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シナリオ詳細

<異世界プリンの恨み>犯人は、お前だ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある貴族邸にて
 夜中、ある貴族邸の巨大な広間。
 ずらりと並んだ椅子に、数人の人影がある。
「ふん、いったい何だというんだね」
 貴族用のふわっふわの椅子でふんぞり返る1人の男。
 豪奢な服に装飾品、そして見るからに偉そうな態度は『私は貴族です』と言わんばかりだ。
 態度と同様に大きく育った太鼓腹がぽよんと揺れる。
「私の方が聞きたいくらいですなぁ、まったく」
 その隣に同じようにふんぞり返るのは、また男。
 豪奢な服に装飾品、そして見るからに偉そう(?)な髭を蓄えた男は、その自慢の髭を整えながら機嫌が悪そうに肘掛けを叩いた。
 正直、見た目はチョビ髭のチョイ悪親父である。あんまり怖くないな、これ。
「まあ、集められたんだ。何か理由があるんだろう」
 更にその隣には、まるで異世界の中世ヨーロッパをリスペクトしているかのように髪をくるくるさせた貴族が椅子に腰かけている。
 正直、あまりかっこよくない。手入れとか大変そうだ。
 そして実は中世のあの髪はカツラだったことを知るものは、この場にはいない。

 3人の頭上で小さく揺れる、これまた豪華なシャンデリア。

 今回の依頼は他でもない。イワーク男爵邸で振舞われた、あのプリンを複数食べた貴族が、あの3人の中にいるらしい。しかし、それはいったい誰なのか?

 太鼓腹、チョビ髭、カール頭。

 この中に犯人が、いる。

●すぐ隣の部屋にて
 そんな男爵トリオが集められた部屋のすぐ隣で、イレギュラーズたちは首を傾げていた。
 とりあえず屋敷にきてくれ! 依頼を説明するぜ! と言われたはいいものの。
 彼らが辿り着いた部屋には誰一人として案内役の人間はおらず、隣の部屋には幻想貴族三銃士。
 その代わりにといっていいのかは分からないが、壁に張り紙がぽつんとあるのみ。

『依頼書
 
 拝啓集まってくれたイレギュラーズの皆さん。
 とりあえず 怪しいの集めといたので
 たぶん、この中に犯人がいるので
 探しておいて欲しいので
 まあ、てきとーに
 よろしく頼みます
 
 みすたーX』

 普通に言えよ。

 綺麗にシンクロしたイレギュラーズたちの心の声が木霊する。
 筆跡から十中八九、依頼主の書いたものに間違いはないのだが……この張り紙をする意味とは。
 普通に出てきてお願いするぜって言えばいいのではないのか?
 というか、みすたーXって何だ。

 その場の全員が同じことを考える謎空間の中、依頼書(張り紙)の下に小さく付け足された追伸を見つけられたのは奇跡に近いかもしれない。

『追伸
 
 誰か、分かったらでいいので
 お前だ! っていうの
 よろしく頼みます




 みすたーX』

「「「…………」」」

 結局、真面目に犯人を見つけて欲しいのかそうでないのか、どっちなんだ。
 溜息まで綺麗に揃えて決めたイレギュラーズたちの脳裏をある一言がよぎる。

 というか、みすたーXって、誰だよ。

GMコメント

 ごきげんよう、鉈です。みすたーXって誰だよ。

●成功条件
 幻想貴族トリオの中からプリンを複数個食べた犯人を見つけ出し「犯人はお前だ!」をやること。

●補足
 トリオは全員が貴族、男爵。
 それなりに偉そうで、それなりに気が弱いです。
 ハクシャク、コワイ。クビ、トブ。

 3人は誰も彼もが食事には目が無く、誰がプリンを食べていても。何なら全員が複数個食べていてもおかしくはありません。参考までに。

●アドリブについて
 NGの表記が無い限り、シナリオ描写においてアドリブを用いることがございます。
 わたしダメなのよっていう場合は、ステータスシートかプレイング内にてNGの表記をお願い致します。

  • <異世界プリンの恨み>犯人は、お前だ!完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年09月09日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
主人=公(p3p000578)
ハム子
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
星影 霧玄(p3p004883)
二重旋律
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
鴉羽・九鬼(p3p006158)
Life is fragile

