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シナリオ詳細

そして集いしマダムキラーたち

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●急募、マダムキラー
 唯月 清舟(p3p010224)が、ローレットの出張所でもある酒場で休憩をとっていたころ、目の前にぷにぷにとした、見覚えのあるスライムが通りがかった。
「お、この間の、練達の時のスライム娘じゃないか。確か、レライム、っちゅうたか?」
「お、清舟君。久しぶり~」
 と、清舟の声に気づいたそのスライム……レライム・ミライム・スライマル(p3n000069)がぴよぴよと手をふって近づいてい来る。
「仕事か? 精が出るのう」
「うん。新しい仕事だよ。情報屋兼、お手伝い。でも、ちょっと困ってて」
 ぼんやりとした様子で、レライムは小首をかしげた。
「なんじゃ、トラブルか?」
「トラブルって言うか……うーん。清舟君、マダムって知ってる?」
「マダム?」
 清舟は、不思議気な声をあげた。確か、既婚女性の事を、そう言った敬称で呼ぶはずである。
「おお、知っとる。で、なんじゃ? そのマダムが依頼人か?」
「ううん、やっつけるの。マダムを」
「はぁ?」
 何言ってんだこいつ? と困惑する清舟に気づかないのか、レライムは言葉を続ける。
「でね、そのマダムをやっつけるのに、マダムキラー? が必要なんだって。清舟君は、マダムキラーって知ってる?」
 清舟が顔をしかめる。
「何を言っておるんじゃおんしは……いや、ちゅうか、ローレットはこんなガキっ娘にどんな依頼をさせようとしとるんじゃ……」
「その様子だと、清舟君、マダムキラーとマダムの事、知ってるんだね」
「お、おおう。そりゃあ、な。マダムキラー。ふん、儂もじゃな、そんな風に呼ばれたり呼ばれんかったり……」
「え、清舟君ってマダムキラーなの?」
 おお、とレライムの目が輝く。なんか知らないが、尊敬されているようにも見える。
「ま、まぁ? 儂は自分でもいうのもなんじゃが、こう、マダムの扱いにはなれちょるからな! ガハハ!」
 見栄を張る清舟。しかし、レライムは信じ切ったようだ。
「じゃあ、マダムの扱いも慣れたものなんだ」
「お、おう! まぁの!」
 ぱちぱち、とレライムは手を叩いた。
「じゃあ、清舟君。よかったら、依頼を受けてくれないかな。
 それか、マダムキラーの清舟君なら、他のマダムキラーの人も友達にいたりするでしょう?
 その人たちに、声をかけてもらいたいなって」
 レライムの言葉に、清舟は頷く。
「なるほど、なるほど……ふふ、そういう事なら任せてほしい。よし、ちょちょっと声をかけて、マダムキラーとしての儂を見せてやるかの!」
 わはは、と自信ありげに笑う清舟に、レライムは「おおー」と尊敬するような声をあげる。
「マダムって、こっちの服を溶かしたりする危険な技を使うって言うけど、頑張ってね」
「はぁ!?」
 清舟の顔が赤くなる。
「ふ、服じゃと!? マダムがか!?」
「うん。そうなんだって、マダム」
 なんじゃそりゃ、痴女か? と清舟は内心でぼやく。実際そうだとして、そんなヤバい依頼に、こんな何も考えてなさそうな娘っ子(まぁ、レライムの性別は不明なのだが)を送ろうとは、ローレットの上の方は何を考えとるんじゃ、と、妙な義憤も沸いてしまう。
「で、なんじゃ、おんしも参加するんか」
「そうだね、お手伝いで」
「あかんて! いや、おんしがみるようなもんじゃない!」
「そうなの?」
「そうじゃ!」
「マダムキラーが言うなら仕方ない」
 ぷに、とレライムが揺れた。
「でも、現場に行かないわけにはいかないから……実際に現場に行くけど、じゃあ、あたしは応援だけしてる。それでいい?」
「お、おう。ええか? 目も閉じて、耳もふさいどくんじゃぞ! まったく、ローレットはどういう教育しとるんじゃ……」
 ぶつぶつと清舟がぼやくのに、レライムはなんだか不思議そうな顔をしていた。

