シナリオ詳細
再現性東京202X街:偽身の影双
オープニング
●偽身の影双
平穏無事な生活が繰り広げられていた筈の、再現性東京。
怪竜ジャバーウォックの襲撃事件によって、今迄の生活は一変……崩壊したビルの瓦礫や頻発する停電により、人々の生活は快適とは真逆の、生きるにも苦労を伴う様な状況にまで陥っていた。
……そんな変わり果てた生活を、素直に受け入れられない人々も再現性東京には居る様で。
『ちくしょう……もう終わりだ……! こんなんじゃ、生きていける訳がねえんだ……!!』
酒をグビグビとかっ込み、深夜、危険な瓦礫の街並みを歩くのは……一人の若者。
つい先日までは極々平和な生活を送っていたのに、変わり果てた日常は……彼の性格を180度反転させてしまった。
何とか少ない生活物資を売るコンビニに行けば、店の商品を金も払わずに持ち出す。
咎められれば、暴力で以て相手を返り討ちにし……している事は強盗と変わらない。
全て、変わり果てた日常が悪い……そう彼は夜空に叫ぶ。
泥酔の中、瓦礫に転びながら……自暴自棄に街を歩く。
……そんな彼の所友人やら知人達は、その変わりように驚き……自然と彼の周りから離れていく。
『……何だよ。俺が何だってんだ……! みんなも、もうこの世界が終わりなら、好き勝手やればいいってのによ……!』
瓦礫に躓き、仰向けに横たわる彼。
……灯りが少なくなったからか、夜の星空は今迄以上に綺麗に瞬く。
『……綺麗、だな……』
ふとその星空に眼を奪われ、一瞬シラフに戻る彼。
……だが、次の瞬間。
『……ケケケ』
突如聞こえたのは、何かの笑い声。
そしてその笑い声の主は、夜空を見上げる彼の頭上に差し掛かり、影をさす。
『な……っ!!』
影は彼へと覆い被さり……そして、己が闇で彼を覆い隠していく。
『っ!! ……!!』
声を出すことも出来ず、藻掻くも影の力は強く、振りほどけない。
完全に影に飲み込まれた後に、すっ……と人型の影が、星空の下に現れる。
……そして。
『フフフ……今日もこうして、また一人……元々暴力的な性格だった様ですから、そこまで戦力にはならなさそうですが……まぁ、いいでしょう……』
その影の背後に、もう一人の影。
耳元まで届かんばかりの赤い口元を緩ませながら……宵闇の下、笑うのであった。
●
「あー……みんなみんな。ちょっといいかな! ほら、暇してるならこっちこっちー!」
希望ヶ浜のカフェ・ローレットにて、お茶したり暇している君達にひょいひょいっ、と声を掛けてきたのは、綾敷・なじみ。
別に暇してねーし、と言うのにも
「そうなんだー。でもカフェに寄ってきたって事は、時間はあるってことでしょ?」
謎論理でその手を引っ張り、集められた所には『お姉様の鮫』花榮・しきみ(p3p008719)の姿。
「えっとねー、今日集まって貰ったのは他でもなくて、しきみさんの予想が当たっちゃったみたいなんだよー。ね、しきみさん!」
となじみが進めると、しきみはこくりと頷き。
「ええ……この希望ヶ浜に、映し身を取る夜妖が現れた様なのです」
「この映し身を取る夜妖ですが……変わり果てた日常に絶望したり、自暴自棄になったりした街の人々に己が配下を襲わせている様なのです。そしてこの配下は、指定した相手の映し身となり、行動を取るという特徴を持って居る様です」
「ただ、映し身の夜妖は……特異なコピーをする様で、映し身に指定した相手とは真逆の性格をした夜妖が作り出される様なのです。例えば穏やかな人の映し身は、とても凶暴な人だったり……」
「元々凶暴な人は穏やかになる……と言うことの様ですが、これら夜妖は共通して、人に対する憎しみ、恨みを持って居る様なのです。なので、この夜妖達を放置しておくと……一般人の方々が次々と被害に逢い、殺される羽目にもなりかねません。そうなる前に、夜妖が夜妖の映し身をこれ以上作り出す前に、退治しておきたいのです」
と、そんなしきみの言葉になじみはうんうんと頷いて。
「そうだね! 再現性東京に住む人達に被害が出るのは避けなきゃ成らないし、それに対処出来るのはここに集まったみんななんだから! という訳でほら、みんな、宜しく頼むね!!」
にっこにこで皆に手を振りながら、なじみは皆を送り出すのであった。
- 再現性東京202X街:偽身の影双完了
- GM名緋月燕
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年03月15日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●影は二つ
