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シナリオ詳細

地獄のワカサギバレットストーム(天ぷらセットつき)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●地獄のワカサギバレットストーム(天ぷらセットつき)だよ
 ザッ――と厚い靴底が凍った大地を踏みしめた。
 かつて巨大な湖だったというこの場所は、決して割れない分厚い氷によって閉ざされている。
 ここは鉄帝北部のアンカン湖。今この地域には数々のグルメハンターが訪れ、ある食材を求め戦いを挑んでいた。
「それが――地獄ワカサギだ!」
 ミラーサングラスをかけたジャージ姿の男が、カッと目(?)を光らせながら振り返った。背景で謎の爆発エフェクトがおこる。
「地獄の……ワカサギ……!?」
 誰かがゴクリと息を呑んだ。
 地獄って単語とワカサギって単語がもう繋がらないからだ。
 そう。ワカサギとは冷水性の硬骨魚で小さいものでは軽く一口でいけちゃうくらいの小さい魚である。骨の柔らかさからも主に天ぷらにすることが好まれ深夜に『わかさぎ料理』で画像検索するとダイエットに失敗すること請け合いである。
 ご想像頂きたい。小麦粉を落とせばパチパチとなるほど熱い四角い金属製フライヤーを。
 吊ったばかりのワカサギを目の細かい小麦粉につけてまぶし、菜箸でスッとフライヤーの中に滑り込ませるさまを。
 パチパチと音を立て沈み、そして浮かび上がる頃にはこんがりときつね色の衣に包まれている。一度網にあげただけでOKだ。フーフーと冷ます必要などない。なぜならここは氷上の釣り場。外気に少々晒しただけで充分にさめるのだ。
 油をおとしきったら口に運ぼう。さくりと前歯でかみ切れるその身はややぷっくりとしていて、いましがた泳いでいただけあって身の絞まりがコシとなってかみ切る感触が気持ちよい。小麦には僅かに青海苔が混ぜ込まれていたらしく、油、衣、そしてワカサギの身という二重三重の風味が口の中に広がり反響するようにゆれるだろう。
 そしてなにより、氷上という寒さのなかで囓ったワカサギ内部にのこる熱が身体に落ちるその感覚は、美味という二文字を超越した贅沢な熱であった。

「「…………」」
 全員がワカサギって単語ひとつだけでここまで想像した所で、サングラスのひとはグッと拳を握りしめる。
「俺には一つの持論がある。――『強いほど美味い』!」
「「『強いほど美味い』!?」」
 自然界の生命は他を喰らうことで生きている。強いものほど長く生き、より多くを喰らっていく。当然栄養も蓄積されるだろう。あとなんか魔法的な色々で強いほど大体美味いのだ。
「地獄のワカサギはそんな中でも獲得難易度の高い食材だ。見ろ!」
 サングラス男がビッと指さすと、氷上に挑んだグルメハンターチームが武器を構えたところだった。
 氷の大地に突如、小さな穴が開く。一個か二個という僅かなものだが、それは穴というより発射口であった。開いたのとほぼ同時に宙空へとライフル弾の如き物体が飛び出してくる。そう、それは見間違えようもない銀の輝き――ワカサギであった。
 ギラリと銀に光るその身体は宙を泳ぐようにターンし、すぐさま群れを成すとグルメハンターたちへと襲いかかる。
 巨大な盾を構えたハンターだが、その盾を貫通して一発。迂回して更に十発。連続攻撃をうけたハンターは吹き飛び、魔術師が盾持ちもろとも炎の魔法をたたき込んだことでやっと群がっていたワカサギを倒すことに成功していた。
 着目すべきは倒したワカサギさ。炎の魔法で倒したというのにまるで冷水からあがったばかりのような新鮮さを保ったまま、地面から微妙に浮いた位置にぺたりと倒れるように浮遊していたのだ。傷はおろか僅かにでも炙られた跡すら残っていない。
「あれは衛生バリア。倒されるその時まで新鮮な状態を保つ美味なる食材モンスターが一般的に持つ能力だ」
 サングラス男はにやりと笑うと、改めて依頼書を広げる。
「君たちへの依頼は、この地獄ワカサギを倒し一定量をゲットすることだ!
 もし『とりすぎた』なら……その場で食べてしまっても構わんぞ?」
 そう言ってサングラス男がそっと指さしたのは、予めレンタルしていた小麦とフライヤーのセットであった。