●そしてマダムキラーたちは集う。
 依頼当日。フリアノンより少し離れた亜竜種たちの集落。小型の竜の骨を利用して作られた、その集落に、あなたを始めとするイレギュラーズ達はいた。あなたは清舟に声をかけられた、マダムキラーの一人である――。
「というわけで、マダムを討伐していただきたい」
 と、依頼主である亜竜種の集落長が言うのへ、あなたの仲間は、
「え。それはその、そういう意味で?」
 と困惑した様子で尋ねるので、
「他にどのような意味が?」
 と、困惑したように集落長が言う。
「で、マダムはどこに?」
「うむ……どこから現れたのか、集落の奥、外と繋がる水源地に……おそらく、川の流れに乗って、水中を移動してきたのでしょう……」
「マダムが?」
「マダムがですが?」
 双方の頭上に、『?』の文字が浮かぶ。
 ……勘のいいあなたは、もういい加減気づいただろう。この依頼、どこかで誰かが情報の齟齬を引き起こしている。
「失礼ですが」
 あなたの仲間が尋ねる。
「マダムについて、詳しく教えていただけませんか?」
「……あなた達は、マダムキラーなのでは?」
「そうですが。念のため」
 ふむ、と集落長が頷く。
「マダム……『狂王一族の翼亜竜(マッドネス・ダイナスティ・ワイバーン)』……略してマ・ダ・ムです。
 コイツの出すブレスは、衣服を溶かす効果があります」
「ほらね!!!!!」
 仲間が頭を抱えた。
「というか、百歩譲ってだワイバーンでいいよ? でも、それだとマ・ダ・ンと違う?」
「うむ……長く略される中で、ンがムになまったのでしょう……」
「ほうほう、そう来たか!」
 まぁ、そんな事だろうな、と仲間達が頭を抱えた。
「……あたし、なんか変なこと言った?」
 と、レライムが小首をかしげる。
「大丈夫だ、お前は悪くない」
 仲間がそういう。そして、あなたを含めて、仲間達はこう声をあげた。
『おい清舟』
 と――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 マダムが出たぞ!!

●成功条件
 マダムを討伐する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 亜竜種たちの集落を脅かす、謎のマダム……。
 皆さんは、歴戦のマダムキラーとして、依頼に参加します。
 マダム……そう、『狂王一族の翼亜竜(マッドネス・ダイナスティ・ワイバーン)』。略してマダムです。
 このマダムは、特殊なブレスにより、皆さんの服を溶かしてこう、あーん♡な感じにしてしまう奴です!
 ちなみに、PPPは全年齢作品なので、裸になっても、その辺のリスとか謎の光が、良い感じに大切な所を隠してくれるので大丈夫です。
 さぁ! 服を犠牲に、マダムを討伐せよ! イレギュラーズ!
 マダムは腐っても亜竜なので、充分強敵です……が、戦闘プレイングだけでなく、裸になった時のリアクションや対策もバランスよく書いておくと、良い感じに楽しめると思います。あと、この依頼持ってきた奴への愚痴。
 作戦決行時刻は昼。作戦エリアは、集落奥の水源地。大きな湖のあるエリアです。水中でも、陸上でも戦えます。戦いやすい方で戦ってください。

●エネミーデータ
 狂王一族の翼亜竜(マッドネス・ダイナスティ・ワイバーン) ×1
  いわゆるワイバーンですが、水中での行動も可能なワイバーンです。マダムです。
  EXAが高めで、ほぼ確実に複数回の行動を行ってきます。攻撃力も高めですので、連続攻撃などで沈まないよう、しっかりとケアを。
  また、このワイバーンは『服がとけるビーム』を撃ちます。服がとけるビームを喰らうと、服がとけます。服がとけるだけなので、防具の効果が発動しなくなったりするわけではありません。服がとけるだけです。服がとけると裸になります。困ります。でも防具性能が発揮できなくなるわけではありません。裸になって困るだけです。