再現性東京。
平穏な日常が繰り広げられていた筈のこの地は、突如として現れた怪竜ジャバーウォックを初めとした竜種達の襲撃により、日常は一変。
周りには倒壊したビルや建物が横たわり、足元には瓦礫が散乱している様な状態と成り果て……日常は異常なる状況へと化していた。
「……竜種の襲撃……その爪痕は、こうしてまた、新しい悲しみを生んでいるんだね……」
そんな惨状を見渡しながら、『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437)は悲しみの息を吐く。
しかし悲しんでいる暇は無い……そんな異常なる状況の中において、今勢力を伸ばしつつあるのは……漆黒の中に蠢く存在、【夜妖】。
彼等は罪無き一般人達を毒牙に掛け命を奪い去ろうとしいる……異常な状況に、更に拍車を掛けようとしていたのである。
「全く……ただでさえ錬達は復興で大変な時期なのに、余計な心配事まで増やしていられないよね?」
「そうでありますな! 希望ヶ浜の方々には休息が必要だと言うに……何故このような事をならるのでしょう、【映し身の影】よ! 流石にこれはおいたが過ぎますぞ! 平穏を望む者の心を乱す事は許せませんな!」
『微睡む水底』トスト・クェント(p3p009132)に『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)が大きな声で憂う。
勿論ここにイレギュラーズがやってきたのは、憂う為にやってきたなんて訳は無い。
希望ヶ浜の一般市民達を蝕む夜妖を退治してきて欲しいという依頼に基づいて、である。
……とは言え今回の夜妖は、【映し身の影】と呼ばれる夜妖。
その特殊能力は、戦う相手と真反対の性格をした影を作り出して、嗾けるというもの。
「それにしても、真逆の性格の映し身ねぇ……おれのはどんなやつになるのかな?」
とトストの言葉に。
「むぅ……僕の性格の逆にゃ? 僕は……戦うのが好きじゃ無くて、怖いのとかもイヤにゃ。だから、良くも悪くも慎重で、あと明るくないと楽しくないと思っているにゃ。その逆って事は……好戦的で怖い者知らず、無謀で暗いのかにゃ? 色んな意味で面倒にゃー」
と尻尾を揺らしながら『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)が空を見上げると、それに『故郷の空を守れ』山本 雄斗(p3p009723)も。
「うん、映し身の夜妖か……僕を反転させたらどんな感じになるのか気になるな……」
と小首を傾げる。
其れ其れが、其れ其れの自己分析を行うものの……意外と自分の性格というのは、分かりきっていなかったりするものであろう。
「んー……他人のコピーを作って悪さをするとか、いーじゃん。そういうの、大好きだなー。あーしも欲しいな、その力」
『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)があっけらかんと笑うと、それに少しばかり諭すように『アラミサキ』荒御鋒・陵鳴(p3p010418)が。
「例えその様な力を手に入れたとしても、同じ姿をしたのと出逢うというのは危険だな。ドッペルゲンガーは死の予兆……しかして此は鏡像への畏れが相応しかろうしな」
「んー……難しい事は良く分かんないんだよねー」
手をヒラヒラ振る夕子に、『納骨堂の神』シャーラッシュ=ホー(p3p009832)が釘を刺すように。
「……性格が真逆になっているとは言えど、我々のコピー……多少戦い難い相手ではありますが、人間に危害を加えるのであれば話は別です。一匹残らず殲滅するとしましょう」
「そうだな、逆様……成る程。ならば割れば良いであろう」
「うん。一般人を襲う以上放置は出来ないからね、今回もバシッと解決しちゃうよ!」
陵鳴、雄斗が口々に気を込めると、それに刺激されたかのように繧花、夕子も。
「そうだね……私に出来る事は、決して多くは無いのかもしれないけれど……それでも、この手が届くことを一つずつしていかないと……!」
「うん、ま、これも仕事だし、しっかりやらないとねー。という訳で、そいつが出てくる所に向かおっと」
二人の言葉に皆も頷き、そしてイレギュラーズ達は、深夜の刻を回った人気の無い郊外の地方都市へと急ぐのであった。
●映す影の形は
静けさに包まれた、深夜の刻。
出歩く人はごく少数……奇妙な静けさは、まるでゴーストタウンになってしまったのではないか……とも思えてしまう。
