PandoraPartyProject

シナリオ詳細

別に悔しくなんかないんだからねっ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その貴族は大層ご立腹であった。
「なんと、なんと嘆かわしき事か!」
 ご立派な髭を蓄えた壮年の男性貴族は、そう声を荒げて目の前で膝を付く青年を叱り付けた。
「なぁ! そう思うだろうお前も、なぁ!」
「え……えぇ、そうですね……?」
「理解ってないなら頷くでない馬鹿者が!」
 いきなり呼び出して理由も言わずにいきなりの叱責に、理不尽……、とは思っても騎士はそれを口には出さない。
 ただただ頭を垂れ、控えめに口を開く。
「申し訳ありません……どうか、その怒髪天を突く程のお気持ちを私に解るよう説明下さいませんか?」
 このバカ。とは心中で呟いて。
「なぜ、そのようにお怒りになられるのでしょう。今や海洋の安寧は保たれており、民も含め外来からの評価も高いではありませんか」
「確かに、確かに、その通り。だがそれを為したのは我らではない、余所者だ」
 わかるか?
「わかるか、ええ? おい。ローレットにおんぶにだっこで平和になるだなんて、海洋に生きる騎士として、民を守る者として我慢出来るか?」
 つまりは、
「出番取られて悔しい訳ですか」
「べつにくやしくねーし!」
 バンバンと机を叩く貴族は口を尖らせて言う。
 ご立腹の理由は明かされたが、ならばしかし、どうしろと言うのか。
 既に彼らは功績を挙げたのだ。それをなかったことにはできない。
「彼らは本物です」
「わかっている。だがこちらも少しはかっこうを付けるべきだと思わんか?」
「つまり、我々にどうしろと言うのでしょう」
 ああ、なにかとんでもなく面倒を言われる。
 と、騎士は内心、嫌な気分を噛み潰して聞く。
「どちらが強いか、決めてこい。それで、騎士の力の程を示してくるのだ」
「……yes,sir.精々暴れるとしましょう、賃金の範囲内で」


「今回の目的はシンプルだ」
 そう声を上げた『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、手短に言葉を選んで言う。
「海洋の騎士達と、8対8の模擬戦をしてもらう。なにも難しいことはない、いつも通り戦って、いつも通り勝てばいい」
 もちろん負けてもいい、と付け加えて、ショウは言葉を締めた。
「…………え、それだけ!?」

GMコメント

 ユズキです。
 裏も表も無いただの戦いをしようぜという話です。

●情報精度
 Bです。なにが不明かと言うと、敵のスキル構成とか不明です。まあ戦う相手に手の内晒す人はいませんよね。

●依頼達成条件
 全力で戦う。

●現場
 ド広い闘技場。障害物とか無しです。

●敵・ポイント
 八人の騎士達。
 全員、大きな盾と槍を装備した堅固な者達。
 貴族の私兵ですが、歴戦と呼んでいい練度を持った、チームプレーのプロです。
 要は単純な強さだけではないという感じです。

 ちなみに余程殺意200%で攻撃しない限りは無事(五体満足とは言ってない)ですので、遠慮なくスキルを使ってもらって大丈夫です。

 それでは、参加を待っています。

  • 別に悔しくなんかないんだからねっ!完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月09日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
ラデリ・マグノリア(p3p001706)
再び描き出す物語
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
狩金・玖累(p3p001743)
PSIcho
カーネリアン・S・レイニー(p3p004873)
ワンダラー
イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)
水葬の誘い手

