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シナリオ詳細

【四季彩の箱庭】冬はやがて

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

・季節は巡る

 四季彩。それは少し広い庭園と青い空、そして休憩するための場所があるばかりの、小さな世界だ。
 この世界に住んでいるのは、神と天使、そして花の精だけ。箱庭を思わせるこの小さな空間では、花の精が歌い踊る声ばかりが響いている。

「いつかまた会えるかしら」
「どうかしら」
「来年になったら会えるかもよ」

 花弁で彩られた少女たちが生きるこの場所でも、季節は巡る。
 少女たちは、それぞれの花が咲く間しか生きることができない。冬が終わり、春が近づくとき、その花たちは次々に終わりを告げる。

「さようなら、愛おしい季節」
「楽しみだわ、温かい季節」

 ぽとり、はらり。その花が散る。
 ぽつり、ふわり。その花が咲く。

 少女が一人ひとり姿を消し、一人ひとり姿を現す。

「寂しいわね」
「ええ、悲しいわね」

 寂しいとき、悲しいとき。そんな時にどうすればいいのか、この少女たちは知らない。この箱庭でできることも、ここで出会える人も限られているのだから。

「誰か来てくれたらいいのに」
「たくさん踊って歌いましょ」
「そしたら、寂しくなくなるかな」

 少女たちはその顔を寄せ合って囁く。彼女たちにとって、ここにいない誰かに手を伸ばすことが、自らの心の穴を埋める方法なのだ。

「私たち、待ってるわ。だから、誰か、来てね」


・春を待つ

「花の精が住む世界でも、季節が変わり始めているみたいよ」

 境界案内人カトレアが指さすのは、鮮やかな花々が描かれた本。それを大切そうに抱えて、カトレアは言葉を紡ぐ。

「花の精は、生まれては死んでいく存在よ。あの子たちだけが、あの世界で姿を持つの。だけど、その命はとても短いわ」

 少女たちは、その花が咲く間しか生きることができない。だからその花が散る季節になると、彼女たちは一人ひとりと姿を消していく。

「次の季節を待たずに散っていく子もいるわ。だけど、やっぱり、花が散る季節は、たくさんの子が消えていくの」

 新しく咲いた少女や、残された少女は、かつての仲間が消えていく瞬間を何度も見つめることになる。しかしその少女たちは、その時の虚しさや寂しさを埋める方法を知らない。

「あの子たちしかいない場所だもの。仕方のないことだわ」

 カトレアはひとつ息を吐き、そっと本の表紙を撫でる。

「だから、あの子たちに寄り添ってあげてほしいの。一緒に時間を過ごしてくれればいいわ。楽しく歌ったりとか、踊ったりとか」

 そうすれば、彼女たちの穴は塞がれる。自分もいつか、花びらとなって消えゆくことを、認めることができる。

「この時期に箱庭にいるのは、梅や雪割草、菜の花たちね」

 それではよろしくね。カトレアはそう微笑んで、そっとお辞儀をした。

NMコメント

 こんにちは、椿叶です。
 四季彩の箱庭の二番目のお話ですが、最初の話を読んでいなくても問題ありません。

世界観:
 四季彩と呼ばれる世界です。花で満ちた庭園と休憩スペースがあるばかりの、小さな空間です。庭園には池やベンチなどもあります。
 この世界に棲むのは、花の精と神、それから天使です。姿を現すのは花の精だけです。花の精は花の咲いている間だけ生き、花が散るときに花弁へと変わります。
 今は丁度多くの花が散っているようで、多くの少女が消えたり生まれたりしています。

目的:
 花の精と共に時間を過ごすことです。
 何人もの少女が花弁となって消えゆくことを、残された者たちは見つめなければなりません。そこで生まれる虚しさや悲しさ、寂しさを、彼女たちは埋める方法を知りません。彼女たちと言葉を交わし、踊ったり歌ったり、共に時間を過ごすことで、彼女たちの心の隙間を埋めてあげてください。
 遊びや食事に必要な道具などは、天使たちがひっそりと持ってきてくれます。自由に過ごしてもらえたらと思います。