とは言え生きる為に、出歩く人もごく少数居る訳で……今回は、そんな人達も被害に遭って仕舞っている。
「ふむ……人気が無いのは、こちらにとっては寧ろ好都合ではありますな……ほら、映し身の夜妖殿、早く出て来るのですぞ!」
とヴェルミリオが声を上げるが……その反応はない。
彼等を誘い出す為には……どうすればいいか、と考えるのはちぐさ。
「んー……どうすればいいかにゃー?」
と小首を傾げていると、陵鳴は。
「そうだね……少なくとも今回の夜妖は、オレ達の映し身を作るという事だから、灯りを灯せばその姿は如実に露わになる事だろうな……という訳で、ホー、頼めるか?」
陵鳴の言葉にホーは頷き、己が身体を発光させる。
そんなホーの光は、普通に暗闇の中で見る分には周囲の視界を確保するのには十分な程度の灯り。
だが、そんな灯りも。
「これで少しは……って眩しッ! ホーさん眩しッ!?」
ナイトゲイザーを目に指した繧花だが、その光にちょっと悶える。
「ああ……すいません、暗視を持つ人派、余り私の方をまじまじと見ない方が良いですね……」
「う、うん……あはははは……これだけ光ってくれてるなら、これ要らなかったかなぁ……? でもでも、あって損は無いよね!」
ポジティブシンキングで笑う繧花に、夕子も。
「そーだね! でもさー、本当早く出て来て欲しいなー。あーし、こんな瓦礫一杯の所歩きたくないしー」
肩を竦めながらぼやく。
……ともあれ、イレギュラーズ達がそんな会話をしながら瓦礫ひしめく街角を歩いていれば……当然、夜妖も気付く事になる。
『クク……面白そうな奴らだ。その能力は……ふむ、中々な力を持っている様だな。ならば……面白い素材が作れそうだ……!』
不敵に笑う夜妖……イレギュラーズが歩いているのを付け狙いながら、その能力を写し取っていく。
そして8人のイレギュラーズ全員の映し身を生成しおわると共に、彼は。
『さぁ……それじゃあ始めようかねぇ!』
と、8人の映し身と、六人の一般人の映し身を一斉に嗾ける。
『っ……!?』
流石に不意を突かれてしまうが……敵の一閃を何とか耐える雄斗。
「来たな! フォームチェンジ・疾風!」
と雄斗は流れる様にヒーロースーツ・疾風をその身に纏い、ジェットパックを噴射し空へと飛び出す。
流石に嗾けた夜妖は、そこまではコピ-出来て居ない模様……更に。
『……狡賢い。降りてきなよ……!』
と悲しげな視線で、雄斗を見据える
そんな映し身の雄斗に向けて。
「キミはこの再現性東京の住人に守る価値があると思ってるのかい? 元の世界に変える事を諦めて偽りの東京でここが異世界である事を忘れて安穏と生きている人間が世界の破滅に巻き込まれる安らかな死を与えてやる事が救いであり、僕の正義だ!」
威風堂々と宣言する。
それに、ヴェルミリオの映し身が。
『ほほう! そんな正義を振りかざすのが居るとは面白い! ほら、オレが相手してやるからこっちにこいよ、切り刻んでやる!!』
惨忍な笑みを浮かべ、その手の武器を掲げて挑発。
更にヴェルミリオ、トストの二人から。
「ふむ……ええ。どうぞ皆さま、ポキッとやっちゃってくだされ! 悪い事をしたら罰を受ける。同じヴェルミリオであればわかることでございましょう?」
「分かったよ。灯りはホーくんにお任せして、おれは敵を纏めさせて貰うよ!」
と声を掛け合いながら、突然の急襲を仕掛けてきた夜妖の映し身へと対峙。
8人のイレギュラーズに対し、14人の夜妖の映し身ドッペルゲンガー……数は敵の方が優位。
とは言え、先ずイレギュラーズ達が対峙するのは、それぞれの映し身を軸に行動を取りつつ、それぞれ間合いを取る。
ホーの灯りが届かなければ、カンテラやらナイトゲイザーの目薬を補助的に使用する事で暗所でも動けるように対処を取っていく。
そして……目の前の映し身にホーは。
「これが私の映し身ですか……私の能力を模倣するのであれば、逆にそれを利用させて貰いましょう」
との言葉と共に、神の光をその身から放ち、敵を光へと包む。
更にちぐさも、その光の展開に合わせる様にして、己の映し身夜妖に。
「僕と同じ能力らしいけど……僕は、気持ちで負けられないのにゃ! 僕の前に、後ろに仲間がいるのに、みんな頑張ってるのに、泣き言や言い訳言ってられないのにゃ!!」
いつもよりも一回りも、二回りも強い気持ちを心に秘めて宣言すると共に、迸る雷撃の一閃で攻撃。
更に続けて繧花も。