リプレイ


 海を望む部屋がある。
 壁の一面を簡単な棚で占め、向かいの一面を海が見えるようにガラス張りにした横長の部屋だ。
 中央に長椅子を設置し、休憩室とも、控え室とも思える。
 そこに、招かれたイレギュラーズ八人が揃っていた。
「作戦は、つまりはそういう感じだな」
 浅く腰掛けて言う『軋む守り人』楔 アカツキ(p3p001209)は、部屋で思い思いに待機する仲間に向けて視線を流す。
「基本は一人を集中攻撃。敵の連携を一つ一つ崩して、隙に噛み付く……ってことっスね」
 浮かせた足の甲に、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はボールを乗せながら確認の声を上げる。
「後は、範囲攻撃も使っていくよー。どう対処してくるのかで、追撃は変えるけどー」
「そうだな……俺も、敵を巻き込める様な攻撃方法を考えている。もちろん、みんなを巻き込まないタイミングで、だな」
 それに追加した『悪意の蒼い徒花』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)に、『信風の』ラデリ・マグノリア(p3p001706)も賛同と注意を添えて、
「ただ、誰かの傷が深い時は回復に回らせてもらう。特に攻撃役と回復役を優先してな」
 チラリと仲間を見る。その先はクロジンデと、
「うん、おれも気を付けるヨ」
 援護と回復を主に担う『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)だ。
 ラデリの視線に頷いて笑ったイーフォは、がんばるヨ! と拳を握って見せる。
「じゃああたしと玖累は、皆の追撃って感じで良いわけね?」
 長弓の弦の張りを確認しながら『ワンダラー』カーネリアン・S・レイニー(p3p004873)は言う。
「一人ずつ確実に。ハンターの腕の見せ所ね」
「うんうん、りょーかいだよ。僕達の全力でがんばろーっ」
 拘束衣に身を包み、目に光を感じない。そんな外見の『拒絶』狩金・玖累(p3p001743)が、カーネリアンの言葉に言葉を重ねる。
 どことなく本心に感じないのは、きっとそういう特性なのだろう。
「全力……」
 なるほど。
 静かに座っていた『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は、その意味を考える。
「勝っても負けても良いけれど、全力で、ですか。ならばーー」
 あらゆる手を講じて勝ちに行きましょう。
 と、腰を上げて立ち上がる。
「時間です。ゆるりと、参りましょうか」


 闘技場の土を踏む。
 整備はされているのだろうが、踏みしめた土の感触には砂以外の存在も確かに感じられた。
 それはきっと、武具の破片や、人や動物の血等の、戦いの痕跡。
 それを思いながら、イレギュラーズは先に居た八人の騎士と対面する。
 鎧を装着し、身を隠す程の大盾と槍を縦に握った騎士だ。
「整然としているな」
「精鋭の騎士サマってだけあって、オーラが違うねェ」
 乱れの無い立ち姿をそう評したアカツキに、イーフォが同意する。そして、これから行う戦いを思い、笑った。
「良いねェ真剣勝負、燃えるねェ! おれ、そういうの、戦いの中じゃ三番目くらいに好きだヨ!」
 一番と二番はなんなのか。それを聞く者は居ない。が、さして気にせず、
「じゃあ、正々堂々騎士道精神に則ってがんばろーね!」
 玖累が言葉を継いだ。
 それを合図に両陣営は構え、そして。
「ーー!」
 戦いは始まる。