●味方NPC
 レライム・ミライム・スライマル(p3n000069)
  ローレットの情報屋兼戦闘要員。パラメータもバランスよく、攻撃と回復も平均的にこなせます。が、特記能力がない、ともいえます。
  最初に清舟くんに忠告されたので、目を閉じて耳も閉じて、隅っこの方で待機してます。
  手伝う事を要求すれば普通に手伝いますので、盾やサポートなどにご利用ください。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • そして集いしマダムキラーたち完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月22日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
唯月 清舟(p3p010224)
天を見上げる無頼
ガイアドニス(p3p010327)
小さな命に大きな愛
ライオリット・ベンダバール(p3p010380)
青の疾風譚
神無月・明人(p3p010400)
天邪鬼
ケルツェ(p3p010419)
小さな灯火
燦火=炯=フェネクス(p3p010488)
希望の星

リプレイ

●それいけマダムキラーズ
「え!? マダムって妖艶な奥様の事じゃないんか!?!?!?!?
 儂の期待は……楽しみは……ドキドキは……?
 おのれぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
 『天を見上げる無頼』唯月 清舟(p3p010224)が、歩きながら肩を落とした。
 マダムの出る水場への道中である。こう書くとすごい文字列だが、マダムとは、この場合服を溶かすブレスを放つワイバーンの名前であるので、ワイバーンの生息している水場、となる。健全。健全か?
「清舟さん、ローレットは初めてですか? 力抜いてくださいよ」
 色々諦めた顔で『魔刻福音』ヨハン=レーム(p3p001117)は言った。脱力。諦観。そういうもののこもった表情と声。
「こうなるに決まってるでしょう……ローレットですよ?
 いや、気持ちはわからないでもないです。覇竜領域デザストルだっけ?
 僕ここ初めて来るんだけど、確かに何か違うと思う。
 なんでこいつ服だけ溶かすテクニカルなブレス覚えたの?」
「わかんない」
 レライムが相槌を打った。
「だろうね!
 洗井……じゃないや、レライムちゃんが分からないならだれにもわからないでしょうね!
 いや、いつもの頭おかしい生物と舐め腐るのはよそう。相手はワイバーンだ。
 獲物の肉だけを的確に捕食できるよう進化したと仮定すると恐ろしい相手だな。
 ぜってぇそんな事ねえと思うがどうなの? 洗……レライムちゃん」
「わかんない」
「だろうね!」
 わかんない。デザストルは不思議なことだらけである。
「おい清舟くん。"マダム"って上流階級婦人のことじゃないんかい!」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が声をあげた。
「いや、おんしがいうんか。ちゅうか、何で若干期待してたみたいな感じなんじゃ」
 清舟くんが肩を落とすのに、モカは肩をすくめた。
「いやいやいや、口説き落として……うちの店の客として誘おうと思ってただけですよ」
「仮になんだけど、行きずりの人間の服を溶かして、近隣住民に迷惑をかけるマダム(本来の意味で)がいたとして、その人客に誘いたいと思うの?」
 『小さな灯火』ケルツェ(p3p010419)が小首をかしげた。
「普通に迷惑客になりそうだけど……」
「そこを何とかできるのが、出来る女ってものだよ?」
 モカがそういうのへ、ケルチェが目を細めた。
「なるほど……制圧力かな……?」
 ケルチェは結構脳筋だった。
「そんな事より、皆もっと警戒しましょう。マダムよ、あのマダムが出たのよ」
 と、些か緊張の面持ちで言うのは、燦火=炯=フェネクス(p3p010488)が言う。燦火は外套こそ羽織っているものの、その下は大胆な薄着である。
「人が持つ文化、その最たるモノの一つを破壊する、恐るべき亜竜……!
 服飾という文化と人の尊厳を屠らんとするその存在を、私達は決して許すわけにはいかない!」
 ぐっ、と硬くこぶしを握り締める燦火。翻った外套の下は、大胆な薄着である。
「ふふふふ~♪ 大丈夫よ? おねーさんが、ちゃんと可愛い皆を護るからね~」
 と、にこにこと笑うのは『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)おねーさんである。ガイアドニスにとって、大体の生き物は小さくてか弱い。よって護って愛でる対象である。
「マダムはか弱くないのは残念ですけれど。ううん、おねーさんにとってはマダムもワイバーンも大差ないわ!
 どっちにしても小さくない(か弱くない)のだし。
 おねーさん、ときめかないわ!」
「た、確かに、ワイバーンにはときめかなわいね……」
 胸をぱしーん、と叩いて、むふー、と胸を張るガイアドニスに、燦火はふむ、と相槌を打つ。
「しかしなんだ、随分と優しい奴じゃねぇか? マダムってのは」
 にやり、と笑うのは『天邪鬼』神無月・明人(p3p010400)である。顎に手をやり、ふむ、と唸りつつ、
「溶かすのは骨身じゃなくて服だけなんだろう、安いもんじゃあねえか?
 ま、野郎の裸なんざ、金貰っても見たかねぇ奴ばかりだろうが……」
