は、再び一歩を踏み出した。災禍の待つ、深緑の中心へ向けて。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆様の活躍により、ヘイムダリオンに救っていたシェームの配下たちは一掃されました。
危機は去り、安定が訪れるでしょう……。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
ヘイムダリオンに現れた、シェームの配下を撃破しましょう!
●成功条件
すべての『炎の魔人』の撃破
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●状況
深緑内部へと向かうための、妖精たちとの取引。ヘイムダリオンを利用する代わりに、危険から妖精たちを守る事――。
それを承諾し、ヘイムダリオンの攻略へと乗り出したイレギュラーズ達。あなた達も、そんな部隊の一つです。
あなた達は訪れたのは、本来ならばさわやかな森林の広がるエリア。しかし、今は炎の魔人たちに襲撃され、その無残にも焼け落ちた姿をさらしています。
この炎の魔人は、外で茨と共闘するようなそぶりを見せていた炎の怪物たちとルーツを同じくするもの。
シェームと呼ばれる、炎の嘆きの配下に違いありません。
シェームの思惑がどこにあるにしても、しかし今はこの魔人たちを倒さなければならない。
皆さんは、この魔人たちを排除し、先に進むのです!
作戦エリアは、焼け落ちた森林地帯。足場が少々悪く、移動に手間取るかもしれません。また、なぜか太陽のような光源があるため、明かりには事欠きません。
●エネミーデータ
炎の魔人 ×12
炎の台座から上半身が生えたような、人型の炎の魔人です。
基本的には、炎を刃のように整形して斬りつけてきたり、炎を生み出して弾丸として撃ち出してきたりします。
BSとして、『火炎系列』や、『窒息系列』にご注意ください。
単体では並程度の相手ですが、数が多い事にご留意ください。集中砲火を受けては、ひとたまりもありません。
相手取る時は、一体一体確実につぶすか、複数を巻き込んでまとめて数を減らすか……戦術に合わせて戦い方を決めるとよいでしょう。
以上となります。
それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。
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