亡骸より零れた声は

オープニング

●亡骸より零れた声は
　海洋王国の一角に広がる、フェデリア島。
　その近海に於いて、壮絶な戦いが繰り広げられたのは色あせ始めてはいるかもしれないが、まだまだ……人々の心には様々な痕を残す。
　しかしそんな悲しみに暮れ続けている訳にはいかず、人々は日々の生活を送る。
　……だが、そんな人々に最近、またも流れ始めた噂話。

『最近、この海域に、船を海底へと引き摺り込む幽霊船が出現する』
『幽霊船は深夜の刻に現れる。出逢ったが最後、逃れる事は出来ない』

　勿論そういう話は、海洋の様々な所で頻繁に繰り返されているので、取るに足らない噂話だ……と思っている人も結構居る模様。
　しかし……そんな噂話も時には、真実となって船乗り達が遭遇する事にもなり得る。
『……さてと……そろそろ時間かぁ？』
『ああ。船も通り掛かりもしねえし、言い頃合いだろうさ！』
　ニヤリと笑みを浮かべたのは、どこか荒々しそうな雰囲気を伴った船員達。
　そして彼等は深夜の刻に海の上に停泊し、何やら準備を始める。
　潜水服に身を包んだ彼等は、海の底へと沈んだものを攫い金品を稼ぐ、サルベージ屋。
　……この海域に、過去そういった大戦があるのならば、そのまま沈んで居るものもあろう、と考えるのは自然な事だろう。
　だが……そんな彼等へ、海底からの呼び声が響く。
『……ウゥゥ……クルナ、クルナァ……』
　その呼び声は、拒絶するかの如く。
　しかし船員達はその声は聞こえておらず……準備を整え潜水する。
　そして……どんどんと深度を深めていく彼等に、不意にさしこむ影。
『……？』
　何事か、と目を見開く彼等だが、次の瞬間……四方八方から彼等を取り囲む人影。
『う、うわっ……く、くるなぁ……！！』
　潜水服に身を包んだ彼等は、満足に動く事も出来ず……彼等に取り囲まれ、そのまま……その消息を断ってしまった。

●
「……ああ、もう来てたのか。すまないな」
　と『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、集まったキミ達に軽く手を掲げて挨拶も早々に。
「今回はな、ちと……フェデリア島の近海域の捜索をして欲しいって訳だ。あそこには……戦死者の幽霊達が多く集まっている様でな？　その幽霊達が、どうやら最近また船やら船員達を襲っている様なんだ」
「恐らくこの幽霊達は、戦没者の幽霊達の様でな……自分達は死んでも、己が船の中に積まれたものを守ろうとしている様なんだ」
「その結果、盗ろうとする海賊やらの類いが出てくると、船の上に化けて出たり、実際に攫おうと海底へと潜ってきたやつらのに集団で取り憑いて溺れ死にさせようとしているらしい……ま、縁の予測の通り、って訳だ」
　と『幻蒼海龍』十夜 縁（p3p000099）をちらりと見るショウ、それに縁も。
『ああ、戦没者が多く眠る海域だ……そういった不埒な考えをするのは後から後から湧き出てくる。こいつらを止めるのは難しいだろう。だからそれを逆手にとって、彼等の沈没船に眠るものをしっかりと回収し、供養してやればいいのでは……って言うのはどうだい？』
「そうだな。それも一つの手段だろうさ。とは言え船は海底に眠っているし、危険も多いだろう……そこでイレギュラーズの皆でなければ出来ない仕事、って訳なのさ」
「幽霊達の護りたいものを回収するとなれば、幽霊達は全力を以て防ごうとしてくるだろうさ。かなりの数と怨恨を聞く事になるだろうが……ま、宜しく頼むわ」
　とショウはひらひらと手を振り皆を送るのであった。