「まぁ、確かに、オレも裸を見られて恥ずかしいもんでも無いッスからね!」
 『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)が、うんうんと頷いた。
「オレみたいなデカブツトカゲにそもそも需要は無いかもッスけど……いざって時は、オレも前に出るッスよ! ガイアドニスさん!」
 そういうライオリットに、ガイアドニスは「あらあらあら」と笑うと、
「ありがとう! でも、ふふ、大丈夫よ! おねーさん、無性ですので!」
 とん、と胸を張るガイアドニス。
「いや、女性外見じゃし、そこは隠した方がよくないか……?」
 清舟が首をかしげた。
 さておき。
 一行は、集落奥の水源地へとたどり着く。洞窟の奥に隠された、地底湖のような場所だ。水は澄んでおり、どこかひんやりとした空気が漂う。
「ふむ。いかにもな場所ですね」
 ヨハンがあたりを見回す。
「亜竜の姿は見当たりませんが……いえ、水中に潜んでいるかもしれませんね」
「なるほど……清舟くん、ちょっと見てきてくれ」
 ヨハンの言葉に、モカがそう言った。
「なんで儂が!?」
「いや……この仕事持ってきたの、君だしな……」
 ふむ、とモカが言う。
「あ、なんならあたしが見に行こうか?」
 レライムがぷるぷると手をふるのへ、
「スライムっ娘はサポートをしてくれりゃええ、しゃあない、儂が見に行くか……」
「おう、気をつけな」
 明人が声をかける。
「いざとなったら、おねーさんに頼ってねぇ~?」
 ガイアドニスがぶんぶん手をふるのへ、清舟は「はいはい」と手を振って返す。果たしてゆっくりと湖面に向かって進んでみれば、冷たく透明の水面が清舟の瞳にうつり込んだ。底は、コケなどが若干生えた岩場のようだ。相当の深さがあるが、水底まで見通せるほどに澄んだ水は、もし季節が夏であれば、水浴びとしゃれこみたいほどに美しい。
「んー、じゃが、おらんのう……?」
 と、清舟が唸った刹那、僅かに水面が揺れた。そしてよく目を凝らしてみれば、底の方に、何か蠢く者が見える。それは蛇のようにも見えたが、サイズ感が明らかにおかしい。それを認めた瞬間に、清舟がの身体に違和感が走った。それは、戦うものが持ちえる予感。
「おったぞ!」
 清舟が叫び、後方へと飛びずさる――同時、水しぶきを噴き上げ、湖面を割って飛び出してきたのは、蛇のような、トカゲのような……例えて言うならば、手足と申し訳程度の翼のついたツチノコ、だろうか?
「間違いない! マダムよ!」
 燦火が険しい表情で言う。どうやらこれが、マダムで間違いないようだ。マダムはずどん、と大地に落着すると、そのまま威嚇するように、きしゃあ、と声をあげた。
「ふん……どうやらやる気らしいなぁ?
 ま、そっちが逃げ腰だとしても、俺たちには逃がしてやる義理はねぇ」
 にやり、と不敵に笑いながら、明人が己の服に手をやった。そのままするり、と上半身をはだけるや、脱ぎ終えた白の衣装を地に落とす。そのままゆっくりとベルトに手をやり、カチャカチャと音を立ててはずすと、ズボンをゆっくりと、
「いやなんで脱いでんのよ!!??」
 燦火が思わず叫んだ! いや、何で脱いでるんだ!?
「なんでって、アンタ」
 明人が不思議気な顔をした。
「……服、とけちまうんだろ? 服だってタダじゃねぇんだ、とかされたら勿体ねぇだろぉ……?」
「……一理ある?」
 ケルツェが名案かもしれない? みたいな顔をした。
「いやそういう問題じゃないでしょ!?」
 燦火が、わーってなった。とはいえ、明人の言う事にも理はある。わざわざ溶かされるとわかっていて、服を着ている謂れもあるまい。どうせ脱ぐなら最初から脱いでおいた方が、敵の攻撃を不発にできていいというもの。
「……合理的かもしれない?」
 ケルツェが名案だな? みたいな顔をした。
「ええ、いいかもしれないわ! おねーさん、無性だし!」
 ガイアドニスがぽん、と手を叩くのへ、
「恥じらいを持て乙女共!!」
 燦火が、わーってなった。
「よーし、わけわかんなくなってきたぞ!」
 ヨハンが頭を抱えた。
「とにかく状況を整理しましょう。脱ぐやつは脱いで結構! とにかくマダムを倒さないと話が終わりません!」
「そうッスね! なんかマダムも待ってくれるので、脱ぐならぬぐでいいと思うッス!」
 ライオリットが言う。マダムはノリがいいので待ってくれていた。
「清舟くんは脱ぐのかい?」
「脱がんわ!」
 モカの言葉に、清舟が声をあげた。
「ちゅうか、もう脱ぐの前提で話するんか!? 儂らは天下のイレギュラーズじゃぞ! 脱がされる前に倒す、くらいの気概でおらんといかん!」
 清舟の言葉に、しかしケルツェが頭を振った。
「……いや、これ、絶対脱がされると思うよ。念のため対策もしてきたが、断言してもいい。絶対脱がされる……これはそういう依頼だ」
「なんでそんなにあきらめがいいんじゃ! っちゅうか、これなんとかならんか? 羽織っている上着とかでなんとかなりませんか!!
 野郎の服が溶けても誰も得がない!!!」
 なりませんし、野郎の裸にはそれはそれで需要があります。
「ならんか! クソァ! こうなったら、総力戦じゃ!」
 清舟が武器を抜き放った!
「いくぞ、おんしら! こうなったら、パーフェクトな勝利を目指すんじゃ! この場合はほら、脱衣一切なしのパーフェクト勝利じゃ!
 見ておれ洗井落雲!!! おんしの思い通りにはならんぞ!!!!」
 清舟が飛び掛かる! マダムが迎え撃つ! そして、戦いの火ぶたは切って落とされた――!