リプレイ


「さて、皆さんに今回集まっていただいたのには訳が有ります」
 その日、屋敷の中に衝撃が走っていた。
 確りと、その言葉を口にした美少女探偵。美しいかんばせに憂いを乗せて、彼女は事件のあらましを説明する。
 ミスターXたる謎の人物から届いた手紙。そして、この事件を突き止めんと立ち上がった数名……。
「この中にプリンをたくさん食べた犯人がいるんだね!」
 そう、これはプリンを巡る物語なのである――『見習いパティシエ』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)は探偵然とした顔で、周囲を見回した。
「むむむー、何だか全員怪しく見えてくるね☆」
「ええ。この事件……わたくしがまるっと解決して差し上げましょう。『じっちゃん』の名に懸けて!」
『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)のその言葉に『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は大きく大きく頷いた。
 ハンチング某にインバネスコート、パイプ――ふーふーすると玉がふわーっと浮かぶぞ!――を装着している名探偵デイジー。
「そう、名探偵妾! 犯人はお主! なのじゃ!」
「!?」
 びしりと指さされた先に居るのは『髭の人』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)。
 驚きに口をあんぐりと開いたままの『二重旋律』星影 霧玄(p3p004883)はムスティスラーフを連行しようとするデイジーを見詰めていた。
(なるほど……容疑者としては妥当。髭ですし)
 よく分からない理論を展開させる『ハム子』主人=公(p3p000578)。これも作戦の内だというのか特異運命座標!
 依頼の内容を今スグに読み解けずにいる『孤兎』コゼット(p3p002755)は首をこてんと傾げて瞬く。
「なんか、へんな依頼書、だね。こういうのって、暗号だったり、するん、だよね。
 えーっと………ぜんぜん、分かんない、や。そもそも、暗号じゃないの、かもだし。
 とりあえず、書かれてる事すれば、いいよ、ね……ところで、みすたーXって、だれ?」
「本当に『みすたーX』って誰なんでしょう……」
 こんな事件に発展するほどに美味しいプリンなのだというのならば『Life is fragile』鴉羽・九鬼(p3p006158)だって食べてみたかった。
 九鬼には想像もつかないプリンだが、きっと至上のプリンと呼ぶに相応しい事は十分に理解できる。
 連行されるムスティスラーフ。犠牲が生まれた事に切なさを感じ取り目を伏せた彼はゆっくりと涙を拭った。
「この手を汚して手に入れたプリンは……とっても美味しかったよ。
 君の犠牲は忘れない、ゴメンね☆ てへぺろ」
 ――自白した!!?
「実は犯人はこの中にっ……て名乗り出るの!?」
 思わず公も驚いてしまった。
「やはり犯人なのじゃな」
 ――それでいいのか!?
「いやあ、あのプリンはおいしかったねぇ。僕もあそこに行っていっぱい食べて来たんだー」
 太鼓腹、チョビ髭、くるくる頭は慌てている。見た目は子供だが名探偵デイジーがそういうのだからきっとそうなのだ。
 しかし、本当に……?
「そう! 犯人は……僕だっ!!」
 親指で自分を指してドーンと構えたムスティスラーフ。その姿に公やコゼットはごくり、と息を飲んだ。
 これで一件落着。成功条件も満たして依頼も終了……ではないのだ。
「犯人というなら……」
「そう、そうですね……?」
 仲間たちの視線が痛い気がする。ムスティスラーフ、がんばれ。ムスティスラーフ。
「うわぁー! 僕が縛り上げられるのか、お、お助けー!」