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●亡きし影を
　海洋王国、フェデリア島。
　その近海においては、以前壮絶なる戦いが繰り広げられてしまい、多くの戦死者達が出てしまったという海原。
　しかし、時は去る物で……もうその時の事を昔の事、と思いつつある海の者達もまま多い。
　……だが、そんな戦没者達が多く眠るこの海域に、最近もっぱらに流れる噂話。
　戦没者の幽霊が、お前達も道連れにしてやろう……というが如く、次々と船を海底へと引き釣り込んでしまうという事件が、この海域に流れていたのである。
「……沈没船と、幽霊……？　よく分からないけど、幽霊さんが出るのね？」
「うん、そうだねルルディ。幽霊って知ってるかな？　亡くなった人が、この世に出てくる事だよ」
「そうなのね？　……えっと、幽霊さんって見えるの？」
「見える時もあれば、見えない時もある……って感じかな？　まぁ今回はそんな幽霊さんの遺物回収が私達の仕事って訳。んー……魔術に使えそうな良い触媒とか転がってたらいいんだけどな～具体的には、怨念塗れの宝石とか、ね」
　『銀の兎』ルルディ・グリムゲルデ（p3p010092）の言葉に、どこか楽しげな『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ（p3p002535）の言葉。
　そんな二人の言葉に、眉間をトントンと叩きながら『運命の盾』金枝 繁茂（p3p008917）は。
「今回の幽霊達は沈んだ船の積み荷を死してなお護っているのです。もはや……積み荷を護ると言う使命だけが、彼等の存在理由になっているのか……それとも積み荷自体に、何かしらの厄があるかもしれません。幽霊達にとって、それは怨念ではなく生きた証かもしれませんが……ね」
「そうだねー。そういう怨念が籠もっているのがやっぱり欲しいんだよねー」
　どこか楽天的なルーキスの言葉。
　……そんな彼女の言葉に、やれやれと言った感じで肩を竦めるのは『幻蒼海龍』十夜 縁（p3p000099）。
「まぁ……それぞれの思いは色々あるだろう。でもよ、そこで眠る幽霊達に一時の平穏を過ごさせてやりたい……って俺は思うんだ。その為にも、手っ取り早く元を断っちまえば、妙な気を起こす連中もちっとは経るだろうしな？　ま……そう簡単に引き揚げられるようなモンなら、端から俺達が出る必要もねぇんだがな」
　縁の言葉に、『いわしプリンセス』アンジュ・サルディーネ（p3p006960）と『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃（p3p001103）からも。
「そうだね……あの戦いで死んじゃったのかなぁ。助けられなくて、ごめんね。それでも……自分達が辛いからって、他人を巻き込むのは違うんだよ？」
「ああ。奴らからすれば、仲間を増やしたいのか、妨害しようとする人を殺したいのかは判らねえ。でも、ここに縛られている亡霊達を俺達で解放してやろう。せめて遺品だけでも故郷に帰してやりたい」
　アンジュとジェイクの言葉に、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス（p3p000883）と『若木』寒櫻院・史之（p3p002233）も。
「そうだね。遺族も見つかるかも知れないし、遺品の回収はしておきたいところよね。彼らをそのままにしておくわけには行かないのもあるけど」
「ああ。戦没者の幽霊達か……これは、大号令で散っていった人々なのかな？　そう考えると無碍には出来ない。必ずサルベージをして、弔いをしてみせるよ」
　そして、そんな仲間達の言葉を纏めるように繁茂が。
「どちらにせよ、彼等を海の底から解放するためにも積み荷を引き揚げなければなりません。例え……彼等を二度殺す事になったとしても、最後に救いを、そう願った者の責務を果たしましょう」
　そんな仲間達の言葉を聞いて、ルーキスはぽりぽりと頬を掻きながら。
「んー……そうかそうか。まぁ……分かった分かった。しっかりと今回もお仕事開始、っと。ルルディも頑張れるかな？」
「うん、ルルディ、今迄幽霊さんは見た事ないけれど……ルーキスママも一緒だし、みんなを頑張って回復するのよ」
　ルーキスの言葉に、元気良く応えるルルディ。
　何はともあれイレギュラーズ達の意志も統一出来た所で。
「それじゃ、早速だが船を借りるとするかね？　取りあえずしっかりとしたサルベージ船を持ってるヤツは……ああ、あの船だ。史之もちょっと手伝って貰っていいか？」
「うん、勿論さ」
　と縁と史之は、この海洋でサルベージを生業にしている船団の門を叩く。
　……海洋にて名声を誇る二人の訪問ともなれば、サルベージ船の業者も驚き話を聞こうとする。
　とは言え幽霊船のサルベージを手伝って欲しいと言われれば……何を言っているのだろうか、という様な表情と対応になる。
　だが、当然それも織り込み済み……縁はそんなサルベージ船の者達へ。
「何年も沈んだままの遺品を回収できたとなりゃぁ、船にもお前さん方にも箔が付くんじゃねぇかい？　騙されたと思って、俺達に懸けてみりゃぁいい」
　その背中を励ますように力強く叩き、更に史之も。
「君たちは女王陛下の大事な臣民だ。俺が必ず守るよ。だからやるべきことへ集中して欲しい」
　と背中を押すべく声を掛ける。
　……そんなイレギュラーズ達の言葉に、最初は悩んでいたサルベージ船の船員達も。
『……ああ、分かった。それじゃぁやってみるぜぇ！！』
　海の漢たるもの、尻込みしているだけじゃ何も始まらない……時には覚悟も必要。
　そして……借りた船にイレギュラーズ達は乗り込み……幽霊が出るという海域へと出航するのであった。

