PandoraPartyProject

シナリオ詳細

元神使はチョコレートを買いすぎた

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●早速何かやらかしたそうです
「特異運命座標の皆と逢える図書館ってここでいいのよね!? お願い、助けてほしいの!!」
 境界案内人、『涙雨の』堅川・竜胆は境界図書館にて、特異運命座標の前に飛び込んでくるやいなや、その足元にすがるようにしながら声を上げた。
 何だなんだと、先般に境界案内人となったばかりの女性に問えば、目の端に涙を浮かべながら竜胆は言った。ここは迷宮の奥深くだと言うのに、どこからか雨のそぼ降る音が聞こえてくる。
「ほら、今ってバレンタインじゃない? あ、えーと、あたしの世界での呼び名でね。こっちの人たちだと、えーと、グラオ・クローネ……だったかしら?」
 指を顎に当てながら、竜胆は図書館の天井を見上げた。元神使、実年齢は不詳という存在ながら、その立ち振る舞いは見た目相応の女性である。
 特異運命座標たちが何かを納得したところで、竜胆はぽんと手を叩いて言った。
「そう、それでよ。あっちこっちでチョコレートが売られているし、安売りもされているし。よーし今年こそはめっちゃ美味しい手作りチョコレートを作って、意中のあの人を射止めるぞーって、気合い入れて製菓用の板チョコたっぷり買ったのはいいんだけど……」
 そう言いながら、語調がどんどん下がって竜胆の視線も下に下に。そして彼女は境界図書館の床を強く叩くと、涙声になりながら叫んだ。
「私の世界で猛威を奮っている疫病のせいで! 手作りチョコレート受け取ろうとする人が誰もいなかったのよぉぉぉ!」
 竜胆の叫び声を聞いて、特異運命座標たちはため息をついた。
 前々から特異運命座標をいざなっている、人間と妖怪が共存する現代チックな異世界。そこでは一昨年ほど前から世界的な疫病が蔓延しており、人々の生活に多大な影響を与えているのだ。
 接触感染や飛沫感染を防止する観点から、手作りのお菓子を手渡すこともやりづらくなっている。そんな中で、この元神使は勢い余って製菓用のチョコレートを大量購入してしまったのだ。
「まだチョコレート使う前だから、無駄な努力をしないで済んだけれど……だからね、自分ひとりのために可愛いチョコ作っても虚しいし、ただ板チョコをバリバリ貪るのも飽きちゃったし、チョコレートを消費するお手伝いをしてほしいの。大丈夫よ、ちゃんとお礼も渡すわ」
 ひっくひっくとしゃくりあげながら話す竜胆に、特異運命座標たちが肩をすくめる。
 タダで色んなチョコレートスイーツを作れるどころか、お礼も出ると言う。それは願ったり叶ったりだ。あの世界は練達と同じくらい文明が発達している、調理もだいぶやりやすいだろう。
「作るものは何でもいいわ、お任せする。オーブンも電子レンジも湯煎用のお鍋もうちにあるし、お菓子作りに必要なものは基本的に揃っているから、追加で必要な食材を持ってきてくれるだけで結構よ」
 竜胆の言葉に、特異運命座標たちも色めき立った。材料だけを用意すれば事足りるとは有り難い。その後の試食会も捗るだろう。
 と、試食の段階に話が及んだところで、竜胆が立ち上がりながらぽんと手を打った。
「あ、それとね。もしたくさん作って、食べきれないってなっても、あたしが責任持って残りは全部食べるわ。同じチョコレートでも皆と一緒なら楽しいもの」
 その言葉に特異運命座標たちが苦笑する。元々豊かな彼女の体型だ。あんまりたくさん食べたら、それはそれでボディスタイルに影響が出そうなものだが、彼女がいいならそれでいいのだろう。
 ともあれ、話がまとまったところで竜胆が手元に持っていた本を開いた。光を放つ本のページを開きながら、竜胆が元気よく言う。雨の音は、もう聞こえない。
「それじゃ、いいかしら? 皆、あたしの部屋のチョコレートを減らすために、頑張ってちょーだい!」