●バトルだ、マダム!
 数十秒後、そこには裸に向かれた清舟の姿が!
「なんでじゃ!!!!」
 全裸で叫ぶ清舟! 大切な所には大切な光が差し込み、まぁ、つまり大丈夫です。
「知ってた」
 ヨハンがあきらめの境地で声をあげる。ちなみに、ヨハンは清舟をうまい事盾にして、全裸ブレスを回避していた。回復手が沈んだらアウトだからしょうがない。
「諦めましょう、清舟さん……もう、あなた見る影もないです……」
「なんでじゃ! くそう! くそう!」
 全裸で男泣きをする清舟。マダムもにっこりです。
「いや、しかし……」
 モカが声をあげる。その身体は全裸である。だが、モカに羞恥心は無いので大丈夫です。
「中々強敵だね、マダム!」
 蹴り上げた足は、マダムの喉笛を狙う。ずむ、と脚が突き刺さるが、しかし手ごたえは薄い。モカは空中でくるりと回転(全裸なので、危ない所は光が差し込んで隠した)すると着地。きしゃあ、と叫ぶマダムが、全裸ブレスを再び吐き出す! なんかピンクのモヤモヤしたブレスがイレギュラーズ達を狙うのへ、
「あらあら! いけません!」
 ガイアドニスが飛び込んで、その身体を惜しげもなく盾とした!
「おねーさん!!」
 燦火が叫んだ!
「大丈夫よ、おねーさん、無性だから――」
 にこりと笑うおねーさん。刹那、もわぁ、って言う感じのエフェクトと共に、その服がわたあめのように溶けていく。膨らむ胸。くびれた腰。ガイアドニスさんの体系は豊満だった。
「いや、絶対ヤバいから!」
 燦火が顔を赤らめながら叫ぶ。ガイアドニスは無性なので意に介していない様子だが、危ない所をうまく隠すように、なんか小鳥とかリスとかがぴょん、って飛び跳ねてうまい事画面を全年齢の感じにする。
「あらあらあら、小さくてかわいい子が来てくれるなら、おねーさん、これからも全裸でいようかな?」
「流石にそれは」
 ケルツェが虚無めいた顔をする。ケルツェはすでに全裸ブレスを喰らっていたが、予備の服を何とか羽織ってごまかしている。手にした機械剣が唸りをあげた。
「……そろそろ頭に来た。いい加減、その辺なブレスを吐く口、黙らせてやる」
 ケルツェが飛んだ。空中でくるりと回転、振り上げられたマダムの爪を回避。マダムは鎌首をもたげるような体制で、ケルツェを迎え撃つ。斬! 冗談から振り下ろされた機械剣が、マダムの鱗を舐めた。ぎゃりりり、と鉄を切ったような音が響く。鱗と共に、肉を切られたマダムが、ぎぃ、と悲鳴をあげ――再びの全裸ブレス!!
「ちょっ――!!」
 ケルツェも流石に、これには面食らった。無理やり体勢をひねるがしかし躱せず、どろどろと服がとけていく感覚が身体に走る。ケルツェは舌打ち一つ、着地した。その鍛えられた体があらわになる――ああ、勿論光で大切な所は隠しているので。
「馬鹿にして……身ぐるみ剥がされたままで終われるか……!!」
 ぎり、と歯をかみしめる。今のところ、裸にされた恥ずかしさよりは、戦闘の高揚感が勝っている――一方、果敢に攻撃を続けるのは、明人である!
「オラオラ、服が溶かしてえってんなら幾らでも溶かしなぁ!
 溶かせるもんならよぉ、かかかっ!」
 豪快に笑いながら叩きつける獲物、マダムの頭長を狙って振り下ろされたそれが、マダムに強烈な痛打を与える。明人は全裸だった。何故なら最初に全部脱いだからである。ちなみに、高く跳躍して殴りつけるアングルなので、きわどい場面もあったが、なぜかことりとかリスが飛んでいたのでうまく隠れています。
