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シナリオ詳細

<咎の鉄条>友親の声は遠く鳴く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<咎の鉄条>友親の声は遠く鳴く
 深い緑が広がる地、深碧。
 幻想種達が多く棲まい、自然と共に過ごす生活……それは、彼らにとっての日常であり、いつもと変わらない平穏。
 ……だが、そんな平穏は突如として破られる。
『……え? ……な、何なのでしょうか……これは……』
 『深森の声』ルリア=ルミナス(p3n000174) は、目の前の光景に驚き、愕然とする。
 あの美しい新緑の大自然は見る影もなく、刺々しい荊が目の前に広がる。
 ラサとの国境付近から、そんな異常なる光景を見たルリアは……何よりも言い知れぬ不安を覚える。
 深緑で共に過ごした家族、友人は無事なのだろうか。
 この荊が生い茂る中において……村は無事なのだろうか。
『……』
 眼を閉じ、森の中に意思疎通を試みるも……答えはない。
『助けなきゃ……』
 涙を堪えながら、その荊に手を触れるが……鋭く尖った棘の様な物は縦横無尽に根を張っており……荊を掻い潜ることは絶対に不可能。
『……助けなきゃ。皆様に、また力を貸して貰わないと……」
 守りたいが故に、深緑から外の世界に出て来た彼女。
 しかし、この荊には、まだまだ自分の力では不足しているのを思い知ると共に……彼女は急ぎ、ギルド・ローレットへと踵を返した。


「すいません……みなさん……! あの、力を……貸して貰えないでしょうか……!!」
 そして場所は変わり、ギルド・ローレット。
 ルリアは君達に、深く深く頭を下げながら、懇願する。
 そんな彼女の並々ならぬ雰囲気を感じ取った君達は、彼女を落ちつかせるようにしつつ、話を引き出す。
「すいません……あの、私の故郷の深緑が、原因不明の荊に突如覆われてしまったのです……」
「荊はラサとの国境線にまで範囲を伸ばしており、中に潜入する事すら、現在出来ない状態になのです……私の友人に声を飛ばしてみたものの、反応はなく……生死も分かりません……」
「……私、皆様に助けられて、仲間を守れるようになりたいって……でも、こうして助ける事も出来ず、また皆様の力を貸して貰えないかって……本当、ふがいない気持ちで一杯です……でも、でも……こうして外にいるのならば、深緑の仲間達を助ける為に声を上げないと……と思ったんです……」
「……本当、自分勝手な事を申し上げていると思います。でも……どうにかして、みんなを助けたいんです! 荊の中に、何があるかもわかりませんし……どんな危険があるかもわかりません。ですが……私も頑張りますから、どうか……一緒に来て頂けないでしょうか……」
 目に涙を堪えながら、頭を下げるルリア。
 そんな彼女の真摯たる願いに、君達は頷くのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 突如として深緑が荊に覆われてしまいました。
 ルリアの故郷であるからこそ、彼女の心中は穏やかではないでしょう。
 彼女と共に、どうか深緑の危機を救っていただけないでしょうか?
 当然、ルリアも同好させて頂きます。

 ●成功条件
  深緑に突如として現れた『荊』を切り拓き、迷宮森林の中の侵入出来る場所をを進んでいくと共に
  その原因を調査する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  迷宮森林の中は荊に覆われており、皆様が今回侵入出来る場所は、ラサとの国境線側になります。
  荊自体は刺々しいもので、さしずめ自然が作り出した有刺鉄線の様な感じになっています。
  当然この棘に触れれば傷を負いますし、その傷痕は少し癒えにくい様です。
  ただこの荊自体には戦闘能力はないので、剣や斧などで薙ぎ払っていけば切り裂く事は出来ます。
  ただ、切り裂いても次から次へと生えてくるので、常に荊の対処をおこなっていく必要があります。

 ●討伐目標
  荊の中に棲まう『邪妖精』
   荊の中においては、普通の人は動けないような状態です。
   ですがこの荊の中に棲まう小さな悪を覚えた妖精達(レッドキャップ達)は、荊に傷つくような事は無く、自由自在に動けるようです。
   彼らが何故無事に動けるのかはわかりませんが、この荊の謎を解く一助にはなるかもしれません。
   ただ、心底まで凶暴な性格に陥っているので、説得等を嗾けても無駄でしょう。
   