NMコメント

 特異運命座標の皆様、こんにちは。
 屋守保英です。
 久しぶりにバレンタイン的なシナリオを、と思いまして一本ご用意いたしました。お気軽にどうぞ。

●目的
 ・『涙雨の』堅川・竜胆が大量に購入したチョコレートでチョコレートスイーツを作る。

●場面
 人間と妖怪が共存する世界のとあるそこそこ都会な街のワンルームマンションです。
 境界案内人『涙雨の』堅川・竜胆の自宅です。中には様々なメーカーの板チョコがめちゃくちゃたくさんあります。ミルクもホワイトもブラックもストロベリーもあります。
 この板チョコを少しでも多く消費するべく、皆さんにはチョコレートスイーツを作っていただきます。
 ライブノベル中で食べることも想定していますが、食べきれなかった分は竜胆さんが責任持って全部食べます。

 それでは、皆さんの楽しいプレイングをお待ちしております。

  • 元神使はチョコレートを買いすぎた完了
  • NM名屋守保英
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年03月05日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ラビット(p3p010404)
弱さゆえの強さ
紲・桜夜(p3p010454)
紲家

リプレイ

●初めての自宅訪問
 そこそこ栄えた町にあるマンションの一室。『涙雨の』堅川・竜胆の自宅にやってきた紲・桜夜(p3p010454)は、こてんと首を傾げた。
「えっと、ちょこれーと? 甘いもの? んー……」
 ぼんやりとした表情で、ほんのり甘い匂いを漂わせる山のようになったチョコレートを見る。覇竜領域から出てきてそこまで経っていない彼女、まだ見ぬもので世界はいっぱいだ。
「料理、あんまりしてなかったけど、お菓子作り、やってみたい……」
「チョコ菓子? をいっぱい作るんでしたね。あまりお菓子には詳しくないですけれど、頑張ります」
 『弱さゆえの強さ』ラビット(p3p010404)も同じドラゴニア、無辜なる混沌から出るのもこれが初めてだ。初めて踏み出した外の世界に興味津々という様子。
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)も練達並みに技術の発展した竜胆の自宅のあれこれを見ながら、苦笑しつつ嘆息している。
「ああ……あるよな、そういう季節のイベントでテンションが上がりすぎて普段やらないことまで勢いでやっちゃうやつ」
 季節もののイベントは楽しいものだ。環境が変わった後となれば猶のこと。とはいえ、ここまで暴走してしまってはよろしくないのだ。
 四人の中で唯一竜胆と面識がある『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が、額を抑えながら呻いた。
「あー……竜胆、最初に一つだけ聞いてもいいか?」
「なあに?」
 世界の問いかけに竜胆がきょとんとする。彼女に一歩詰め寄りながら、世界は問いかけた。
「このチョコレートは意中の人を射止める為に買ったんだよな?」
「そうよ」
「竜胆は恋多き乙女なのは理解してるが、基本的に今まで相手は一人だったよな?」
「勿論。浮気はよくないもの」
 世界の矢継ぎ早の質問に、竜胆はさらりと答えていく。特段困惑しているわけでもないらしい。そんな彼女を見つめながら、世界は板チョコの山を指差した。
「なのになんでこんなに大量に買ったんだ? 愛に飢えて無差別テロでも仕掛けるつもりだったのか?」
 眉間に若干シワが寄っている。呆れ半分不満半分といった様子の世界に、竜胆はポンと手を打った。
「あー、それはアレよ。私、今までチョコレート作ったことがなくって、練習用も含めてこんなに買ったの」
 その言葉に、きょとんとするのは世界の方だ。こんな平和な世界に長く生きて恋をしてきて、チョコを作ったことがなかったとは。
「無いのか?」
「神使って立場上、西洋のものに現を抜かすなどってね……でももうそれに縛られることもないし、色々作りたいものもあったから、手当たり次第に買ってたんだけど」
 世界の問いかけに竜胆がため息をついた。曰く、稲荷神の神使という立場故、米を尊ばねばならなかったとか。その言葉にエーレンが肩をすくめる。
「なるほど。今までやりたかったけどやれなかったこと、ようやくやれると張り切ったんだな」
「そういうこと」
 竜胆も肩をすくめながら苦笑した。彼女もよくよく、やりすぎたと感じているのだろう。
 ともあれ、チョコレート作り初心者がここにもいたわけだ。嬉しそうにラビットと桜夜が笑いかける。
「やったことないのは私も一緒です! 一緒に作りましょう!」
「ん……私も、初めて……楽しく、作ろう……」
「そうね、一緒に作りましょう!」
 竜胆も耳を揺らしながら頷いた。そうと決まればチョコレート作りだ。