GMコメント

 ワカサギの旬が終わる前にワカサギ釣りをしませんか。釣りっていうかもう機関銃みたいに飛んでくるんですが。

●オーダー
 地獄ワカサギを一定量ゲットしてくること

 わざと一定量とかいうふわふわワードを使っているのは皆で食べるパートを確保するためなので深く考えないでください。
 とにかく沢山倒して沢山食べましょう。

●バトルパート
 機関銃のように猛烈な数と速度で襲ってくる地獄ワカサギと戦いましょう。
 彼らは【移】【弱点】【スプラッシュ】といった攻撃を得意とし、これらが個別あるいは複合されたスキル攻撃を行います。
 衛生バリアがついているのでどんな攻撃をしようが新鮮ぴちぴちな状態でゲットできるので安心して毒とか炎とか使ってください。
 あと描写が地味になるので拾ってまわるプレイングや描写がなくても誰かが素早くスッて回収しているものとします。

●実食パート
 フライヤーと小麦があるので皆で揚げて食べましょう
 大きなテントも設置されているので、持ち寄りですきな料理を作って貰っても構いません。とはいえなんか、いくつも料理を作るだけ作るプレイは描写が散って希釈されてしまうので一点絞りにするのがお勧めです。
 私ワカサギ料理には詳しくないんですが天ぷらの他に刺身にするのは当然として甘露煮やアヒージョも美味しいですし野菜と一緒にかき上げにしたやつを日本酒と合わせた時は一晩中テンションあがったのを覚えていますし二本串で固定して蒲焼きにするとかいう考えた奴がどうかしてる料理は無限に食べられたきがします。おなかすいたのでいま食べてきていいですか?

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 地獄のワカサギバレットストーム(天ぷらセットつき)完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月25日 23時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りと誓いと
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
カーリン・ラーザー(p3p010424)
龍魔術師
嶺 繧花(p3p010437)
嶺上開花!

リプレイ


「ワカサギだ~!」
 両手をグーにして天に突き上げ、『微睡む水底』トスト・クェント(p3p009132)はニコニコ顔で叫んだ。
 春にさしかかったとはいえ鉄帝北部は真冬のように寒く、湖の上で揚げ物できるくらい表面が分厚く凍り付く気温。トストはダウンジャケットにマフラーというぬくぬくした格好をしていた。いつものサンショウオ下半身も(防寒のために)人間形態に変化済みである。
「ワカサギ釣りってのんびりしてるイメージあったけど、こういうアクティブなのも楽しそうだね」
 張り切って集めようね! といって振り返ると。『( ‘ᾥ’ )の化身』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)がぶっ倒れていた。口いっぱいにワカサギを詰め込んで白目を剥いていている。
「リ、リコリーーーーース!」