「私は美少女超能力探偵ハム子! ――今、あなたの脳に直接語り掛けています……」
 謎である。公のハイテレパスはそのセリフにバッチリ似合っていた。
 貴族たちはその時点で混乱している。犯人を突き止めたかと思いきや、特異運命座標たちは知っている。
 何故なら、ムスティスラーフは実は犯人ではないのだ。これは特異運命座標たちしか知らない事件だ。
 いや、ムスティスラーフが仮に犯人なのだとしたら、そもそもムスティスラーフは別の事件の容疑者であったのかもしれない、なんにせよ今回の件は無事解決とはなっていない。
「まって……!」
 簀巻きにしたムスティスラーフを見詰めていたコゼットが息を飲む。キッチンで物音がしたかと思いきやそこに合ったのは……。
「し、死んでる……?」
 キッチンに倒れていたのはエリザベス。花瞼はしっかりと閉じられている。近づくコゼットがそっと手を翳しても呼吸の気配はない。
「嘘……」
 息を飲んだミルキィ。これはいったいどうしたものだろうか。何が起こったのか――
(ミスターXはきっとこの中に居る……?
 これを真面目に書いたのだとしたら目的としては……「正体を隠す」為にわざと適当な感じに書いたと推測するのが妥当でしょうか。
 なら、この状態に驚ている貴族がいる筈。だって、これは『彼の仕組んだことじゃないから……)
 九鬼はまじめな表情でそっと、エリザベスの傍らに座り込み悲し気に首を振る振ると振った。
「プリンにこんな罪があるなんて……。毒殺、だよね?」
 こく、と頷いたコゼット。ミルキィは「毒かあ」と小さく呟いた悲しげな顔をする。
「あ、プリンにはプリンだと思って、その、手作りなプリンを用意したんだ。騒ぎに巻き込んでごめんね?
 けど、ここにいる以上、皆が容疑者になるから……もう少し、話を聞かせて欲しいな?」
 別の犯人がいるらしいという事にコゼットは気付き、顔を上げた刹那、
「ごろごろごろごろ……ビクンビクン……チーン。ご臨終です……」
 ムスティスラーフがその場でごろごろごろと転がっていった。犯人だと思われていた存在が今、プリンで死んだ。
「嘘……」
 第二の犠牲者にデイジーが息を飲み振り仰ぐ、公はふるふると首を振っている。
「犯人は、別にいるらしい、ね」
 コゼットは悲し気に目を伏せる。貴族たちは皆、一様に息を飲んでいた。
「まさか、貴族で、それも大人の人がプリンの盗み食いなんて、するわけがない、よね。
 なんかの間違い、だよ、ね。
 みんな、何個も食べたいのは、おなじなのに我慢できないなんて、ちっちゃい子供、みたい、なこと。
 おじさん達、みたいな、立派な人が、するわけ、ないよ、ね」
 コゼットの言葉にう、と詰まる貴族が一人。太鼓腹をした彼はその体型から見るに只のデブだ。
 彼が視線を逸らした事を美少女探偵は見逃さない。
「ふむ……?」
 そこで、ふとデイジーは瞬いた。美味しいというならば供物として寄越せとデイジーは云う。
「ぺろっ、……こ、これはプリンなのじゃ!
 大体、6個くらいは食べたいの。プリンでお腹いっぱいなのじゃー」
 貴族があれやあれやと渡したプリン。そして、ミルキィのものもぺろりと食べたデイジーがふふんと鼻鳴らす。
「推理は完了したのじゃ。部屋でゆっくりと話を……ってその前に何かお腹が痛くなってきたの。
 うむ? 話しを聞いておらぬかったが何か毒とか言っておるの……のじゃー、毒を盛られたのじゃー! お腹が痛いのじゃー!」
 じたじたごろごろと転がっていくデイジー。公が慌てて彼女へと走り寄る。
「早く解毒薬を飲まないと大変なことに成る!」
 美少女探偵は云う。これは昔見たことが有るのだと、そうそれは漫画にして14巻くらいの出来事だったかもしれない。気のせいかもしれないが毒性の強いもので死に至っている被害者がいる以上、ここで、さらなる犠牲を生むわけにはいかないのだ。
「お願い、早く犯人なら名乗り出て……!」
「プリンには少量の毒があって、複数食べた人が次々と謎の死を遂げているという噂を聞いた事があるのです」
 不安げに言う九鬼。ごくり、と貴族二人が息を飲んだが咄嗟に顔を青くした太鼓腹の貴族がどうしたものかと慌て始める。
「ほら、毒がある食べ物は美味しいといいますし……」
 九鬼の言葉は中々にシビアそのものだ。
「どんなプリンだったか再現してみるよ。美味しい物ならきっと、沢山作れるし、その毒性だってわかるかもしれない……でも、一個しか食べたことないんだったら味の記憶も参考にできないかな?」
 ミルキィは毒から皆を救うために提案した。これはある意味で犯人を釣り上げるための一言である。こうした言葉で犯人が味について言及したならば――もう一度言う事は決まっている。
「ああ、美味しいプリンだろう? それは、そうだな、卵がふんだんに使われていて、風味豊かで――」
「太鼓腹の貴族さん。『一個しか食べたことないんだったら味の記憶も参考にできないかな』」
 どきり、と太鼓腹の貴族が反応した。無論、それもその筈だろう。
 1つしか食べていないわけではなく複数を喰らったからの発言なのだとしたら犯人は――もう決まっているようなものだ。
「美味しかった?」
 首を傾げるミルキィ。キッチンに倒れた無残な被害者達。
 ドドドドドドドドドと何処からか音さえ聞こえそうなほどに、謎のポーズを取っている謎の仮面の人。
「話は聞かせてもらったのでございます」
 仮面の人は突然現れ、ゆっくりと目を伏せた。
「憐れな犠牲者を救うため、一言、お待ちしているのです」
 そう、犯人が名乗り出ればこの犠牲の輪は止まっていくのだ。
 そして、解毒薬はあるから、と九鬼が促した結果――一人のデブが悲しげな顔で挙手をした。
「私です……」
 ――貴族、お前だったのか!