花の精について:
 花から産み落とされた妖精です。ほとんどが少女のような姿をしており、花弁に似た衣装に身を包まれています。翅が生えているかどうかは、出会った少女によって違います。
 少女によって性格は変わりますが、寂しがり屋な子が多いです。それを表に出す子出さない子と、様々な少女がいます。
 箱庭には常に数人はいるので、何人かに出会うことができます。
 この時期には、梅や雪割草、菜の花をはじめとする少女たちがいます。

できる事:
・花の精とおしゃべりをする。
・一緒に踊る、歌う。
・お茶をする。軽く食事をする。

サンプルプレイング:
 その衣装についたお花、もしかして梅の妖精さんかな。泣いているの? ……そっか、お友達がいなくなっちゃったんだね。寂しいね、悲しいよね。
 仕方ないの……? そっか、そういう定めなんだね。
 ねえ、君もいつかは……、何でもない。私にできることは、今の君を笑わせてあげることだから。できることはするよ。
 踊りたいの? 分かった、一緒に踊ろうね。一緒に笑おうね。


 登場する花の精について希望があれば、プレイングに記載していただけたらと思います(花の種類、性格、翅の有無、花言葉など)。記載がなければこちら出会う妖精を選ばせていただきます。花の種類についても、冬から春にかけて咲くものであれば自由に書いていただいて構いません。
 よろしくお願いします。

  • 【四季彩の箱庭】冬はやがて完了
  • NM名花籠しずく
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年03月02日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
凶狼
グルック・ストラーハ(p3p010439)
復興青空教室
茶寮 コロル(p3p010506)
どたばたロリ店主

リプレイ

・交わした言葉

 たしかここは一度来たことがあったか。久しいなと思いながら、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は辺りを見回す。ここに広がる花園は相も変わらず、閉鎖的で閉塞的な印象があった。花の精も苦労していることだろう。

 ちらりと視界にひらめく花がうつる。短命とは聞いていたが、既に前に来た時よりも顔ぶれが変わっているのが分かった。花の咲く間なんて短いものだし、当然ではあるのだが。

 となれば、やることは前と変わらない。こちらの様子を伺う妖精の前で、簡易式召喚陣で精霊を召喚する。再び遊び相手になるように精霊に伝えると、見覚えのある赤い花がきゃあと声をあげた。

「お友達を呼んでくれたのね」

 楽しそうな声を上げて走り出していく少女たちを横目に見ながら、世界はお茶会の準備をする。

「あなたのお菓子がおいしいって聞いたの」
「ああ、それなら持ってきたから、食べるといい」

 ひとつぼしの菓子折りを机に置くと、花の精たちが歓声をあげた。よっぽど気に入っていたようだ。

 走り回る少女たちの声と、お茶とお菓子を楽しむ少女たちの表情。それらに触れているうちに、折角話をするのだからと、以前からの疑問を口にしていた。

 どのようにして花の精は生まれるのか。普段はどのようにして時間を過ごしているのか。花が散ったあとはどうなるのか、もしくはどうなると考えているのか。そんな疑問を一つひとつ尋ねていく。
 それから、この世界に存在しなさそうなものに関しての認識も確認する。さすがに海なんかはないだろうが、地上のものをどの程度知っているのかは興味があった。

 妖精が知らないものを天使たちが知っているかどうかも気になる。主目的から外れるから、今度自主的に来てみようか。

「ねえ、あなた」
「っと、すまないな。考え込んでしまった」

 妖精たちの返事は、はっきりしたものだったり、そうでなかったりとまちまちだった。だけどそれでも、彼女たちの考えを聞くことはできた。

「色々聞かせてもらったお礼に、今度は俺が色々教えてやろう。何でも聞いてくれ」

 知らないこと以外なら答えてみせようと言うと、少女たちはその瞳を明るく輝かせた。

「海について知りたいわ」
「他のお空ってどんな風?」

 口々に話し始めた少女たちを落ち着かせつつ、世界はひとつ息を吸う。

 そうだ、今は彼女たちの為に時間を使わなくては。彼女たちにとって時間は余りにも短く、貴重なのだから。


・願い

 目の前に咲く花々。その中から『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)はひとりの少女を探していた。