 前へ出るイレギュラーズに対して、騎士達の動きは逆だった。
 横一列にあった人数を、後ろに下がるようにして三列に増やす。
 前と中に三人ずつ、後ろに二人と言う並びだ。
「ローレットの者以外との手合わせ、か」
「騎士とボク達、どっちが強いかの模擬戦だねー」
 それを、手を開くラデリと、魔術書を開くクロジンデが見る。
「持てる力を以て、勝ちに行こうか」
「始めっから攻撃はクライマックスで。行くよー」
 その二人が使うのは、同じ魔術式。対象と定めた地点に霧を発生させるものだ。
 包まれた相手は、術者の殺意に苛まれる事になる。
「……なるほど」
 二人の合わさった霧の奥を、アカツキはじぃ、っと観察し、そう声を漏らす。
 その晴れた先にあるのは、真ん中の一人を三歩程前に、左右の二人を三歩程後ろに動かした前列の姿がある。
「被害を一人に集中……いや、庇ったんスか……?」
 もしもそうなら、仲間を切り捨てたか、もしくは二人を同時に庇える能力持ちと言うことになる。違うなら、別の意図があるはずで、
「……あぁ、クソ。ちょっと頭いてぇ……」
 それを測るのは現状不可能だ。だから、それを加味した上で葵は判断する。
 手にしたボールを緩く上に放り、一歩、二歩と加速を入れ、
「とにかく、崩すっス……!」
 右足で地面を削る様に踏み込み、バウンドするボールを左の利き足で強く打撃した。威力に空気を押され、くの時にひしゃげたボールは、瞬間、前に出すぎた騎士へと一直線に行く。
「ーーッ」
 大盾を前へ、槍を地面へと突き刺した騎士は、それを受け止める。
 衝撃に身震いする盾の反動は大きく、盾自体のダメージも大きい。守りがひしゃげ、一瞬止まる動きの彼へ、まっすぐに近づく影があった。
「行きます」
 ヘイゼルだ。
 手にした棒へ魔力を十全に行き届かせ、最短距離を駆けて彼女は行く。
「まず、一人目は、貴方です」
 行く。
 発する声は仲間に向けて。狙いを束ねて迅速に、敵を倒すための行動だ。
 このまま流れを、イレギュラーズがとるためだ。
 だが、
「くっ……!」
 騎士達はそれを許さない。
 一撃を見舞う為に行くヘイゼルの左右から、前列の二人が挟み込んで来たからだ。
 盾を押し出すようにして、迎撃する。
「まるで壁ね……」
 点どころか、面でぶつけてくる一撃は重い。
 その間に、前に居た騎士は逆に、一気に後退。
「えぇ、守られるだけ守られて、尻尾巻いて逃げちゃうのかっ」
 その姿を、玖累が挑発する。
 勿論挑発だけで終わらせたりはせず、遠ざかろうとする騎士へと遠距離用の術式弾をきっちり放つ。
 が、
「そう来るかぁ」
 それを、中列に居た騎士が前に出て庇った。そうして空いた中列に、後退した騎士が収まると、空いた前列にはその前に出る騎士が収まるという動きだ。
「逃がすか!」
 それに追い縋るのは、カーネリアンの放つ一矢。前列、ヘイゼルを抑える二人の間を抜け、中列から前へ行く騎士の横を通り過ぎ、半壊した盾を貫通して騎士へと突き立たせた。
「やったか!」
「綺麗にフラグだネそれは!」
 イーフォの言う通り、騎士の腹に穴を開けた傷は、致命傷にはならなかった。
 中列の二人に庇われた騎士は、そのまま自己回復の術を使う。さらに、庇う二人も、その騎士への治療の術式を起動させた。
「あの中列が回復の主軸なのかな?」
 その様子を観察するイーフォの言葉に、前衛で立ち回るヘイゼルはしかし、首を傾げる。
「ほんとうにそうでしょうか……」
 間近で観ていて、そんな単純な役回りなのかという疑問を持ったからだ。
 もしかしたら、この騎士達はーー
「なにか来る……!」
 思考を遮る叫びはアカツキのもので、その声が指すのは、後列の二人の騎士。
 淡く光る槍を水平に構えたその姿は、攻撃の予備動作だ。
 そうして、一瞬の溜めがあってすぐ。
「まずーー」
 光が過ぎた。


 勘違いしていた。
 そう、イレギュラーズは理解を得た。
 遠距離まで届く光の槍や、他者に施せる回復術。二人を守れる盾は攻撃手段も兼ね備えたモノ。
 それが、八人全員扱える凡庸スキルとして確立されている。
 つまり、彼らは。
「何が欠けてもそこを埋められる。一人一人の個人差が無い、統一された規格の騎士。と言うことですね」
 とは、ヘイゼルの言葉だ。
「マニュアルに添ってるから動きもスムーズなわけだ。個性的な無個性集団だね!」
「それはつまりー、個性なのかなー?」
 玖累の良くわからない言葉のチョイスは置いておいて。
「マニュアル化出来るだけの戦いを、彼らはしてきた、ということだ。統率では向こうが一枚上手だろう」
 そうアカツキは結論付ける。元々それは想定していたことだ。
「きっと一年前なら、対応は出来なかっただろうが……」
「うん、ボクたちも色々、戦い方を覚えたからねー」
 大規模召喚から以降、色々な戦闘を経験したのはイレギュラーズも同じだ。
 だから、
「チームプレーなら、こっちだってまけねぇっスよ」

