PandoraPartyProject

シナリオ詳細

春色の喫茶店

完了

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オープニング

・桜の木の下で

 春になると、この辺りの景色は桜色に変わる。街のいたるところに咲いた桜が満開になり、風に吹かれてはその花を散らしていた。はらはらと降り続けるそれは雨のようで、見る人の目を奪い、心を繋ぎとめる。

「ね、あんなところにお店があるよ」

 桜の木に隠れるように立つ喫茶店だった。木製の小屋を思わせるようなそこは、時折花びらに降られて、花弁の色に染まる。外に置かれたベンチや机も花弁に飾られて、まだらに色をつけられていた。

 子どもが数人、ひらりと舞う花びらを掴んで遊びながら、小屋に近づいていく。
 ごめんください。そんな言葉と共に扉を開ければ、キッチンに立っていた女性がそろりと顔を出した。

「おねーさん。ここ何のお店?」
「桜を使ったお菓子のお店よ。ここで食べていくこともできるから」

 女性が差し出したチラシには、桜餅や桜味のソフトクリームなどが書かれている。それらの写真も色鮮やかで、春の温かみと優しさが詰め込まれていた。

「春の季節しかやっていないお店なんだけど、よろしくね」

 女性が優しく微笑む。やさしい陽射しを思わせるようなそれに、子どもたちは頷いていた。

「まだお客さん多くないから、おいしかったら広めてくれると嬉しいな」

 こっそり味見させてくれた桜餅はとてもおいしく、子どもたちはまた行きたいと思ったという。


・やさしいひと時

「桜と言えば、何を想像するかしら」

 お花見もいいけれど、桜を見ながら食べるお菓子もいいわよね。そう微笑んだのは境界案内人のカトレアである。

「春限定で、桜のお菓子や、お菓子に合う飲み物をお出ししているところがあるらしいの」

 桜餅に、桜の大福。マカロンに紅茶。桜をイメージしたものを、そこでは食べることができる。甘く優しいお菓子は持ち帰ることもできるが、店の中や外に置かれた机で食べることもできる。桜を眺めながら食べるお菓子は絶品だとか。

「まだお店はできたばかりで、そんなにお客さんは多くないみたい。お店の中でのんびり楽しんでもいいし、街の人か誰かにこのお店のおいしさを伝えてもいいわね」

 それから、店を経営する女性に話しかけたり、お菓子を褒めたりすると喜ばれるという。

「それじゃあ楽しんでね」

 ふわりと笑みを浮かべて、カトレアはそっとお辞儀をした。

NMコメント

 こんにちは。椿叶です。
 桜舞う場所で、桜のお菓子を食べるお話です。

世界観:
 現代日本に近い場所です。桜舞う季節の、春限定で出店している喫茶店が舞台です。桜の木の下にある喫茶店では、ひとりの女性が桜のお菓子を出しています。お店の名前は「サクラ喫茶店」です。

目的:
 お店のお菓子や飲み物を食べて楽しむことです。
 お菓子はお持ち帰りもできますが、店の中や外にあるベンチや机等で楽しむこともできるようです。桜を眺めながら味わうのも良いかもしれません。

店主について:
 名前を聞くと「遥」と名乗ります。桜が大好きで、桜のお菓子を食べるのも作るのも好きだそうです。桜やお菓子を褒めてもらうととても喜びます。お客さんとの会話もとても楽しみにしているようです。

メニュー:
 桜餅、ジェラート、大福、マカロン、紅茶等、桜をイメージした様々なものがあります。

できること:
・お菓子やお茶を楽しむ
・桜を楽しむ
・店主と対話をする
・誰か(街の人等)におすすめする


サンプルプレイング:

 わあ、すごく綺麗な桜。ほんとうに、花びらが降ってきているみたいで素敵だね。
 えっと、そうだなあ、桜のマカロン、お願いします。あとは、紅茶もお願いします。紅茶も桜の香りがするんですね……。いい香りがしますね。
 せっかくだから、桜が見えるところでいただきますね。そこの窓際、お借りします。


 食べたいお菓子や飲み物があれば、プレイングに書いていただければと思います。桜をイメージしたものや、それらに合うものであれば何でも構いません。また、店主にお任せにすると選んでもらえます。
 よろしくお願いします。

  • 春色の喫茶店完了
  • NM名椿叶
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年04月11日 21時00分
  • 章数1章
  • 総採用数3人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ

 てのひらに、淡い色の花弁が落ちてくる。掴もうとしたら風に流されてしまったけれど、花びらは再び舞い降りてきて、トストの肩にとまった。
 素敵な場所だと、純粋に思った。

「お花見にぴったりな喫茶店だね」

 店主に話しかけると、彼女は嬉しそうにメニュー表を差し出してきた。どれもおいしそうだ。

「大福と、お茶をくださいな」
「はい、どうぞ」

 お盆に載せられた大福とお茶を持って、窓際の席に向かう。柔らかい陽射しに、桜の透き通った色がうつりこんでいるように見えた。

「いいなぁ。桜って綺麗だね」
「ね。私もそう思う」

 はらはらと舞う花びらを見ていると、時間を忘れそうになる。それくらい、魅入ってしまうのだ。
 それに、お菓子を食べていると、舌でも桜を感じられる。綺麗な景色に美味しい味が同時に楽しめるのは、贅沢な気分だった。