●初めてのチョコ作り
 女性陣三人は仲良く一緒にチョコレートを作るとして、男性陣は手慣れたもの。準備を手際よく整えたエーレンがエプロンの紐を締めた。
「さて、せっかく練達並みの機材があることだし、先日友人を手伝ったこともある。少々凝ったものを作るぞ」
 三角巾もつけて準備万端、気合も十分。作っていくのはチョコレートケーキだ。
 メレンゲを作り、薄力粉と溶かしバター、牛乳にココアパウダーを加えて混ぜる。この世界はミキサーが存在するから混ぜるのも楽だ。
 型に流し込んで空気を抜いたらオーブンへ。焼き上げる間にチョコレートクリームを作る。
「で、次はチョコレートを加えて……竜胆、酒はいけるほうか?」
「あー、私は大丈夫だけど……」
 生クリームを温めつつ、刻んだチョコレートを加えながら竜胆に問う。竜胆自身は頷いたものの、視線が向くのはラビットと桜夜だ。
「こっちの女子二人、大丈夫かしら」
「む……そう言えば、この世界も20にならないと酒は飲めないのだったか。なら止めておこう」
 二人揃ってまだ未成年、とあればアルコールは入れられない。バニラエッセンスを垂らして混ぜ始めると、隣で作業する世界が声をかけてきた。
「あ、エーレン。そのチョコレートクリーム、少し貰えるか。こっちにも使いたい」
「ああ、いいぞ。世界は何に使うんだ?」
 出来上がったクリームを渡しながらエーレンが問う。受け取った世界がクリームを垂らすのは、フルーツやアイス、ウエハースなどが飾られたチョコパフェだ。
「これは……パフェ、というやつか?」
「そうだ。だがこれはおまけに過ぎん」
 クリームを返しながら世界がほくそ笑む。そう言って彼が取り出したのは一枚の大皿だ。
「刮目するがいい。『4種の板チョコ盛り合わせ』だ!!」
 大皿の上には竜胆が買い込んだ、ミルク、ブラック、ホワイト、ストロベリーの板チョコが、食べやすいサイズにカットされて乗せられている。なるほど、確かに盛り合わせ。色とりどりのチョコがたくさんだ。
 だが。竜胆が首を傾げながら世界に言う。
「……ただ板チョコを並べただけじゃない?」
「この洗練された飾り付け方が分からないのか?」
 彼女の言葉に世界が口を尖らせるも、竜胆とエーレンは顔を見合わせながら眉尻を下げた。何と言えばいいだろう、この。
「洗練というか、こう……」
「乱雑?」
 二人の率直な意見に世界が一瞬面食らう。だがその返答は予想していたようで、大皿を戻しながら言った。
「……いや、すまない。俺もそろそろネタ切れなんだ」
 色々なチョコレートを過去作ってきた。思いつくものは粗方作ってしまい、いい加減アイデアが浮かばないのだ。話題を変えるべく、世界は視線を女性陣に向ける。
「ところで、初心者二人組の方はどうだ」
「あ、うん! とりあえず湯煎して溶かすところまで出来たよ!」
「私も、大丈夫……」
 ラビットと桜夜は、竜胆と一緒に思いつくままにチョコレートを作っていた。様々な型に入れて冷やした型抜きチョコ、カップケーキにチョコレートクッキー、作ったクッキーを層状に重ねたチョコケーキ、チョコレートソースをかけたホットケーキなど。
 初心者ながらかなりの量を作った桜夜を見て、チョコレートケーキのデコレーションをしながらエーレンが目を見張る。
「桜夜は、たくさん作るんだな?」
「うん……結構食べたい……」
 色々食べたいという欲求が勝ったらしい。確かにこんな機会、体験しなければ勿体ないというものだ。
 するとチョコクッキーをしばし見つめていた桜夜が、竜胆の袖をくいと引いた。
「竜胆さん、作ったの、持って帰って、いい……?」
「あ、私も持って帰りたい!」
 その言葉にラビットも一緒に手を上げた。確かにこれだけあるのだ、家に持ち帰れるものは持ち帰って、友人や家族に配るのもいいだろう。
 世界が竜胆に、確認するように問いかける。
「ラッピング用品は、当然用意してあるんだよな?」
「勿論! 好きに使って持って帰っていいわよ!」
 そう答えながら竜胆が袋を取り出した。やはりバレンタインに誰かに渡すため、ラッピング用品も色々と用意していたようだ。これだけ買い込んだということは、義理チョコなんかも用意するつもりだったのだろう。
 と、竜胆が困ったように笑いながら、エーレンの方を見る。
「あ、でも……チョコレートケーキは、流石にね?」
「分かってるよ、生物だからな」
 対するエーレンも苦笑を禁じえない。手元ではつやつや光るチョコレートケーキが、カットされるのを待っていた。