   ちなみにレッドキャップ達は、その手の短剣で攻撃為てくるとともに、炎、氷の攻撃魔法を使用し、仲間達に対しては回復の魔法も使える模様です。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <咎の鉄条>友親の声は遠く鳴く完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
アルトゥライネル(p3p008166)
バロメット・砂漠の妖精
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵
シャールカーニ・レーカ(p3p010392)
緋夜の魔竜

リプレイ

●荊張る刻
 幻想種が多く棲まう、目にも鮮やかな木々の緑が広がる地、深緑。
 ここ最近は大きなトラブルが起こるような事も無く、深緑、そして国境を接するラサとの間には交易も保たれていた。
 だが……そんな深緑に突如として発生した事件。
 深緑の国に蔓延るは、住まう人々を雁字搦めにし、傷付ける荊。
 イレギュラーズ達が辿り着いた深緑とラサの国境線からも、刺々しい荊が視界を覆う程に生え揃っている……そんな惨状が広がっていて。
「……何だこれ。僕達の森が、どうしてこんな事に……」
 長く生きる『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)も、その状況は今迄に経験無い。
 勿論、その様な状況を目の当たりにした事の無い『深森の声』ルリア=ルミナス(p3n000174)と『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)の二人も。
「本当……どうしてこんな事に……私が……外に出てなければ……」
「……深緑に……帰れないの……? ……父さま、母さま、兄さまたち、姉さま、ツィト……! みんな……みんな、無事、よね……?」
 縁故者の生存も、この様な状態とあっては不明。
 何で、その様な時に居なかったのか……という自分を責めたくなる張り裂けそうな気持ちが、己の身を引き裂こうとしている。
 そんな二人の焦燥に。
「……ルリアさんが外に出ていたからこそ、この事態に気付けて、皆が手を打てるんだよ? 深緑の人々を助けるためにも……まずは何が起こってるのか確かめよう。それが、第一歩になる筈だ」
『ぷい。ぷぃぃ! ぷぃー』
 ルリアを宥める『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)と、キルシェの不安を和らげ様とジャイアントモルモットのリチェルカーレが身を寄せる。
 ……そんな二人に、ウィリアムは軽く頭を撫でながら。
「うん。ルリアの村の人達も、キルシェの大切な人も困っているだろう……だからこそ、僕達が来たんだ。この荊の原因を追及し、皆を助けるために……二人も大切な人を救いたいよね?」
 敢えて二人に投げかける。
「はい……勿論です。絶対に、助けたい……」
「うん……みんな、深緑の中にいるんだから……ちゃんと会える……そう、ルシェは信じてるわ……」
 二人の涙が浮かぶ瞳の中には、助けたいという強い意志が滲んでいた。
 そんなウィリアム、キルシェ、ルリア、イズマの四人の会話の一方で……同じくハーモニアの『舞祈る』アルトゥライネル(p3p008166)は、伸びてきた荊に、そっと手を触れる。
 すると荊の鋭い棘は、手に巻き付けた包帯を易々と裂いてしまう。
「……かなり鋭い棘だ。そういえば以前、R.O.Oのネクストでも同様の事件が起きてたな……たまたま先に芽を出したのがR.O.Oだったのだろうか?」
 顎に手を当てて思慮するアルトゥライネル。
 それに『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)が。
「ふむ……もしR.O.Oと同じような現象が発生しているというのなら、この荊を出したのはファルカウなのでしょうか?」
「流石にそれを関連付けるには証拠が無い。種子を同じくするならば、かの道化師に相当する何かが暗躍しているのだろう……真実を正しく理解する為には、一つでも多くの情報を見つける必要があるだろう」
「そうですな! 里に取り残された方々をお救いする意味でも、この荊の出処を探らねばなりませんな!」
 うんうんと頷くヴェルミリオ、それに『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)が。
「そうね。これ……最悪の場合国一つ覆うってレベルって状況だとすると、本当洒落にならないわよね……」
 大陸北西部に広がる深緑の国……地続きなのはこのラサとの国境線だけで、逆側は海に面している故、状況は未だに不明。
 勿論一国家として存在する深緑全土が荊に覆い隠されているとなると、想定よりも事態は遥かに深刻と言えるだろう。
「本当にそーだよ! 困るんだよね!! 深緑はちょっとね、大切な人達の大切な場所なんでね!! もーこれはやる気をフルスイングしていかなくてはなりませんね!!」
 と『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)も並々ならぬ勢いで声を上げると、それに『ベンデグースの赤龍』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)は。
「そうだな……聞いた話によれば、全てを拒む森ではない、というのは良く分かった。この森は……ここに居る者達の故郷であり、愛する土地なのであろう?」
 キルシェらを横目にしつつ、レーカはアルトゥラネイルに尋ねる。
「……そうだな。俺は一度は背を向けた。だが、故郷である事に変わりは無い。危険に駆けつける事に、何の躊躇も無い」
「そうか……分かった。早く異変を解決出来るといいな」
 頷くレーカ。そして皆落ちついたのを見定めたウィリアムが。
「……とにかく進もう。こんな事になった原因を見つけなければならない」
「そうですな。では、まずは一番近い里を目指しますぞ! ルリア殿、案内して貰えますかな?」
「はい、こちらです……」
 ヴェルミリオの言葉にルリアは、薄気味悪く荊が生い茂る方角を指さすのであった。