「そうだね! 気持ちが強い方が勝つ! 私は絶対に負けない! 弱いままの自分になんて戻らない! この身に宿ったパンドラを幾ら燃やしたって構わないから、必ず勝って、皆の下に戻るんだ!!」
と強く拳を握りしめ、相手取る映し身に渾身の煉気の一掌を叩きつける。
同じように雄斗、ヴェルミリオ、トストや陵鳴らは己が映し身に決して負けないという気持ちで、確実渾身の一撃を叩き込んで行く。
……そんな熱い気持ちの一方、夕子は目の前の映し身に。
「逆転したあーしってどんなんだろ? はろはろー。ほら、しかけてこないの?」
嘲るような感じの笑みを浮かべる。
だが、夕子の映し身は。
『……何よ。近づかないで……』
と防御態勢を取る。
明るく快活な夕子なので、反転した性格は根暗、かつ近づいて欲しくない……という気持ちが強い模様。
そんな反転したドッペルゲンガーに夕子は。
「うわ、マジヤバなんだけど。自分の姿でこんな性格とか、マジ卍だわ!」
と軽蔑の視線。
『何よ……あたしだって、あんたみたいなの、だいっきらい……!』
漆黒の影から発せられる軽蔑のオーラ。
そして次の瞬間、夕子の映し身の手から投擲武器が投げつけられる。
……その攻撃を、ギリギリ買わしながら夕子は。
「もー仕方ないなー。ま、こんなマジヤバなのが他に迷惑かけるなんてマジあり得ないし、あーしの手でちゃちゃっと殺っちゃうよ!」
と反撃の狼煙を上げて、己を強化しながらの暗の月の一閃を叩きつけていく。
更に、トストの相対相手は。
『ったくよ! ふざけた真似をさせやがって!! てめぇらブチ殺してさっさとやめさせて貰うぜ!!』
とかなり激怒していて、それにトスト自身。
「うわっ、なんだかすっごいキレてる……? なんであんな怒ってるのあのおれ……」
『てめぇのせいだっての! 殺す、絶対殺す!!』
「怖……いや、コピーに気圧されるわけにはいかないぞ。これでも喰らえ」
『いってー!! あーもう許さねえ! 絶対絶対殺る!!』
おとなしめなトストには、キレ散らかしていたり。
と、そんな戦い難い相手も居たりする中、イレギュラーズ達は各々の映し身にそれぞれ相対し、自分の影と言うべき真反対の性格をしたドッペルゲンガー達に対抗。
……数刻の後、おとなしめだった夕子と雄斗、繧花三人のドッペルゲンガーは早々に倒れて逝く。
「ふー。ま、こんなもんかなー? それじゃ次は……っと。スケさんのに仕掛けよーっと!」
と言い捨てながら、夕子はヴェルミリオの映し身の所へ加勢。
「いぇい、あーし登場! おいたもここまでよ!! どっちが弱いのかな? こっち? それともこっち? んふふ-!」
かなり楽しそうに、ヴェルミリオの映し身へと攻撃する夕子。
最初は8対14だった戦いも、己達の映し身の敵を先ずは倒していく事で、絶対数を減らして行く。
そして彼等が襲撃した時より十数分……己が映し身を倒し、一般人の映し身は戦う力はそれほど無い故に早々に倒されていく。
そして、一般人のドッペルゲンガーが2人まで減った所で……後方にいた、ドッペルゲンガーを作り出す映し身の影の夜妖は。
『クゥ……これはこれは。流石にこれは逃げるが勝ち、ってねぇ……!』
と、卑劣なる夜妖は、ドッペルゲンガーが苦しんでいるのを見捨てて、さっさとその場から離脱しようとする。
……しかし。
「させないのにゃ……!」
とちぐさが、夜妖の足元へ雷撃を放ち、敵を痺れさせて足止め。
そしてその間に、夕子と雄斗が回り込み、逃げ道封鎖。
「絶対にこの場からは逃さない! 夜妖、君のような卑劣な事を企てるのは、この場で倒す!」
「うんうん。あははー、あんたって、影を作る以外は弱っちいんだね。ざーこざこ」
二人の挑発が浴びせかけられると、夜妖は。
『煩いですねぇ!! ならば、見せつけてやりますよ!!』
と怒りと共に、その手に剣の様な影を作り出して、それで斬りかかる。
だが……その一閃の太刀筋を鋭く見極めて躱す雄斗。
「これでも……喰らえ!」
流れる様に雄斗の蒼き彗星と、夕子の蝕みの術が連続して叩き込まれていく。
それに苦しみに苦悶の叫びを上げる夜妖……更にトスト、陵鳴が。
「おんなじ姿をしたやつが、人を傷付けようとしてるってのはいい気分ではないからね! さぁ、後は本体をフルボッコにするだけだ!」
「ああ……鏡像は鏡像のままに、お帰り願おう!」
呪殺と白鵺が折り重なり、夜妖を包み込み……夜妖はその舞から逃げる事も出来ない。
そして……。
『ぐ……グゥゥうあああ……!!』
と、断末魔の悲鳴と共に、夜妖はその場から霧散する様に消え失せて行くのであった。
●影日向