●海底の呼び声
　そしてイレギュラーズ達が乗り込んだサルベージ船は、数日掛けて噂の海域へと到着。
　余り他の船が通りがかる事のない海域の様で……海の上でぷかりぷかりと浮かんでいると、その静寂に眠気が舞い込んできそうな程。
　そんな……のんびりとした雰囲気が漂う海域なのに、ここで今迄幾つもの船が幽霊船によって沈められてしまったのは事実。
『……と、この辺りの様だが、俺達はどうすりゃいいんだい？』
　と、サルベージ船の船長が声を上げると、史之は。
「ありがとう。それじゃ……この海域から離れないように、停船出来るかな？　後は幽霊達が出てくるだろうけど……絶対に僕達が護るから、慌てない様に心を強く持ってくれる？」
『え……？　……あ、ああ……わ、分かった……』
　言われてはいたものの……改めて言われると、身構えてしまう船員達。
　それもそうだろう……普通に海の上で真っ当に生きている人達からすれば、幽霊船が出るという噂話は聞いているにせよ、実際にそれに襲われるケースは殆ど無い事。
　更に今回は、そんな幽霊船を誘き寄せるんだというイレギュラーズ達の作戦……つまり、幽霊船に遭いに行く為に船を出しているのと同様。
「うん……怖いよね？　でも大丈夫だから、ね。船の被害も最小限に抑えるようにするから。ね、繁茂さん」
「ええ……」
　イリスの言葉に頷き、繁茂はサルベージ船に保護結界を展開。
　最大限に船を保護するように細工をし……そして停泊の準備も整った所で。
「それじゃ、船員さん達、準備はいい？」
　とアンジュが船員達を導く……船員達が頷いた所で。
「良し。イレギュラーズの皆も準備はいいか？　んじゃ、行くぜ」
　と縁は言うと共に……海の底に沈む幽霊船の船員達と、その船員達の遺品について頭の中にイメージを浮かべる。
　縁の意識に続き、更にイリスや史之、アンジュらも死した者達の遺品について思いを深めていく。
　……その一方でルーキスは。
「ふふ。遺品回収頑張らないとねー！　さーさー、速く出て来ないかなー！」
　と笑いながら、遺品の事を大声で口にする。
　……そんなイレギュラーズ達の声と思いを静かに紡ぎ奏でていくと……。
『……ゥ……ゥゥ……』
　と……ほんの僅かな呻き声が、どこからともなく響きわたる。
　そんな声に、船に居合わせた船員達は。
『ひ……な、何か声が聞こえた気がっ……！』
　脳裏に直接呼びかけるような、そんな幽霊達の呻き声は……一般人達からすれば、恐怖この上無い事だろう。
　更に、急激に空は雲に覆い隠され、僅かに差し込んでいた星の光すらも失われる。
　そんな悪天候と不気味な雰囲気に、慌て始める船員達。
　対し、開口一番威勢良くジェイクが。
「海の漢が亡霊如きにビビるんじゃねえ！　ここで死んだ者の魂を救えるのは俺達しかいないんだ！！」
　誰よりも力強いその叫び声に、突然のことに混乱していた船員達は……僅かに平静を取り戻す。
　更にジェイクは。
「いいか！　みんな集まって俺達の後ろに下がってろ！　絶対に動くんじゃねえぞ！」
　と更に言い聞かせるように強くいいつける。
　……そう船員達を対処している間にも、暗闇は更に空を覆い隠し……その闇の中にぼんやりと船員の姿をした幽霊達も出現。
『……ゥゥウ……コロ、コロス……ゥゥ……』
　怨恨の籠もった呻き声を上げる彼等は……生きる者への怨恨を繰り返す。