●荊嵐の隙間
「よーっし、それじゃー早速だけど、荊を斬りさいて行くよー!!」
 ハッピーの元気良い言葉……イレギュラーズの眼前に立ちはだかる、多くの荊。
 幸い他の声は聞こえないので……他の敵等は居ない模様。
「棘が刺さると傷が癒えにくいと言うし、出来るだけ傷を受けないように慎重に切り拓いて行く必要がありそうですね……取りあえず、私の刀で切り裂いてみますね?」
 とイリスは己が刀でバサッ、と目前の荊を斬り裂く。
 ……すると、抵抗する事無く荊は切り刻まれ、地面へ脆くも崩れていく。
「……特に、何か抵抗したり反撃してくる……という様な事は無いみたいだね?」
「その様だね。少なくとも荊を切り拓いて行くのはそんなに苦戦する……って、ちょっと待って」
 イリスの言葉に、イズマが静止。
 ……切り落とされた荊の根元から、また再び荊がぐいんと伸びてきて……目の前はまた荊に包まれたのだ。
「荊自体は防御したり、抵抗したりする事は無い……だが、尋常じゃ無い再生能力を持っている……という事か」
「そういう事か……伐ったそばから再生するとは、帰りの道もわからなくなりそうで怖いな」
 アルトゥラネイルに頷き、思慮するレーカ。
 だが。
「そうみたいだね! でも大丈夫!! 実は私、ダメージが幾ら嵩んでも問題無いのだ!!」
 あははと笑いながらハッピーが先陣を切って荊の森へ突撃。
 ばっさばっさと荊を斬り裂き路を切り拓く……すぐに荊が再生し、ハッピーにちょっと刺さる。
「あっ痛っ! 結構痛っ! あっ……ちょっと痛気持ちいい……?」
 痛みがちょっと癖になっている様だが、耐える力が尋常じゃ無い幽霊なハッピーにとって、荊なんて恐るるに足らず……の模様。
「ほらほら、みんなついてきてー! 再生速度が速いから、あたしが見えなくならないように追いかけて!!」
 手招きしながら、仲間達を導くハッピー。
 ……その快活な笑顔と言葉は、元からというのもあるだろうが、苦しい心境の二人を元気付けようとしていつも以上に振る舞っていた……という点もあるだろう。
 そんなハッピーの言葉に、辛そうな表情を浮かべていたキルシェは。
「……そう、よね。この状態、早く解決しなくちゃ。きっと閉じ込められている人達も、不安だもの……!」
 少しだけ強い気持ちを抱く。
 更にルリアには、イズマが。
「ルリアさんの友人とか、近くに住んでいたりするのか?」
「ええ……とは言っても、この迷宮森林は大きく、棲む場所を良く変える方々も居ます……でも、そういった方々と偶然に出会えたときはとても嬉しかったりするのです」
「そうか。迷宮の中は一期一会……という感じなんだな。その友人達も無事で居てくれるといいな」
「……はい……気遣ってくれて、ありがとうございます……」
 頭を下げるルリアは、現実を受け止めようと、荊の先をしっかりと見据える。
 ……仲間達が、こうして事態解決に手を貸してくれている。
 だから、自分もしっかりしなくちゃ……と、不安に押し潰されそうな中、気丈に振る舞う。
「……うん。ルリアの言う村って、ファシル村だよね? となると……あっちの方だったか」
 そんな二人を気に掛けつつ、ウィリアムは村の方角を更に指し示し、荊に覆い尽くされた深緑の中を進んで行く。
 その進む道すがらに、アルトゥラネイルは周りの木々に向けて。
『……なぁ、アンタ達にとって、この荊はどういったものなんだ?』
 と問い掛ける。
 ……いつもならば、朧気な言葉で応えてくれる森の友達……だが、感じ取れるのは……言葉にならない徹底的な拒否と、怒りの感情。
「……? 拒絶……なのに、襲ってくる事も無い。内に……何を隠しているんだ?」