 再度の攻めとして、まず始めに動いたのはラデリだ。
「では、もう一度始めようか」
 パンッ、と両手を打ち鳴らし、前列の騎士へ目標を定めた彼は、手を開くと同時に術式を展開する。
 初撃と同じ、敵を包む霧の魔術だ。
 故に前列の騎士達も、また同じ対応を取る。
 真ん中の一人が前に、左右の二人が後ろに。
 まるでリプレイを見る様な精確さで行われる対処に、
「今度の主役は、少し強めだ」
 しかし、イレギュラーズは手を変える。
「今度はー……逃さないよー」
 入れ替わる動きよりも早く、クロジンデの放つ見えない魔力が騎士に纏わりついた。
 それだけならば、左右の二人が前に出て以降の攻撃から一人を護ればいい。だが、しかし、そうはさせない。
「お生憎様っスね、そうはさせねぇっスよ!」
 葵から放たれた複数のエネルギーの塊は、自分達で羽ばたく様に飛び、踏み出そうとする二人の騎士の足元へ着弾して一気に炸裂する。
「立て直す時間は与えねぇ……!」
「ということです」
 一人。前へ出て攻撃を受け続ける事になった騎士がいる。
 そこへヘイゼルは正面から向かい、先ほどは決められなかった一撃を、
「確実に仕留めます」
 構える盾の上からぶちこんだ。
 それは盾を大きく凹ませ、その衝撃に騎士に膝を付かせた。
「今度こそ、とった!」
 回復も無し、護りも無し。ダメージは大きく、だからこそ、カーネリアンはそこへ矢を放った。
 肩を貫く一矢は騎士の意識すら射抜き、大地に伏せさせる。
 それに慌てたのは、もちろん前列の二人だ。
 陣形を保つ為に、後列から一人中列へ。中列から一人、前列へと数を合わせ、
「ーー」
 その移動の合間に、アカツキが前へ立った。
 肩幅に足を開き、軽く握った両の拳を腰に浅く溜め、息を吐く。
 そうして、敵の眼前でありながら呼吸を静かに保った彼へ、三方向からの盾による激突が行われる。
 空気を圧す様なプレッシャーを、しかしアカツキは動じない。
 腰を落とし、腕を掲げ、どっしりと構えた体でそれを受け止め、一瞬。
「ーー喝ッ!!」
 口から発する音が、空気を打撃する。
 破壊力を孕む声の一撃だ。
 それが、前列の三人を弾き飛ばし、
「ぬぅ……!」
 空いた射線、中列からアカツキに向けて槍の投擲が行く。
 避けられない。
「大丈夫、今治すヨ!」
 だからアカツキはそれを受け、イーフォがそれを治す。
 投げつける回復薬液の詰まった瓶は、アカツキにぶつかる前に砕けて舞い、飛び散るそれが傷ついた肉体にかかって修復を為した。
「じゃあ次を決めようか」
 倒れた騎士をひょいっと飛び越え、玖累が行く。
「存外呆気なくワンダウンとはねー。案外、大した事無い?」
 分かりやすい挑発だ。が、玖累という男が口にするのは一言一句を通して、刃である。
 端的に言えば、とても腹が立つ。
 それでも誘いに乗らないのは、騎士達の自制心が強かったからだ。
 ただし、玖累の挑発に耐えられる。というのは、イコール隙を作らない。という訳ではない。
 怒りを表すのをグッと我慢する、という時点の秒に満たない隙は必ず出来る。
「この程度の言刃で斬れるなよ」
 言う。
 その刹那に、アカツキが吹き飛ばした一人の体を幾筋の線が切り刻んだ。