 あの子は、まだ、いるだろうか。前に会ったときにできた大切な友達。あの子との約束を、果たさなければ。
 必死で走り回った箱庭の隅に、あの棘に包まれた少女はいた。力なく投げ出した身体を他の少女に抱きしめられて、こちらをそっと見つめていた。

「ヘルミーネ」

 息が、詰まりそうになった。カトレアが教えてくれたおかげで何とか間に合ったけれど、彼女はもうその花を散らそうとしている。

「アロエちゃん! 約束を、果たしに来たのだ!」

 待っていたとアロエは微笑む。ほとんど笑うことのなかった彼女の見せた表情が、ヘルミーネの胸をぐらりと動かした。彼女は、約束を守っていたのだ。

 これはきっと、この隣の青い花のおかげでもあるのだろう。

「私は雪割草。この子の、友達よ」
「そっか、そっか。ありがとうなのだ、アロエちゃんの友達になってくれて」

 つかえそうになる息を吐き出して、ヘルミーネはアロエを見つめる。傷だらけだった足に飾られた青い花が、彼女の歩んだ道のり。

「よく頑張ったのだ!」

 その生を生き抜いた彼女を、友として誇りに思う。

 流石、ヘルちゃんの友達なのだ。掠れる声でそう伝えて、泣きながら微笑む。アロエはそっと目を伏せて、ヘルミーネの鎮魂歌が聴きたいと願った。

「それじゃあ、見送るのだ」

 涙を拭いながら、ヘルミーネは唇を震わせる。

「我が死出の番人(ニヴルヘイム)の名において、汝の魂を送ろう。汝の死出の旅路の先に安息と救いがあらん事を」

 さようなら。アロエちゃん。

 彼女の足の先がはらりと崩れて、少女は少女の形をなくしていく。

 私の誇らしい友よ。いつか輪廻の輪の先で、また出会えることを願ってる。

 崩れたひとかけらを、手のひらの上にすくう。最後の彼女の穏やかな表情をまぶたの裏に焼き付けて、ヘルミーネは雪割草に向き合った。

「改めてお礼を言うのだ。ありがとう、ミスミちゃん。アロエちゃんの友達になって、一緒に看取ってくれて」

 雪割草がいたから、アロエもここまで生きられたのだと思う。
 もし何かあれば頼ってほしいと伝えたところ、彼女はそっと笑った。

「こちらこそ、ありがとう。あなたが知るあの子を教えて。私も教えるから」

 少女の言葉に、ヘルミーネは頷く。そうして、ゆっくりと唇を開いた。


・外の世界

「はえー、境界図書館。覇竜の外には色んな所があるんだなあ」

 辺りに広がる花々と、青い空。ここは狭い世界かもしれないけれど、『復興青空教室』グルック・ストラーハ(p3p010439)には目に映るもの全てが新しく見えた。

 集落から外に出ることもほとんどなかった自分としては、この広い無辜なる混沌の中に、さらに異世界が内包されているなんて想像もつかない。だけど少し、分かることもあるような気がする。

 イレギュラーズが亜竜種と縁を結ぶまで、覇竜領域にあるものだけが、この世に存在する全てだと思っていた。それがずっと、心細かったのだ。
 覇竜領域は相変わらずで、色んな所で、色んな理由で同胞が危険な目に遭ったり、死んだりしている。イレギュラーズが助けてくれるけれど、それでもすべてが救われるわけでもない。