 そんな感情で帰された事はほとんど無く、疑問を抱くアルトゥライネル。
 と、そうしていると……。
『……キシシシシ……コロス、エサ……!』
 どこからともなく聞こえてきたのは、甲高い声。
 その声の調子は明らかに自分達に敵意を向けているものであり……その方角は、村のある荊の先の方角。
「ふむ……? 声はあちらの方から聞こえますな」
「ああ……まぁ、邪妖精達だろう」
 ヴェルミリオにアルトゥライネルがさらりと零す。
 深緑やら妖精郷、更にラサの一部にすら姿を表す邪悪な意思を持った妖精……レッドキャップ。
 凶暴な性格もあり、敵と認めた者に集団で攻撃を仕掛けてくる奴ら。
 そして、その荊に生い茂る空間へ目を凝らすと……荊が避ける様に蠢きながら、此方へ一気に距離を詰め行くレッドキャップ達を発見する。
『コロセ! サァ、コロスゼ!』
 ききとりずらい言葉で声を上げ、荊の中から炎と氷の攻撃魔法を飛ばしてくる。
 当然イレギュラーズ達の周りには荊がびっしり生えており、躱そうとすればその先にまた荊……棘が身に刺さり、傷を広げる。
「っ……」
 唇を噛みしめるキルシェ。
 周りの仲間達も傷つき血を流す。
「みんな……大丈夫。ルシェが、絶対に守るから!」
 強い気持ちで、仲間達の傷を癒していく。
 そして回復を受けたハッピーがいち早く。
「全く! 深緑にこうして何かあると、私の恋愛沙汰に支障があるんでね!! 加減はしてあげられません!!」
 と、吐き捨てながら。
「いいからお前達、私を見ろ! 目ェ反らしてんじゃないよハッピーちゃんのライヴだぞ!!」
 と、強く注意を惹きつける。
 そんなハッピーに惹きつけられ、前へと進んできた邪妖精達へ、続くアルトゥライネルが。
「何故アンタ達はこの荊の中で自由に動ける。何かしらの共生関係、もしくは出処が同じ力の影響か?」
 と問いながら呪縛の踊りで敵を誘導。
 更にウィリアムからは、気糸を展開し、邪妖精達を次々と絡め取る攻撃を放つ。
 荊でなく、糸に動きを絡め取られ、動きが鈍る邪妖精。
 そこに、イリス、イズマ、ヴェルミリオ、レーカの四人が荊を斬り裂きながら、間合いを一気に詰める。
『クルナ!!』
 拒否の咆哮を上げ、その後方の邪妖精らが四人に向けて攻撃魔法を立て続けに放つ。
「ふむ……中々魔法の攻撃力は高い様ですな! ですが、こちらも負けては居ないのですぞ!」
 ニッ、と骸骨の笑みを見せたヴェルミリオが、邪妖精の生命を削り取る一閃を放てば、連携してイリスとイズマの乱撃の華が荊の下に咲き乱れる。
 斬撃に撃たれ、邪妖精達の身は地に転がると……その身はまるで靄だったかの様に消え失せて行く。
「む……姿を消した?」
 妖精故に、姿を消したと言う可能性も考えられなくは無い。
 しかし、邪妖精達は仲間の状況に構わず。
「コイツラ、コロセ! ゼッタイコロス!!』
 敵対心と凶暴な性格を露わにしながら、イレギュラーズ達へ更に牙を剥く。
「こんな状態だと……説得すら難しそうだね」
 イリスの言葉に、キルシェは瞑目し。
「……ごめんね、邪妖精さんたち……でも、ルシェたちもここで止まる訳には行かないの。だから……あなたたちに負ける訳には行かないの!」
 妖精達、そして……自分に言い聞かせるが如く、声を上げるキルシェ。
 そしてその言葉にアルトゥライネルとレーカも頷き。
「……そうだな。アンタ達も被害者かもしれないが……俺達も、この故郷を取り戻さなければならない。だから……対抗しようと言うのならば、倒すのみだ」
「ああ。容赦はせず、斬り伏せて行く」
 そんな強い意志と共に……イレギュラーズ達は次々と数を増やし立ち塞がる邪妖精達を、全力で斬り伏せながら、荊の奥へと進んで行くのであった。