 戦闘は続く。
 一転してイレギュラーズの優位で進んだ流れを切る為、騎士は隊列と戦術を切り替えた。
 盾役を二人に専任させ、残りを攻撃役として一人に集中砲火させるというものだ。
 それ自体、イレギュラーズも騎士も、似たような方針と言える。
「攻めますよ」
 ヘイゼルが言う。
 攻撃を一身に受けながら言う彼女は、言葉とは逆に守りに入っていた。
 回避を試みてはいるが、騎士達は攻撃してくる連携も上手い。
 自然と体力も削られていくが、
「重ね掛けだ」
「回復するヨ!」
 ラデリとイーフォが、ヘイゼルの体力を長く持たせる為にサポートに徹する。
「では、攻める」
 その時間が勝負だ。
 そう思い、だからアカツキは行く。
 盾を構える騎士に向かって、拳を握った。
 行く。
 大地を踏み込んで、下から上へ。思い切り拳を盾にねじ込んだ。
 そして止まらない。拳を引き戻す動きで、逆の拳を打ち下ろす様に盾を穿ち、さらにもう一撃。
 再度、上へ打ち上げる様に蹴り抜いた。
 かち上がった盾により、騎士の体を隠すものが無くなり、そこへ玖累が飛び込んだ。
 そしてソッと触れる。
「盾で良かったね。今の、体に食らったら、ヤバかったもんね」
 と、そんなもしかしたらを語る。
 そして実際、触れられた騎士は一瞬思う。もし、生身で当たったら、と。
 そしてイメージが、ダメージになる。
 三つの連撃が打ち込まれた様に傷を負い、その衝撃に崩れ落ちた。
「ーー!」
 玖累のスキルによる技だ。騎士達に理屈はわからないが、故に危険だと、攻撃手の槍が玖累を狙って突き出される。
 大きく腕を伸ばした動きで突き刺さり、玖累はそれでだらりと四肢の力が抜けたように崩れ落ちた。
 しかし、攻撃したその瞬間は、騎士も防御が利かない。
 だからそこを狙って、葵がボールを蹴り込んだ。
 鎧にぶちこんだ一撃はしかし、倒すまでの衝撃とはならない。
「倒すつもりもないっス、本命はーー」
「一人一人、確実に、ねー」
 クロジンデの高火力による一撃が、体勢を崩した騎士を強制的に気絶させた。
 と、同時に。
「っ」
 ヘイゼルの体が盾により吹き飛ばされる。その瞬間に彼女の意識は一度落ち、地面を転がる内に鈍い覚醒を得る。
「ごめんネ、回復が追い付かないヨ!」
 騎士の攻撃力に対して、回復の絶対量が足りていない。
 ただしそれは、騎士達も同じだ。
 しかも、パンドラという手段を持たない彼らは、倒れたら起き上がる事は出来ない。
 それでも引かず、仲間が倒れて尚も、騎士の屈強な精神は勝つ為に戦闘を続行させる。
「騎士道ってスゴいね」
 倒れたフリで騎士の後ろに転がっていた玖累がおもむろに立ち上がり、
「僕? 僕はね、曲々堂々詭道精神さ」
 急襲した。
 そうして、戦いは終結に向かっていく。
 玖累に体勢を崩された騎士をカーネリアンが射抜き、そのまま刺さる位置が心臓【だったかもしれない】と操作した玖累が止めとし、葵と戦闘不能状態から復帰をしたヘイゼルが魔力を込めた一撃で盾役をそのままぶっ倒していく。
 これで8対3。どう戦っても、騎士の勝ち目は薄い。
「だとしても、手を抜くつもりは毛頭ない」
 全力で戦う。そう受けたオーダーだ。
 だから、最後の一人が倒れる瞬間まで、イレギュラーズの攻撃は苛烈だった。


「いやマジで絶対ぶん殴ってやるって思ってた」
「まあまあ水に流してよ」
 と、そう言うのは武装を解除してラフな格好になった騎士の一人だ。
「あとマジでチラ見せされる生足すごい気になってた」
「お、おぉ……今言われてもな……!」
 玖累とカーネリアンに向け愚痴愚痴と言葉を漏らす様は、闘技場の上での姿とはまるで違う。
「いやー、いい勝負ができてよかったよネ!」
「そうそう、今回は勝ち負けとかナシっスよ、楽しかったっス」
「お互い、いい機会になっただろう。健闘を称えあって、次に繋げよう」
 そして他の騎士達は、それなりに落ち込んでいるようだ。
 貴族に無茶ぶりされたとはいえ、負けたことに関しては来るものがあったのだろう。
 入れられるフォローに力なくうなずき、そして両者の握手をもって、今回の戦いは終了となった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ユズキです。
遅れて申し訳ありません。
参加、ありがとうございました。

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