「よし、俺も続くッスよ!」
 ライオリットも続く! ライオリットも全裸である! だが、そこに恥じらいは無い。今、命を懸けて敵と相対しているのだ! 恥じらいなどあるものだろうか――大丈夫、ちゃんと需要はあるよ。
 とにかく、ライオリットの軍刀が、青の剣閃を描く。間髪入れずの二連撃! マダムの鱗の鎧をはぎ取る、強烈な斬撃が突き刺さる! マダムは震えた! 肌を裂くその痛みに! マダムは怒りの声をあげ、キー! とその爪を振り上げる!
「おっとぉ!」
 ライオリットが跳躍! マダムの爪が大地を裂く!
「伊達にマダムじゃないッスね! 大したマダムッス!」
「おう、中々に、攻撃力のあるマダムじゃねぇか」
 にぃ、と明人がマダム評を呟く。攻撃力のあるマダムって何なんだろうな……いや、相手はマダムなので、なにも間違っていないのだが……。
「ねぇ、皆、大丈夫?」
 と、ガイアドニスが小首をかしげた。その身体は豊満にして全裸……なのだが、些かの傷が見えるのが分かる。
「……ちょっと、苦しいかもしれないよ?」
 敵からの攻撃を、ほぼ一心に受け止めたガイアドニスだからこそ、わかる。
 敵は、強い。
 マダムは強いのだ。伊達に亜竜ではない。確かに珍妙な全裸ブレスを打つものの、それはそれとして、討伐体を募集される程度には、恐るべき相手であることに違いはない。
 そして、そうした相手と戦うのがイレギュラーズであり、そのような経験も少ないわけではない。そうなると、戦いの趨勢というものが、次第に見えてくるようになる。戦術眼、とでも言おうか? どちらが優勢か劣勢か、押しているか押されているか。そう言った、戦いの機微というものを、敏感に感じ取れるようになるものだ。
 そのうえで――ガイアドニスが出した結論は、「苦しい」だった。自身に蓄積したダメージは、既に可能性(パンドラ)を消費するまでに蓄積している。仲間達にも、既に一度、強烈な打撃を食らったモノもいるのだ。
 故に、ガイアドニスは問うている。
 斃せないかもしれない、と。
 倒れるのはこちらかもしれない、と。
 ガイアドニスは、愛しいもの達を守る、という思考が強い。それ故に、殊この場において、仲間達が倒れることに関しては敏感であった。
「……悔しいですが、ガイアドニスさんの言うことは事実です」
 ヨハンが呻くように言った。戦術眼を持ち合わせているのは、ヨハンも同じ。決定打に欠ける。時間をかけた消耗戦となれば、やはり亜竜に軍配が上がるのか。
「こんなふざけた相手ですが……撤退も視野に入れてください。
 いいえ、僕としては、撤退を進言します」
 ヨハンの声は、真面目だった。このまま消耗戦を続けていても、倒れるのはこちら――。
「……いや、2人とも、言いづらい事を助かるぜ」
 明人が頷いた。
「くっ……辱められた上に、雪辱も果たせないなんて……!」
 ケルツェが悔しげにうめいた。このままでは全滅……それは、ケルチェにも肌で感じられていた。
「しょうがないわね、ここはいったん退きましょう。
 清舟、アンタもそれでいい!?」
 燦火が言うのへ、清舟は頷いた。
「しゃあない! 儂がしんがりじゃ! 逃げるぞ!」
「くっそー! いつかリベンジするッスよ!」
 ライオリットが叫び、イレギュラーズ達は撤退を開始した。マダムは追ってはこなかった。マダムが負った傷も、相応に深かったのだ。戦いは、双方痛み分けという結果に終わった――。