 だけど、自分たちだけじゃないと思えるだけで、楽になることができたのだ。うまく説明するのは難しいが、なんだか気持ちは救われたような気がした。

 だからこそ、この少女たちが楽になれるようにしたいのだ。彼女たちの心の穴を完全に埋められるわけではないが、共感できる分、何かをプラスにしてあげたかった。

「ウェーイ! こーんにーちーわー!」

 ひとまず大切なのは挨拶。そう思ってはりだした声に、少女たちがくるりと視線を向けた。

「はじめまして! 俺はクソ田舎から飛び出してきた新進気鋭の新人亜竜種イレギュラーズ。……グルックくんって呼んじゃって〜!」

 グルックの前に、ひらひらと少女が集まってくる。
 赤や青、黄色の花々。そして彼女らの無邪気で明るい笑顔が、少し眩しい。

「君らの名前はなんてぇの? 一人ずつ聞いちゃうよ~」

 後ろの子も遠慮しないで並ぶように伝えると、きゃっきゃと声を上げながら少女たちは列を作る。

「私、菜の花」
「あれ、そういうことじゃない?」
「私たち、名前は花の名前でしかないの」

 なるほど、名前らしい名前はないらしい。

「無ければ一緒に考えちゃおっか!」

 そういうと、少女たちは顔を見合わせる。戸惑うような表情が、次第に明るく変わっていく。

「私たちに名前をつけてくれるのね」
「もちろん。どんなのがいい?」
「それなら、あなたと同じようなのがいいわあ」

 少女一人ひとりを話しながら、その少女に合う名前を考えていく。こうすれば、忘れない。

 絶対、覚えておくからさ。そう口の中で呟いて、少女たちに笑いかけた。


・心を共に

 のどかな庭園を見回して、感心していたのもつかの間。振り返った先に降り立った妖精の姿を見た途端、『どたばたロリ店主』茶寮 コロル(p3p010506)はここに来たことを後悔した。

 妖精と聞いて、漠然と自分と全く違う存在なのだろうと思い込んでいた。だけど目の前に立つ鮮やかな白色は、ただの綺麗な女の子だった。自分と種族が違うということ以外、何も変わらない。

 自分と同じような存在が、その仲間たちが次々に消えていくのだ。その重さを、自分は少しも理解していなかった。そう気が付いたら身体が重たくなって、地面に座り込んでしまった。

 消えゆく少女。それがかつて見た両親の最後と重なって見えて、じわりと涙が滲む。

「泣かないで」

 白い花の少女が、そっとこちらに手を伸ばす。その淡い指が頬に触れて、コロルの涙をぬぐった。

「あ、れ。ごめんなさい。私が泣いてちゃ、だめなのに」

 少女たちを癒すためにここに来たのに。そう思えども、なかなか涙は止まらない。すると、少女がコロルに寄り添うように座った。

「私はアングレカム」

 顔を合わせた途端に泣き出したコロルをみて、少女は何を思ったのだろう。驚かれてもおかしくないのに、彼女は優しく笑うだけだった。

「泣いてもいいのよ。傷は癒えなくても、きっと」

 かけられる言葉の優しさに、胸が温かくなるような、それでいて締め付けられるような思いがした。涙腺がくずれてしまったのだろう、雫があとからあとから頬を伝う。

 一度泣き出すと、色々な悲しいことを次々と思い出してしまうのが、自分の悪い癖だ。少女たちという儚い存在のこと、亡くした親のことを思い出したこと、遺された店の経営が上手くいっていないこと。胸のうちに留めておきたかったはずなのに、気が付けばそれらを口走っていた。

 コロルの背をさすり、そっと頭を撫でてくれた手つきがあまりにも優しい。だから穏やかな気持ちになると同時に、もっと泣きたくなった。

「本当に、申し訳がありませんね。残り僅かな時間を、泣きじゃくる私と過ごすなんて」

 いいのよ。そうアングレカムが首をふる。ここに来てくれたことだけで救われたのだと、その瞳が語っていた。

「せめて、私をなだめてくれた優しい手を、声を。あなたが存在したということを、絶対に忘れないと誓います」

 そっと口に出した想いに、彼女は穏やかに頷いてくれた。胸のうちが、ほわりと温かくなったような気がした。

成否

成功

状態異常

なし

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