シナリオ詳細
赫々たる
完了
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オープニング
●クリィムの塗り方を教えてほしい、と、戸を叩いたのが間違いだった
寒空の下、煉瓦造りの借り屋にびゅうと風が中った、まるで閑古鳥の如く啼いたそれは粘土の表面を容易く削るのだろう。皮の下には肉、肉の下には骨。どろりと戯れた内臓が行き場を失くしライスカリーの模倣だと嘘を吐いてみせた。
ラヂオのノイズがはしる虚で女はウンウンと唸っていた。あの部位をどう表現したら好いのか、それは理解出来ている。この部位をどう加工すれば好いのかも人気作家としては至極当然の思考だ。されど嗜好の類が不足している。彼等或いは彼女等の仕事が滞っているのだ。所以は判っている――こうも世界が平和では材料が減少するのも必然。嗚呼、どうしよう。どうしよう。このまま作品が出来なければ私が野垂れ死んでしまう――藁を掴もうとした腕はずるりと、なけなしの材料をひっくり返した。
ぐるりと反転した視界のまま、女はぶつくさと言葉を垂れる。もうなりふり構っていられない。この際だ、英雄の面でも拝みつつ素敵な蝶々を拵えるのも悪くはない。多種多様な姿を有する故に、きっと、素晴らしい想像を掻き立てられる筈だ――にゃはは! そう、世界はあまりに狭く、即ち切られたケェキに過ぎない。かわいく添えられた苺は目玉の片割れで今でも相方を待ち望んでいるのだ――咽喉が渇いた際に何を飲めば好い?
クリィムの塗り方を教える事は出来ない、何故ならば直呑みこそが至高だから。取り敢えず――道具の手入れをしておこう、彼等或いは彼女等の晴れ舞台の為に。
●まず基本と成るのは赤色だ、続いて赤色だ、最後に赤色だ
ここは神咒曙光――混沌世界におけるカムイグラ――大きな変革の後、大正浪漫と称される地域に変貌していた。君達が歩んでいるのはその隅っこ、薄汚れ、なんとも無気味な雰囲気を漂わせる裏路地だ。煉瓦造りの暗渠がひたひたと謳っている。
今回の依頼人は売れっ子の芸術家だと謂う。スランプとやらでもないのに頼み込んできたのにはワケがあるらしい。内容は『受けてくれたら話す』と記してあったが果たして――戸口を三度、たたく。ぎぃぃと開かれた先には年若い女がおった。
「待っていましたよ、皆さん。ささ、外は寒いので中に入ってください。クリィムと珈琲の用意は出来ていますから――」
ひどく瘦せ細った女がギラギラとした双眸で観察してくる。嫌な予感が背を這い、うねるのは『蛇に睨まれた蛙』の心地故か。
「皆さんには材料を提供してもらいたいんです。いやですね、最近材料が『運ばれてこない』んですよ。あ、最悪『皆さんでも大丈夫』です――まあお察しの通り、私の使う材料は『ひと』です。新鮮な内臓、脳味噌じゃないとダメなんですよ」
たらりと滴った汗、雁字搦めにされた気分だが『依頼を受けた分には』やる他ない。死んだところで君達は『問題ない』のだから――。
「それじゃあ宜しくお願いしますね……あ、忘れていました。私、赤城ゆいって謂います。ここらでは芸術家と呼ばれていますが――」
めまいがするほどの赤色に埋もれていく。
- 赫々たる完了
- NM名にゃあら
- 種別ラリー(QT)
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年03月21日 20時05分
- 章数1章
- 総採用数3人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
赫々と橙の違いを教えてくれないか、そんな問答を投げ付けたのはブレ続ける芸術性の所為と謂えよう。ターンテーブルにのせられた、中華料理の真似事ではないか、世界は溜息を吐いた――いやさーあ、なんか芸術家のヘルプってことだから――メイクやネイル、aPhoneに入ってる映え々え持ってきたら名状し難く、久々の「こっち」だってゆーのにわろぴ。雑草ムシャムシャくん生える。これはどー見ても某所のこすもちゃん案件じゃんありがとミケランジェロ。そーゆーワケで「しゃーなし」となった。
煉瓦造りを背景に褐色ギャルなどミスマッチか、されどパーツ的に考えれば希少濃厚。これがサイキョー洒落オツアイテムでなければ何なのか。あ、でもあんま痛いのはアレだし嫌だから――最初っから焦点があってないんだよなぁ。谷から生。
こっちの世界でもオマエが飲む事は変わらない。エイル・サカヅキの脳内だってアルデバランの乱れ咲き。ぶち込んだアルコールに身を委ねてろくろごっこだ。あーれーってやつ? まじウケる。おやめくださいお代官様。
イイネ10万くらいの作品にしてちょーだいね――ぶちりと千切れたのは意識だったのか腸だったのか、巻き取られたリボンがかわいいポンポンを彩っていく。これは肝臓、もう限界なんです、と嘆いていたおそらく新鮮――作品名:地動説。