……そして、夜妖を倒した後。
「ふぅ……終わった様にゃね?」
とちぐさがぽつりと零すと、次の瞬間……周りの夜妖の影は、全てが漆黒の闇の中に消え失せて行く。
「ふー、おわったおわったっと。やっぱあーしはあかるくかわいいのが一番よね!」
と満面の笑みを浮かべる夕子に、繧花も。
「んー……そうだね! うじうじしててもしょうがないし、明るく元気に行くのが大事だよね!」
と渾身の笑みを浮かべる。
……そんな二人の会話を聞きつつも、ちぐさは消え失せた、己がドッペルゲンガーの痕の所に手を掲げて。
「……僕と違って諦め悪かったのにゃ。さすが僕の逆さまにゃ。でも……僕にだって譲れないものはあるのにゃ!」
ちぐさの言葉は、戦った映し身に対してなのか、それとも自分に向けての決意なのか……それは分からない。
でも……出自は様々であろうと、こうして苦しんでいる人がいるのならば、イレギュラーズの力で一人でも多くの人を救いたい、という強い気持ちを抱くのも自然な流れで。
「そうだね……今、この再現性東京でおれたちに出来る事、一つ一つこなしていかないと……一般人の方々を守る為にも、ね」
「ええ、そうですね……まぁ取りあえず、この場は……もう夜妖の気配もありませんし、平穏を取り戻したと思われます。後は掃除屋に任せて、この場を去るとしましょう」
トストに頷くホー……そしてイレギュラーズ達は、朝の陽がさしこむ前に、その場を後にするのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
再現性東京、映し身依頼に参加頂きまして、ありがとうございます。
今回は皆様それぞれの正反対の性格ということで、皆様の内面を垣間見れた気がします……。
GMコメント
皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
今回の夜妖は、相手の性格を反転させた夜妖を作る……と、中々テクニカルな事をしてきます。
●成功条件
映し身を作る夜妖を退治する事です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●夜妖<ヨル>
都市伝説やモンスターの総称。
科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
関わりたくないものです。
完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)
●周りの状況
舞台となるのは再現性東京の瓦礫が転がる、郊外の地方都市です。
ジャバーウォックらの襲撃事件の結果、街の姿は一変して、荒れ果てている状態です。
夜ともなれば殆ど人は歩いていませんが……そんな少なくない一般人に次々と襲い掛かろうとしているのが今回の夜妖です。
周囲は灯りが余り無いので、灯の確保は必要でしょう。
また足場もかなり悪いので、転げない様に注意して下さい。
●討伐目標
映し身を作り出す夜妖『映し身の影』
今回の黒幕であり、夜妖本体です。
彼が作り出した人型の夜妖の配下は、指定した相手とは『真逆の性格』を持つ影型人間となります。
この影型人間を盾にして己が身を守り、また攻撃を指示する事で皆様を攻撃します。
彼自体の戦闘能力は、皆様一人と相対出来る位なので、1:多の状況を作り出す事が出来れば優位に戦いを進める事が出来ます。
ちなみに主たる武器は、鋭い爪で斬り裂く……になります。
映し身の夜妖『ドッペルゲンガー』
上記夜妖に作り出されたコピーの夜妖達です。
今回は、既にコピーされてしまった一般人のコピー(6体)に加え、参加される皆様のコピー(つまり8体)を作り出して、それぞれ攻撃・防御を行います。
一般人がコピーされた者達は、戦闘能力は高くありませんが、主人を守る為の肉壁になるには十分でしょう。
さらに、皆様の映し身となる彼等の戦闘能力も皆様1人1人と同じ位です。
攻撃手段は、皆様のステータスと同様のものを攻撃手段としてとってきますので、攻撃手段は多種多様……になります。
又、それぞれが『真逆の性格』を取ります。
この性格の参考として皆様の『罪』『罰』『弱点』を中心に、プレイングの記載内容も判定に含まさせていただきます。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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