「ふぅーう、危ない危ない。勝手に口に入ってくれるっていうから『はい、あーん♡』的なやつ想像してたのに危うく殺されるとこだったよ」
 口元を拭ってやれやれって顔をするリコリス。
「ひえ……こわい……」
 『白ひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)はひつじのぬいぐるみを抱きしめてプルプルしていた。目の前で仲間が魚に窒息させられていたら無理からぬ。
「鉄帝の水産物はなんて、力強いのでしょう。
 しかしながら、強いほど美味しい、というのは、とても、心が湧き立ちます、ね」
「ね!!!!」
 一文字にものすごく力を入れて身を乗り出す『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437)。
「分かる、凄く分かるよ!
 強さは即ち、活きの良さ!
 強さは即ち、肉質の良さ!
 つまり、強いほど美味い!
 うん、とってもロジカルだね
 ……って事は、竜種のお肉も美味しいのかな。食べたことないけど……」
 ドラゴンステーキはファンタジーグルメの夢みたいなとこがあるが、必然的に倒せないといけないので食う食わないの問題をはるかに超越していた。
 これで美味しくなかったら嫌なので、深くは考えずに心をワカサギへと戻す。
「とにかく今はワカサギだね! 顔面にめりこむワカサギ!」
「ワカサギ……なんですよね?」
 『龍魔術師』カーリン・ラーザー(p3p010424)が信じられないという顔で湖を見渡している。
 遠くではワカサギがボッて穴から飛び出して鳥を襲っているのが見えた。
 パワーが物を言うのは鉄帝あるあるらしいが、一般生態系にまで及ぶものなのだろうか。それとも逆に、そういう場所だからパワーが物を言うのだろうか。ある意味覇竜領域でも似たようなところがあるので、一概に否定はできないところである。
「戸惑ってるな? こんなのは初めてか?」
 ものすごい先輩フェイスで『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が歯をキラッてさせた。はるか高みにいる存在の目と雰囲気である。
「オレもっス!」
 と思ったら一瞬で同じ位置まで下がってきた。
「何だ、何だアレ……オレの知ってるワカサギと違う……。
 今更ビビることでもないっスけど、小魚ですら銃弾ばりの脅威になるとかマジで混沌どうなってんスか」
「あ、ベテランでもそう思うんですね」
「自身の代わりになる美味しいものがいるのはいいことです。今回は僕の身も安全ですね」
 ある意味達観したらしい『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)がそんなことを言っていると、後ろでリコリスが『たいやき……』って言いながら口元をじゅるりって拭っていた。
 びくりと背筋をふるわせるベーク。
 そんな気持ちをよそに、『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)は腕組みをして広げていた扇子をパタンと小気味よく閉じる。
「聞いていたワカサギ釣りとは、随分と様子が違うようですけど……普通の釣りよりは接しやすそうですわ」
 釣り餌をさわるのが嫌だなあくらいに思っていたらしく、玉兎は鞄を下ろしてケースから剣を取り出した。
 暴力で解決できるならそのほうが楽。実に鉄帝っぽい考えに行き着くカムイグラ民であった。