味わい深い作品が出来ました、ええ、あの人には感謝しませんと。あとでラムを注ぎましょうか。
成否
成功
状態異常
第1章 第2節
恋と呼ばれる病を患ったのか、蕭条は宇宙空間を漂っていた。どろりとした、ひどくリアルな臭気に塗れて、嘔気くように「ゑ」と漏らす。文字が金魚のフンみたくついてきた。あ、申し訳ありません――内容が内臓すぎて予想外に飛び出たのだ、心の準備など出来る筈も無い――ひと。ひとって、ひと? ええ、人ですよ。アートが頷く。
絶叫――耐え難い、おぞましい空を裂くほどの音量。しかしこの依頼、我が身可愛さに他の人を紹介したら自分の良心が死ぬ! 神様に誰かさんを捌いてもらう、そんなマイナスに陥ってしまうのだ。というか――このお嬢さんもよくよく見たらヤバい感じ。その臓物はどこから出ていますか? そりゃ勿論、私のおなかです。
ある程度満足してもらわねば犠牲者が出かねない。たとえゲームの中だとしても彼等にとっては真実なのだ。わかりました。わかりましたよ!!! 私で良ければご満足いただけるまでどうぞ。刺身でも炙りでも何でも鯉ってやつです――魚が材料じゃダメです? セルフ、メリポなんとやらだ。その辺のビルから身投げしてくれ。
デスカウントに挑戦のお時間がやってきました。気合い、いれて、逝ってみましょうかー。ゴーグルしてるならグロ画像は見なくて済む、まあそれでも痛いんですけどね。今引っ張られている長さはなんだろうか。かすれいく世界――作品名:黄ばみ。
このちょっとした汚れが浪漫なんですよね。素敵なひと品になりました。
成否
成功
状態異常
第1章 第3節
缶詰にされた脳味噌のように、いっそ飾り気のない姿であれば楽だったのだ。中途半端に黒く染めた事で「センスがない」とでも謂われた気がした。つまり今回、黒子がしたいのは『ガワ』の相談だ。ずるりと剥がれた膜も幕も、境目がなければ面白くない。
できれば目立たないのがいいんですけど――何よその矛盾、難しい注文ね。衣替えの季節も近いなら、まあ、納得は出来るだろう。しかし少々、埃っぽくはないか。わずかに香る甘いものはとても柔らかなシナプスに等しい――いっそのこと、私とわからないくらいデコレーションされてれば、それはそれで擬装でしょうか。あー……ね? それなら私も楽しめそうだ、と、作家先生とやらは頷いた。
作品名:主人公――ここまで英雄々々してれば舞台裏の人間だなんてわかんないでしょ。うん、けっこー私頑張ったんじゃない? 代金は要らないわよ? 私自身で良ければひとつ――じゃあ遠慮なく貰おうかしらね。ねえ、ちょっと不健康が過ぎない? これじゃ笑顔をはりつけた苦労人よ。
肺をぶらりとやりつつ傷んだ肝臓をつつく。こんなに可哀想な臓器は久しぶりに見た。そんじゃあふたつめはオマケね――作品名:その代償。
この材料には個性が足りないのよ。それとも、個性が不足しているのが個性かしら。ひととしては申し分ないから、お客さんは喜んでくれるよ。
疲れてたんなら少しは休みなさいよ、もう手遅れだけどね。
ヘビースモーカー。
成否
成功
状態異常
第1章 第4節
赤城ゆいは満足げに『出来上がった』作品を眺めている。
そろそろお客がくる時間だろうか、ゾロゾロと地面が鳴いている。
しぼられたクリィムが腸詰めの真似をしていた。
――にゃはは。
NMコメント
にゃあらです。
赤色のホイップクリーム、それは誰のものだったか。
このクエストテイルはラリーです。一章完結予定。
●神光(ヒイズル)
ネクストにおけるカムイグラです。
大正浪漫と呼ばれる要素たっぷり。
今回たっぷりなのは材料ですが。
●目標
芸術家、赤城ゆいに材料を提供する。
材料とは『ひと』です。
ホイップクリームみたいに可愛くなります。
誰かよくわからない人のものでも良いですし。
あなたの『もの』でも良いです。ええ。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
●赤城ゆい
神光(ヒイズル)に居を構える、アレな感じの芸術家。
好きな色は赤、好きな材料は腸と脳。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
クリィムマシマシ。
●サンプルプレイング
「丁度いいや。先日捕まえた罪人がどうしようもない奴でね。あんたに任せれば上等な『芸術』になってくれるだろうさ」
そういって先日捕らえた男を差し出す。彼女の作業を眺めながら珈琲でも飲もう。
出来た作品に対して拍手を。美しい、こんなにも甘そうな仕上がりになるとはね。
「う――残念だけど持ち合わせがないんだ」
彼女に肩を掴まれ、部屋の奥に連れ去られる。まずは何を提供する事になるだろうか。ずるりと貫かれたリボンと他諸々、僕が視る事は難しいだろうけど、綺麗なものになると信じているよ――。
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