「そうだね、盗掘する人に持っていかれて、自分たちの大切なものがお金にされてしまうかもしれない……それが悔しいし、悲しいのは分かる。でもね？　サルベージはそういうものばかりじゃないんだよ？　あなたたちの大切なものが、今生きている次の世代の人達の手に渡って、大切に遺されていく……そういうのも悪くないんじゃない？　アンジュたちは、そのお手伝いをしに来たんだ」
　とアンジュは幽霊達に語りかける……更に繁茂も。
「あなたの苦しみを、悲しみを、呪いの言葉を受け止めます。その声を言い尽くすまで私は倒れはしません。私の盾は己を護る為ではなく、あなたの心を救う為にあるのですから！」
　と、幽霊達に語りかけつつ……その注意を惹きつける。
　その間に他のイレギュラーズ達は、幽霊達の横をパスして、一気に海の中へと飛び込んでいく。
　深く深く、海の中へと潜っていくと……海底にぼんやりと浮かぶ船の船影。
　そして……その船影から次々と姿を表す幽霊達。
　海の中でも幽霊達はイレギュラーズ達を恨み、怨恨を伝搬し……言葉を紡ぎ続ける。
　そんな幽霊達の襲来に、史之は。
「さあ来いよ。おまえたちなんて敵じゃないってことを思い知らせてやる」
　と幽霊達を挑発。
　色々と思う所はあるものの……彼等を倒さなければ、幽霊船に近づく事も出来ないし……彼等を新の意味で成仏させる事も出来ないから、心を鬼にして宣告。
『コロスゥ……コロスコロスコロスゥゥ……』
　しかし幽霊達は、ただただ殺す怨恨を紡ぐばかり。
　延々と鳴り響くその声を普通に聞いていれば、精神を病みそうになりそうだが……。
「……あの海で、あの絶望の海の底で聞いた声に比べりゃかわいいモンだ」
　と縁は、過去の体験から、それに抵抗。
　そしてイリスが。
「私はイリス・トラクトス！　鎮魂のt前、遺品の回収の為に来ました！　こういうのは火事場泥棒とは言わないと思うけど、さあ、まとめてかかってくるといいわ！」
　と、海底から押し寄せてくる幽霊達に向けて宣言。
　そして縁が黒顎を嗾けて攻撃する一方、イリスは己に聖なる防御を立てた上で神威の一閃を叩きつける。
　流石に幽霊達はそんなに体力は無かった様で、その一撃を喰らい海中に雲散霧消。
　そんな敵の状況を見たルーキスが。
「そんなに耐久力は無いみたいだけど、油断は大敵っと。ルルディ、回復は宜しくね？」
「うん！　クー、お仕事なのよ！　ママと一緒に頑張ろうね！」
　ルーキスに頷きながら、ルルディは天使の歌声を奏で、仲間達を回復し、確りとバックアップ。
　そしてルーキスは。
「さぁ、私を待っている宝石は何処だー☆　邪魔する子は容赦しないんだからねー！」
　と前方に氷結を放ち、海中で氷漬けにしていく。
　……そして氷漬けにされた敵を、史之が大鳴の一閃を纏めて叩きつけることで……敵を瞬く間に駆逐していく。
　海中故に幽霊達有利かと思われたが、水中行動で揃えたイレギュラーズ達が苦戦する事は何らない。
　更に海上においては、討って出るというよりは、襲い掛かる幽霊達を迎撃しつつ、後ろで避難している船員達を護る様に動いていく。
　更に、海中の仲間達が敵を倒して行く事で……海の上に出てくる幽霊の数を最小限に抑える。
　そんなイレギュラーズ達の二面作戦の成果もあり……彼等の襲撃から数十分の内には、船上に浮かぶ幽霊も激減。
「……出てくる数が少なくなったな。となると……海中の仲間達は上手くやっている様だな」
「ええ……後もう少し……気を緩めずに仕留めて居来ましょう」
　ジェイクに頷く繁茂……更に数分、仕留め続けて行き……船底から現れる影は喪失するのであった。