「美味しかったよ。何かお土産に持ち帰ろうかな」

 桜を眺めつつ、再びメニューを眺める。どれも美味しそうだから、なかなか決められない。

「んんん。一週間くらい日持ちのするやつで、お任せでふたつ」
「それじゃあ、クッキーとマカロンがいいかな。気に入ってくれてよかった」

 店主の言葉に頷きつつも、まだ店に並ぶお菓子から目が離せない。もう少し、食べてみたかった。

「あと桜餅ひとつ。こっちは家ですぐ食べちゃうから」

 店主に笑顔で見送られながら、お菓子を片手に店を出る。舞い散る花びらが、抱えた袋の中に紛れ込んだ。

成否

成功


第1章 第2節

ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
指切りげんまん

 ヴィルメイズが店の扉を開けたとき、風に吹かれた花びらがふわりと床に落ちた。

「いらっしゃい」
「こちらで飲食ができるのですか?」

 問えば、店主はメニュー表を差し出してきた。穏やかな色のお菓子が、そこに載せられている。

 父にはあまりお金を使いすぎるなと言われている。しかし、昨日は街でおひねりを貰ったのだから、たまには贅沢も良いだろう。経済を回していくことにしようか。

「ええと、メニューに載っている、このピンクのおにぎりみたいな」
「桜餅のことかな」

 桜餅について聞くと、どんな食べ物か教えてくれた。何ともこのつぶつぶは、道明寺粉からできているらしい。
 お菓子を注文して、おすすめの飲み物も注文する。店主が選んだのは抹茶だった。

 桜餅をかじると、ほんのりしょっぱい、甘くて優しい味が口の中に広がった。
 おいしかったと店主に伝えると、彼女は嬉しそうに笑った。

「少し庭を拝見してもよろしいですか」

 店主は頷いて、一緒に外に出てくれた。

 目の前に広がる花は、生まれて初めて見るものだった。淡い色が、その花びらを散らしている。ああ、これが桜というのか。とても、美しい。

「折角のご縁なので、よろしければここで舞を披露しても?」

 我流ではありますが。そう言うと店主は苦笑した。

「営業活動かな」
「ハハ、バレてしまいましたか」

 微笑む店主にせがまれ、舞を披露する。はらりと散った花びらが、ヴィルメイズの舞を引き立てていた。

成否

成功


第1章 第3節

セス・サーム(p3p010326)
星読み

 つい先日に、梅の花見をしたばかりだ。それなのに、もう桜が咲く季節になっている。花びらの絨毯の上をゆっくりと歩いて、セスは店の扉を押した。

「いらっしゃい」

 明るい声と共に渡されたメニュー。そこには満開の桜を思い起こすお菓子が描かれている。
 菓子を配れば、この店へと足を運ぶ人が増えるかもしれない。ちょうど希望ヶ浜学園に行く用事もあるから、持っていくとしようか。

「こんにちは。職場で配りたいので、詰めて頂けますか」

 桜が特徴とのことだから、色や形がそれらしいもの――、いや、桜の香りが強いものを頼もう。桜餡のパイならば日持ちするだろうか。
 店主に相談すると、それがいいと微笑んでくれた。

「どんなお仕事してるのかな。職場は?」
「学校図書館司書です。この春から大規模校に赴任するのです」

 全員には配れないから、十個ほど頼んで、会えた人に配るのが良いだろう。そう伝えると店主は頷いて、一つずつ包装されたものを手に取った。
 茶色のパイにのせられた桜と、パイから覗いた淡い桜色。それが半透明な包装から透けている。なんだか、桜の香りまで感じられるような気がした。

「お仕事、頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」

 店主に微笑み、菓子の袋を抱えて店の外に出る。
 春の温かい風が花びらを散らし、セスのストールを揺らす。きらきらとした陽射しが桜の花びらの間をすりぬけて、足元を優しく照らしていた。



成否

成功


第1章 第4節

「おねーさん、桜餅ちょうだい」
「はあい。君、何回も来てくれたよね。ありがとう」
「だっておいしかったんだもん」

 家族も喜んでいた。そう言い残して、子どもは店を去っていく。桜の敷き詰められた地面を飛び越えて歩いていく子どもを、店主は窓越しに眺める。

 桜の木の下で、桜が美しく咲くときに、桜のお菓子を売る。昔からずっと夢を見ていたことだった。だから、短い時間だったけれど、夢のような時を過ごすことができた。

 楽しかった。客が喜んでくれて、嬉しかった。

 お店は今日でおしまいだけれど、ここから眺めた桜や、客とのやりとりは忘れないと思う。

 随分と葉の混ざるようになった桜を見つめながら、店主は呟く。ありがとう、と。

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