 ワカサギ釣りの場合、湖への穴開けはドリルで行って暫くあけっぱなしにするものだが、地獄のワカサギバレットストームはその危険性から特殊な材質であるテッテイコルク製の栓がなされ、その先端からのびた滑車つきの紐を遠くからひっぱって開くという安全策がなされていた。
 もっとも最初期の被弾率が高いであろう前衛チームにいるカーリンが栓抜きようの紐をもち、周りの面々が準備OKの合図を出したのを確認してから強く紐を引っ張った。
 ポンという音に誘われたように、すぐさまワカサギの群れが空中へと出現。
「先手必勝ォ!」
 リコリスは( ‘ᾥ’ )て顔でワカサギを見つめると、腰から抜いた二丁拳銃を思いっきり打ちまくった。
 空中で被弾したワカサギたちが次々に墜落していくのを観察しつつも、その圧が徐々に強まりリコリスへと迫りつつあるのを実感していた。
 一人で撃ちまくっているだけでは支えきれない。
 引き下がりそうになった足を踵を踏ん張って耐える。
 玉兎はその気持ちに応えるかのように身を僅かにおとした姿勢をとると、両手でしっかりと握りしめた剣に月光の力を宿した。
「決して割れぬという結氷を砕くぐらいの心持ちで――」
 ドンと強く踏み出した足が震動を広げ、振り抜いた剣が孤月を描き『飛ぶ斬撃』となってワカサギたちへと襲いかかる。スパスパと切断されたことで墜落したワカサギたちは、どういう理屈か切断部が元にもどり新鮮なワカサギとなって氷面上にわずかに浮いていた。
 ここまで処理すればあとはカーリンが突っ込んでも問題はないだろう。カーリンは意を決してワカサギの群れへと身を躍らせると、至近距離でエクスプロードの魔法を発動させた。
 爆発的な炎が広がり、ワカサギたちを包み込んでいく。
 直後、ベークがそのすぐそばに滑り込んで甘い香りを放出した。
 一部のワカサギたちが進路を変更しベークへ殺到。ベークはそれらを振り払うような勢いで毒撃をたたき込んでいった。
 群れそのものでぶつかってくるワカサギは一匹ずつは小さいとはいえ『面』をつくれば巨大なプレッシャーとなる。ベークは突風にさらわれるかのように吹き飛ばされたが、なんとかボディへのダメージを軽減、再生していった。
 無傷で済ませるにはダメージがはげしく、そしてそれ故に反射ダメージと毒の効果はよく効いていた。
「ずっと抑えておくのは無理そうですね。頼めますか」
 ベークが大きく飛び退いたタイミングで、葵はサッカーボールを高く蹴り上げた。
 氷上での派手なオーバーヘッドキック。
 一瞬歪んだボールは紅蓮のオーラを纏いワカサギの群れへ横から殴りつけるかのように激突。ボールの大きさはさほどでもないにもかかわらず広がったオーラのせいで直径10m近い巨岩が激突したかのような衝撃となった。
 当然そんなものがぶつかればワカサギたちはただではすまない。直撃を受けたであろうワカサギたちがドッとまとめて墜落し、群れによって作られた大蛇のごとき列に大きな穴が空く。
「追撃のチャンスっス! トスト、メイメイ!」
「りょーかい。やー、こんな勢いで飛び出して来るってことは、水中ではどんだけ速く泳いでるんだろうねぇ。
 ちょっと気になるけど、潜ったら細切れにされちゃいそうだ」
 苦笑しながらトストは空中に魔方陣を描き出した。魔力術式を込めた人差し指でくるりと円を描き、内側に正確な三角形を描く。すると術式によって円形が幾何学的に大小様々な円に複製され、三角形もまた幾何学的な増幅をはじめる。自己増幅する魔法であり、短縮詠唱の一種だ。そして中央に印を押すかのように指輪をした拳をドンと突きつけると、自分の背丈よりも巨大に拡大した魔方陣から大量のミニサンショウオが出現。空飛ぶワカサギの群れへと突っ込むとはげしい空中戦を展開した。
「わ、わたし、も……」
 メイメイはわたわたしながらも1mくらいのワンドを取り出した。両端にふわふわの綿がついたワンド、あるいはバトンである。それをクルクルと回して空高く放り上げると、綿毛の描いたラインがゲートとなり、黒い毛皮のひつじさんが飛び出してきた。ひつじといっても饅頭みたいな丸いボディにちっちゃい足とちょこんとした顔がついたかわった造形で、足をちょこちょこやりながら謎の推進力で飛んでいる。
「おねがい、します!」
 ワカサギを指さすメイメイに対して『んめー』と鳴くと、ブラックひつじさんは思い切り体当たりを仕掛けた。
 ぽむんと可愛らしい音をたてて消えるが、直撃をうけたワカサギはその一撃で目を回したようで即墜落。
 繧花は今が攻め時だと感じたのか、勢いよくワカサギの群れへと身を躍らせた。
 対向するワカサギたちも群れの密度をぎゅっとすぼめ、何重にもなった螺旋状の軌道を描き鋭く高密度な突撃を繧花へと仕掛けた。
「――これは断じて"釣り"ではない。ってね!」
 竜の鱗から作られたと言われるガントレットで拳を覆い、思い切り殴りつける。
 ワカサギの先端部と拳が激突。一匹のワカサギと繧花の拳では比べるべくもない威力らしくワカサギが吹き飛んでいくが……相手は群れ。繧花の拳を中心に四方八方へ弾かれ飛んでいくワカサギだが、まるで統一された意思でもあるかのように継続して繧花へぶつかっていく。
「んぐ……!」
 突き込んだパンチの姿勢がゆっくりと押し込まれていく……が、繧花とて伊達にこのガントレットをしているわけではない。それまで温存していた左拳に気を溜めると、ワカサギの群れめがけてスイッチパンチをたたき込んだ。
 インパクト。接触したポイントを中心に放射状に広がった気の衝撃がワカサギたちを一気に吹き飛ばし、そして……あとには一匹のワカサギが慌てて右往左往するのみとなった。
 ピンとデコピンでそれを落とし、繧花は息をつく。
「一言、いってもいいかな」
 その様子にぱちぱちと拍手を送り、リコリスが穏やかな顔をした。
「ワカサギ相手になにこのマジ描写」