 ざざーん。波打ち際に立っている(気分)でデイジーはゆっくりとゆっくりと犯人を追い詰める。
「どうして――……」
 公は悲し気にそういう。
(何か怪しい気配がする……。え、もしかして一緒にオシオキされる……?)
 ぞわ、と背筋に奔る気配にムスティスラーフは誤解ですと叫んだ。ざざーん、崖上はここまで恐怖の対象になるのか。
「でも……」
 不安げな公、それもそのはずだ。追い詰めるデイジーの瞳は嬉々で満ち溢れているのだから。
(ぬふふ、言わせてもらうぞ……!)
 デイジーは笑みを浮かべゆっくりと手を掲げた――が「犯人は、お前、だ!」
「えっ」
 そう宣言したのはコゼットだった。全力で煽り倒して襲い掛かってきた太鼓腹貴族。デブにはそれなりの理由があったと言わんばかりの姿にコゼットは息を飲む。
「犯人はキミだものっ! 美味しい異世界プリンの話、聞いてみたいな♪ けど、罰はしっかりうけてね?」
 見習いパティシエが気になるのはここまで美味しいプリンの話。だって、こんなにおいしいのだからそれなりに理由があるはずだ。
 貴族たちを惑わす魔の味。九鬼は異世界プリンと口にして、ふむと悩まし気に首を傾いだ。
「あなたの犯行の一部始終はこうでしょうか……?
 わざわざ『お前だ!』ってやって欲しいという事は、部屋の様子を見ている人物である可能性もある、と言う事ですかね。
そして正体を隠すと言う事は知られたくないという事……『みすたーX』もプリン複数食べちゃって、その罪を押し付ける相手を探してる……とか? いや、単純に遊びたいとか、恨みから探して欲しいってだけかもしれませんが……」
 反応を見る限り食べちゃったから罪を押し付けたいという事が一番妥当だろうと九鬼は踏んでいた。
 ずるりと起き上がって様子を眺めていたエリザベスは謎のポージングでゆらりと立ち上がり笑う。
「ふふ……」
 意味ありげな笑みに含まれるのは『私はキーパーソンです』と言った空気感だ。
「まるっとお見通し。流石に死ぬという役はじっちゃんの名に懸けてもおどろきびっくりですけど」
「びっくりですよ。けれど――……異世界の幻食材『幻想ロシアンエッグ』を使っているとなれば話は違います。
 え? 異世界なのにこれでいい? 大丈夫です、ここは混沌世界。翻訳がうまいことなんとかかんとかしてくれますから」
 ファンタジー警察もにっこりです、と付け加えた公に「美味しそうでございますね」とエリザベスはゆるりと頷き、目を伏せた。
 仮面越しでもわかる気品。流石はエリザベスだがポージングからして不穏だ。何者か分からないが不穏だ。
 いや、エリザベスであることは判る人には分かるが、初対面の貴族達には分からないだろう。
「くっ……一人を犠牲にしてまで、犯人を追い詰めたかったと……?」
「それが、探偵ですから」
 九鬼は何処か困った様に肩を竦める。犯人はくそ、と地面を叩き涙ながらに自分が遣りましたとそう、小さく呟いた。
「じゃあ」
 ゆっくりと歩み取ったデイジー。
 その先のイベントと言えば――以下、音声でお伝えします。
「許してください何でもしますから! 助けてください助けてください助かりません。あじゃぴぇー!!」

 髭は思った――ハクシャク、コワイ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。シナリオの代筆を担いました夏です。
 この度は弊社クリエイター都合によりお客様には執筆担当変更のご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした。

 皆さまの素敵な冒険がこれからも続きますように。
 楽しんで頂ければ幸いです。

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