●初めての団らん
 調理が終わり、板チョコは半分以上、八割近くを消費できた。これだけ使えれば、竜胆も困ることはないだろう。
 ラッピングも済ませて、出来上がったたくさんのお菓子たちをテーブルに並べ、竜胆が手を合わせる。
「じゃ、食べましょ!」
「紅茶も入った、準備万端だ」
「よし、食うぞ」
「いただきます!」
「いただき、ます……」
 全員で手を合わせ、作ったお菓子で食事会だ。エーレンの入れた紅茶は甘みを抑え、チョコレートと合うようにしてある。ぬかりはない。
 ケーキにパフェにホットケーキ。ナイフとスプーン、フォークが止まらない。
「ん、美味しーい! すっごく美味しい!」
「甘い、美味しい、甘い……」
「上手く作れたみたいで良かったわぁ」
 ラビットと桜夜は特に嬉しそうだ。こんなに甘くて美味しいチョコレート、自分たちで作ったから美味しさも一入だ。
 男性陣も笑顔でチョコレートケーキを食べている。と、エーレンの手が世界が用意した板チョコに伸びる。
「あ、そうだ世界、板チョコを一枚貰うぞ。チョコレートケーキに飾りたい」
「ああ、いいな。俺もそうしよう」
「あ、私も欲しい! ピンクのがいいわ!」
 世界も、ラビットも板チョコへと手を出し、チョコレートケーキの上にトッピング。より一層鮮やかになって美味しさもアップだ。
 黙々とホットケーキを頬張っていた桜夜が、竜胆へと声をかける。
「これで、お仕事、おしまい……?」
 その言葉に竜胆はコクリと頷く。これで依頼は成功、ではあるが。
「そうね、でも、満腹まで食べ終わるまでがお仕事よ!」
 満腹になるまでがお仕事だ。特異運命座標たちのチョコパーティーは、まだ終わらない。

成否

成功

状態異常

なし

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