●影は虚ろに
「……ふぅ。終わったか」
　息を吐く縁に、頷くアンジュ。
　死してなお、幽霊として積み荷を護る幽霊達……既に姿は消失しており、跡形もない。
　そんな幽霊達へアンジュは鎮魂が如く。
「……いわしはさ、着の身着のままどころか、何一つ持って居ないから、物に執着なんてしないんだ。それが良いか悪いかなんて、アンジュにはわかんないけどさ……でも、幽霊さん達は、船の中の物を守りたかったんだよね？　……その護りたかったものは、しっかりと返してあげる。だから……もう安心して欲しいんだ」
　勿論アンジュの通り、物に執着しない生き方もあるだろうし……その方が、彼等はこの地に縛り付けられ続けなくて良かった事だろう。
　だが、現にこうして彼等は海底に沈む船に縛り付けられ、そしてそれを奪おうとする者を排除する様な使命が刻み込まれていた……だから、死してなお、牙を剥く。
「……みんな。悲観するのはまだ速いよ。ほら……あの船の中に残っているのを探そう」
　と史之は皆を促し、更に更に海底へと潜る。
　……戦争の結果だろうか、船には大きな破損が見られ、それが原因で沈んだのは自明。
「さーて……何が見つかるかねぇ……」
　ぽつりと呟く縁が船員を切って、船の中へと侵入する。
　……船の中で死した者の骸は骨と化し、長い時の塩水が浸食した結果、持ち上げてみると……跡形もなく崩壊していく。
「遺骨を持ち帰る、というのは難しそうね……なら、宝飾品とかしか、回収できるものは無さそう……」
「そうだねぇ……」
　イリスの言葉に頷くルーキス……そこにルルディが。
「ママ、これ遺品だって言われたのよ？」
　とその手に、宝石の嵌められた指輪を持ってくる。
「ん、ありがとう♪　えーっと……ふむふむ……そうね。これには結構な怨恨が込められていそうね……凄いわ」
　一人だけでなく、多数の死者達の怨恨が籠もった指輪は、かなりの霊力が込められている。
　……そんな指輪とか、船の中に沈む物をイレギュラーズ達が手分けして、一通り攫う。
　大方終わった後には、海の中に潜っていた者達も船の上に合流し……サルベージ船に搭載されているウィンチを使って、海底から船を引き揚げる。
　かなりボロボロな船が海上に姿を表すと、それを船の上に載せて……重くて持ち上がらなかった隠し財宝やらも、全て回収。
「これで、良し……っと。一通り回収できたか？」
「そうだね……あ、ルーキスさん。その懐に……隠してるでしょ？」
「え、隠してないよ？」
　ジェイクの言葉に、史之がルーキスに視線を向ける。
　慌てて否定するものの、ルルディが。
「……ママ。あれ、持って帰ったら、パパに怒られないかな……？」
　と小首を傾げ疑問を呈する。
　それにルーキスは、あ、あはは……と笑いながら誤魔化して。
「ダメ？　バレてる？　……んー、仕方ない。諦めるか。丁度いい触媒に出来そうだったんだけどなー」
　と隠し持っていた指輪やらを返す。
　それら指輪には、名前が彫られていたりしていて……遺品であるのは、間違い無いだろう。
「ありがとう。これらはしかるべき人のところに届くようにするよ」
　笑う史之に、ルルディもほっとしたように微笑んで。
「ママ、お家に帰ったらパパと三人でおかしを食べたいの。だから、速くお家に帰ろうね♪」
「んー、そうね。ルルディも頑張ったし、美味しいもの、食べましょ！」
　ルーキスも微笑んで……そしてイレギュラーズ達とサルベージ船の船員達は、再びの静けさを取り戻したその海域を後にするのであった。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

海洋依頼に参加頂き、ありがとうございました。
海の底に沈む幽霊さん達……皆様の討伐のお陰で天国に逝けたことでしょう……。