●荊の痕
 そして……荊を更に斬り進んで行ったイレギュラーズ達。
 国境線に近いファシル村の建物の姿が見えてくるが……明らかに村の中にも、荊は張り巡らされている。
「村が……荊に覆われている……? 早く行かないと……!」
 キルシェに促され、村へ荊を切り拓き進め……村に到着。
「誰か、誰かいないか! 助けに来た!」
 イズマが周囲に声を掛けるが……反応は無い。
 そのまま更に荊を切り拓いて行くと……地面に横たわる人影を発見。
「あ……誰か、誰かあそこにいるわ!」
 キルシェが指さし、その方向へと進むと……地面に横たわる、ハーモニアの男性の姿。
「大丈夫ですか……!? キルシェさん、治療を御願いします……」
「うん……!」
 すぐにキルシェが癒しの力を掛け、ルリアはその荊の棘に血を流していた所を即座に手当する。
 ……傷は癒えたものの、目は開かない。
「あれ……どうして? ……ねえ、大丈夫??」
 と更に声を掛けるキルシェの横から、ウィリアムが彼の心臓に耳を当てる。
 ドク……ドク……と、はっきりとした鼓動が聞こえる。
 更に口元からは、スゥ、ハァ……と言う呼吸も聞こえる。
「……どうだ?」
 とアルトゥライネルが尋ねると、ウイリアムは。
「呼吸はあるし、心臓も鼓動している……生きているのは間違いなさそうだな。だが……何だ? まるで眠って居る様な感じだな……」
「ふむ……」
 考えるアルトゥライネル。
 そして周りを見渡してみると、ちらほらと荊の下に……同様に倒れたハーモニア達。
 覆い隠す荊を斬り裂き、一人一人確認していくと……誰もが息はある。
 ただ……耳元で呼びかけても、決して目を覚ますような事は無い。
「……何かしら……まるで、村人全員が眠って居る様な感じだね……」
 イリスの言う通り、深い眠りに村人全員が落ちている様な……そんな感じ。
 そうして村人達を救出している間、ハッピーやヴェルミリオ達は自分達の来た方向とは逆……つまり、更に迷宮森林の奥の方の具合を確認しに向かう。
 ……するとそこには、今まで以上に密集し、絡み合っている荊。
「この荊の量……凄いな」
 と言いながらハッピーは荊を一閃。
 ほろりと切り落とされるが、瞬く間に荊は再生し、元通りになる。
「これは……簡単には進ませてはくれなさそうだな。少なくとも、ただ斬り伏せるだけでは先に進めなさそうだ」
「そうですな……一旦この場は引き下がるしかありませぬな」
 レーカにヴェルミリオが肩を落とす。
 そして、仲間達の元に合流すると共に、倒れたハーモニア達に。
「この場に放置しておくのは危険だろう……手分けして、外まで連れて行けないだろうか?」
「それは確かに……では、スケさん、背負いますですぞ!」
 肩を抱え、立ち上がったその時。
『……う、うぅぅ……』
 今迄寝息を立てるだけだった彼が……苦悶の声を上げる。
 気がついたのか……と思ったが、意識は取り戻していない。
 ただ苦悶の表情は苦しみを訴えかけている。
「苦しそうだな……ちょっと、一旦降ろしてくれ」
 とイズマが促し、彼を地面へと横たわらせると、再び寝息の様なものを立てる彼。
「……連れて帰ろうとすると……苦しんでる……?」
「その様だね……となると、この場から動かさない方が良さそうだ……」
「……うん」
 ウィリアムの言葉に、辛そうに頷くキルシェ。
 そして、アルトゥライネルが。
「……兎に角、荊に覆われた村の住人達は、息はある様だ。何らかの手段で、救う方法も出てくるだろう……ここは、一度戻って作戦を考えた方が良いな」
「そうね……そうとなれば、急いで戻りましょう」
 頷くイリスに、他の皆も頷く。
 そして……後ろ髪惹かれる思いながら、イレギュラーズ達は一旦、迷宮森林から撤退をするのであった。

成否

成功

MVP

キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

状態異常

なし

あとがき

新緑の危機に参加頂きました皆様、ありがとうございました……!
心境穏やかではない皆様のプレイングに、こちらも心締め付けられる想いでした。
村の方々は無事でしたが、村の外へ動かす事が出来ない様です。
また、奥地の方は更なる荊に覆い隠されており、進撃は難しそうですが……でも、きっと光明は見えると信じております。

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