「衛生バリア凄くね? あんだけボロクソやられても新鮮まんまっスよ」
 葵はそう言いながらワカサギを専用の天ぷら粉にまぶし、フライヤーへと次々に滑り込ませ――ようとして油がものすごい跳ねた。
「あづあっ!?」
 はねた油に手を振り、地面の氷につける葵。
「え、なんで!? 罠!?」
「あの、水気を……」
 メイメイがワカサギを乾いたペーパーに乗せ水気を取っていた。
 水気があるものを煮えた油に突っ込めば跳ねるのは道理である。
「なるほど確かに」
 葵は暫くおちつくのを待ってから、今度は正しい手順でワカサギを揚げ始める。
 一度は沈んだワカサギだが、やがてぷかりと浮かび表面のじゅわじゅわという泡が収まっていく。
 しばし収まるのを待ってから菜箸でひっくりかえし、両面が同じように落ち着いた頃には表面がこんがりきつね色に揚がっていた。
 油をきる網にあげる二人。
「さ、どうぞっス」
「いただます!」
 ぱぁんと両手をあわせ、お箸を手に取る繧花。
 箸ごしにも分かるくらいに熱いワカサギは、未だジュウと音を立てているようだ。
 冷めるまで待つべきか考え――た時にはもう口に運んでいた。
 前歯でざくっとかみちぎる。唇から伝わる熱もさることながら、普通では耐えられないくらいの熱が口の中にひろがる。だがそれだけではない。油と魚のダシがじゅわりと広がり、ほふほふとやっていくとそれが身体に染み渡るような感覚さえある。
 飲み込んだ時には熱は喉を通して胸へと落ち、氷上のつめたい空気のなかで胸の中だけが暖かいようにも思えた。
「揚げたて、さくさく、じゅわわー……」
 メイメイや葵もそれを早速堪能しているようで、揚げたてのワカサギを揚げたそばから食べていた。
「ふわー……手と口が止まりません、ね。無限に食べられそう、です。地獄ワカサギ、ありがとうございます」
 ハムスターみたいにほっぺをふくらませもっちもっちするメイメイ。
 一方のトストは甘露煮に挑戦しているようだった。こういうのは煮込んでから一晩冷ます手順なんかがあるが、今回はすぐに食べるのでちょっと濃いめの味付けだ。
 砂糖と醤油、そして酒。タンパク質分解要素のある葱なんかを一緒に混ぜて煮込むことですぐさま柔らかくする狙いである。というかすぐ食べたいので圧力鍋でギュッとやっていた。
 吹き上がる煙の甘辛い香りが食欲をそそり、もうこれ白米用意した方が良かったのではとトストに思わせる。
 そのまた一方では玉兎がワカサギの素揚げを一通り作り終えた所だった。
「およそ半年ほど前までは厨房に立った事も無い身でしたが、わたくし不得手を不得手のままにしておくほど怠惰ではございませんわ。
 未だ修行の身なれど、青果物の調理ならば基本は修めたと言ってもよいでしょう」
 なんて言いながら背筋を伸ばし、いただきますして箸をとる。
 同じく素揚げにしていたカーリンだが、どうやらこっちはフレンチ方面で調理をしたいらしく、フランスパンの上にフリットしたワカサギとパプリカを乗せタパスにしていた。
 ちなみにフレンチとかいったが、タパスはスペイン料理である。フランスパンの上に美味しいものをのっけたオシャレ立食料理だと思って欲しい。
「うーん、おいしい……今日の僕は食べる側ですね」
 ベークがひたすらにほっこりしていると、その後ろからそっとリコリスが近づいていた。
 ついさっきまですりおろしたわさびでワカサギ天ぷらを食べ続けたせいでツーンとなっていた筈だが……。
「ハッ、殺気!?」
 振り返るベーク、フライヤーを手に『( ‘ᾥ’ )ジッ…』て見つめるリコリス。
「そろそろ、甘いものがほしいなあ」
「僕の中身は餡子じゃないですよ!?」
「なおのこと興味あるなあ!」
 ボクぅ、フライに興味なぁい? とか倒錯しすぎたオネショタ漫画みたいなことを言いながらにじりよるリコリス。ベークは泣きながら走った。こうなるのはもはや運命だった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ごちそうさまでした

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