「そうでしたか……歴戦のマダムキラーの皆さんでも……」
 と、何とか集落に戻ったイレギュラーズ達は、討伐失敗の報告を、集落の長に告げていた。ちなみに、道中でガイアドニスが用意した予備の衣服を羽織っているので、コンプライアンス的なものは大丈夫です。
「ですが、敵も相応の深手を負っています。戦士団にトドメを依頼しても大丈夫だと思います。悔しいですが……」
 ヨハンが言うのへ、集落長は頷いた。
「ええ、すぐにでも。いや、戦士団が対処できるのも、皆さんの頑張りのおかげです。どうか気を落とさずに……」
「いや、まぁ、それもあるんじゃが……」
 清舟が頭を振った。
 なんか疲れた。
 それが正直な感想である。
 マダムを何とかする依頼だと思って。
 行ってみたら、いたのはワイバーンで。
 服を溶かされて。
 全裸で帰ってきた。
「……なんか、泣けてきたのう……」
 清舟が呟く。
「……皆、今度店に来たまえ。奢るから」
 モカが肩をすくめた。
「悔しい……マダム! あんな文明を否定する亜竜に負けるなんて……!」
 燦火は普通に悔しがっていた。
「でも、皆が無事で、おねーさんよかったわ」
 ガイアドニスがにこにこ笑う。
「ま、生きてりゃ勝ちだぜ? なんたって、次がある」
 かかか、と明人が笑った。
「……次は、服を脱がせるような敵は御免だね」
 ケルツェが、僅かに頬を赤くしながら言う。
「ひとまず、お疲れさまッス!」
 ライオリットがそう言った。
 惜しくも討伐はならなかったが、マダム討伐への道筋を繋ぐことはできた。
 犠牲になった服も、きっと浮かばれることだろう――。

成否

失敗

MVP

燦火=炯=フェネクス(p3p010488)
希望の星

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 惜しくも討伐はなりませんでしたが、服の犠牲のおかげで、戦士団による討伐の道筋はつきました。
 というわけで、服の犠牲は無駄にはなりません! ありがとう、服! 左様なら、服!

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